大澤龍司法律事務所 相続問題無料相談ブログ

父から母への贈与と特別受益【Q&A №670】

 

 

【質問の要旨】

・亡父が生前、母と姉に土地を贈与。
・母は病気がちの父を助けるため農業に尽力し、一方で姉は何もしなかった。
・母への贈与は、姉と同様に特別受益になる?寄与分は認められる?

 

【回答の要旨】

・原則として、父からの生前贈与は遺産の先渡し(特別受益)となる
・持戻し免除の意思表示があったといえれば持戻しは不要
・母は、持戻し免除の意思表示の主張をすべき
・寄与分についても主張はすべき

 

【ご質問内容】

今年の3月に父が91歳で亡くなり、母(90歳)と姉と私の間で遺産分割協議を進めています。
30年前、姉は家を建てるとき父から土地の贈与を受けていました。
姉もこの土地が特別受益になると認めています。
また、25年前、母も父から住んでいる家の敷地(2/3)の贈与を受けています。ところが、姉は母が父から贈与を受けた土地についても特別受益になると主張しています。
私の両親は農業を営んでいて、父は病気がちで、母が中心となって働いていました。
父は生前、母が農家を維持するのに多大きな貢献をしてくれたことへの感謝と、自分が亡くなっても母が困らぬように母に土地を贈与したと言っていました。
姉は父に何の貢献もしなかったのに土地をもらいましたが、母は農家の嫁として一生懸命に働き、父に尽くしてきました。
このことから私は、母が贈与を受けた土地を特別受益とする姉の主張は不公平で納得がいかなく、逆に母に寄与分が認められるのではと思いますが?

(ももクロ)



 ※敬称略とさせていただきます。

【原則として、父からの生前贈与は遺産の先渡し(特別受益)となる】

生前に法定相続人のうちの誰かが被相続人から財産の贈与を受けている場合には、《特別受益》として遺産に持ち戻します。
これは、相続人間での公平を図る目的で定められたものであり、生前贈与は遺産の先渡しと考えてのことです。
そのため、父から姉への土地の贈与も、父から母への自宅敷地の贈与も、原則的には特別受益となり、遺産分割の際には、遺産に持ち戻して計算することになります。

【持戻し免除の意思表示があったといえれば持戻しは不要】

ただ、被相続人が、明示でも黙示でもよいので、遺産に持ち戻ししなくてもよいという意思表示をしていたことが証明できれば、特別受益であっても遺産に持ち戻す必要はありません。
黙示の持戻し免除の意思表示があったか否かについては、贈与の内容及び価額、贈与の動機、被相続人との生活関係、相続人及び被相続人の職業、経済状態及び健康状態、他の相続人が受けた贈与の内容・価額及びこれについての持戻し免除の意思表示の有無など諸般の事情を考慮して判断すると考えられています。
具体的には、
①家業承継のため、特定の相続人に対して相続分以外に農地などの財産を相続させる必要がある場合
②被相続人が生前贈与の見返りに利益を受けている場合(被相続人との同居のための居宅建設における土地使用の権限付与など)
③相続人に相続分以上の財産を必要とする特別な事情がある場合(病気などにより独立した生計を営むことが困難な相続人に対して生活保障を目的としてなされた贈与、妻の老後の生活を支えるための贈与など)
などでは、明示的な持戻し免除の意思表示がなくても、黙示の持戻し免除の意思表示があったと認められる可能性があります。

【母は、持戻し免除の意思表示の主張をすべき】

ご質問の事案の場合、父が生前に、母が農家を維持するのに大きな貢献をしてくれたことへの感謝と、自分が亡くなっても母が困らぬように母に土地を贈与したと言っていたとのことですので、母は上記父の発言を理由に、持戻し免除の意思表示があったと主張すべきです。
実際に、母は病気がちの父のために農業に尽力されたとのことですし、上記具体例の中の③妻の老後の生活を支えるための贈与との意味もあると考えられますので、持戻し免除の意思表示があったと認められる可能性は高いと思われます。
※なお、相続法改正により、2019年7月1日以降に、婚姻期間が20年以上である配偶者に対して、居住用建物又はその敷地を贈与した場合には、原則として、持戻し免除の意思表示を推定し、遺産に持ち戻さないことになりました。
今回の事案では、直接この改正の対象になるわけではありませんが、亡くなられた方の配偶者を保護しようとする最近の流れからすれば、今回の事案でもある程度有利に働くのではないかと思われます。

【寄与分についても主張はすべき】

最後に、寄与分についてですが、寄与分とは、「被相続人の財産の維持又は増加に特別の寄与をした」場合に認められるものであり、通常期待される程度を超える貢献が必要とされています。
母は病気がちの父に代わって、必死に働き、家計を支えてきたものと思われますが、寄与分はなかなかハードルの高い制度ではあります。
仮に認められたとしても、その額は200万円~300万円程度であり、また、特別受益と寄与分の両方が認められるということは通常ありません。
被相続人のために寄与した分は、特別受益という形で評価されていると考えられるからです。
そのため、寄与分の主張はすべきですが、なかなか認められないですし、特別受益の持ち戻し免除のほうが母の利益としては大きいということはご理解いただいたほうがよいと思います。


母に代わって不正出金を取り返すには【Q&A №669】

 

 

【質問の要旨】

・母の預貯金から兄が不正出金。兄は贈与を主張。
・母の長谷川式は10点で、認知症との診断。
・母が遺言を理解できる旨の診断書作成を医師に依頼したが、断られ、弁護士との委任契約を理解できる旨の診断書も断られた。

 

 

 

【回答の要旨】

・生存中は、不正出金の返還請求は母のみができる
・長谷川式10点では判断(意思)能力なしの可能性が高い
・今、すべきことは、後見人の選任でしょう
・兄がもらった分は、将来の遺産分割に遺産に持ち戻される
・証拠集めもしておくとよい

 

 

【ご質問内容】

母の預貯金を管理していた兄が、不正出金し、自分名義の通帳に100万入金、兄嫁に16万使用させ、その分は、返済。
500万ちかくあった預金は、280万に減り、2年前に、満期になった100万は店頭で受取取得。
返済要求に対してもらったと主張。(証拠はない)
母の記憶力の低下が、気になり、病院を受診し、弁護士との委任契約の理解の診断書をお願いしましたが、アルツハイマー型認知症と診断され、長谷川式の点数が10点でした。
病院の先生は、好意的で診断書を作成かしてくれようとしていましたが、公正証書遺言も重ねて考え、遺言の理解の診断書(簡単な内容の物)まで、お願いしましたら、結局、両方、断られてしまいました。

現在は、私の家の近くの施設に入居し、今後の、母の生活のためにも、不正出金の返済をしたいのですが、母の状態での医師の診断書の取得は、難しいのでしょうか?

(バラ好きな母)



 ※敬称略とさせていただきます。

今回は母がまだご存命の案件ですので厳密には相続案件ではありませんが、相続案件でも同じことが問題となりますので、認知症と不正出金の問題として回答します。

【生存中は、不正出金の返還請求は母のみができる】

この点はすでにご理解されていることと思いますが、母の生存中は、預貯金口座からの不正出金の返還請求ができるのは母のみです。
たとえ子であっても、あなた自身が返還請求することはできませんので、この点はご注意ください。

【長谷川式10点では判断(意思)能力なしの可能性が高い】

弁護士に依頼するのなら、母自身が依頼する必要があります。
その場合、母には判断(意思)能力が必要です。
長谷川式認知スケールは30点満点ですが、母の検査結果が10点となれば、判断(意思)能力がかなり衰えているようです。
そのため、意思能力がないということで、弁護士に依頼もできないことも考えられます。
また、仮に遺言を作っても無効と判断される可能性はかなり高いといえるでしょう。

【今、すべきことは、後見人の選任でしょう】

あなたの立場から言えば、早急にすべきなのは、これ以上の兄の使い込みを防止することです。
そのためには早期に後見人選任の申立てをされるといいでしょう。
後見人が選任されると、財産は全て後見人に移され、不正出金は防止されます。
なお、長谷川式認知スケールは、精神科あるいはメンタルクリニックでなくとも簡単に検査できるので、お近くの開業医に検査してもらい、そのテスト結果をつけて、家庭裁判所に申立てをするといいでしょう。
ただ、後見人はその選任前の不正出金につき、その返還を求めるということは少ないと考えていいでしょう。
特に今回の質問のように、兄がもらったものだと言えば、後見人はそれ以上の追及はせず、あなたに対して、《母が亡くなったのちに、相続問題として争ってくれ》ということになりそうです。

【兄がもらった分は、将来の遺産分割に遺産に持ち戻される】

不正出金の場合、その返還請求権は法定相続分に応じてあなたも相続しますので、母が死亡した場合に兄に請求をされるといいでしょう。
なお、兄がもらったと言っているのなら、それは生前贈与で特別受益になり、その金額が遺産に持ち戻されることになります(生前贈与(特別受益) )。

【証拠集めもしておくとよい】

ただ、いつどのような出金があったのか、それを兄が(不正に取得したのであるか、もらったのであるかは別として)取得して、自分の用途に使用したことはあなたが証明する必要があります。
そのため、裏づける資料を集め、将来の裁判の証拠として提出できるように、今から準備をされておくといいでしょう。
具体的には、録音などの方法も駆使することも考えていいでしょう。


遺産の9割以上が生命保険【Q&A №658】

 

【質問の要旨】

母の遺産は預金100万円と2000万円払込の生命保険のみ。
生命保険の受取人が相続人の一人であった場合、生命保険金も遺留分請求はできる?

【ご質問内容】

母が亡くなり、相続人は兄と弟である私の2人です。父は10年以上前に他界しました。
母は兄夫婦と同居していました。
兄と遺産分割の話し合いをした所、母の財産は100万円ほどの預金だけです。
しかし先日、母が2年前に加入した生命保険があることが分かりました。
金額は2000万円を一括で払込み、5年後に利子がついて戻ってくるものです。
そして保険金の受取人は兄になっていました。
ネットなどで調べると、保険金は相続財産に含まれないと知り、遺産分割できないと知りました。
生前贈与や、遺贈ならば遺留分請求もできるのに、それが保険金となると、遺留分請求ができないのではないかと不安です。
額も大きいので、何か方法があれば教えて頂きたいと思って相談しました。
このように、被相続人が死亡の数年前に加入した保険の保険金が、相続人の一人を受取人と指定した場合は、遺留分請求の対象にはできないのでしょうか?

 

(モニモニ)



 ※敬称略とさせていただきます。

 

【生命保険は遺産ではないとする見解が一般】

今回は相続人に残された財産の9割以上が生命保険金であり、いわゆる法律上の「遺産」がほとんど残っていないケースのようです。
生命保険は遺産ではありませんので相続人で分割することなく、受取人になった方全額受け取ることができます(生命保険が遺産に当たらないことについては当ブログ№598参照)。

【特別受益では解決できない・・・】

もっとも、裁判例の中には、相続人の一人が遺産総額の5割を超える多額の死亡保険金を受け取った場合に、特別受益に準じて遺産に持ち戻しを認めるものがあります(最高裁判決平成16年10月18日。相続ブログ№598参照)。
いわば保険金を生前贈与と同様に扱った判例だと理解すればよいでしょう。
しかし、特別受益は生前贈与した財産(今回は生命保険金)を返還させる制度ではありません。
あくまで現存する遺産(今回は預金100万円)の分け方について、生前贈与を考慮するにとどまります。
そのため、保険金が特別受益であることを主張しても、あなたは現存する預金100万円を相続できるだけであり、これを超えて生命保険金の返還請求はできません。そうすると、本件では特別受益を主張してもなんの解決にもならないでしょう。
そのため、今回は生前贈与や遺贈があっても相続人を保護する制度である「遺留分」を主張するしかありません。

【保険金は基本的に遺留分の対象外】

それでは、生命保険金は遺留分減殺請求の対象財産になるのでしょうか。
まず、生前贈与や遺贈なら遺留分減殺請求の対象となりますので、贈与された金銭の一部を返還するよう請求できます。
しかし、生命保険は(理屈上)生前贈与でも遺贈でもないため、遺留分減殺請求の対象財産には含まれないのではないか、ということがかつて争われました。
この問題について最高裁判所は、死亡保険金は遺留分減殺請求の対象財産に含まれないとしました(最高裁平成14年11月5日判決)。
もっとも、この判例で生命保険金を受け取ったのは相続人ではない第三者の方でした。そのため、今回のように相続人が保険金受取人であった場合とは状況が違います。むしろ、相続人の一人を特別扱いするという意味では生前贈与や遺言で財産を渡したケースと大きな違いはないでしょう。
そこで、あなたとしては、今回受け取られた生命保険金(2000万円)が現存する遺産(預金100万円)の20倍にもあたるという金額の大きさを繰り返し強調し、「このような生命保険を使った遺留分の抜け穴を認めるべきではない」と主張されるべきでしょう。

【今後の方針】

あなたが行うべき主張は上記のようなものですが、この問題は裁判所の判断も学説も意見が分かれていますので、現状で確かな回答ができる問題ではありません。
そこで、相続案件に詳しい弁護士に相談され、上記の主張を含めた法的な検討を早急に進めていくべきでしょう。


生活費の援助は特別受益か?【Q&A №656】

 

【質問の要旨】

相談者は、母と暮らしていた5年間は母の年金で生活していた。
母の死後、「相談者のために支出した生活費などのすべてを持ち戻すこと」と母が書いた書面を姉から渡された。
生活費も相続財産に持ち戻さなければならないか?

 

【ご質問内容】

私は二人姉妹の妹です。
先月母が亡くなりました。
母が亡くなるまでの10年間のうち、前半の5年間は私と母の2人暮らしで、母の年金で生活していました。
しかし母との生活は、母の面倒を見なくてはならず、それが嫌で私だけ家を出ようと思いましたが、それを姉に伝えると、姉が母を引き取りました。なので後半の5年間は、と母は姉夫婦と同居しました。
今回、遺産分割にあたり、姉から母が書いた書面を渡されそこには「妹(私)との同居中に、妹(私)のために支出した生活費などの全てを持ち戻すこと」と書かれていました。
姉が言うには、母が私に支払った全ての支出を相続財産に戻して清算するという意味の様です。
このような書面があると、私はどうなってしまいますか?
生活費なんかも相続財産に戻さないといけないのですか?

(rogu)



 ※敬称略とさせていただきます。

【生活費程度は特別受益から除外】
ご質問の件ですが、生活費は持ち戻しの対象にはならないと思われます。
以下、その理由を説明していきます。
まず、親から贈与されたお金を遺産に持ち戻す法律として、民法903条の特別受益という制度があります。
この法律では「生計の資本として贈与」を受けた場合は特別受益であり、受益の額を相続財産に持ち戻すものとされますので、いわばあなたは遺産の前渡しを受けたようなものとして扱われます。
この特別受益が適用されると、あなたは5年間にわたって母から受けた生活費の総額「特別受益」として遺産に持ち戻されてしまうことになりそうです。

【生活費程度は扶養の範囲内】
このような生活費と特別受益の問題は遺産分割調停でよく問題になります。
しかし、生活費が特別受益とされることはあまりありません。
その理由は、母が子供の扶養義務を負っているからです。
母が子を扶養する義務は子供が成人した後でも続くため、月に数万円程度の生活費提供であれば、「母が扶養義務を果たしただけ」であり、プレゼント(贈与)ではないと扱われることが多いでしょう。
常識的にも、母が子を扶養することを「贈与(プレゼント)」と呼ぶには違和感があるのではないでしょうか。
もちろん、「生活費」と称して毎月50万円や100万円といった多額の資金が提供されていれば別ですが、月数万円程度なら扶養義務の範囲内といって差し支えないでしょう。

【母の書面は法的効力なし】
ただ、今回は母が「生活費を持ち戻しなさい」という書面を書いていたようです。
亡くなった母が死亡後に法的効力のある書面を残す方法は遺言だけですが、これは遺言の形式的な方式を満たしている必要がありますが、今回はいかがでしょうか。
また、特別受益でないものを「生活費として渡したけど、そのお金は特別受益として持ち戻す」という遺言を書いても法的効力はありません。
いずれにしても、母の書面は法的な効力がありませんので、上記のように生活費として一般的な範囲の金額かどうかを検討されるとよいでしょう。


90歳母の土地資産が売買により全て兄に移転登記すみ【Q&A №643】 0643

 

【質問の要旨】

すでに売却された土地は遺産になるか

記載内容  土地 売買 移転登記

【ご質問内容】

私は東京在住の次男63歳。3歳上の兄との二人兄弟だが兄弟仲悪く行き来はほとんない。

90歳の母は現在関東近県の施設在住で親族は上記3名のみ。母は2千坪以上の土地資産を所有。

母の体調悪化してきたので先日訪れて相続はどうするつもりか訊いたところ、ずいぶん前に遺書書いてあり兄に土地は渡すが遺留分を考慮して不満のないようにするとのことだがはっきりしない。

土地の登記内容、税金なども全くノータッチだったのだが気になり、地元の不動業者に電話して地積、時価等尋ねたところ、ビックリしたことに当該土地は3年前に母の名義から、兄名義に売買により移転登記済みとのことだった。

むろん私にはまったく知らされておらず、現状ではこの2千坪の土地資産には相続権がないことになるが、いかがでしょうか。

(Mayのパパ)

 ※敬称略とさせていただきます。

【売却により所有者が変わっていれば、原則として母の遺産ではない】

生前に母が自らの名義の土地を売却したという場合、その土地はすでに母の所有ではないということですので、原則として遺産にはなりません(したがって、土地に対する相続権はないということになります)。

これは、母が第三者に売却した場合のことを考えれば理解しやすいでしょう。

本件では、すでに兄名義に登記も完了しているということですので、母と兄との間の売買契約書が存在していることまでは確かでしょう。

 

【売却価額が不相当に安価な場合など、特別受益になることはありうる】

ただ、親子間の売買ですので、

1.売買といいながら実際には兄から母に代金が支払われていない場合や、

2.売買代金が、時価に比べて不相当に安価な場合もありえます。

これらの場合には、母から兄への特別受益となり、母の遺産分割時に、その特別受益分を遺産に持ち戻して計算することになります。

この時に持ち戻す金額は、上記①のように代金が支払われていない場合は土地価額全額、②のように代金は支払われているものの安価な場合には、時価との差額相当額、ということになります。

 

【母に確認できることは確認しておく】

このまま母が亡くなってしまうと、遺産分割協議の際に兄は、「自分はお金を払って取得したのだから、特別受益ではない」と主張してくるでしょう。

そのため、現時点で、母から売買の詳細について聞き取りをし、売買契約書や当時の通帳があるなら見せてもらって、現実に兄から母に代金が支払われているのか、その額はいくらかを確認しておくべきでしょう。

また、合わせて、不動産屋に頼んで土地の査定をしてもらい、額の妥当性を判断しておくことも必要です。

その上で、もしも現実に代金が支払われていないのならその旨を母に一筆書いてもらっておいたり、母の通帳の該当ページをコピーしておくなど、母から得られる証拠はできるだけ集めておいて、将来の遺産分割時に対処できるように準備しておくことが、今あなたにできることだと思います。

(弁護士 岡井理紗)


生命保険金の特別受益について【Q&A №642】 0642

 

【質問の要旨】

生命保険が遺産に含まれる場合

記載内容  生命保険 みなし相続財産

【ご質問内容】

父が他界して相続が発生しました。
相続人は後妻さんと私(先妻の子)の2名です(養子縁組なし)。公正証書遺言があり預金500万円は後妻さんと私で折半、マンション1部屋(時価2,000万円)とその他一切の財産は、後妻さん相続となっています。
その他に生命保険金1,500万円(受取人名義は後妻さん)があります。
あと後妻さんが父の銀行口座からATMで引き出した500万円(葬儀費用等)と税金等の債務100万円ほどです。
このままですと私の相続額は遺留分600万円(後妻さんが引き出した500万円は含まない)、後妻さんは1,800万円です(後妻さんには遺留分減殺通知済み)。

生命保険金1,500万円(受取人名義は後妻さん)についての質問です。
生命保険金が遺産に占める割合が5割を超えると特別受益として持戻しの対象になる可能性があるとネットで見ました。
特別受益や債務等を含めた「みなし遺産」を遺産と考えて、生命保険金の割合を算出するのでしょうか。
それとも遺産とは父死亡時の父名義の遺産のみを遺産と考えて、生命保険金の割合を算出するのでしょうか。
よろしくお願いいたします。

(ピエタ)

 ※敬称略とさせていただきます。

【みなし相続財産には特別受益や債務も含む】
まず、遺留分を算出する大前提となる「みなし相続財産」は次の式で計算されます。
《現存する遺産+生前贈与額-負債=みなし相続財産》
その前提で考えると、遺留分は600万円ではなく、さらに生前贈与分(生前の引出分)の4分の1の額が加算されることになります(この点は後述します)。
生命保険は相続税の計算に際して加算されますが、これは税務のことです。
原則として、相続(民法)では遺産としては扱われません。

【裁判例における生命保険の扱い】
ただ、例外的に生命保険がいわゆる特別受益と扱われる場合があります。
裁判例では、遺産総額の約6割に匹敵する生命保険金の存在を理由に、生命保険を遺産に持ち戻すことを認めた裁判例があります(名古屋高等裁判所平成18年3月7日決定)。
この裁判例では、(生命保険金を除く)遺産総額が約8423万円で、これとは別に生命保険金額が約5154万円あった事案について、裁判所は遺産総額の約61%にも占める生命保険(5154万円÷8423万円=約61%)という事情の下で生命保険は遺産に持ち戻すことを認めました。
つまり、この裁判例では遺産総額を計算する際、生命保険以外の遺産総額を算出し、この遺産総額と生命保険額とを比べて遺産に持ち戻すべきか否かを判断したことになります。
(なお、この裁判例は家事審判という手続の性質上、被相続人の債務が考慮されていないことに注意が必要です。)
もちろん、遺産総額に対する割合だけで特別受益と決定されるわけではなく、生命保険金額がそもそも多額かどうか、生命保険を受け取った相続人と被相続人との関係など他の事情も考慮して遺産への持ち戻しを判断していることには注意が必要です。
(なお、当ブログNO.298でも同様の論点を取り扱っております。参考までに)

【本件にこの裁判例を当てはめた場合】
  (遺産総額)※生命保険以外 
    不動産     2000万円
    預貯金     500万円
    生前の出金  500万円(生前贈与と仮定)
    合計       3000万円

ここから負債(今回の案件では相続税の課税がないと思われるので、おそらく生前の未払税等)を100万円差し引くと
    みなし遺産額2900万円
と計算されます。
 ※なお、葬儀費用は(争いがありますが)遺留分から控除しない見解が一般的ですので、この計算では控除しておりません。

他方で、生命保険が1500万円ですので、生命保険が総遺産額に占める割合は 
    保険(1500万円)÷遺産(2900万円)=約51%
と計算されます。

前記の裁判例の割合(61%)と比べるとやや低めの割合であり、持ち戻しを認めてもらうには少し厳しい状況といえるでしょう。
ただ、あなたの計算では遺留分は600万円のようですが、遺産2900万円として遺留分(4分の1)を計算すると725万円程度になります。
参考になれば幸いです。

(弁護士 北野英彦)


特別受益の件!【№621】 0621

【質問の要旨】

息子の消費者金融への支払いは特別受益になるか

記載内容   消費者金融 特別受益  贈与

【ご質問内容】

大沢先生宜しくお願い申し上げます。

もう20年以上前になりますが、息子が消費者金融で問題をおこし、当時の弁護士さんに200万円以上の費用をお支払して問題を解決して頂きました。

勿論息子に私への返済はさせておりません。

したがって遺留分の計算などで、この場合特別受益として認めてもらえる可能性はありますでしょうか。

大沢先生お忙しいところ大変恐縮ですが宜しくお願い申しあげます。

(トラちゃん)

 

 ※敬称略とさせていただきます

20年前に息子の消費者金融の支払いをしたということであれば、特別受益になる可能性があります。

このようなケースで何が問題になるかを整理してみました。

【支払った人の相続でのみ特別受益になる】

まず、息子の消費者金融の借金を支払ったということですが、そのお金を誰が支払ったのかを確認しておく必要があります。

もし、《あなたが支払った》のであれば、《あなたの遺産分割の際》に特別受益として扱われます。

しかし、あなたの配偶者の相続の場合にはなんら特別受益にはなりません。

あくまで支払った人が死亡した場合、その人の相続でのみ、特別受益になるだけですので、ご注意ください。

【特別受益は贈与の場合で、貸金なら別途の扱いとなる】

特別受益は生前に《贈与》したという場合の問題です。 そのため、息子から《返還を予定していない》ということが前提になります。

もし、返還してもらう気持ちで、何回も請求した、あるいは借用書を差し入れてもらったというのなら、それは《貸金》になります。

貸金であれば、その返還請求権は原則10年で消滅時効にかかり、消滅します。

特別受益の場合は、20年や30年前であろうと、消滅時効にはかからず、特別受益として扱われます。

【贈与を証明できる必要がある】

質問のような20年も前の特別受益の場合、一番大きな問題点は、贈与したことが、果たして証明できるのかという点です。

支払った人がまだ生きている時には、息子は《支払ってもらったことはない》とまで主張することはないでしょう。

しかし、特別受益が問題となるのは、支払った人が死亡したときです。

そのとき《支払ってもらったという事実はない。もし、あるというなら証明してくれ》と言い出す可能性が高いです。

そのため、弁護士費用としていくら支払ったのか、また、消費者金融にどれだけ送金したのかを証明する書類があれば、大事に保存しておく必要があります。

また、仮に弁護士費用の領収書などがあったとしても、それは弁護士費用などが支払いされたという事実を証明するだけで、それをあなたが出したということを証明するものではありません。

なぜなら、弁護士の領収書は依頼者は息子ですので、息子宛に出しますし、送金も息子名義で送金されている可能性が高いはずです。

そのため、将来、特別受益が問題になった際、息子は《私が弁護士費用を支払った、私が送金したのだ》という可能性が高いです。

【今、できることとしては・・】

そのため、あなたがそのお金を出したというのであれば、その事実をあなたが元気なうちにはっきりさせておく必要があります。

息子に贈与を受けましたという書面を書かせることができればいいでしょうが、今更、そういうことも難しいかもしれません。

弁護士費用や送金の領収書などがあるなら整理して、特別受益を主張しようとする人に、生前に渡しておく必要があります。

次に息子との話の中で、消費者金融の債務整理をあなたのお金で支払いされたということを認める発言をさせるように持っていき、その会話などをICレコーダーやビデオ等で残しておき、これも特別受益を主張したい人に渡しておく必要があるでしょう。


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