大澤龍司法律事務所 相続問題無料相談ブログ

なぜ役所は動けなかったのか・・・あえて役所の視線で想像してみる

(外部リンク)千葉小4虐待死:DV相談、糸満市は女児から聴取せず 専門家「必要だった」

今回も非常に悲しい事件である。
子どもの虐待死が疑われる事件で、自治体が相談を受けていながら子ども本人の事情聴取を行っていなかった、という経過があったそうだ。
 役所が虐待の可能性について相談を受ければすぐ動くべき、というのが一般市民の感覚だろうと思うし、私もそうあるべきだと思う。
 しかし、問題は「子どもからの事情聴き取りが必要だった」かどうかではない。
なぜ役所は動けなかったのか?その理由を考えないと次には進めない。
 そこでいくつか理由を想像してみた。
 
 ①10歳の子どもの話を聞いても仕方ないと思っていた
 ②父親の虐待について確かな証拠がなかったので動けなかった
 ③そもそも母親の相談について役所内の引継ぎができていなかった

などなど。

③(引継ぎ不足)は論外の理由だが、①(子どもの話)や②(証拠がない)というのは役所も困る話だろう。
 たとえば②(証拠がない)だと、今のご時世、確たる証拠もなしに虐待を疑い子どもを呼び出せば、それを知った父親からどんなクレームを受けるか分からない。なにせ暴行や傷害にあたる疑いをかけるのだから慎重にならざるを得ない。
たとえ子どもの体にあざやケガを見つけたとしても、「遊んで転んだかもしれない」といわれれば見分けるのは難しいケースもあるだろう。
 次に①(子どもの話)も、たしかに見知らぬ大人の前でうまく話ができない子もいるだろうし、母親の都合のいい話だけをする子どももいる。(極端な例ではあるが)先日のブログでも取り上げたように、母親が子どもに嘘をつかせるケースもある。
 役所としても非常に難しい問題を抱えていることは間違いない。
 
しかし、こんなことを言ってばかりでは子どもを虐待から守れない。
 難しくとも動ける役所を作っていく必要がある。
 「役所は法律がないことを勝手にするな」というルールがある。
いわゆる法治主義というやつである。
法律がすぐに変わればよいが、どんなよい法律であっても、法改正は時間も手間もかかるし、反対の意見も当然ある。現場では、現在の法制度の中で権限を使いやすくする工夫が必要だろう。
あるいは、交渉の専門家である弁護士が、役所の担当者に対して虐待事案でどう動けばクレームを受けにくい方法で調査を進めることができるのかをコーチングする、あるいは現場の難しさを意見交換する中でうまく調査を進めるやりかたを話し合っていく方法も考えられる。役所の担当者も、うまい動き方が分かれば調査が進むのかも知れない。
課題は多いが、以前から時折聞くこの問題を早く解決できるよう願うばかりである。
(弁護士 北野英彦)

(弁護士コメント)
大澤:
昨日、テレビを見たら、殺された女の子の写真が画面に出てきた。
何回も画面でみているのだが、その度にギョッとする。
これまでにも同様の事件があったが、今回は、その子がいじめられている、暴力を受けているということを周囲に何度も伝えていたという。
少し前に、《いい子になるから許してください》というメモをして殺された子もかわいそうであったが、今回は特に《助けて!》と言っていたのに、とかわいそうでしょうがない。
さて、北野弁護士が、あえて役所の視点で考えてコメントしている。
同様に役所の方を見ながら、問題点を考えてみる。
児童虐待件数のグラフを見ると、右肩上がりで件数が急上昇している。
ところが児童相談所の職員は増加しているのだろうか。
現在、職員1人当たり50件の案件を抱えているという。
それでは十分なケアができないのではないか。
多くが、しんどさ、つらさにさいなまれ、案件が持ち込まれるたびにパニック状態になっており、現場は疲弊しきっているが実情ではないのか。
早急に職員を増員する必要があるのではないか。
次に児童相談所の担当職員は虐待問題に対処するに足る十分な資質をもっているのだろうか。
子供の心理をわかる知識や経験も必要不可欠だが、加えて親に対する説得力、物理的な力に対する体力、決断力や、そして何よりも子供を助けたいという熱意が職員に必要不可欠ではなかろうか。
そのような虐待を防止したいと思い、かつそれができる人を一人でも多く採用して、現場の人員を増員するという、それが最も急務ではなかろうか。
また、虐待された子を隔離するためには、受け入れ先が必要だろう。
施設だけではなく、ボランティアで虐待された児童を受け入れる家庭を募集することも必要だろう。
警察からかなりの人数を相談所に出向させることも考慮に値するのではないか。
そして良い人間を集めるための給料をアップするなどの待遇改善も必要不可欠だろう。
しかるにこれまでどれほどの現実的な施策がなされてきたのであろうか。
この国は一体、何をしてきたのか、これから何をしてくれるのか。
弱い者、困った者にもっと目を向けてはどうか、その努力が足りないのではなかろうか。
かわいそうと言っているだけでは、まだまだ、同じようなことを繰り返すだけだろう。
これからも、テレビを見る度にギョとするような出来事が続きそうで何とも悲しい。
最後に弁護士としてなにかできないかと考えた。
弁護士は誰かの依頼がないと動けない。
今回のケースは、母親もDVを受けていたようである。
もし、DVを受けている母親が安心して弁護士に相談できるようなシステム(あるいはそれと連携するボランティア団体などでもよい)があれば、弁護士が登場することができたであろう。
母親の話を聞けば、弁護士としてはまず間違いなく、子供のことも話題にするはずであり、子供の救済の糸口が開かれたのではなかろうか。
具体的に言えば、母親から依頼を受けた弁護士は、児童相談所や警察などに保護や訪問をするように働きかけをし、また、裁判所に人身保護請求をするなどの可能な手段で子供を確保し、安全な退避場所へ行ける手助けができたのではなかろうか。

(岡井)
本当に痛ましい事件である。
親から虐待を受けて、助けを求めても届かずに亡くなった子供の絶望感を考えると、胸が張り裂けそうな思いである。

北野弁護士の書いている、役所の側で見た問題点は、そのとおりかもしれない。
一般的な事件では、あいまいな証言以外に証拠がなければ、何も動けないというのは事実である。
しかし、こと子供の虐待、特に親からの虐待の事案については、介入しすぎくらいでちょうどいいのではないか、と個人的には感じてしまう。
子供の世界は、思っているより狭い。
親から虐待を受ければ、相談できる大人は学校の先生くらいしかいないという子供は少なくないのではないかと思う。

では、どのようにして介入するのか。
今、介入していける体制が整っているのか。
それがこの問題の一番難しいところである。
大澤弁護士の言う、圧倒的な人手不足という問題もあるだろうし、「こういうSOSがあったらこう動く」というようなマニュアルがないことも問題であるように思う。
マニュアルというと、柔軟性がなさそうで聞こえが悪いが、人手がなく忙しい中では、ある程度の決まりがないと、現場の職員としては動きにくいのではないだろうか。

それから、弁護士としては、大澤弁護士の言うように、だれかから依頼を受けなければ動けない。
仮に両親から虐待を受けているケースや、虐待をしている親にもう片方の親が逆らえず、弁護士への依頼が期待できないケースでも、たとえば学校や市町村、児童相談所の側の弁護士が働きかけ、警察等とも連携して、虐待をする親から子供を遠ざけることはできなかったのだろうか。
何かできることはなかったのかとの思いが募る、とても悲しい事件である。

(畝岡)
本件がとても痛ましい事件であることは間違いない。大澤弁護士も言うように、少し前に、《いい子になるから許してください》というメモをして殺された子もおり、近時はこのような事件が続いている。発生してしまったことに悲痛な思いがあるが、悲痛に感じる以上に今後、このようなことが起きないように対策を講じることが必要である。
私も弁護士目線で書かせていただくと、上記のとおり弁護士は誰かの依頼を受けなければ動けない。また、一般市民の感覚として弁護士に相談することは非常にハードルが高いと感じられているように思う。ましてや、子供にそのような発想はないであろう。
そうであるなら、(ここが非常に困難なのであるが)学校や市町村、児童相談所が弁護士と連携し、身近に弁護士に相談できるような仕組みを整えるべきではないだろうか。
本件においても、弁護士が早期に介入していれば、少なくともこのような結果になることはなかったはずである。

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