大澤龍司法律事務所 相続問題無料相談ブログ

遺言に従って預貯金を相続する際の手続【Q&A №678】

 

 

【質問の要旨】

・銀行にある遺産を相続人二人で分割したい。
・公正証書遺言には「二分する」とだけ記載があり、具体的な口座の指定等はない。
・遺産分割協議書は、司法書士に「必要ない」と言われたので作成していない。
・相続人のうち一人が不在の時は相続手続きできないのか?

 

 

【回答の要旨】

・具体的な分け方については遺産分割協議が必要
・銀行によって手続きに必要な書類は異なるので確認が必要

 

【ご質問内容】

銀行にある資産を相続人二人で分けるのですが、公正文書には二分するとだけの記載がありいくつかある銀行のうちどの銀行からどうするとか具体的な記載はありません。
司法書士さんは分割協議書は必要ないと言われたので作っておりません。
もし銀行のある相続人Bの町に相続人Aが行くのが困難な場合、相続人A が委任状などを提出して相続人Bと司法書士さんで分割はやってもらえないのでしょうか。
相続人Aの銀行通帳などは相続人Bに預けてあります。
相続人は二人だけで、二人の間には相続に関して問題はありません。
司法書士さんは二人ともそろっていなければ銀行からの相続はできないと言われました。
A から委任状を出しても無効だと言われました。
Aが不在では全くできないのでしょうか。
あるいは銀行によってできるとかできないとかがあるのでしょうか。
では病気とか動けない場合などにはどうなるのでしょうか。
よろしくお願いいたします。

(相続銀子)



 ※敬称略とさせていただきます。

【具体的な分け方については遺産分割協議が必要】

「公正文書」というのが、公証役場で作成された公正証書遺言のことを指していると解釈して、回答させていただきます。
公正証書遺言に、「A及びBに2分の1ずつ相続させる」と書かれているのみで、具体的にそれぞれがどの財産を相続するのかについての記載がない場合、金融機関としては、だれに払い戻しをすればよいのかわかりません。
また、仮にそれぞれがどの財産を相続するのか明らかでなくても、解約する権限が誰にあるのかが明らかであれば、金融機関は権限を持つ者に払戻をすることができますが、上記の記載だけでは、それも明らかになっていませんので、金融機関としては払い戻しができません。
そのため、相続人らは、話し合い(遺産分割協議)をして、どの財産をどのように分割するか決める必要があります。
あなたが書いておられるように、相続人Aに手続きをすべて任せることも可能ですが、その場合には、相続人Aが信頼できる人であっても、「すべての財産をAとBがそれぞれ2分の1ずつ分割する」「相続人Aが代表して払戻手続をし、完了次第Bに2分の1相当分を支払う」というような内容の遺産分割協議書を作成しておくのが望ましいです。

【銀行によって手続きに必要な書類は異なるので確認が必要】

実際に払戻手続をする際に、銀行に提出しなければならない書類は、銀行によって異なります。
遺産分割協議書が必要な金融機関もあれば、金融機関ごとに独自の「相続手続依頼書」というような書面に相続人全員が署名押印することを求める金融機関もあります(一般的な「委任状」ではなく、金融機関ごとに必要な書面は異なりますので、各金融機関に確認する必要があります)。
そのため、相続人Aに病気などの事情があって銀行まで行くことができないのであれば、ABそろって銀行へ行かなくとも、上記「相続手続依頼書」などの書面で相続人Bを代表相続人と指定すれば、相続人Bがすべての払戻手続などをすることが可能です。
この場合、金融機関から払い戻された預貯金は、相続人B名義の口座に一旦振り込まれ、相続人Aとしては、相続人Bから2分の1相当額を振り込んでもらうことになります。
なお、遺産分割協議書であれ相続手続依頼書であれ、実印での 押印が必要となり、印鑑登録証明書も添付しなければならないことが通常です。
また、被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで)や住民票除票、相続人全員の戸籍謄本などの戸籍関係については、どの金融機関でも必要になります。

(弁護士 岡井理紗)


義父の交際相手に住居から出て行ってもらい生活保護を申請したい【Q&A №677】

 

 

【質問の要旨】

・入院中の義父は要介護5で意思疎通が取れない状態である。
・義父と同居している女性が通帳など管理し、ほとんどお金は残っていない。
質問① 義父の生活保護を申請するには?
② 女性に義父の住居から出て行ってもらうには?
③ 義父の年金を使われないようにするには?
④ 相談者の夫が、義父の入院費の保証人になっているので心配である。

 

 

【回答の要旨】

① 成年後見の申立てを行い生活保護の申請をしてもらうことを考える。
    なお、生活保護の申請は本人以外であっても可能
② 義父が居住を認めているのなら、他人が退去を求めるのは困難だが・・
③ 義父の年金は成年後見人に管理してもらえる
④ 保証契約の合意解除を病院に求めることが考えられるが、実現は困難

 

【ご質問内容】

72歳の義父が2月に入院していて、意思疎通の取れない要介護5の状態です。
義父には10年以上前から一緒に住んでいる年上の女の人がいますが、その方は住民票なども移さず、書類上は息子さんと同居で扶養されているという風になっているようですが、実際は去年まで働いていた義父の収入と年金とで暮らしていたと思います。
しかし義父の年金は少なく月5万ぐらいのようで、この先医療費や介護施設のお金を払っていけなくなりそうなので、生活保護を申し込みたいのですが、一緒に住んでいる女の人は申請したくないようですが、かと言って義父の面倒も入院費も払うつもりもなさそうです。
通帳など全てその同居人が管理していますが、もうほとんどお金は入っていないいといいす。
実際に財産などは無いと思いますが、府営住宅で家賃が安いので同居人は出て行きたくないようです。
しかし、その人が居ると生活保護も申請出来ないので困っています。
出ていってもらう事は出来ませんか?
この先、義父の少ない年金さえも使われてしまうのでしょうか?
入院した時に入院費の保証人に夫がなっているので心配です。

(ホワイティ)



 ※敬称略とさせていただきます。

【①成年後見の申立てを行い生活保護の申請をしてもらう】

あなたの義父が意思疎通のとれない状態であれば、義父が府営住宅の賃貸借契約の解除や預金の管理といった法律行為をすることはできません。
これらの行為をするには、あなたの夫が家庭裁判所に成年後見の申立てをするといいでしょう。
なお、成年後見の申立には、申立ての費用は裁判所に支払う費用だけであれば通常は1万円以下であり、申立てから選任まで普通で3カ月かかります。
あなたの夫が成年後見人になれば、義父の生活保護申請をすればいいでしょう。
又、成年後見人は義父の財産の管理や介護や入院に関する契約の締結をすることもできます。
なお、成年後見人は家庭裁判所が選任しますが、通常、子供など親族が就任しますので、法律上の妻ではない義父の交際相手が成年後見人となる可能性は低いです。
参考までに言えば、生活保護を受ける本人以外の人、例えば扶養義務者又はその他の同居の親族であれば申請を行うことができます(生活保護法第7条)。
  
【②退去を求めることは困難だが・・】

義父が府営住宅を賃貸し、そこに女性と同居しているという時でも、その同居が義父の意思に基づくなら、女性に退去を求めることは困難です。
ただ、義父に判断能力がなく、後見人が選任されたのなら、後見人が退去を求めるということもあり得ないではありません。
ただ、女性と同居することが経済的に負担でもないというのなら、後見人といえども退去をもとめるのは困難だと思われます。

【➂義父の年金は成年後見人に管理してもらえる】

上記の通り、成年後見人が選任されると、義父の年金は成年後見人が管理しますので、義父の交際相手が勝手に義父の年金を使うといった行為は出来なくなります。

【④病院が保証契約の合意解除に応じる可能性は低い】

あなたの夫が義父の入院費について、病院との保証契約を一方的に解除することはできません。
また、病院と話し合いをして、保証契約を合意解除するという方法もありますが、病院が合意解除に応じる可能性は低いでしょう。

(弁護士 石尾理恵)


遺産分割協議を無効にできないか【Q&A №676】

 

 

【質問の要旨】

・長男の発案で、マンションを建設。ローンは父名義。
・父の死亡後は、母が相続。
・母の死亡後、長男が「ローンの返済にすべての財産がいる」と言ったため、
遺産分割協議書にサインしたが、ローン以上の遺産があったことが判明。
・遺産分割協議を無効にできるか?

 

 

【回答の要旨】

・遺産分割協議書にサインをすると、その内容が有効となる
・遺産分割協議を無効にするのは非常にハードルが高い
・ハードルは高いが、錯誤があったことの証拠を探してみる

 

【ご質問内容】

相続人の両親が生前、長男が固定資産税・相続税対策のために、マンションを建設することを考案した。
何十年後に元が取れると言って説得し、建設土地の名義人である父親にローンを組ませ、その後、母親が相続し、10年前母親が亡くなった後、長男がローンの返済に全ての財産がいると言って、長男がすべてを相続するという遺産分割協議書にサインをさせられる。
分割協議後の長男の贅沢な暮らしぶりやローン以上の資産が財産としてることが判明。
遺産分割協議を無効としたいのですが、可能でしょうか。

(syu)



 ※敬称略とさせていただきます。

【遺産分割協議書にサインをすると、その内容が有効となる】

たしかに、あなたには母の遺産のうち、自分の相続分に相当する分を相続する権利を持っていました。
それが、「長男にすべて相続させる」という内容の遺産分割協議書にサインをしたことにより、相続できなかったことになります。
ただ、あなたが既に遺産分割協議書にサインをして実印を押してしまったのであれば、その内容が有効であり、その内容が相続分からして妥当な分け方になっていなかったとしても、対外的には、「長男にすべて相続させる」という内容が有効になってしまいます。

【遺産分割協議を無効にするのは非常にハードルが高い】

とはいえ、遺産分割協議を無効にすることがまったく不可能というわけではなく、遺産分割の重要な事実について錯誤があった場合には、錯誤による無効が認められる場合もあります。
たとえば、白紙の遺産分割協議書にサインをさせられ、後で長男が内容を埋めて完成させた、という場合、白紙の遺産分割協議書にサインをしたということを立証できれば、無効になる可能性があります。
それ以外にも、長男から「相続財産はこれだけしかない」と虚偽の報告をされたために遺産分割協議書にサインをしたが、実は他の財産の存在を隠されていて、後で他の財産があることがわかったというような場合にも、無効にできる余地はあります。
ただ、この場合には、あなたの方で、長男の虚偽報告内容を立証する必要がありますし、あなたが遺産内容の確認を怠った場合には、あなたに重過失があると判断され、錯誤無効が認められない場合もあります。

【ハードルは高いが、錯誤があったことの証拠を探してみる】

以上の通り、いったん署名をして実印を押した遺産分割協議書を無効にするのは、非常にハードルが高いです。
今回のケースでも、長男が遺産に関する情報を独り占めしてあなたに確認できないような状態にし、遺産内容についてあなたに虚偽の事実を述べた事実を証明しない限り、無効にすることはできないと考えるべきです。
そのため、当時長男にどのような情報を与えられていたのか、当時知らなかった新しい財産としてどのような財産があったのかを踏まえ、上記の点を証明できる資料(当時のメールや遺産分割協議にまつわる書面など)があるかを確認すべきでしょう。

(弁護士 岡井理紗)


事実婚の夫婦がお互いのことを任せるための書面を作成したい【Q&A №675】

 

 

【質問の要旨】

・未入籍の夫婦(お互い独身籍)。
・「お互いの全部をお互いに任せます」との一筆を交わしたいが、どのようにすればいいか?

 

 

【回答の要旨】

・婚姻していないことで紛争が生じることがある
・生前の対策は任意後見で対処できる
・葬儀でもめないために死後事務委任契約を定める
・遺産の相続は紛争必死であるから、遺言書で対処する
・遺言書は公正証書遺言でする

 

【ご質問内容】

主人とは25年ほど一緒に生活をしておりますが籍は入れておらず別世帯となっております。
お互い独身籍です。
そこそこ年齢も重ねており入院経験もあるので今後のことで色々と心配な事がありますのでお互いの全部をお互いに任せますとの一筆は交わして置きたいと考えております。
その時はどのような文章を作成しておけば大丈夫でしょうか?宜しくお願い致します。

(junjun)



 ※敬称略とさせていただきます。


【婚姻していないことで紛争が生じることがある】

婚姻届出をして法律上の夫婦になった場合は簡単に解決することでも、同居だけのパートナーの場合には、相手のパートナーの親族との間で紛争が生じることがあります。
例えば、
① 生前に同居のパートナーが判断(意思)能力を失ったときに、もう一方のパートナーが財産管理をしていれば、《あなたはどういう権限で財産を動かしているのか!》という話が持ち上がることも考えられます。
② また、死後には次のような問題も生じます。
葬儀の主催者やその費用をどこから出すかについて、親族の方から《あなたはどんな権限があって、葬式をするのか》という詰問も考えられます。
また、死亡した同居のパートナーの残した動産などの廃棄処分なども、親族の方からの妨害でできないことも想定する必要があります。
③ 遺産分割をめぐっては、同居のパ―トナーは現在の法律では相続人ではありませんので、紛争は必至だと考えておく必要があります。

【生前の対策は任意後見で対処できる】

ある人が判断能力を失ったときは、成年後見人の選任ができます。
ただ、事実婚の場合は成年後見の申立権がなく、親族によって申立てられたとしても、通常の場合には、裁判所は家族や親族の中から後見人を選びます。
同居のパートナーであるあなたが後見人になりたいと言っても、裁判所は親族(推定相続人)の意見を聞きますので、その段階で反対が出てくれば、裁判所はあなたを後見人には選ばないでしょう。
長年連れ添ったパートナーの面倒を見たいというのなら、是非、任意後見契約を締結しておくといいでしょう。
また、判断能力を失わない場合でも、緊急な入院などの場合にそなえて、財産管理契約を結んでおくことも必要です。

【葬儀でもめないために死後事務委任契約を定める】

葬儀はいつ発生するかもしれない緊急事態です。
そのため、同居のパートナーに葬儀の手配などをしてもらいたいなら、遺言書で葬儀の主催者を定め、その費用をどこから出すかも明らかにしておく必要があります。
遺言書に葬儀の重要な点について書き、細かなことはパートナーとの間での死後事務委任契約で定めておくといいでしょう。

【遺産の相続は紛争必死であるから、遺言書で対処する】

現在の法律では、同居のパートナーは相続について何らの権利もありません。
そのため、法定相続人との間での紛争が必至です。
このような紛争を回避するために、遺言書を作成し、《遺産は同居のパートナーに》と明らかにしておく必要があります。
また、遺言書などでは大まかなことしか書けません。
そのため、財産の処理についての細かなことは死後事務委任契約で定めておくといいでしょう。

【遺言書は公正証書遺言でする】

遺言書については、偽造したなどと言われないために、公証役場で作成する公正証書遺言にする必要があります。
公正証書遺言なら、自筆遺言のような裁判所での検認の手続きが不要ですし、後でその効力を覆される場合も少ないです。
また、相続開始後、早期に遺言の執行に着手するために、遺言書の中で、遺言執行者をパートナーに指定しておくとよいでしょう。

同居のパートナーについては、法律で保護される場面は少ないです。
法律的な知識を活用して、できる限り、自分たちの身を守る方策を考えていく必要があるでしょう。

(弁護士 大澤龍司、弁護士 石尾理恵)

 

 

 

 

 


成年後見人に対する請求の可否【Q&A №674】

 

 

【質問の要旨】

・実母が認知症になり、5年前に後見開始申立をし、司法書士が後見人になった。
・15年前に実母に預けた200万円は返してもらえるか?(預り証は相談者が保管)
・相談者が裁判所に振り込んだ費用10万円は返却されるか?
・後見人は「実母が入居している施設を教える必要がない。弟に聞いてくれ」と言うが、これは普通のことか?

 

【回答の要旨】

・母に預けた200万円は、成年後見人に対して請求する
・後見申立時の費用は、原則申立人であるあなたの負担になる
・入所施設を教えるかは後見人が身上監護の観点から判断する

 

【ご質問内容】

跡取りの弟夫婦と同居いたしてた実母6年前より軽い認知症を発症、見舞う度々に劣悪な環境 虐待を含め。
裁判所に5年前、後見人を申請、現在,司法書士後見人がついており金銭は弟夫婦の自由にはできない環境になっておりますが施設の場所等は弟夫婦と後見人のみが存じとります。
従いまして孫はおろか実娘さえ合うことはできない状態です
15年前母親に預けた200万がございます。
母親の捺印がございます預かり証は私が保管いたしておりますが夫のがん治療のため物入りとなり預けた金銭の請求をいたしたいと存じますが可能でしようか?
又裁判所に母を認知症かと診断するときに申立人の私が10万ほど裁判所に振り込みましたがそのお金は返却されますでしょうか?
後見人は実母が入居している施設を教える必要がないとのことですがこれは普通のことでしようか?
後見人は今は虐待がないのだからいいでしょう知りたければ弟さんに聞いてくださいと。身上監護と金銭管理がしてほしく後見人をお願いいたしましたが目的とはかけ離れてしまいました。
よろしくお願いいたします。

(リンゴ)



 ※敬称略とさせていただきます。

【母に預けた200万円は、成年後見人に対して請求する】

まず、15年前に母に預けた200万円の預け金については、預かり証を示して成年後見人に対して返還請求をすべきです。
預け金は、返還期限から10年が経過すると、消滅時効により返還請求ができなくなりますが、預かり証に返還期限の記載がなければ、あなたが母に「返して」と言うことが可能になったときから時効が進行しますので、返還請求ができる可能性はあります。
この件は、成年後見人に請求してみるとよいでしょう。

【後見申立時の費用は、原則申立人であるあなたの負担になる】

次に、成年後見申立にあたってかかった費用についてですが、成年後見申立を親族が行った場合は、申立を行った親族が申立費用(申立手数料、通信用の郵券、鑑定費用、登記手数料その他申立事務に要する費用)を負担することになっています。
もっとも、成年後見申立時に、申立書の「申立の実情」欄に「非訟事件手続法28条により本人に費用を負担させる旨の裁判を求めます」と記載していれば、当然に裁判所の判断がなされますので、その判断の内容によっては、母に一部費用を負担してもらうことが可能になる場合もあります。
ただし、必ず負担してもらえるというわけではなく、裁判所の判断によりますので、注意が必要です。
今回の件では、もしかすると、申立時に上記記載をしなかったのかもしれませんが、その場合にも、一度裁判所に費用負担の裁判を求めたいと相談してみることをお勧めします。

【入所施設を教えるかは後見人が身上監護の観点から判断する】

最後に、後見人が、母の入所している施設を教えてくれないとの点ですが、あなたの立場からすれば、母に会えず、財産も費消されてしまうという問題があるからこそ、成年後見の申し立てをしたにもかかわらず、施設を教えてくれないのではまったく意味がないとのお気持ちであろうと思います。
ただ、親族に母の入所している施設を教えるか否かは、後見人と裁判所が、被後見人である母の身上監護を行うにあたって、どのような選択をするのが母のためになるかを考えて判断します。
私個人としては、一般的には、母のためを思えば、娘にも入所施設を知らせて、少しでも会えるようにしてあげるべきではないかと思いますが、後見人は後見人で、本件についての諸事情を考慮して、母の入所施設を教えるべきではないと判断したのだと思われます。
そのため、まずは後見人に対して、どうして施設を教えられないのか、その理由を文書で回答してもらうべきでしょう。
その上で、その回答が納得できないものであった場合には、家庭裁判所に対し、「後見人にこのような問題があるので、家裁の方でも事実関係を調べ、必要に応じて後見人に注意して下さい。」という趣旨のお伺いを立てるという方法もあります。
この申し出をする場合には、後見人から得た回答書も添付して裁判所に提出するとよいでしょう。

(弁護士 岡井理紗)


息子の妻による年金の使込みと不当利得【Q&A №673】

 

 

【質問の要旨】

・祖母が息子夫婦と同居。
・息子の妻が、祖母の年金を全額出金し、使途の報告もない。
・遺言書作成を提案したが断られた。
・息子の妻が使い込んでいる祖母の年金を取り戻せるか?

 

 

【回答の要旨】

・祖母が返還請求できるが、現実には困難な情勢かもしれない
・相続開始後であれば、相続人のあなたの母が請求できる
・今後、祖母の財産を守る方法として成年後見人制度の利用が考えられる
・相続人である母として今すべきことは証拠集めです

 

【ご質問内容】

二世帯住宅で一階には祖母一人、二階には息子夫婦が住んでいます。
祖母は買い物、ご飯の支度を同居の嫁に依頼しているのですが買い物を頼んでも『売り切れていた』『買いに行けない』等と言われるため孫の私が月一回程度祖母の家を訪ね買い物をしています。
そして夜とお昼は『お金を払わないと作ってもらえない』と祖母は毎月数万円を払っているそうです。
ですが嫁が用意するのは惣菜やレトルト。
温めるだけのうどんに3切れのカステラの日も。栄養も愛情もないご飯を祖母は一人で食べています。
嫁は習い事やアルバイトや実家に帰るなどほとんど家にいません。
とても祖母の世話をしているとは言えないし、祖母が大事にしてもらっていない事はよくわかります。

年金も全額嫁が出金し、何に使っているのか報告もないと祖母は言っています。
以前祖母や実の娘(私の母)がお金の事を聞くと怒り出したそうで、旦那すら怖くて口を出さない状況になっています。

以前祖母は『死んだらお金は全部嫁がとるだろうね。あの人は怖い人。』と言っていました。
遺言書を提案したのですが高齢の母には面倒だと断られています。
祖母もボケはじめ、体調も悪く、この先の相続などを考えても嫁がいいようにするのが目に見えており許せません。

嫁が使いこんでいる祖母の年金を取り返す事は出来るのでしょうか?

(鳥越孫)



 ※敬称略とさせていただきます。

【祖母が返還請求できるが、現実には困難な情勢かもしれない】

祖母は、息子の妻に勝手に使い込まれた年金について、返還請求(根拠は不当利得返還請求又は不法行為の損害賠償請求)をすることができます。
ただ、祖母が生きておられますので、その請求ができるのは祖母だけです。
もっとも、本件では、祖母は遺言書の作成ですら面倒であると拒んでいる状態であり、祖母に返還請求する意思があるか疑問です。
むしろ、祖母の置かれている状況から見れば、返還請求は難しいかもしれません。

【相続開始後であれば、相続人のあなたの母が請求できる】

祖母が亡くなられた場合、あなたの母は法定相続人になります。
そのため、祖母の持っているその息子の妻に対する請求権も相続され、法定相続分の限度で請求することが可能です。
また、息子の妻の使い込みに、息子が協力しているのであれば、息子も共同不法行為をしたものとして賠償責任を負いますので、母としては息子に対する請求も考えられるといいでしょう。

【今後、祖母の財産を守る方法として成年後見人制度の利用が考えられる】

現在、祖母の判断能力が低下してきているということですが、まったく判断能力がなくなれば、成年後見制度(補助、補佐、成年後見)を利用して、家庭裁判所によって選任される弁護士や司法書士といった専門家等に祖母の財産管理を委ねることが考えられます。
母からの申立ても可能ですので、検討されるといいでしょう。
ただ、祖母が返還請求を行う場合や成年後見制度を利用する場合、祖母と息子の妻は同居しているので、息子やその妻との関係が悪化し、祖母が家に居づらくなること等が考えられます。
今、一番に考えるべきは、祖母の残されたこれからの生活を実りあるものとすることでしょう。
その観点からいかなる対応が望ましいのかを検討されるといいでしょう。

【相続人である母として今すべきことは証拠集めです】

最後に、母としては、将来の遺産分割を考え、現段階で祖母にどのような預貯金があるのか、また、無断で出金されているのはどれなのかという証拠集め(祖母からの聞き取り、預貯金通帳のコピーなど)をしておき、将来の発生するかもしれない争いに備えておかれるといいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)


預金使い込みと相続税【Q&A №672】

 

 

【質問の要旨】

・認知症で施設に入所中の父の貯金から、弟が不正に出金している(10年間で4000万円)。
・不正出金については、黙認するつもりでいる。
・父の死亡時、不正出金についても相続税の課税対象となるか?
(弟は相続税を支払えない見込みである。)

 

 

【回答の要旨】

・法律上、父の有する不当利得返還請求権は遺産になり、相続税の課税対象になる。
・遺産に入れると相続税の基礎控除額にほぼ匹敵する額になるので、税理士に相談し、具体的な相続税申告のための対策を検討するのが望ましい。

 

【ご質問内容】

長文ですが、よろしくお願い致します。
まず、被相続人・相続人としての家族関係は、父、私(兄)、弟の3人になります。母は他界しております。

父は重度の認知症と診断されてから今に至るまでの10年間、施設にお世話になっております。
(後見人制度は使っておりません)
父の入居から今に至るまで、弟が父の貯金をキャッシュカードを使って勝手に引き出してることがわかりました。その額は10年間で4千万円になります。

弟に事情を聞くと、生活費や旅行代として弟の家族の為に使っていたことがわかりました。
また、父に無断での使い込みであり、贈与でないこともわかりました。

弟には持病があり、収入もかなり低く、また子沢山であることから経済的に困窮していることを、私は知っていますので、使い込みを責めるつもりはありません。また、将来父が亡くなり相続が発生する際にも不当利益返還請求などをするつもりもありません。むしろ、甥や姪達の為に今後も使い込みを黙認するつもりです。
よって、相続争いにはなりません。

ここからが質問となります。
父が亡くなった際の相続税を懸念しております。
既に使い込んだ金額も相続税の課税対象になるのでしょうか?
対象となる場合、弟は相続税を支払うことができません。ご多忙の中恐縮ですが、ご教示をお願い致します。

(もんじろう)



 ※敬称略とさせていただきます。

ご相談内容は、相続税に関するものです。
弁護士は法律の専門家ですので、主として法律面からの回答をします。
税金の専門家は「税理士」ですので、正確なことは税理士に相談されるよう、お勧めします。

【法律上は、父の有する不当利得返還請求権は遺産だと言わざるをえない】

弟が父の財産を無断で使いこんだことが間違いないのであれば、法律上、父は不当利得返還請求権という債権を有していることになり、この権利は遺産を構成することになります。
父からもあなたからも、不当利得返還請求をするつもりはないとのことですが、権利者が請求をしなくとも、権利は存在します。
そのため、税務署から遺産だと言われれば反論はできないでしょう。

【専門家である税理士に相談を】

前項に記載したように、法律上はこの請求権も遺産になりますので、相続税を申告するのならこの権利を加算する必要があると言わざるをえません。
ただ、父の相続人は2名ですので、相続税の基礎控除額は4200万円になります。
不当利得請求権額4000万円は、この基礎控除額にほぼ匹敵する額です。
他に高額な不動産などの遺産があれば、かなりの多額の相続税を支払う必要があります。
特に弟が税の支払いができないということになると、あなたが税を全額負担するということになります。
《ここからが税の専門家である税理士の出番になります》
そのため、どのような税務申告をしたらいいか、相続税をできるだけ安くする方法はないか、税理士の知恵を借りるために税務相談をなさるといいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)


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