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大澤龍司法律事務所 相続問題無料相談ブログ

代位登記と遺言書の効力【Q&A №662】

 

【質問の要旨】

・父死亡。公正証書遺言では、自宅不動産は長男が相続。
・自宅の固定資産税未納のため、市が債権者代位により法定相続分で相続登記。
・長男が死亡し、公正証書遺言により長男の子が自宅を相続。
・長男の子が、自宅を自分の名義にするため、抹消登記請求。
・相談者は、長男の子から解決金を得るため、共有物分割請求をすることはできるか。
・なお固定資産税は、長男及び長男の子が分納。

【ご質問内容】

12年前に亡くなりました父は公正遺書を作成しています。
そこでそこに明記された相続人で貯金は分配済みです。
今問題になっておりますのは実家です。
公正書により長男が相続するはずでしたが未登記のうちに固定資産税未納で市により強制代位登記をされ当時の法定相続人5人が当分割で共同相続されています。(権利登記簿による)
長男の死により今孫(長男の子)が自分の名義にするため抹消登記のための手続きを要請してきました。
なお、固定資産税は分納しておりわたしたちへの和解金次第で完済するかどうか決めるようです。

わたしとしては固定資産税の5分の1の和解金のために共有物分割請求訴訟をしたいのですが可能でしょうか?

なお、実家は公正遺書により孫に遺贈すること、となっております。
私は代位のために債権者でもない一法定相続人ですが実家の5分の一の権利が代位されています。
なお私以外にもうひとりの法定相続人が和解金請求を長男の孫に要請しています。
債権者でない私の立場でできることをご教示下さい。
土地の鑑定は必要ですか?
よろしくお願いします。

 

(かっさん)


 ※敬称略とさせていただきます。

【ご質問内容の整理】

ご質問内容を以下の通り整理して回答いたします。
 ① 父が死亡した。父の公正証書遺言によれば、自宅不動産は長男が相続することになっていた。
 ② しかし、自宅の固定資産税が未納の状態であったため、市が債権者代位により法定相続分で相続登記をしてしまった。
 ③ 長男が亡くなり、長男の公正証書遺言により自宅を相続することになった長男の子が、自分の名義に戻そうと、抹消登記請求をしようとしている。
 ④ 父の相続人としては、長男の子から解決金を得るため、共有物分割請求をすることはできるだろうか。
 ⑤ なお、実家の固定資産税は、長男及び長男の子が分納で支払っている。

【他の相続人が遺言に反した代位登記を前提に権利を主張することは難しい】

まず、結論としては、遺言の存在を知らない第三者ならまだしも、遺言の存在を知っている他の相続人が、遺言に反した代位登記を前提に権利を主張することは、法的には難しいと思われます。
以下、その理由を説明します。

【債権者代位による相続登記とは】

通常、相続登記をする場合には、相続人が申請するのが原則です。
しかし、相続人又は被相続人の債権者が、自らの債権を保全するために登記申請をすることも、例外的に認められています。
今回のご質問の事案でいうと、固定資産税の支払請求権を有する市が、相続人らの財産を差し押さえるため、まずは法定相続分通りに相続登記をしたということです(おそらくその後、市による差押え登記もされていると思われます)。

【長男は、遺言記載の事項を他の相続人に対して主張できる】

以上の通りの代位登記の仕組みからすると、法定相続分通りの代位登記がされているとしても、実体としては遺言書どおり、自宅は長男(長男が亡くなった後はそれを引き継いだ長男の子)のものです。
そのため、あなた方他の相続人が、相続登記に基づいて権利主張をすることはできません。
ご質問によると、共有物分割請求を考えておられるとのことですが、上記の通りあなた方は所有権等の権利を有しているわけではありませんので、「共有」の事実がなく、共有物分割請求はできません。

【ただ、長男の子から解決金を支払ってもらうことはありうる】

もっとも、ご質問によると、長男の子は抹消登記請求をしようとしているようです。
抹消登記をする際には、被相続人を登記権利者(実際には真実の相続人である長男の子)、相続登記の名義人を登記義務者として共同で申請する必要があります。
そのため、長男の子としては、相続登記の名義人であるあなた方の協力なしには抹消登記をすることができず、協力が得られなければ訴訟を提起して判決を得て、抹消登記をすることになります。
したがって、あなた方としては、この手続きに協力する代わりに、解決金としていくらかの金銭(長男の子が訴訟をする際には弁護士に依頼する必要があると思われますので、その弁護士費用相当額くらいが解決金として妥当なところかと思います)を支払うよう、長男の子に対して求めるとよいでしょう。
また、もしもあなた方が実家の固定資産税の一部でも負担してきた事実があるのであれば、あなた方は長男の子に対して、支払った固定資産税の返還を求める請求(不当利得返還請求といいます)をも合わせて行い、解決金や固定資産税分の支払があれば抹消登記に協力するという姿勢をとられるとよいでしょう。


相続法改正11 相続人以外の者の貢献を考慮するための方策

【相続人以外の親族が被相続人の療養看護等をしたとき、金銭請求ができるようになりました】

たとえば、被相続人の長男の妻が長年介護をするというような事案は、よくあります。
しかし、これまでの民法では、被相続人の遺産を相続できるのは長男を含む相続人だけで、長男の妻自身には遺産をもらう権利はありませんでした。
これでは、相続人以外の親族による介護などの貢献が報われません。
そのため、今回の改正により、相続人以外の親族が、被相続人の介護や療養看護などを無償でしていた場合、相続人に対して金銭の支払いを請求できるようになりました。

【たとえば、長男の妻が長年介護をしていたケース】

例えば、被相続人の長男の妻が長年の介護を頑張ってきた事例で考えてみましょう。
長男の妻は親族ですが、相続人ではありませんので、通常は遺産をもらえない立場です。
それでも、被相続人の死亡時点で長男本人が健在であれば、長男の相続分を増やすことができる場合もあります。
しかし、もし被相続人より先に長男が亡くなっていたら、それすらもできません。
これでは、長男の妻の苦労があまりに報われず、不公平が大きいという問題が指摘されていました。
そこで、今回の改正で、長年無償で介護してきた長男の妻などの親族は、次男や長女などの相続人に対して、金銭(特別寄与料)を請求できるようになりました。

【特別寄与料の請求の要件】

特別寄与料の請求をするには、まず、被相続人に対する療養看護や介護、その他労務の提供をしていたことが必要です。
現在のところ、介護や看護が主に想定されているようですが、不動産などの財産管理や事業のサポートも含まれると考えられます。
また、これらは無償でやっていたことが必要で、被相続人から対価や報酬を受け取っていた場合には適用されません。
加えて、被相続人の財産の維持または増加に貢献したことも必要になります。

【特別寄与料の金額の定め方】

特別寄与料の金額と請求は、原則として当事者間での協議で決まりますが、協議が調わないときは、家庭裁判所に決定してもらうことができます。
このとき、家庭裁判所は、寄与の時期、方法、程度、相続財産の額、その他一切の事情を考慮して特別寄与料の額を定めます。
この算定にあたっては、相続人が自ら被相続人に対する療養看護を行った場合(寄与分といいます)と同様の算定方法がとられると考えられており、具体的には、以下のような計算式となります。

《計算式》
特別寄与料=第三者の日当額×療養看護日数×裁量割合

このうち、第三者の日当額とは、ヘルパーさんなどの第三者に療養看護をしてもらった場合にかかる日当額を目安にするとされていますが、介護報酬基準額を用いるという考え方もあります。
裁量割合とは、専門家(有資格者)に頼んだ場合よりは費用を控えめに計算するため、0.5~0.8を乗じて、寄与料を減額することになります。
たとえば、長男の妻が、被相続人を2年間にわたり、1日1時間程度介護していたという場合、身体介護(排泄、食事介助、入浴等)の介護費用がだいたい1時間あたり6000円として計算すれば、
  6000円×365日×2年間×0.7(裁量割合)=306万6000円
と計算され、介護をした長男の妻は、他の相続人らに対し、約300万円を特別寄与料として請求できるということになります。
ただ、家庭裁判所で判断をしてもらうことになれば、どの程度の介護をどのような頻度で何時間程度していたのかを何らかの形で立証することが必要になります。
そのため、日頃から介護日記をつけたり、関連する出費のレシートなどを保管したりしておくと良いでしょう。

【この改正の施行日は、2019年7月1日です】

この、新しい特別寄与制度の施行日は、2019年7月1日です。
相続開始時が2019年7月1日以降であれば、改正法が適用されます。


相続法改正10 相続財産に対する差押の効果見直し

【父に借金があった場合に問題となる

相続は財産も承継する代わりに、借金など負の財産(相続債務)も承継します。
今回はこの相続債務に関する法改正です。
相続債務というのは、亡くなったお父さんの負債、たとえば亡くなったお父さんに多額の借金があった場合、というイメージで捉えていただくとよいでしょう。

【知人に借金をしていた父の例】

今回の改正は非常に難しいため、参考ケースとして

・死亡した父は自宅不動産を所有していた
・父は、「自宅を長男に相続させる」と書いた遺言を残して死亡した。
・相続人は長男Aと二男Bの2名のみ
・その後、父は知人Xに1000万円の借金をしていたことが判明した。

という事例をベースに改正法を説明していきます。

【従来、二男の相続分は差押えできなかった】

従来の法律では、父が残した借金は次のような結果になっていました。

① 父の知人Xは、父に1000万円を貸しました。
 その際、父は「もしも返済しなかったら、自宅を差し押さえれば回収できる」と知人のXに説明していました。
② その後、父が死亡
③ 借金を返してほしい知人Xは、長男Aと二男Bにそれぞれ500万円ずつ、借金の返済を請求し、父名義の自宅不動産を差し押さえました。
④ これに対し、遺言で自宅を相続した長男Aは、遺言を使って登記をA名義に変更しました(相続登記)
⑤ すると裁判所から「この不動産は父の財産なので本来なら長男Aと二男Bとが共有する財産だったが、今回は後から遺言でA名義になった。そのため、二男Bの法定相続分はゼロになった。たとえ身内でも、二男Bに請求する借金で、別人であるA名義の財産を差し押さえることはできない。」と判断され、二男Bが引き継いだ借金(2分の1で500万円)を使って差し押さえをした自宅の相続分(2分の1)は差し押さえできませんでした。
⑥ その結果、知人Xは自宅を差し押さえても借金を返してもらえませんでした。
 
つまり、借金を返してほしい知人Xは、「自宅を差し押さえれば回収できる」と思って差し押さえをしたのに、後から遺言で長男名義にされると、二男に請求した金額(2分の1で500万円)の限度で差し押さえが無効になるということです。
自宅の売却代金の半分は借金返済に回してもらえない、という結果になってしまっていたのです。

このような従来の法律に問題があり、
「遺言があるかどうかは他人にはわからない。遺産である不動産を差し押さえた後に遺言が出てきて、自宅の名義を長男に変更されたら差し押さえが空振りに終わる、という法律は変えてほしい」という問題点が指摘されていました。

【改正後は二男の相続分も差し押さえが可能】

そこで、改正法では次のようになりました。

(改正後のルール)
「相続させる」旨の遺言があっても、法定相続分を超える部分については、登記などの対抗要件を具備しなければ、父の債権者など第三者に対抗できない。

上記は法律上の表現で難しいと思いますので説明しますと、遺言で自宅不動産をもらう長男Aは、知人Xより先に相続登記をしておかないと知人Xの差し押さえで長男A自身の法定相続分(2分の1)を超える部分(=二男Bの法定相続分)の差し押さえが優先することになったのです。
これを今回のケースで言えば、
長男Aが自宅をA名義に変更(相続登記)せず放置しているうちに知人Xが父の自宅を差し押さえた場合、長男Aの法定相続分を超える部分(=二男Bの法定相続分)は
(改正前)・・長男Aが優先し、(二男Bの法定相続分の)差し押さえは認められない
(改正後)・・・知人Xが優先し、(二男Bの法定相続分の)差し押さえが認められる。

「遺言で長男Aの財産になった」という反論は通用しなくなります。その結果、長男Aの法定相続分だけでなく、二男Bの法定相続分(自宅の2分の1)も有効に差し押さえられてしまうことになります。
逆に言えば、債権者である知人Xは、長男Aの相続登記より先に差し押さえをすれば、長男の法定相続分(2分の1)に加え、二男の法定相続分(2分の1)も差し押さえることができ、自宅の売却代金全額から借金を返してもらえることになったのです。

【「○○を相続させる」という遺言がある場合は早急に登記が必要】

このように、自宅などの相続財産を「相続させる」旨の遺言で財産を相続した長男Aは、早急に登記をしておかないと、父にお金を貸していた知人のXのような債権者から父の財産を差し押さえられてしまう、というリスクがあることになりました。
そのため、今後は遺言がある場合に早急に名義変更(相続登記)をしておかないと、せっかく相続することができた財産(自宅不動産など)も債権者の差し押さえが優先してしまう、ということを覚えておく必要があります。

【新制度は令和元年7月1日から施行】

この改正法は、令和元年(2019年)7月1日から施行されています。
つまり、同日以降に開始(死亡)した相続については、早急に遺言の有無を確認して相続登記を行っておかないと、債権者により法定相続分を超える持分の差し押さえを受ける可能性がある、ということになります。


母に頼まれた?兄の出金【Q&A №661】

 

【質問の要旨】

・母の生前、銀行から兄が500万円を引き出した。兄は「母に頼まれて引きし、数日後に現金をもらった」と主張。
・「母が通帳を管理していたから、勝手に出金できない」という兄の主張は裁判で認められるか?
・500万円は贈与ではなかったことの証拠がないが、不利になるか?

【ご質問内容】

母の相続人は私(弟)と兄で、兄は母と同居してました。
母の生前に多額の預金引き出しがあり、その中のひとつに3年前に銀行の窓口で500万円を引き出した件があります。
これについて、払戻伝票の筆跡から兄が引き出したことは証明されていて、母の委任状や意思確認が行われなかったことも証明されています。
この銀行では口座名義人の同居の家族なら本人の代わりに500万円まで引き出すことができるという回答があったからです。
今は兄側に弁護士が就いていこの500万円について兄は、「母に頼まれて引き出し、500万円は母に渡した。数日後、兄と妻(兄の妻)に母が250万円ずつ現金でくれた。」と言っています。
そこで兄夫婦で500万円もの高額な現金を受け取ったら銀行に預けるのが一般的かと思い、受け取った現金の入金履歴などを求めましたが入金はしていないとのことです。
そして母と兄との贈与契約書、母のために使った領収書、母があげたというメモやもありません。
これから裁判を考えているのですが教えて下さい。
(1)兄は「母が通帳を持っていたのだから、500万も引き出されたら気付くはずだ。だから、勝手に引き出してない。」という反論をしています。
確かに母が当時自分の通帳を持っていたのは事実ですし。
この兄の反論は裁判で認められてしまいますか?
(2)私には、母が兄夫婦に500万円を贈与しなかったことを証明する証拠はないのですが、不利ですか?

 

(太郎)


 ※敬称略とさせていただきます。

【前提 兄の主張を整理】

今回、兄の主張を整理すると次のようになります。

①母は兄に500万円の出金を頼んだ(委任の有無)
②兄は500万円を引き出し、いったん母に渡した
③母は数日後、兄とその妻に分けて500万円を渡した(贈与の有無)

今回、法的には①委任の有無、③贈与の有無という2つの論点が問題となりますが、それぞれについて兄が主張をしていますので、今回は兄の主張を一つ一つ取り上げて回答していきます。

【「母が通帳を管理していた・・・」という兄の主張】

これは①委任の有無に関する兄の主張ですが、たとえ母が通帳を管理していても、母が金庫などに入れて厳重管理していたなどの事情が無い限り、同居者なら母に無断で通帳を持ち出すことは可能でしょう。
いずれにしても、兄が銀行に持ち込んだ事実は争いないわけですから、あとは「母に頼まれて引き出し」たか否か、という点が問題です。

【母に頼まれた、という主張について】

まず、一般論として高齢の母が息子に預貯金からの引き出しを任せる、ということは十分にありうる話です。
しかし、ご相談によれば多額の出金は多数存在するが、母に頼まれたのがこの500万円だけとすれば、なぜこの500万だけなのか、不自然さが残るところです。
さらに、500万円の引き出しについては、委任状も意思確認(銀行から母への電話等)も行われていないことから、兄の主張を裏付ける証拠はありません。
そのため、ほかに兄の主張を裏付ける証拠がなければ、そう簡単に裁判所は母に頼まれた、という主張を認めるわけではないものと思われます。

【あなたに証拠がなくともそう不利ではない】

では逆に、あなたの側に「贈与ではないこと」を裏付ける証拠がない、という事情ですが、もちろんあなたの側に証拠がある方がより安心です。
しかし、基本的には贈与を主張する兄が「贈与の合意があった」事を立証する責任を負うため、あなたの側に証拠がない、というだけで負けるわけではありません。

【最後は経過の合理性で判断する】

兄が引き出したお金を「母に渡した」証拠もおそらく見当たらず、現時点では兄が主張しているだけの状況と思われます。
このように、お互いに決め手となる証拠がない出金を裁判所では「預かり遺産」などと呼び(不正出金と同様に)預かり金を遺産に加えて遺産分割の判断を行う傾向があります。
このような預かり金が、母から贈与されたのか、それとも無断の出金なのか、兄の主張がいかに合理的か(不自然さがないか)という観点で裁判所は判断することが通常です。

前記しました兄の主張を再度示しますと、
①母は兄に500万円の出金を頼んだ(委任の有無)
②兄は500万円を引き出し、いったん母に渡した
③母は数日後、兄とその妻に分けて500万円を渡した(贈与の有無)

というものでした。この経過が合理的な経過か、という観点から検討していくことになります。
具体的には、母は兄に贈与するために出金を頼んだとすれば、引き出しの当日に兄とその妻に手渡すのが自然であり、いったん現金を母が受け取り、数日間手元で保管した理由が今ひとつはっきりしません。
ここに不自然さが残るといえるでしょう。
もちろん、兄には弁護士が就いているようですし、口で言うだけならいくらでもストーリーを述べることは可能でしょう。
しかし、結局のところ裁判所は当事者が述べる経過が合理的か否かを自らの感覚で判断します。
そのため、あなたの立場としては、兄の主張には裏付け証拠がないことや、兄が述べる経過がいかに不自然であるかを徹底的に裁判所にアピールしていくことが重要な作業となるでしょう。


甥による不正出金や契約書偽造への対処法【Q&A №660】

 

【質問の要旨】

・介護施設入所中の母の通帳や実印等が施設からなくなっていた。
・母死亡後、母の生前や死後に母の甥によって不正出金がなされていたことが判明し
た。
・母名義の不動産も母の甥を債務者とする根抵当権が設定されていた。
・母の甥の筆跡書類もあることから、施設入所時から文字も書けない状態であった母に無断で不正出金や根抵当権を設定した母の甥に対し、告訴することは可能か。

 

【ご質問内容】

① 介護施設へ入所していた母(90歳)のもとへ母の甥(70歳)が出入りし始め、
2年後母が亡くなり、同時に通帳や印鑑証明登録カード、実印、不動産登記情報等、施設からなくなっていました。

相続人である私が預貯金の履歴を金融機関へ申請したところ、母が亡くなった直後、100万がATMで引き出され、生前には総額600万円をATMで30回にわたり引き出しておりました。
犯人は母の甥とすぐにわかりました。

母の甥は5年前にも私の妹の預金口座から3度にわたり61万円を引き出した常習犯です。

更に母名義の自宅マンションに1500万を限度とする債務承認弁済契約に基づく根抵
当権が設定され債権者はこれもまた母の甥でした。

そもそも母はすでに入所時からスプーン、ペンすら持てなくなっており文字はかけ
ない状態でした。

母はキャシュカードも作らなかったので印鑑と通帳で引き出していましたので、現
金を下ろすときは銀行員が施設に訪問して「渉外払戻請求書」に代筆してもらい現金を受けとっていました。

② 文字のかけない母が契約書にサインすることはできないので調査するとその署名は母の甥の筆跡でした。
親族ですが刑事訴訟法231条2項により

筆跡の証拠書類もあります。

告訴可能でしょうか?
宜しくお願いいたします。

(snowfairy)



 ※敬称略とさせていただきます。

【告訴は可能だが、警察は受理しない可能性も】 

まず、ご質問の案件で、母の甥の行為に何らかの犯罪が成立するのかというと、母の通帳又はキャッシュカードを使ってATMで預貯金を引き出したということですので、法的には窃盗罪が成立する可能性があります。
また、母の実印を持ち出し、債務承認弁済契約書に勝手に母の署名押印をしているという点については、実印の持ち出しに窃盗罪が、契約書の偽造に私文書偽造及び同行使罪が成立する可能性があります。
刑法には、親族相盗例という制度があり、親子間や、直系血族等の間では窃盗罪の刑は免除されますが(刑法251条、同244条準用)、今回は、おばと甥という関係ですので、これにはあたりません。
そのため、あなた方相続人が筆跡資料等の証拠資料を持って警察に行けば、亡くなった母に代わって、窃盗罪や私文書偽造罪で告訴することは可能ではあります。
ただ、被害届とは違って、告訴を受理すると、警察に捜査義務が生じることから、警察は、「お母さんはすでに亡くなっているので、当時のお母さんの意思は知りようがない」とか、「まずは被害届で」「民事で解決できないか」などと言って、告訴の受理を避ける可能性も高いです。

【あなたは民事上の不当利得返還請求ができる】

ご質問によると、母の甥が母の介護施設に出入りして、通帳等を持ち出し、ATMで預貯金を引き出していたようです。
そのため、この不正出金については、あなた方相続人が、その相続分に応じて、民事上、不当利得返還請求という形で甥に対して返還を求めることが可能です。
この請求をする場合には、原則として、以下の3点をあなたの方で調査・立証する必要があります。
① 預貯金口座からの多額の出金の存在
② 出金した人はだれか
③ 出金した金員を誰が取得し、何に使ったのか
今回は、取引履歴は取得済みのようであり、甥が出金・取得したことも判明しているようですが、実際に請求をすれば、甥は「全く知らない」とか、「母からもらった」などと言い出すかもしれません。
甥が出金をしていること自体は、甥が通帳やカード等を持っており、ATMで引き出されているという事実から明らかかもしれませんが、母が贈与したというような主張に備えて、母当時の母の意思能力に関する資料(病院のカルテや、介護記録等)も集めておくべきかと思います。

【債務承認弁済契約については、無効を主張する】

また、債務承認弁済契約については、甥が母の実印や印鑑登録カードを勝手に盗み出し、勝手に母の署名押印をしたものであるということを、筆跡等をもとに主張し、契約の無効を理由に根抵当権登記を抹消すべきです。
おそらく、甥はすぐに認めて登記抹消に応じるようなことはないと思われますので、母の相続人であるあなた方としては、甥に対して、根抵当権設定登記の抹消登記請求訴訟をする必要が出てきます。
上記の通り、告訴が受理されるかは警察の対応にもよりますが、民事の請求に関しては、訴訟等の手続きが必要になる場合もありますので、早急に検討されるとよいでしょう。


相続法改正9 遺留分制度に関する見直し

【遺留分制度とは】

遺留分制度とは、遺言や生前贈与などにより特定の者だけが多額の財産を取得した場合などでも、特別に最低限の財産の取り分(遺留分)の取り戻しを認める制度です。
遺留分を請求できるのは、被相続人の兄弟姉妹以外の法定相続人です。
遺留分は、多くのケースで法定相続分の2分の1です。
この遺留分制度に関して、今回の民法改正により以下の2点の見直しが行われることになりました。

【見直し①遺留分減殺請求の金銭債権化】

これまでの法律では、遺留分を主張する者(遺留分権利者)が、遺贈等を受けた者に対して遺留分を求める請求(遺留分減殺請求)をすると、遺贈等は、遺留分を侵害していた限度で効力を失い、遺贈された財産は、その限度で遺留分権利者のものになっていました。
このとき、遺贈等を受けていた者は、その財産そのものを返還(現物返還)するのが原則で、そのものの代わりに金銭を支払う(価額弁償)のは例外という位置づけでした。
しかし、たとえば、不動産が遺贈されていた事案で、不動産の一部を遺留分権利者に返還しなければならないとなると、その不動産は複雑な共有状態になり、売るにも貸すにも一人ではできないという事態が度々生じていました。
そこで、改正法では、従前の取り扱いを抜本的に見直し、遺留分権利者は、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いのみを請求することができることとされました(これを「遺留分侵害額請求」といいます)。
例外はなく、そのものの返還をすることはできません。
ただ、必ず金銭で支払わなければならなくなったことにより、金銭を持っていない者については非常に困った事態になります。
そのため、この点に配慮して、遺留分侵害額請求を受けた者が、すぐにその額の支払いをすることができない場合には、支払いを一定期間猶予してもらうよう、裁判所に請求できることになりました。

【見直し②特別受益は相続開始前10年間にされたものに限る】

これまでは、遺留分を侵害しているとして問題にされる生前贈与の範囲について、法定相続人に対するものか、それ以外の者に対するものかで異なる取扱いがなされていました。
すなわち、法定相続人以外に対する贈与は、原則として相続開始前の1年間にされた贈与のみが対象になりますが、法定相続人に対する贈与のうち特別受益にあたるものは(特別受益については、【コラム】法定相続の概略と具体例その4:特別受益参照)、特段の事情がない限り時期を問わず(何年前の贈与でも)対象とされていました。
これが、今回の改正により、法定相続人に対する贈与(特別受益にあたるもの)について、相続開始前10年間にされたものに限ってその対象となり、従来の取扱いより、その範囲が限定されました。
ただし、贈与当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与したものは、これまでと同様に、10年以上前の贈与であっても遺留分算定の基礎となる財産に含まれることには、注意が必要です。

【この改正の施行日は、2019年7月1日です】

この、新しい遺留分制度の施行日は、2019年7月1日です。
相続開始時が2019年7月1日以降であれば、改正法が適用されます。


相続法改正8 自筆証書遺言の保管制度

【遺言を法務局が預かる制度が新設】

先日のブログでは、手書きで作成する自筆証書遺言(以下、「自筆遺言」と略称します)の一部がパソコンで作成できるようになり、財産が多い方でも手軽に作成できるようになった新法改正をご紹介しました。
今回はこれに加え、自筆遺言を法務局が預かってくれる、という新制度をご紹介します。
この制度のメリットは大きく2つ

①自宅で保管する必要がないため、家族に見つかる心配が無い
②検認手続が不要になるため、紛争になる前に遺産を相続できる

この2つのメリットについて、以下ご紹介していきます。

【メリット① 家族に見つからずに作成できる】

自筆遺言の問題点として、手書きで作成すると通常は自宅で保管するため、災害や引っ越しなどの際に紛失する、あるいは遺言を見つけた親族の方により破棄・改ざん、あるいは隠されるなどの問題があるといわれていました。
また、ご家族が破棄や改ざんしないとしても、「長男に全遺産を相続させる」という遺言を見つけた二男としては心穏やかではないでしょうし、ご家族の間でもめ事が起きてしまうという心配もありました。
そのため、家族に秘密で遺言を作りたい方は、(費用はかかりますが)公証役場に出向いて、公正証書遺言を作成する傾向が多かったのです。
しかし、今回は手書きで作成した自筆遺言も一定の様式を整えて法務局に届け出ることで、法務局が遺言を保管してくれます。
そのため、紛失の心配やご家族に見つかって破棄される、あるいはもめ事が発生することを防ぐことができます。
これが1つのメリットです。

【相続人には通知が届いて把握できる】

もっとも、遺言者が死亡した後、相続人の一人(たとえば財産をもらえる人)が法務局に遺言の写しを閲覧・交付申請した場合、他の相続人にも通知が届く制度になっていますので、遺言が存在することは相続人全員が把握できる制度になっています。
このような制度で、遺言の紛失や隠匿、不当な改ざんが行われることを防止しよう、というのが今回の法改正です。

【メリット② 検認手続が不要になる】

もう一つ、自筆遺言の問題点として、家庭裁判所の検認手続が必要、ということが指摘されていました。
検認手続とは、家庭裁判所に自筆遺言を提出して、相続人全員を家庭裁判所に呼び集め、自筆遺言の内容を相続人に知らせると共に、遺言内容を確認する手続です。
自宅の名義変更を行う法務局や、預金の解約手続を行う銀行などは、いくら自筆遺言を持ち込んでも、検認を受けた遺言でなければ相続手続には応じないため、自筆遺言は必ずこの検認手続を経る必要があります。
ところが、この検認手続では家庭裁判所に出頭し、さらに相続人全員を呼び集める手続のため非常に煩雑でした。
そこで、今回の改正では自筆遺言を法務局に届け出て保管してもらうことで、検認手続を不要とする、という制度に変わりました。
この改正で、自筆遺言も検認手続を経なくとも遺言を執行して自宅不動産や預金の相続手続を行うことが可能となったのです。

【新制度は令和2年7月10日から施行】

この自筆遺言の保管に関する改正は、令和2年(2020年)7月10日から施行される予定です。
そのため、現時点(令和元年8月)時点で遺言を作成される方は、従前通りの方法で自筆遺言を作っておき、暫定的に貸金庫や信頼ある専門家に依頼して保管するなどの対策を取る必要があります。
その上で、2020年に法改正が施行されたところで改めてこの遺言保管制度の利用を考える必要があるでしょう。


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