大澤龍司法律事務所 相続問題無料相談ブログ

遺言書で遺贈を記した銀行口座について【Q&A №638】

 

【質問の要旨】

遺贈された口座にお金を移した場合

記載内容  預金口座 遺贈 不正出金 

【ご質問内容】

被相続人Aが、遺言書で相続人Bに遺贈を記したA名義の銀行口座があります。 Aが生前中に、Bが当該口座にA名義のの別口座からお金を移していた口座記録が有ります。 (Aが逝去後、遺贈を受ける銀行口座の相続金額を増やそうとしていたと推定されます) このような場合は、他の相続人がBの不法行為として損害賠償請求するのは可能でしょうか? ご教示お願い致します。
(天の声)

 ※敬称略とさせていただきます。

【不法行為は成立しない可能性が高い】

不法行為は損害を受けた時に、その被害者が加害者に損害の賠償を求めるものです。

今回の、被相続人Aの口座間の金銭の移動の場合について考えます。

この場合、被害者がAだとすると、Aは、自分の口座間で財産の移動があったことは間違いないのですが、それだけで、金銭的な損害を受けていません。

そのため、損害がなく、不法行為にはならない可能性が高いでしょう。

次に、他の相続人(例えば、あなた)の立場に立てば、Bの行為であなたがもらう額は減少するかもしれません。

しかし、その行為の時点では、あなたは将来、相続を受ける立場(推定相続人)ではあっても、未だ、具体的な相続権は発生しておらず、損害はないといわざるをえません。

そのため、あなたに対する不法行為も成立はしないと判断されます。

 

【あなたはどういう方針で対処するべきか】

あなたがこの問題に関与できるのは、Aが死亡した後です。

その時点では、あなたは相続人になっていますし、Bの行為によりあなたのもらう額が減額されているとしましょう。

このような場合のあなたの対処方針ですが、《Bのした口座間移動はAの意思に基づかないものであり、無効である》という点で、Bを攻めるといいでしょう。

口座間移動が無効とした場合、Bはその口座間移動で移った増額分を取得できないはずです。

その法的構成をどうするかは、やや難しい面があるので、相続に詳しい弁護士に相談するといいでしょう。

ただ、口座間の金銭の移動の手続きをBがしたという証拠も必要です。

口座の送金の依頼書がBの筆跡なのか、また、その際、BがAの意思に反してそのような行動をしたという証拠があるのか、それらもきっちりと押さえておくといいでしょう。

いずれにせよ、弁護士に相談され、法的構成、立証方法等を綿密に協議されるがいい案件だと思います。

父の遺産遺留分について【Q&A №637】

 

【質問の要旨】

夫が借りたお金が遺留分に影響するか

記載内容  遺留分 自己破産 借りた 

【ご質問内容】

実父が生前に夫が父に自己破産時に借りたお金は私の遺留分から引かれるのでしょうか?
(ナナ)

 ※敬称略とさせていただきます。

【父が夫に貸した金銭の扱い】

  被相続人があなたの夫に貸した金銭は、父の夫に対する貸金であり、貸金債権として遺産に含まれます。

そのため、当然、遺留分減殺請求をする際の基礎財産に含まれます。

【遺留分減殺との関係について】

 今回の質問では、遺留分が問題となっていますので、遺言書等で特定の人に多額の財産がいくようなケースなのでしょう。

もし、あなたが遺留分減殺請求をする側であれば、父から夫への債権も含んだうえで、遺留分額を計算するといいでしょう。

【あなたが遺留分請求するとき、夫の借金で相殺されることはない】

他の相続人(例えば兄とします)が父からの遺産を全部相続するケースで言えば、あなたは遺留分額を兄からもらうことができます。

この際、権利関係を整理すると次のようになります。

・あなたは兄に対して遺留分を請求できます。

・兄は夫へ貸金請求ができます。

夫とあなたとは夫婦という関係であっても、借金などの債権関係では、まったく別人として扱われます。

夫が借金をしていても、法的にはあなたがその借金を支払う義務はありません。

そのため、兄が、夫への貸金があることを理由にあなたへの遺留分を減額しようとするなら、《その貸金は夫に請求するべきものであって、遺留分の減額事由にはならないし、相殺もできない》といって、遺留分全額をもらうといいでしょう。

 

 

委任状無しに多額の払い戻しをするのでしょうか【Q&A №636】

 

【質問の要旨】

委任状なしに払い戻した銀行の姿勢

記載内容  委任状 払戻 不正出金 

【ご質問内容】

父の相続に際し、多額の使途不明金問題が発生しました。
相続人は、兄、私、妹の3人です。母はすでに亡くなっています。
父は生前、軽度の認知症がありましたが、兄一家と同居していました。
父の取引履歴を取り寄せたところ、一度に300万、400万、500万、600万という高額な払戻し(現金で持ち帰り)があり、全て一つの銀行です。
銀行に伝票をとりよせたら全てが兄嫁の筆跡でした。
そこで銀行に、父が引出しの際に同席したかどうかを確認すると「同席はしていないが、同居のお嫁さんだから問題ない。父には電話確認した。」と回答されました。
さらに引出しの際の委任状も開示を求めましたが、「同居のお嫁さんだから委任状の必要はない」と回答がありました。
私としては、数百万もの大金をたとえ同居人であっても口座名義人でない人に渡す銀行の対応に驚いているのですが問題ないのでしょうか?

636
(みい)

 ※敬称略とさせていただきます。

【基本は通帳と印鑑の一致で確認】

最近の金融機関は本人確認が厳格になってきているため、大口の金額を窓口出金する場合、本人確認や委任状を要求することが一般的になってきています。
 他方で、未だに同居の親族の出金について、本人の体調不良などを申し出れば、委任状がなくとも親族の本人確認証(免許証等)を確認して出金に応じるようなケースも相続案件で見られます。
 しかし、銀行が通帳と届出印鑑の一致を確認していたのであれば、よほど無権限であることを疑わせる特殊な事情がない限り、引き出しについて銀行の責任を認められることはありません。
もちろん、なにか疑わしい事情があれば裁判所も銀行の責任を認めることはあるでしょうが、やはり例外的と考えざるを得ません。
それくらい通帳と届出印鑑を持参した、という事実は重いのです。

【委任状ではなく「父の意思確認」の有無が重要】

しかも、銀行は「父には電話確認した」と一応の本人確認手続を行った事情があるようですので、本人の意思確認もしているようですから、これらの立証を崩さない限り、銀行の出金手続が違法であるとは言いにくいと思われます。
 厳密に言えば、重要なのは委任状の有無ではなく、「父の意思確認」の有無なのです。
本人の意思確認ができたのであれば、委任状でも、電話確認でも、あるいは本人同席の下で伝票記載を兄嫁が代行しても構いません。
 本件で銀行に対する責任追及、というのは難しいでしょう。

【問題は本人の意思が反映されたか否か】

仮に銀行の手続に問題があったとしても、結局のところ本人の意思が反映された出金であれば問題ありません。たとえば、父が兄嫁に対し「全額引き出して構わない。」とか「贈与する」などという意思を伝えていれば出金は権限に基づく適法なものということになります(実際上このような事態は考えにくいかもしれませんが)。
 そのため、今回は銀行に対する責任よりも、兄嫁(ないしその夫である兄)に対して引き出した預金をどこに移動させたのか、どのような使途に使ったのか、という点を問い質していくことが現実的な方策といえるでしょう。

(弁護士 北野英彦)

相手の説明の変更について裁判への影響【Q&A №635】

 

 

【質問の要旨】

不正出金を追求する方法

記載内容  遺産分割 引出し 頼まれた 

 

【ご質問内容】

 昨年86歳で亡くなった母の遺産分割で、母と同居していた弟夫婦から相続放棄を求められています。

理由は「母の財産はほとんど無いから」との事です。

(父は他界しており、母の遺産の相続人は私と弟の二人だけです。)

そこで、弟夫婦に対して母の財産管理について確認すると「私達は母の通帳を管理していない。母が亡くなって初めて母の通帳を見たら残額が無くなっていた。」や「預金については母が自分で引出しをしていた。私達夫婦は関わっていない。」とメールで回答が来ました。

私としては、母が父から3000万円もの預金を相続したのに、わずか2年で使い切るなど考えられませんでしたし、母には比較的多額の年金収入もあり預金を崩す事も考え難いので、母の取引履歴と引出し伝票を取り寄せました。

すると引出しのほとんどが弟の勤務先近くのATMで月に数十万円も引き出されており、ATMで引き出せない額については弟の筆跡のある伝票が出てきました。

それを弟夫婦に伝えたところ、「全ての引出しは母の頼まれたからです。」とメールで回答が来ました。

今回教えて頂きたいのは、2点あります。

1)これだけの証拠で裁判で戦えるのでしょうか?

私が証明できるのは、①母の預金を弟が引き出した事、②それが多額過ぎる事(不自然だというとこ)だけです。

2)上記の通り、取引履歴を取る前と後で弟夫婦の回答が変わっています。

これは裁判で使える事なのでしょうか?

【補足】

ご質問させて頂いた内容について、お伺いしたい内容が明確でなかったかと思い補足させて頂きたく投稿致しました。

真にお伺いしたい事は、取引履歴の取得前と後で、相手の説明が変更となることについて裁判にどう影響するかどうかです。(まだ裁判はしていませんが)

〈取得前の弟の説明〉

母の財産管理については「関わっていない。残高も知らない。引出しも行っていない」という説明

〈取得後の弟の説明〉

「全て母に頼まれた。引き出したお金も全部母に手渡した」という説明

に変わりました。

この変化について裁判に影響はありますでしょうか?

 

(はって2344)

 ※敬称略とさせていただきます。

【弟が出金したことについては、ある程度証拠がそろっている】

出金状況については、すでにだいたい調査をされ、弟の勤務先近くのATMや、弟の筆跡の出金伝票でもって出金されたことが明らかになっているようであり、弟も自身が出金したことをメールで認めているようです。

他に母の有していた口座はないか、追加の調査が必要となる可能性はありますが、それを除けば、「弟が出金した」という事実については、証拠がある程度そろっているといえます。

 

【ただ、出金した金員を弟が取得したことの証拠は不十分】

ただ、使途不明金の返還を求めるためには、弟が母の預金を出金したという事実だけでは足りません。

現在、弟は「母に頼まれて出金した」という主張をしているようであり、「出金した金員は母に渡したから何に使ったかは知らない」といわれてしまえば、出金した金員を弟が取得した事実については、あなたが立証しなければなりません。

この立証はなかなか難しく、

1.出金金額が多額であるか(一般に月に十数万円程度なら生活費相当額と判断されやすい)

2.母が金員を必要とする理由があったか

3.それまでの母の出金態様と弟が出金を始めてからの出金態様に変化があるか

等の事実をうまく利用して、母が使ったとの弟の証言が不自然であることを主張していくことになります。

また、当時母に意思能力がなければ、弟に対して出金を依頼するということも不可能ですので、もしもその可能性があるのであれば、当時の母のカルテや診療記録を取り寄せして確認することが必要になります

 

【弟の説明が変わっていることも不自然さの証拠の一つにはなる】

最後に、あなたによる調査前と調査後で弟側の説明が変わった点ですが、事実を隠蔽しようとしている節が見受けられ、発言に信用性がないということで、他の証拠と合わせて、弟が出金した金員を取得したことの証拠の一つにはなりえます。

ただ、発言の変遷だけで、弟が取得したことの立証ができたとはいえませんので、あくまでも上記に述べたとおりの他の事実と合わせて、効果を発揮するものといえるでしょう。

(弁護士 岡井理紗)

亡き父の養父母との養子縁組離縁無効を主張したい【Q&A №634】

 

【質問の要旨】

離縁された養子の子(孫)は祖父の相続人か

記載内容  養子 離縁 代襲相続 

【ご質問内容】

私の父は養父母と養子縁組をしておりました。
 
その後私の母と結婚して私が生まれたのですが、私が3歳になる前に離婚をし会わな いまま父は15年前に他界しておりました。
 
わたしが34歳になる現在亡き父の事を知りたく戸籍を辿ってみました そこで初めて父と養父母との養子縁組は私が生後10ヶ月の頃に離縁されていたので す!
 
父と母は私が2歳の頃まで養父母と同居しており 母も養父母との離縁など知らなかったのです。
 
父も養父母と離縁しているなら同居はしなかったと考えております!
 
そして10年ちょっと前に養母が亡くなった頃は多少行き来してましたが離縁の事は何 も言ってませんでした!
 
父の事を息子と言い私は孫だと養母が言っていました。
 
1年ちょっと前に養父が亡くなったのを最近知りました。
 
そこでおそらく養父が離縁を勝手に行なっていた為私には離縁がなされていなければ 養子の子として代襲相続があるはずのものが離縁により失われていると思われます!
 
そこで父の離縁を無効だと私が請求する事は可能でしょうか?
 
土地建物は今おそらく 養父の弟の娘に渡っています。
 
悔しくて仕方ありません、よろしくお願いします!!
 

 

(カビゴン)

 ※敬称略とさせていただきます。

【離縁した養子の子には代襲相続は発生しない】  
 
養子縁組をした場合、養親と養子とは親子という関係になります。
 
そのため、離縁にならない限り、養子は実の子と同じ扱いを受けます。
 
従って、養子の方が養親より先に死亡した場合、養子に子(養親から言えば孫)があれば、その孫は代襲相続人になります。
 
しかし、養子が離縁した場合、養親と養子との親子関係は解消され、《赤の他人》になりますので、相続関係は発生せず、養子は養親の遺産をもらうことはできません。
 
そのため、養子が相続人であることを前提している代償相続も発生せず、離縁した子の子であるあなたには代襲相続が発生しません。
 
この点はあなたの理解どおりでいいかと思います。
 
【離縁の無効の証明】
 
今回、問題となるのは、質問者のあなたの父(養子)とその養親との間の離縁が無効ではないかという点です。
 
無効であれば、あなたがお考えのように、あなたは代襲相続人になることができます。
 
ただ、戸籍上は離縁と記載されている以上、それが無効であることは、無効を主張するあなたが証明する必要があります。
 
戸籍上の離縁の記載があった後も、同居などが続いていたのであれば、あなたとしては離縁が果たしてあったのかという疑念を持つ気持ちは良くわかります。
 
しかし、離縁後に同居していたというだけでは、無効の証明としては不十分です。
戸籍上、離縁が記載されているのであれば、離縁届があるはずです。
 
離縁届があれば問題点を絞ることができます。
 
離縁届には離縁の原因が記載されています。
 
もし、それば裁判や調停による離縁であれば、争うことは困難です。
 
もし、合意による離縁であれば、父に離縁の意思がなかったという点を証明する必要があります。
 
そのために、離縁届に記載されたあなたの父の署名捺印を検討し、それが偽造されたと言うことが考えられます。
 
但し、筆跡鑑定はそれほど確度の高いものではありませんので、同鑑定だけで偽造ということを証明するのはなかなか困難というのが実情です。
 
次に、離縁届の保存期間は27年程度であるため、今回の質問のように30数年も前に届け出された離縁届が保存されているのか、又、入手できるか、極めて疑問であるという点も考慮しておく必要があります。
 
更に、父が死亡しているため、離縁についてのあなたに有利な事情を聞くことができないという点も、不利益に働きます。
 
以上の点を考慮すると、離縁後も同居していたというあなたの主張に沿った有利な事実はあるものの、それでは不十分であり、その他の事実が証明できない限り、離縁が認められると判断される可能性が高いように思います。

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