大澤龍司法律事務所 相続問題無料相談ブログ

不正出金の返還請求の可否【Q&A №666】

 

 

【質問の要旨】

・亡母の預金から3000万円以上を、兄とその子供がATMで出金。
・預金通帳は母が持っていた。
・母が書いた出金メモはあるが、実際の出金額と約1000万円以上の差がある。
・不正出金につき裁判をしても負けるか?

 

 

【回答の要旨】

・判断(意思能力)の確認が必要ではないか
・母の手帳のメモがある分は無断出金とはいえないが、生前贈与で特別受益になる可能性がある
・差額の1000万円は無断出金で、相続分に応じて請求できる可能性がある
・通帳を管理できていたかは極めて疑問
・相続に詳しい弁護士に相談される必要がある

 

【ご質問内容】

去年亡くなった母の預金の不正出金がありました。
85~90歳までの5年間に3000万以上も引き出されていて、母と同居していた兄とその子供がATMで引き出したことを認めました。
兄に説明を求めたら母の手帳を渡されて「○月○日10万円」と書かれていたりしていました。
でも、通帳の出金総額と手帳の出金総額に約1000万円以上の差があるので、近くの法律事務所に相談に行きましたがその弁護士さんからは、出金についての記載が半分以上あるから裁判は負けると言われました。
そして通帳は誰が持っていたかを聞かれ、母が持っていたと伝えるとなおさら無理だと言われました。
なんとなくモヤモヤするのですが仕方ないことなのでしょうか?

【ご質問内容の追加】

法律相談を受けた時にその弁護士さんから「通帳を本人がもっていたなら裁判所は訴えを認めない」と言っていました。
母は自分で通帳を持っていたので無理みたいです。
でも1ヶ月に5~60万引き出されていて普通の高齢者が使う額じゃないので怪しいのですが。
その弁護士さんは、母が植物人間だったり、亡くなってた後だったり絶対に母が引き出せない状況じゃないと裁判はできないと言っていました。本当でしょうか。
もし裁判ができる可能性があるなら、植物人間でもなく、母が通帳を持っていたとしてもそれを跳ね返せるのでしょうか?

(カタアク)



 ※敬称略とさせていただきます。

【判断(意思能力)の確認が必要ではないか】

5年間で預貯金から3000万円もの多額の出金がなされた、その時の母の年齢が85~90歳と聞けば、母に判断能力があったのかどうかが気になります。
ただ、質問はその点に全く触れていませんので、深入りは避けますが、念のために通院していた医院や病院などのカルテを取り寄せすることを考えていいケースです。

【母の手帳のメモがある分は無断出金とはいえないが、生前贈与で特別受益になる可能性がある】

母の手帳に約2000万円の出金のメモがあるようです。
この分については、母が出金を認めていた可能性があります。
ただ、出金を認めていても、母のために使われていないのなら、その出金分は兄が取得していた可能性があり、生前贈与と理解することができます。
法定相続人への生前贈与は、遺産分割においては特別受益として遺産に持ち戻すことができますので、その点を主張されるといいでしょう。
又、母の死亡時にめぼしい遺産が存在しないというのなら、遺留分減殺請求をして、特別受益分2000万円を遺留分減殺の計算の対象となる遺産に持ち戻すという主張をしてもいいでしょう。

【差額の1000万円は無断出金で、相続分に応じて請求できる可能性がある】

問題は差額の1000万円ですが、この分についてはメモがないというのなら、母の知らないうちに出金された可能性があり、無断出金と主張できる余地があります。
母は無断出金者に出金額の返還を請求できる権利(不当利得返還あるいは不法行為に基づく損害賠償請求権)を有することになります。
母が死亡した後は、この請求権は法定相続分に応じて相続人に相続されますので、あなたは出金者に相続分に応じた金額を返還請求されるといいでしょう。
ただ、母にも、当然ながら生活費がかかるので、その分は1000万円から控除する必要がある可能性を考慮されるといいでしょう。

【通帳を管理できていたかは極めて疑問】

相談された弁護士は母が通帳を管理していたのなら、請求はますます困難と回答されたようです。
しかし、管理とはどういう意味なのでしょうか。
管理とは言いながら、約5年間に3000万円も出金があったという事実、しかも同居する兄らがATMで2000万円の出金をしていた事実を考えると、キャッシュカードは兄らが自由に使える状態であり、母が預貯金をきちんと管理していたとは到底言えない状態です。
管理ができていなかったというのが本当のところではないかと思います。

【相続に詳しい弁護士に相談される必要がある】

今回の質問で正確な回答するには、例えば、
①  出金された金がどういう使途に使われたのか?
②  なぜ、母のメモの記載している分と記載されていない分があるのか?
③  母のメモは、出金ごとに記載されたのか、あるいは一時にまとめて記載されたものか?
④  冒頭の認知症の有無、程度
など、今回の案件について訴訟の結果を予測するには、資料を綿密に検討し、又、いかなる主張ができるのかを判断することが必要です。
そのため、相談料はかかっても、相続に詳しい弁護士に法律相談をされることをお勧めします。


立て替えた葬儀費用を返してほしい【Q&A №665】

 

 

【質問の要旨】

・6年前に亡くなった息子の葬儀費用の立替分(50万)を喪主から返してもらいたいが、時効にはならないか?
・喪主は、息子の妻(嫁)。

 

【回答の要旨】

・時効は10年。6年経っても請求できる
・喪主が立替金を支払う義務がある
・葬儀費用を葬儀に出席した相続人が負担するという考え方もある

 

【ご質問内容】

2013年9月に遠隔地に住んでいる43歳の息子が心不全で急逝しました。
喪主は息子の嫁が務めましたが、心労だろうとの思いから香典の開封集計は嫁が立ち合いの上で近親者4名で行いました。
私はもちろんですが、嫁には相続する財産もなく生命保険金が支給されるまで金銭的余裕が無いだろうとの思いやりから、葬儀社やお寺への支払いは香典だけでは50万円ほどたりず不足分を私が立替えて支払いました。
後日、収支報告書を作成し嫁に渡しましたが、立替えた件は報告書を見ればわかるだろうと敢えて口頭での報告はしませんでした。
遠隔地に住んでいるので、その後顔を合わせたのは数度で 先日、7回忌法要をしましたが金銭の話は切り出しにくく、嫁から話があるかと思っていましたが何もありませんでした。

もしかしたら支払う気持ちが無いのではないか?と不安になりご相談させて頂きます。
喪主に代わって立替えたお金を6年以上経った今でも支払ってもらうことはできますでしょうか?
ご回答よろしくお願いします。

(与太郎)



 ※敬称略とさせていただきます。

【時効は10年。6年経っても請求できる】

まず、今回のように6年も経つと今更葬儀費用の話を言い出しにくい、というのが人情だろういうお話はよく理解できます。
しかし、法律上はこのような個人間の立替金は時効期間が10年です。支出時から10年間は返還請求ができますので、現時点では問題ないでしょう。
これを前提に、以下返還請求できる金額について回答していきます。

【喪主が立替金を支払う義務がある】

今回のお話を整理しますと、葬儀費用は香典から支払い、不足額は追加であなた(被相続人の母)が50万円ほど立て替えて支払ったとのことです。
葬儀社は喪主に費用を請求しますので、あなたとしては喪主に立替えた葬儀費用を請求することになります。
喪主としては、葬儀社から請求されれば支払いをする立場ですので、あなたは立替金を喪主に請求することができます。

【葬儀費用を葬儀に出席した相続人が負担するという考え方もある】

ただ、喪主が立替金の支払い義務があることを前提としても、喪主が最終的に、葬儀費用の全部を負担する必要があるのでしょうか。
葬儀費用の負担者については法律に明確な定めがなく、裁判所の判断も扱いが分かれています。
最近の裁判例の傾向としては、基本的には葬儀内容を手配した喪主が全額負担し、香典も喪主が全額受け取るという判断が多い印象があります。
家裁の遺産分割の調停では、葬儀に出席した相続人に対して、葬儀費用が適正であるということを前提として、分担をしてもらう方向で話を進めることも多いです。
もし、その方向で話しが進むのなら、立替金のうち、あなたの負担分(もちろん葬儀費用から香典を引いた残額を、喪主を含む出席相続人の数で分割負担することになると思われる)という解決も考慮しておくといいでしょう。
(なお、相続ブログNo.560に同様の論点が掲載されていますので参考までに。)


不正出金とじん肺訴訟【Q&A №664】

 

【質問の要旨】

・相談者の祖父が死亡。相続人は、相談者の母とその弟。
・相談者の母の弟が、祖父のお金を不正に引き出していた。その分を返還させることは可能か?
・祖父の死因はじん肺であるが、母の弟の委任状だけで訴訟できるか?
・その場合、勝訴したら、慰謝料は弟がすべて受け取るのか?
・祖父の財産を母が受け取るような方策はあるか。

【ご質問内容】

先日祖父が亡くなり、母とその弟(祖母は亡くなっており受け取りは姉弟の2人)で遺産を分けようとしたところ祖父の生前に弟がお金を引き出していたことが判明。

その詳細はお願いしても見せてもらえず行方が不明。

世話していたのは自分たちだから使っても当然だとの言い分でした。

弟が着服していた分を支払わせることは可能でしょうか。

また、祖父はじん肺が原因で亡くなったため、弟が訴訟を起こすと言っているのですが弁護士への代理依頼の委任状は弟のものだけで訴訟は可能なのでしょうか。

勝訴して慰謝料が支払われる場合、弟が全て受け取ることになるのでしょうか。

どうにかして祖父の生前の財産を母に渡るようにできないでしょうか。

弟の後ろには税理士も弁護士もいるとのことでどう動いてよいのかわからず教えて頂きたいです。

 

(くっく)


 ※敬称略とさせていただきます。

【母は弟に対して、生前引出分についての請求ができる】

遺言書がない場合は、法定相続人は法定相続分に応じて遺産を相続します。
今回のように、子が2人のケースでは、あなたの母とその弟が2分の1ずつ相続するということになります。
生前に、弟が祖父の口座から無断で出金していたのであれば、祖父は弟に対して、損害賠償請求権を持っていたということになります。
祖父死亡後は、祖父の持っていた損害賠償請求権は、あなたの母にも相続されますので、生前の引き出し分についても、母の法定相続分(2分の1)の限度で、母は弟に対して請求することができます。

【生前引出分については、調査と分析が必要】

ただ、母が弟に対して、損害賠償請求をするためには、母の側で、弟が祖父の口座から多額の出金をしたということを証明する必要があります。
具体的には、
① 預貯金口座からの多額の出金の存在
② 出金した人はだれか
③ 出金した金員を誰が取得し、何に使ったのか
の三点を主張・立証しなければなりません。
このうち、①については、祖父の口座の取引履歴を取得すれば、明らかになります。
取引履歴は、相続人であれば、最長で過去10年分遡って取得することができますので、早急に取り寄せ手続きをされるとよいでしょう。
また、②及び③に関して、今回弟は、「世話していたのは自分たちだから使っても当然だ」などと言っているとのことですので、出金の事実をある程度認めているのかもしれませんが、いつ言い分を変えてくるかわかりません。
そのため、預貯金の払戻伝票などを取り寄せし、筆跡などから、弟が出金に関与したという証拠をできるだけ集める必要があります。
ATMで引き出されている場合には、筆跡などは残りませんが、取引履歴を見ることにより、どこに置かれた機械で出金したのかがわかり、出金者の特定に役立ちます。
弟が出金したことが判明すれば、③の取得者と使途については、出金した弟が、自分ではないというのならその主張立証をする責任があります。

【意思能力の主張のため、カルテの取り寄せも考える】

無断出金の証明には、カルテが役立つことがあります。
祖父はじん肺で亡くなられたとのことですので、入通院された病院や医院のカルテを取り寄せましょう。
カルテの記載内容や看護日誌の内容等により、祖父の意思能力が判明し、その程度によっては、本人には出金ができなかったと主張立証できる可能性があります。
また、祖父が入院していた時期に多額の出金があれば、それも弟が関与したと主張できる可能性があります。

【じん肺の訴訟は、弟だけでも可能】

次に、弟が弁護士に依頼して進めようとしているじん肺訴訟ですが、これも、祖父が国や企業に対して有していた損害賠償請求権を母や弟が相続して請求するものです。
そのため、母と弟は、祖父が有していた損害賠償請求権の2分の1ずつをそれぞれ有しており、それぞれが国や企業に対して、2分の1の損害賠償請求をすることができるということになります。
したがって、弟は、自分の相続分である2分の1については、一人で訴訟をすることが可能であり、その分だけ弁護士に依頼することももちろん可能です。
その場合、弟がした訴訟の結果には、弟だけが縛られますので、勝訴すれば、祖父の損害額の2分の1を弟だけが受け取る権利を持ちます。
反対に、弟が敗訴したとしても弟だけがその結果に縛られます。
そのため、母としては、弟のした訴訟の結果にかかわらず、別途自分の相続分2分の1について訴訟をすることができます(もちろん、弟が敗訴した場合には、母は訴訟をしないという選択もできます)。

【母が祖父の財産を受け取れるように、今母がすべきこと】

以上の通り、母としては、調査をした上で、
① 弟に対する損害賠償請求(無断引き出し分)
② 国や企業に対する損害賠償請求(じん肺)
をすべきです。
それ以外にも、不動産、預貯金、有価証券等をきちんと調査して、残された財産については、弟との間で遺産分割協議をすべきです。
また、調査する中で、弟が生前に祖父から贈与を受けていることがわかれば、それについては特別受益として遺産に持ち戻して計算することにより、母の受け取り額が増額できることもあります。
いずれにせよ、専門的な知識が必要ですし、調査すべき内容も請求すべき内容も多岐にわたりますので、お近くの弁護士に相談されることをお勧めします。


遺産分割の話し合いが難航した場合の手続【Q&A №663】

 

【質問の要旨】

・亡父名義の土地・家屋を相続登記しないうちに、母死亡。
・母の遺言書は「相談者にすべての財産を相続させる」という内容。
・姉と遺産分割協議がまとまらない。
・固定資産税を相談者が支払っているが、姉にも支払わせる方法はあるか?
・税未納で競売になった場合、競売代金は相談者に全額支払われるか?

【ご質問内容】

父が死んで、(土地、家名義は父親)、相続登記しないうちに、母が死にました。
母の遺言書は(検認済み)は、私(長男)にすべての財産を相続させる、との内容でした。
それで、他の相続人である姉(結婚して遠方に住んでいる。)との話し合いがつかなかったので、市から送られてきた固定資産税の代表者を放置しておいたところ、勝手に市が職権で私を代表者にして、固定資産税の納入書類を送ってきました。
それには、○○(私の名前)外、と書かれていました。
1、それで、姉に連帯債務だから、固定資産税の相続分を支払ってくれ、といっても、応じてくれません。
それで、差し押さえされると困るので、私が全額支払っている状態です。
年間10万円ぐらいですが、5年間払っているので、姉にも支払わせたいのですが、何か方法はありませんか?(代表者の変更にも応じてくれない)
訴訟しても、金額が低いので、訴訟もできません。
2、このまま、しはらわないで、固定資産税が未納の状態であったため、市が債権者代位により法定相続分で相続登記をしてしまって、差し押さえ、競売と進んでいった場合、競売代金は、相続人代表者である私に全額支払われるのでしょうか?
受け取って、後で、姉に相続分をわたせばいいのでしょうか?

 

(nanba)


 ※敬称略とさせていただきます。

【現段階での不動産の帰属と固定資産税の負担について】

母はあなたに遺産全部をくれるという遺言書を作成しています。
ただ、父の遺産分割が終わっていませんので、父の遺産分割の手続きが必要になります。
そのため、遺産である不動産は
あなた 合計4分の3(父から4分の1+母から(遺言で)2分の1)
 姉   父から相続した4分の1
の割合で所有していることになります。
そのため、あなたは姉に固定資産税の負担を請求することができます。
現在、既に請求されているようですが、姉には4分の1の負担を求めるのが相当でしょう。
ただ、あなたがその不動産に居住しているようであれば、あなたが全額を負担することになるでしょう。

【姉が支払いをしない場合は調停を申し立てる】

姉との話し合いが難航しており、遺産分割協議がまとまらないのなら、遺産分割調停を家庭裁判所に申し立てるのが解決への近道です。
調停はあくまで双方の合意を成立させるための手続にすぎず、裁判のように一刀両断に判決を下す手続ではありません。
調停では、主として不動産をどのようにするのか、あなたが全部取得し、代償として姉に不動産の4分の1に相当する金銭の支払いをするのか、などの解決を目指すことになります。
その過程で、姉の未払い分の固定資産税も精算され、問題も解決するものと思われます。
なお、調停が不調になれば、裁判所が審判(家裁でする裁判)で結論を出します。

【滞納固定資産税の扱い】

行政としては、固定資産税等が未払いの場合、滞納処分として問題の不動産を公売することがあります。
この場合、売却代金ですが、全額があなたに配当されるわけではありません。
この代金は、固定資産税のような租税債権や公売費用などの必要経費が控除され、残額は相続分に応じて配分されます。
その結果、売却代金残額の4分の1は姉にも配当されることになります。
なお、あなたが立て替えた固定資産税5年分の金額は、別途姉に対し請求するほかなく、公売代金から直接差し引いてあなたが受け取ることはできません。


代位登記と遺言書の効力【Q&A №662】

 

【質問の要旨】

・父死亡。公正証書遺言では、自宅不動産は長男が相続。
・自宅の固定資産税未納のため、市が債権者代位により法定相続分で相続登記。
・長男が死亡し、公正証書遺言により長男の子が自宅を相続。
・長男の子が、自宅を自分の名義にするため、抹消登記請求。
・相談者は、長男の子から解決金を得るため、共有物分割請求をすることはできるか。
・なお固定資産税は、長男及び長男の子が分納。

【ご質問内容】

12年前に亡くなりました父は公正遺書を作成しています。
そこでそこに明記された相続人で貯金は分配済みです。
今問題になっておりますのは実家です。
公正書により長男が相続するはずでしたが未登記のうちに固定資産税未納で市により強制代位登記をされ当時の法定相続人5人が当分割で共同相続されています。(権利登記簿による)
長男の死により今孫(長男の子)が自分の名義にするため抹消登記のための手続きを要請してきました。
なお、固定資産税は分納しておりわたしたちへの和解金次第で完済するかどうか決めるようです。

わたしとしては固定資産税の5分の1の和解金のために共有物分割請求訴訟をしたいのですが可能でしょうか?

なお、実家は公正遺書により孫に遺贈すること、となっております。
私は代位のために債権者でもない一法定相続人ですが実家の5分の一の権利が代位されています。
なお私以外にもうひとりの法定相続人が和解金請求を長男の孫に要請しています。
債権者でない私の立場でできることをご教示下さい。
土地の鑑定は必要ですか?
よろしくお願いします。

 

(かっさん)


 ※敬称略とさせていただきます。

【ご質問内容の整理】

ご質問内容を以下の通り整理して回答いたします。
 ① 父が死亡した。父の公正証書遺言によれば、自宅不動産は長男が相続することになっていた。
 ② しかし、自宅の固定資産税が未納の状態であったため、市が債権者代位により法定相続分で相続登記をしてしまった。
 ③ 長男が亡くなり、長男の公正証書遺言により自宅を相続することになった長男の子が、自分の名義に戻そうと、抹消登記請求をしようとしている。
 ④ 父の相続人としては、長男の子から解決金を得るため、共有物分割請求をすることはできるだろうか。
 ⑤ なお、実家の固定資産税は、長男及び長男の子が分納で支払っている。

【他の相続人が遺言に反した代位登記を前提に権利を主張することは難しい】

まず、結論としては、遺言の存在を知らない第三者ならまだしも、遺言の存在を知っている他の相続人が、遺言に反した代位登記を前提に権利を主張することは、法的には難しいと思われます。
以下、その理由を説明します。

【債権者代位による相続登記とは】

通常、相続登記をする場合には、相続人が申請するのが原則です。
しかし、相続人又は被相続人の債権者が、自らの債権を保全するために登記申請をすることも、例外的に認められています。
今回のご質問の事案でいうと、固定資産税の支払請求権を有する市が、相続人らの財産を差し押さえるため、まずは法定相続分通りに相続登記をしたということです(おそらくその後、市による差押え登記もされていると思われます)。

【長男は、遺言記載の事項を他の相続人に対して主張できる】

以上の通りの代位登記の仕組みからすると、法定相続分通りの代位登記がされているとしても、実体としては遺言書どおり、自宅は長男(長男が亡くなった後はそれを引き継いだ長男の子)のものです。
そのため、あなた方他の相続人が、相続登記に基づいて権利主張をすることはできません。
ご質問によると、共有物分割請求を考えておられるとのことですが、上記の通りあなた方は所有権等の権利を有しているわけではありませんので、「共有」の事実がなく、共有物分割請求はできません。

【ただ、長男の子から解決金を支払ってもらうことはありうる】

もっとも、ご質問によると、長男の子は抹消登記請求をしようとしているようです。
抹消登記をする際には、被相続人を登記権利者(実際には真実の相続人である長男の子)、相続登記の名義人を登記義務者として共同で申請する必要があります。
そのため、長男の子としては、相続登記の名義人であるあなた方の協力なしには抹消登記をすることができず、協力が得られなければ訴訟を提起して判決を得て、抹消登記をすることになります。
したがって、あなた方としては、この手続きに協力する代わりに、解決金としていくらかの金銭(長男の子が訴訟をする際には弁護士に依頼する必要があると思われますので、その弁護士費用相当額くらいが解決金として妥当なところかと思います)を支払うよう、長男の子に対して求めるとよいでしょう。
また、もしもあなた方が実家の固定資産税の一部でも負担してきた事実があるのであれば、あなた方は長男の子に対して、支払った固定資産税の返還を求める請求(不当利得返還請求といいます)をも合わせて行い、解決金や固定資産税分の支払があれば抹消登記に協力するという姿勢をとられるとよいでしょう。


相続法改正11 相続人以外の者の貢献を考慮するための方策

【相続人以外の親族が被相続人の療養看護等をしたとき、金銭請求ができるようになりました】

たとえば、被相続人の長男の妻が長年介護をするというような事案は、よくあります。
しかし、これまでの民法では、被相続人の遺産を相続できるのは長男を含む相続人だけで、長男の妻自身には遺産をもらう権利はありませんでした。
これでは、相続人以外の親族による介護などの貢献が報われません。
そのため、今回の改正により、相続人以外の親族が、被相続人の介護や療養看護などを無償でしていた場合、相続人に対して金銭の支払いを請求できるようになりました。

【たとえば、長男の妻が長年介護をしていたケース】

例えば、被相続人の長男の妻が長年の介護を頑張ってきた事例で考えてみましょう。
長男の妻は親族ですが、相続人ではありませんので、通常は遺産をもらえない立場です。
それでも、被相続人の死亡時点で長男本人が健在であれば、長男の相続分を増やすことができる場合もあります。
しかし、もし被相続人より先に長男が亡くなっていたら、それすらもできません。
これでは、長男の妻の苦労があまりに報われず、不公平が大きいという問題が指摘されていました。
そこで、今回の改正で、長年無償で介護してきた長男の妻などの親族は、次男や長女などの相続人に対して、金銭(特別寄与料)を請求できるようになりました。

【特別寄与料の請求の要件】

特別寄与料の請求をするには、まず、被相続人に対する療養看護や介護、その他労務の提供をしていたことが必要です。
現在のところ、介護や看護が主に想定されているようですが、不動産などの財産管理や事業のサポートも含まれると考えられます。
また、これらは無償でやっていたことが必要で、被相続人から対価や報酬を受け取っていた場合には適用されません。
加えて、被相続人の財産の維持または増加に貢献したことも必要になります。

【特別寄与料の金額の定め方】

特別寄与料の金額と請求は、原則として当事者間での協議で決まりますが、協議が調わないときは、家庭裁判所に決定してもらうことができます。
このとき、家庭裁判所は、寄与の時期、方法、程度、相続財産の額、その他一切の事情を考慮して特別寄与料の額を定めます。
この算定にあたっては、相続人が自ら被相続人に対する療養看護を行った場合(寄与分といいます)と同様の算定方法がとられると考えられており、具体的には、以下のような計算式となります。

《計算式》
特別寄与料=第三者の日当額×療養看護日数×裁量割合

このうち、第三者の日当額とは、ヘルパーさんなどの第三者に療養看護をしてもらった場合にかかる日当額を目安にするとされていますが、介護報酬基準額を用いるという考え方もあります。
裁量割合とは、専門家(有資格者)に頼んだ場合よりは費用を控えめに計算するため、0.5~0.8を乗じて、寄与料を減額することになります。
たとえば、長男の妻が、被相続人を2年間にわたり、1日1時間程度介護していたという場合、身体介護(排泄、食事介助、入浴等)の介護費用がだいたい1時間あたり6000円として計算すれば、
  6000円×365日×2年間×0.7(裁量割合)=306万6000円
と計算され、介護をした長男の妻は、他の相続人らに対し、約300万円を特別寄与料として請求できるということになります。
ただ、家庭裁判所で判断をしてもらうことになれば、どの程度の介護をどのような頻度で何時間程度していたのかを何らかの形で立証することが必要になります。
そのため、日頃から介護日記をつけたり、関連する出費のレシートなどを保管したりしておくと良いでしょう。

【この改正の施行日は、2019年7月1日です】

この、新しい特別寄与制度の施行日は、2019年7月1日です。
相続開始時が2019年7月1日以降であれば、改正法が適用されます。


相続法改正10 相続財産に対する差押の効果見直し

【父に借金があった場合に問題となる

相続は財産も承継する代わりに、借金など負の財産(相続債務)も承継します。
今回はこの相続債務に関する法改正です。
相続債務というのは、亡くなったお父さんの負債、たとえば亡くなったお父さんに多額の借金があった場合、というイメージで捉えていただくとよいでしょう。

【知人に借金をしていた父の例】

今回の改正は非常に難しいため、参考ケースとして

・死亡した父は自宅不動産を所有していた
・父は、「自宅を長男に相続させる」と書いた遺言を残して死亡した。
・相続人は長男Aと二男Bの2名のみ
・その後、父は知人Xに1000万円の借金をしていたことが判明した。

という事例をベースに改正法を説明していきます。

【従来、二男の相続分は差押えできなかった】

従来の法律では、父が残した借金は次のような結果になっていました。

① 父の知人Xは、父に1000万円を貸しました。
 その際、父は「もしも返済しなかったら、自宅を差し押さえれば回収できる」と知人のXに説明していました。
② その後、父が死亡
③ 借金を返してほしい知人Xは、長男Aと二男Bにそれぞれ500万円ずつ、借金の返済を請求し、父名義の自宅不動産を差し押さえました。
④ これに対し、遺言で自宅を相続した長男Aは、遺言を使って登記をA名義に変更しました(相続登記)
⑤ すると裁判所から「この不動産は父の財産なので本来なら長男Aと二男Bとが共有する財産だったが、今回は後から遺言でA名義になった。そのため、二男Bの法定相続分はゼロになった。たとえ身内でも、二男Bに請求する借金で、別人であるA名義の財産を差し押さえることはできない。」と判断され、二男Bが引き継いだ借金(2分の1で500万円)を使って差し押さえをした自宅の相続分(2分の1)は差し押さえできませんでした。
⑥ その結果、知人Xは自宅を差し押さえても借金を返してもらえませんでした。
 
つまり、借金を返してほしい知人Xは、「自宅を差し押さえれば回収できる」と思って差し押さえをしたのに、後から遺言で長男名義にされると、二男に請求した金額(2分の1で500万円)の限度で差し押さえが無効になるということです。
自宅の売却代金の半分は借金返済に回してもらえない、という結果になってしまっていたのです。

このような従来の法律に問題があり、
「遺言があるかどうかは他人にはわからない。遺産である不動産を差し押さえた後に遺言が出てきて、自宅の名義を長男に変更されたら差し押さえが空振りに終わる、という法律は変えてほしい」という問題点が指摘されていました。

【改正後は二男の相続分も差し押さえが可能】

そこで、改正法では次のようになりました。

(改正後のルール)
「相続させる」旨の遺言があっても、法定相続分を超える部分については、登記などの対抗要件を具備しなければ、父の債権者など第三者に対抗できない。

上記は法律上の表現で難しいと思いますので説明しますと、遺言で自宅不動産をもらう長男Aは、知人Xより先に相続登記をしておかないと知人Xの差し押さえで長男A自身の法定相続分(2分の1)を超える部分(=二男Bの法定相続分)の差し押さえが優先することになったのです。
これを今回のケースで言えば、
長男Aが自宅をA名義に変更(相続登記)せず放置しているうちに知人Xが父の自宅を差し押さえた場合、長男Aの法定相続分を超える部分(=二男Bの法定相続分)は
(改正前)・・長男Aが優先し、(二男Bの法定相続分の)差し押さえは認められない
(改正後)・・・知人Xが優先し、(二男Bの法定相続分の)差し押さえが認められる。

「遺言で長男Aの財産になった」という反論は通用しなくなります。その結果、長男Aの法定相続分だけでなく、二男Bの法定相続分(自宅の2分の1)も有効に差し押さえられてしまうことになります。
逆に言えば、債権者である知人Xは、長男Aの相続登記より先に差し押さえをすれば、長男の法定相続分(2分の1)に加え、二男の法定相続分(2分の1)も差し押さえることができ、自宅の売却代金全額から借金を返してもらえることになったのです。

【「○○を相続させる」という遺言がある場合は早急に登記が必要】

このように、自宅などの相続財産を「相続させる」旨の遺言で財産を相続した長男Aは、早急に登記をしておかないと、父にお金を貸していた知人のXのような債権者から父の財産を差し押さえられてしまう、というリスクがあることになりました。
そのため、今後は遺言がある場合に早急に名義変更(相続登記)をしておかないと、せっかく相続することができた財産(自宅不動産など)も債権者の差し押さえが優先してしまう、ということを覚えておく必要があります。

【新制度は令和元年7月1日から施行】

この改正法は、令和元年(2019年)7月1日から施行されています。
つまり、同日以降に開始(死亡)した相続については、早急に遺言の有無を確認して相続登記を行っておかないと、債権者により法定相続分を超える持分の差し押さえを受ける可能性がある、ということになります。


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