大澤龍司法律事務所 相続問題無料相談ブログ

事実婚の夫婦がお互いのことを任せるための書面を作成したい【Q&A №675】

 

 

【質問の要旨】

・未入籍の夫婦(お互い独身籍)。
・「お互いの全部をお互いに任せます」との一筆を交わしたいが、どのようにすればいいか?

 

 

【回答の要旨】

・婚姻していないことで紛争が生じることがある
・生前の対策は任意後見で対処できる
・葬儀でもめないために死後事務委任契約を定める
・遺産の相続は紛争必死であるから、遺言書で対処する
・遺言書は公正証書遺言でする

 

【ご質問内容】

主人とは25年ほど一緒に生活をしておりますが籍は入れておらず別世帯となっております。
お互い独身籍です。
そこそこ年齢も重ねており入院経験もあるので今後のことで色々と心配な事がありますのでお互いの全部をお互いに任せますとの一筆は交わして置きたいと考えております。
その時はどのような文章を作成しておけば大丈夫でしょうか?宜しくお願い致します。

(junjun)



 ※敬称略とさせていただきます。


【婚姻していないことで紛争が生じることがある】

婚姻届出をして法律上の夫婦になった場合は簡単に解決することでも、同居だけのパートナーの場合には、相手のパートナーの親族との間で紛争が生じることがあります。
例えば、
① 生前に同居のパートナーが判断(意思)能力を失ったときに、もう一方のパートナーが財産管理をしていれば、《あなたはどういう権限で財産を動かしているのか!》という話が持ち上がることも考えられます。
② また、死後には次のような問題も生じます。
葬儀の主催者やその費用をどこから出すかについて、親族の方から《あなたはどんな権限があって、葬式をするのか》という詰問も考えられます。
また、死亡した同居のパートナーの残した動産などの廃棄処分なども、親族の方からの妨害でできないことも想定する必要があります。
③ 遺産分割をめぐっては、同居のパ―トナーは現在の法律では相続人ではありませんので、紛争は必至だと考えておく必要があります。

【生前の対策は任意後見で対処できる】

ある人が判断能力を失ったときは、成年後見人の選任ができます。
ただ、事実婚の場合は成年後見の申立権がなく、親族によって申立てられたとしても、通常の場合には、裁判所は家族や親族の中から後見人を選びます。
同居のパートナーであるあなたが後見人になりたいと言っても、裁判所は親族(推定相続人)の意見を聞きますので、その段階で反対が出てくれば、裁判所はあなたを後見人には選ばないでしょう。
長年連れ添ったパートナーの面倒を見たいというのなら、是非、任意後見契約を締結しておくといいでしょう。
また、判断能力を失わない場合でも、緊急な入院などの場合にそなえて、財産管理契約を結んでおくことも必要です。

【葬儀でもめないために死後事務委任契約を定める】

葬儀はいつ発生するかもしれない緊急事態です。
そのため、同居のパートナーに葬儀の手配などをしてもらいたいなら、遺言書で葬儀の主催者を定め、その費用をどこから出すかも明らかにしておく必要があります。
遺言書に葬儀の重要な点について書き、細かなことはパートナーとの間での死後事務委任契約で定めておくといいでしょう。

【遺産の相続は紛争必死であるから、遺言書で対処する】

現在の法律では、同居のパートナーは相続について何らの権利もありません。
そのため、法定相続人との間での紛争が必至です。
このような紛争を回避するために、遺言書を作成し、《遺産は同居のパートナーに》と明らかにしておく必要があります。
また、遺言書などでは大まかなことしか書けません。
そのため、財産の処理についての細かなことは死後事務委任契約で定めておくといいでしょう。

【遺言書は公正証書遺言でする】

遺言書については、偽造したなどと言われないために、公証役場で作成する公正証書遺言にする必要があります。
公正証書遺言なら、自筆遺言のような裁判所での検認の手続きが不要ですし、後でその効力を覆される場合も少ないです。
また、相続開始後、早期に遺言の執行に着手するために、遺言書の中で、遺言執行者をパートナーに指定しておくとよいでしょう。

同居のパートナーについては、法律で保護される場面は少ないです。
法律的な知識を活用して、できる限り、自分たちの身を守る方策を考えていく必要があるでしょう。

(弁護士 大澤龍司、弁護士 石尾理恵)

 

 

 

 

 


成年後見人に対する請求の可否【Q&A №674】

 

 

【質問の要旨】

・実母が認知症になり、5年前に後見開始申立をし、司法書士が後見人になった。
・15年前に実母に預けた200万円は返してもらえるか?(預り証は相談者が保管)
・相談者が裁判所に振り込んだ費用10万円は返却されるか?
・後見人は「実母が入居している施設を教える必要がない。弟に聞いてくれ」と言うが、これは普通のことか?

 

【回答の要旨】

・母に預けた200万円は、成年後見人に対して請求する
・後見申立時の費用は、原則申立人であるあなたの負担になる
・入所施設を教えるかは後見人が身上監護の観点から判断する

 

【ご質問内容】

跡取りの弟夫婦と同居いたしてた実母6年前より軽い認知症を発症、見舞う度々に劣悪な環境 虐待を含め。
裁判所に5年前、後見人を申請、現在,司法書士後見人がついており金銭は弟夫婦の自由にはできない環境になっておりますが施設の場所等は弟夫婦と後見人のみが存じとります。
従いまして孫はおろか実娘さえ合うことはできない状態です
15年前母親に預けた200万がございます。
母親の捺印がございます預かり証は私が保管いたしておりますが夫のがん治療のため物入りとなり預けた金銭の請求をいたしたいと存じますが可能でしようか?
又裁判所に母を認知症かと診断するときに申立人の私が10万ほど裁判所に振り込みましたがそのお金は返却されますでしょうか?
後見人は実母が入居している施設を教える必要がないとのことですがこれは普通のことでしようか?
後見人は今は虐待がないのだからいいでしょう知りたければ弟さんに聞いてくださいと。身上監護と金銭管理がしてほしく後見人をお願いいたしましたが目的とはかけ離れてしまいました。
よろしくお願いいたします。

(リンゴ)



 ※敬称略とさせていただきます。

【母に預けた200万円は、成年後見人に対して請求する】

まず、15年前に母に預けた200万円の預け金については、預かり証を示して成年後見人に対して返還請求をすべきです。
預け金は、返還期限から10年が経過すると、消滅時効により返還請求ができなくなりますが、預かり証に返還期限の記載がなければ、あなたが母に「返して」と言うことが可能になったときから時効が進行しますので、返還請求ができる可能性はあります。
この件は、成年後見人に請求してみるとよいでしょう。

【後見申立時の費用は、原則申立人であるあなたの負担になる】

次に、成年後見申立にあたってかかった費用についてですが、成年後見申立を親族が行った場合は、申立を行った親族が申立費用(申立手数料、通信用の郵券、鑑定費用、登記手数料その他申立事務に要する費用)を負担することになっています。
もっとも、成年後見申立時に、申立書の「申立の実情」欄に「非訟事件手続法28条により本人に費用を負担させる旨の裁判を求めます」と記載していれば、当然に裁判所の判断がなされますので、その判断の内容によっては、母に一部費用を負担してもらうことが可能になる場合もあります。
ただし、必ず負担してもらえるというわけではなく、裁判所の判断によりますので、注意が必要です。
今回の件では、もしかすると、申立時に上記記載をしなかったのかもしれませんが、その場合にも、一度裁判所に費用負担の裁判を求めたいと相談してみることをお勧めします。

【入所施設を教えるかは後見人が身上監護の観点から判断する】

最後に、後見人が、母の入所している施設を教えてくれないとの点ですが、あなたの立場からすれば、母に会えず、財産も費消されてしまうという問題があるからこそ、成年後見の申し立てをしたにもかかわらず、施設を教えてくれないのではまったく意味がないとのお気持ちであろうと思います。
ただ、親族に母の入所している施設を教えるか否かは、後見人と裁判所が、被後見人である母の身上監護を行うにあたって、どのような選択をするのが母のためになるかを考えて判断します。
私個人としては、一般的には、母のためを思えば、娘にも入所施設を知らせて、少しでも会えるようにしてあげるべきではないかと思いますが、後見人は後見人で、本件についての諸事情を考慮して、母の入所施設を教えるべきではないと判断したのだと思われます。
そのため、まずは後見人に対して、どうして施設を教えられないのか、その理由を文書で回答してもらうべきでしょう。
その上で、その回答が納得できないものであった場合には、家庭裁判所に対し、「後見人にこのような問題があるので、家裁の方でも事実関係を調べ、必要に応じて後見人に注意して下さい。」という趣旨のお伺いを立てるという方法もあります。
この申し出をする場合には、後見人から得た回答書も添付して裁判所に提出するとよいでしょう。

(弁護士 岡井理紗)


息子の妻による年金の使込みと不当利得【Q&A №673】

 

 

【質問の要旨】

・祖母が息子夫婦と同居。
・息子の妻が、祖母の年金を全額出金し、使途の報告もない。
・遺言書作成を提案したが断られた。
・息子の妻が使い込んでいる祖母の年金を取り戻せるか?

 

 

【回答の要旨】

・祖母が返還請求できるが、現実には困難な情勢かもしれない
・相続開始後であれば、相続人のあなたの母が請求できる
・今後、祖母の財産を守る方法として成年後見人制度の利用が考えられる
・相続人である母として今すべきことは証拠集めです

 

【ご質問内容】

二世帯住宅で一階には祖母一人、二階には息子夫婦が住んでいます。
祖母は買い物、ご飯の支度を同居の嫁に依頼しているのですが買い物を頼んでも『売り切れていた』『買いに行けない』等と言われるため孫の私が月一回程度祖母の家を訪ね買い物をしています。
そして夜とお昼は『お金を払わないと作ってもらえない』と祖母は毎月数万円を払っているそうです。
ですが嫁が用意するのは惣菜やレトルト。
温めるだけのうどんに3切れのカステラの日も。栄養も愛情もないご飯を祖母は一人で食べています。
嫁は習い事やアルバイトや実家に帰るなどほとんど家にいません。
とても祖母の世話をしているとは言えないし、祖母が大事にしてもらっていない事はよくわかります。

年金も全額嫁が出金し、何に使っているのか報告もないと祖母は言っています。
以前祖母や実の娘(私の母)がお金の事を聞くと怒り出したそうで、旦那すら怖くて口を出さない状況になっています。

以前祖母は『死んだらお金は全部嫁がとるだろうね。あの人は怖い人。』と言っていました。
遺言書を提案したのですが高齢の母には面倒だと断られています。
祖母もボケはじめ、体調も悪く、この先の相続などを考えても嫁がいいようにするのが目に見えており許せません。

嫁が使いこんでいる祖母の年金を取り返す事は出来るのでしょうか?

(鳥越孫)



 ※敬称略とさせていただきます。

【祖母が返還請求できるが、現実には困難な情勢かもしれない】

祖母は、息子の妻に勝手に使い込まれた年金について、返還請求(根拠は不当利得返還請求又は不法行為の損害賠償請求)をすることができます。
ただ、祖母が生きておられますので、その請求ができるのは祖母だけです。
もっとも、本件では、祖母は遺言書の作成ですら面倒であると拒んでいる状態であり、祖母に返還請求する意思があるか疑問です。
むしろ、祖母の置かれている状況から見れば、返還請求は難しいかもしれません。

【相続開始後であれば、相続人のあなたの母が請求できる】

祖母が亡くなられた場合、あなたの母は法定相続人になります。
そのため、祖母の持っているその息子の妻に対する請求権も相続され、法定相続分の限度で請求することが可能です。
また、息子の妻の使い込みに、息子が協力しているのであれば、息子も共同不法行為をしたものとして賠償責任を負いますので、母としては息子に対する請求も考えられるといいでしょう。

【今後、祖母の財産を守る方法として成年後見人制度の利用が考えられる】

現在、祖母の判断能力が低下してきているということですが、まったく判断能力がなくなれば、成年後見制度(補助、補佐、成年後見)を利用して、家庭裁判所によって選任される弁護士や司法書士といった専門家等に祖母の財産管理を委ねることが考えられます。
母からの申立ても可能ですので、検討されるといいでしょう。
ただ、祖母が返還請求を行う場合や成年後見制度を利用する場合、祖母と息子の妻は同居しているので、息子やその妻との関係が悪化し、祖母が家に居づらくなること等が考えられます。
今、一番に考えるべきは、祖母の残されたこれからの生活を実りあるものとすることでしょう。
その観点からいかなる対応が望ましいのかを検討されるといいでしょう。

【相続人である母として今すべきことは証拠集めです】

最後に、母としては、将来の遺産分割を考え、現段階で祖母にどのような預貯金があるのか、また、無断で出金されているのはどれなのかという証拠集め(祖母からの聞き取り、預貯金通帳のコピーなど)をしておき、将来の発生するかもしれない争いに備えておかれるといいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)


預金使い込みと相続税【Q&A №672】

 

 

【質問の要旨】

・認知症で施設に入所中の父の貯金から、弟が不正に出金している(10年間で4000万円)。
・不正出金については、黙認するつもりでいる。
・父の死亡時、不正出金についても相続税の課税対象となるか?
(弟は相続税を支払えない見込みである。)

 

 

【回答の要旨】

・法律上、父の有する不当利得返還請求権は遺産になり、相続税の課税対象になる。
・遺産に入れると相続税の基礎控除額にほぼ匹敵する額になるので、税理士に相談し、具体的な相続税申告のための対策を検討するのが望ましい。

 

【ご質問内容】

長文ですが、よろしくお願い致します。
まず、被相続人・相続人としての家族関係は、父、私(兄)、弟の3人になります。母は他界しております。

父は重度の認知症と診断されてから今に至るまでの10年間、施設にお世話になっております。
(後見人制度は使っておりません)
父の入居から今に至るまで、弟が父の貯金をキャッシュカードを使って勝手に引き出してることがわかりました。その額は10年間で4千万円になります。

弟に事情を聞くと、生活費や旅行代として弟の家族の為に使っていたことがわかりました。
また、父に無断での使い込みであり、贈与でないこともわかりました。

弟には持病があり、収入もかなり低く、また子沢山であることから経済的に困窮していることを、私は知っていますので、使い込みを責めるつもりはありません。また、将来父が亡くなり相続が発生する際にも不当利益返還請求などをするつもりもありません。むしろ、甥や姪達の為に今後も使い込みを黙認するつもりです。
よって、相続争いにはなりません。

ここからが質問となります。
父が亡くなった際の相続税を懸念しております。
既に使い込んだ金額も相続税の課税対象になるのでしょうか?
対象となる場合、弟は相続税を支払うことができません。ご多忙の中恐縮ですが、ご教示をお願い致します。

(もんじろう)



 ※敬称略とさせていただきます。

ご相談内容は、相続税に関するものです。
弁護士は法律の専門家ですので、主として法律面からの回答をします。
税金の専門家は「税理士」ですので、正確なことは税理士に相談されるよう、お勧めします。

【法律上は、父の有する不当利得返還請求権は遺産だと言わざるをえない】

弟が父の財産を無断で使いこんだことが間違いないのであれば、法律上、父は不当利得返還請求権という債権を有していることになり、この権利は遺産を構成することになります。
父からもあなたからも、不当利得返還請求をするつもりはないとのことですが、権利者が請求をしなくとも、権利は存在します。
そのため、税務署から遺産だと言われれば反論はできないでしょう。

【専門家である税理士に相談を】

前項に記載したように、法律上はこの請求権も遺産になりますので、相続税を申告するのならこの権利を加算する必要があると言わざるをえません。
ただ、父の相続人は2名ですので、相続税の基礎控除額は4200万円になります。
不当利得請求権額4000万円は、この基礎控除額にほぼ匹敵する額です。
他に高額な不動産などの遺産があれば、かなりの多額の相続税を支払う必要があります。
特に弟が税の支払いができないということになると、あなたが税を全額負担するということになります。
《ここからが税の専門家である税理士の出番になります》
そのため、どのような税務申告をしたらいいか、相続税をできるだけ安くする方法はないか、税理士の知恵を借りるために税務相談をなさるといいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)


叔父による無断解約と不当利得【Q&A №671】

 

 

【質問の要旨】

・祖母は現在施設に入所中。相談者がキーパーソンとなったが、以前同居していた叔父夫婦が頻繁に不正出金していた。
・年金の引き出し、死亡保険の解約、定期預金解約、100万円の取り込みなどがあった。
・祖母のお金から毎月10万円を叔父に振り込むようにいわれた。払う必要はあるか?

 

【回答の要旨】

・祖母の口座からの出金は無断で祖母のために使われていないのなら返還請求できる
・保険の解約返戻金を叔父が取得したなら返還請求できるし、贈与なら遺産に持ち戻しができる
・定期預金を解約したお金を叔父が取得した場合、無断なら返還請求できる
・叔母が受け取った100万円の出金は無断なら返還請求できる
・同居していた時の慰謝料を支払う必要はない

 

【ご質問内容】

祖母は元々、父の兄夫婦と一緒に暮らしておりました。
今は、老人ホームへ入っています
老人ホームに入ってからは私がキーパーソンとなり身の回りのことをやっていますがそこで疑問があります。
◎叔父から預かった祖母の年金が振り込まれる通帳を見ると、年金が振り込まれた当日か翌日には全額が引き出されていました。叔父の話では2ヶ月で十万の生活費をもらっていると言う事でしたが全額
◎祖母は死亡保険を毎月2万払っていましたが、その保険を叔父は独断に解約していました。計算してみると数百万です
◎定期のお金があり、叔父が祖母の定期を解約したと話していたのですが、叔父がしてもいいものなのでしょうか??そのお金も祖母のお金に振り込まれた形跡はありません。
◎祖母の通帳を私達に渡す時叔母が結婚前に貯めた貯金がなくなってしまったからと祖母のお金から100万円もらったと言っていましたが、叔父の独断でもらっていいものなのですか??
◎叔母の結婚前のお金と言っても今から40年以上も前の話で家も2回も立て直してたらお金はなくて当然だと思うのですが。
◎通帳を私達に、渡す時、毎月約10万のお金を叔父に振り込むように言われました。
同居してた時の慰謝料だと話していますが、払う必要はありますか??
私がキーパーソンとなってからは、叔父家族は全く祖母に関わらなくなり、そんな叔父家族にお金だけ取られる事に疑問を感じています。

(やま)



 ※敬称略とさせていただきます。

【祖母の口座からの出金は無断で祖母のために使われていないのなら返還請求できる】

まず、祖母との同居時、年金が振り込まれるたびに年金分が引き出されていたとの点ですが、これを叔父が無断でしたのであれば、不正出金として、祖母から叔父に対して返還請求をすることができる可能性があります。
返還請求できるためには、
① 叔父が祖母に無断で出金したこと
② 叔父が出金した金員を取り込んだこと
を証明することが必要です。
ただ、同居している者が出金してはいるが、その額が多額でなく、祖母の生活費のために使用していたような場合には、祖母のために使われたものとして、②の要件を満たさず、返還請求ができません。
ご質問には、叔父が「2か月に10万円程度」もらっていたとの記載もあります。
祖母のもらう年金の中から、その一部である月5万円を叔父に渡していたというのであれば、それに祖母が同意していれば、叔父の生活費の補助あるいは同居して祖母の面倒を見たお礼の意味合いもあり、返還を請求をすることは難しいでしょう。
ただ、年金額がかなり多額であり、生活費を大幅に上回っている場合に叔父がその全額を出金して行方不明であれば、祖母が同意していないことを条件として、叔父の取り込みとして返還請求が可能になります。

【保険の解約返戻金を叔父が取得したなら返還請求できるし、贈与なら遺産に持ち戻しができる】

次に、祖母の保険契約を解約することができるのは、契約の当事者である祖母だけです。
そのため、叔父が独断で、祖母の保険を無断で解約したのであれば当然、解約の効果はなく、無効です。
ただ、保険解約には、本人の署名又は祖母から実印付きの委任状を保険会社に提出する必要があります。
本件においても、祖母の署名及び実印付きの委任状が保険会社に提出されているものと思われます。
そのため、保険会社にどのような書類が提出されたのかを確認する必要があります。
祖母の筆跡で叔父に委任状を渡している書類が存在する場合には、祖母の同意があったと判断される可能性が高いでしょう。
同意があったと判断される場合でも、解約返戻金は祖母が受け取るべきものですので、叔父がその解約返戻金を祖母に無断で取得していた場合には、不当利得となり、祖母は叔父に対して返還請求ができます。
なお、祖母が、叔父が出金・使用することを同意していた場合には、その分は生前贈与であり、「特別受益」として、遺産分割の際に遺産に持ちもどされ、叔父が遺産の先払いを受けたものとして扱われることを知っておくといいでしょう。(リンク:Q&A №334をご参照ください。)

【定期預金を解約したお金を叔父が取得した場合、無断なら返還請求できる】

定期預金についても、基本的には保険と同じです。
叔父が祖母に代わって解約するのであれば、祖母の取引印と委任状が必要になりますので、それが提出されている限りは、叔父が祖母に無断で解約したと立証するのはなかなか難しいです。
ただ、解約したお金を叔父が祖母に無断で取り込んでいるのであれば、不当利得になりますし、祖母が叔父にあげたのであれば、贈与になります。

【叔母が受け取った100万円の出金は無断なら返還請求できる】

叔母が受け取った100万円についても、基本的に前記と同じで、祖母に無断であれば叔母に不当利得として返還請求が可能になりますし、また、そのような行為をした叔父について不法行為で損害賠償を求めることもできます。
そのため、ここでも預貯金の払い戻し書類を確認しておく必要が あります。
ただ、キャッシュカードでの出金の可能性もありますが、その場合にはそのカードを保管していた者(おそらく叔父)が引き出したと推定される可能性も高いです。
なお、祖母が同意していた場合には、叔母は法定相続人ではないため、原則として特別受益としての持ち戻しができませんのでご注意ください(リンク:Q&A №668をご参照ください)。

【同居していた時の慰謝料を支払う必要はない】

叔父が「同居していた時の慰謝料」という主張している点については、細かな事情が分かりませんが、まず、このようなケースで慰謝料が認められることはないでしょう。

又、叔父への月10万円の支払いも、祖母の意思を確認する必要がありますが、明確に《そのようにして欲しい》という回答でない限り、支払いの必要はありません。

(弁護士 岡井理紗)


父から母への贈与と特別受益【Q&A №670】

 

 

【質問の要旨】

・亡父が生前、母と姉に土地を贈与。
・母は病気がちの父を助けるため農業に尽力し、一方で姉は何もしなかった。
・母への贈与は、姉と同様に特別受益になる?寄与分は認められる?

 

【回答の要旨】

・原則として、父からの生前贈与は遺産の先渡し(特別受益)となる
・持戻し免除の意思表示があったといえれば持戻しは不要
・母は、持戻し免除の意思表示の主張をすべき
・寄与分についても主張はすべき

 

【ご質問内容】

今年の3月に父が91歳で亡くなり、母(90歳)と姉と私の間で遺産分割協議を進めています。
30年前、姉は家を建てるとき父から土地の贈与を受けていました。
姉もこの土地が特別受益になると認めています。
また、25年前、母も父から住んでいる家の敷地(2/3)の贈与を受けています。ところが、姉は母が父から贈与を受けた土地についても特別受益になると主張しています。
私の両親は農業を営んでいて、父は病気がちで、母が中心となって働いていました。
父は生前、母が農家を維持するのに多大きな貢献をしてくれたことへの感謝と、自分が亡くなっても母が困らぬように母に土地を贈与したと言っていました。
姉は父に何の貢献もしなかったのに土地をもらいましたが、母は農家の嫁として一生懸命に働き、父に尽くしてきました。
このことから私は、母が贈与を受けた土地を特別受益とする姉の主張は不公平で納得がいかなく、逆に母に寄与分が認められるのではと思いますが?

(ももクロ)



 ※敬称略とさせていただきます。

【原則として、父からの生前贈与は遺産の先渡し(特別受益)となる】

生前に法定相続人のうちの誰かが被相続人から財産の贈与を受けている場合には、《特別受益》として遺産に持ち戻します。
これは、相続人間での公平を図る目的で定められたものであり、生前贈与は遺産の先渡しと考えてのことです。
そのため、父から姉への土地の贈与も、父から母への自宅敷地の贈与も、原則的には特別受益となり、遺産分割の際には、遺産に持ち戻して計算することになります。

【持戻し免除の意思表示があったといえれば持戻しは不要】

ただ、被相続人が、明示でも黙示でもよいので、遺産に持ち戻ししなくてもよいという意思表示をしていたことが証明できれば、特別受益であっても遺産に持ち戻す必要はありません。
黙示の持戻し免除の意思表示があったか否かについては、贈与の内容及び価額、贈与の動機、被相続人との生活関係、相続人及び被相続人の職業、経済状態及び健康状態、他の相続人が受けた贈与の内容・価額及びこれについての持戻し免除の意思表示の有無など諸般の事情を考慮して判断すると考えられています。
具体的には、
①家業承継のため、特定の相続人に対して相続分以外に農地などの財産を相続させる必要がある場合
②被相続人が生前贈与の見返りに利益を受けている場合(被相続人との同居のための居宅建設における土地使用の権限付与など)
③相続人に相続分以上の財産を必要とする特別な事情がある場合(病気などにより独立した生計を営むことが困難な相続人に対して生活保障を目的としてなされた贈与、妻の老後の生活を支えるための贈与など)
などでは、明示的な持戻し免除の意思表示がなくても、黙示の持戻し免除の意思表示があったと認められる可能性があります。

【母は、持戻し免除の意思表示の主張をすべき】

ご質問の事案の場合、父が生前に、母が農家を維持するのに大きな貢献をしてくれたことへの感謝と、自分が亡くなっても母が困らぬように母に土地を贈与したと言っていたとのことですので、母は上記父の発言を理由に、持戻し免除の意思表示があったと主張すべきです。
実際に、母は病気がちの父のために農業に尽力されたとのことですし、上記具体例の中の③妻の老後の生活を支えるための贈与との意味もあると考えられますので、持戻し免除の意思表示があったと認められる可能性は高いと思われます。
※なお、相続法改正により、2019年7月1日以降に、婚姻期間が20年以上である配偶者に対して、居住用建物又はその敷地を贈与した場合には、原則として、持戻し免除の意思表示を推定し、遺産に持ち戻さないことになりました。
今回の事案では、直接この改正の対象になるわけではありませんが、亡くなられた方の配偶者を保護しようとする最近の流れからすれば、今回の事案でもある程度有利に働くのではないかと思われます。

【寄与分についても主張はすべき】

最後に、寄与分についてですが、寄与分とは、「被相続人の財産の維持又は増加に特別の寄与をした」場合に認められるものであり、通常期待される程度を超える貢献が必要とされています。
母は病気がちの父に代わって、必死に働き、家計を支えてきたものと思われますが、寄与分はなかなかハードルの高い制度ではあります。
仮に認められたとしても、その額は200万円~300万円程度であり、また、特別受益と寄与分の両方が認められるということは通常ありません。
被相続人のために寄与した分は、特別受益という形で評価されていると考えられるからです。
そのため、寄与分の主張はすべきですが、なかなか認められないですし、特別受益の持ち戻し免除のほうが母の利益としては大きいということはご理解いただいたほうがよいと思います。


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