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★【相続判例散策】被相続人の生前に解約された取引履歴の開示請求(東京高裁 平成23年8月3日)

【被相続人の生前に解約された取引履歴は開示しなくてもよい】
(平成23年8月3日 東京高裁)

 被相続人の預金の履歴照会については、共同相続人全員の同意は不要であり、共同相続人の一人から照会でも、金融機関は開示しなければならないという最高裁判例が出ています(「【相続判例散策】平成21年1月22日 最高裁判例」)参照)。
 しかし、平成23年8月3日に東京高裁は、金融機関は《被相続人の生前に解約された》預金口座の取引履歴を開示すべき義務は負わないとする内容の判決をしました。
 同事件は、被相続人の生前に解約された口座の履歴開示を求めたものですが、裁判所は
①被相続人の生前に解約された預金口座については、金融機関は、本来の預金者(被相続人。以下、預金者といいます)に対してであっても、いつまでも預金を開示する義務を負うわけではない。
②金融機関としては、解約後、預金者に遅滞なく、従前の取引経過及び解約の結果を報告するべき義務を負うに過ぎない。
③金融機関としては元の預金者に対しても開示義務はないのであるから、相続人に対して開示する必要はない。

と述べ、相続人の開示請求を認めませんでした。

 判決が法的な根拠とするのは、預金を預かるのは、委任契約や準委任契約と同様な面があるが、委任契約等では任務の終了した後、速やかに経過及び報告をすればよい(民法645条、656条)という規定があり、金融機関は解約時にその手配しており、なすべきことはしていたというものです。
 この理屈からいえば、共同相続人の一人どころか、全員の同意があっても、取引履歴の開示は不要という結論になります。
 この判例では金融機関の調査の手間が大変であることが強調されています。
 しかし、金融機関は預金者の多額の金銭を預かるのであり、その金銭の動きについての照会があれば、誠実に回答するべき義務があるというべきでしょう。

 又、判例は金融機関の調査の手間が大変ということをこの判決は述べていますが、預金者の全部が履歴の照会をするわけではありません。
 調査のために多額の費用がかかることも判決は述べていますが、金融機関であれば、当然、負担するべき費用だと思います。

 なお、この判例のケースでは、取引期間を特定せずに照会したものですが、現在の弁護士会照会の扱いでは原則5年間という期間限定で照会をしています。
 この東京高裁の判例は、当然のことながら、前記最高裁の判例を引用しながら議論を進めていますが、果たして、最高裁の判例の趣旨に合致するかどうか、極めて疑問だと思われます。
いずれにせよ、この東京高裁の判決については上告されていますので、今後、最高裁の判断が示されるものと思われます。

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