大澤龍司法律事務所 相続問題無料相談ブログ

在宅介護費用と特別寄与【Q&A №507】


【質問の要旨】
看護を負担した相続人が他の相続人に費用請求できるか

記載内容  介護 扶養 不公平

【ご質問内容】
私が、仕事を休んで、平成22年7月から平成25年1月まで自宅で看護(導尿行為、バイタルチェック、塩分1日8グラムの食事作り)を行ってきました。
相手(姉2人)は近所に住んでいながら、一切協力せずに遊びまわり、扶養義務調停にも出廷せず、扶養義務調停が終わる前に父親は亡くなりました。
一番上の姉は生前贈与(住宅購入資金の一部として現金300万円)を昭和48年頃に貰い、高校と短大も我儘を言って私立に通っていました。
私と下の姉は公立高校で終わっております。
短大卒業後すぐに結婚しましたので嫁入り道具と、結婚資金等は、両親が出しています。
なお、私は平成22年2月に腰に金属を入れる手術を行っておりその後絶対安静時に看護が始まり現在は酷い後遺症が出ております。
財産は私たちが住んでいる土地建物しかありません。
土地は路線化で2800万円位(約82坪)建物の名義は13分の11は、私の名義になっております。父親名義の分の建物の評価は53万円程です。

(くま)


【介護費用は請求できないが、特別寄与の可能性がある】
親子間では互いに扶養義務があります。
そのため、子であるあなたが約2年半もの間、自宅でお父さんの介護をしたとしても、これは扶養義務を履行しただけであり、これをしなかった他の扶養義務者(今回は2人のお姉さん)に請求することはできません。
親子間に扶養義務が定められている以上、子として介護等をするのは当然のことであり、他の扶養義務者に介護のための労力等の費用を請求することはできないというのが、今の法律です。
しかし、あなたが介護をしたことにより、ヘルパー代や看護師料、老人ホーム入居費用等が減り、その分、遺産の減少が食い止められたというような事情があれば、その減額分を《特別寄与》として請求すれば、遺産から支払ってもらえる可能性があります。
(なお、介護の努力がどのように遺産分割に反映されるかという点は、当ブログQ&A №386Q&A №254などにも同様の話が出ておりますのでご参照下さい。)

【住宅購入資金の生前贈与は特別受益になる】
一番上のお姉さんが住宅購入資金の一部として金300万円をお父さんからもらったというのであれば、特別受益になりますので、遺産に持ち戻した上で遺産分割をすることになります。

【短大への進学に関する費用は原則として特別受益にならない】
一番上のお姉さんが短大に行かせてもらった点ですが、教育については子の能力の問題もあり、又、親の子に対する扶養の問題であり、遺産の前渡しという意味は持たないという判例もあることから、原則として特別受益にならない可能性が高いです。
ただ、私の担当した案件ですが、私立の医大に行った場合には、その授業料額が莫大であることや医師という社会的に重要な資格を取得することから、特別受益として対応したことがあります(なお、当ブログQ&A №375を参照ください)。

【参考判例】
大阪高裁決定平成19年12月6日
「被相続人の子供らが、大学や師範学校等、当時としては高等教育と評価できる教育を受けていく中で、子供の個人差その他の事情により、公立・私立等が分かれ、その費用に差が生じることがあるとしても、通常、親の子に対する扶養の一内容として支出されるもので、遺産の先渡しとしての趣旨を含まないものと認識するのが一般であり、仮に、特別受益と評価しうるとしても、特段の事情のない限り、被相続人の持戻し免除の意思が推定されるものというべきである。」

【結婚資金について裁判例は分かれるが・・】
結婚資金については、裁判例がわかれていますが、私は挙式費用などは、特別受益には当たらないと考えています。
その理由は、挙式費用は、結婚式という一過性の支出であり、後に残るものではないことや、結婚式が結婚する当事者のみならず、その両親や親戚のためにするという側面を有すること、更に親としても相続分の前渡しとして挙式費用を出すのだという意識はなく、持ち戻し免除が推測されること、更に通常の場合、すべての子が多かれ少なかれ親の援助で結婚式をしていると思われることなどからです。
なお、嫁入り道具や持参金などは金額が高額であれば特別受益に該当するでしょう。

【参考判例】
① 名古屋地裁平成16年11月5日
「嫁入り道具や持参金等がこれ(弁護士注:特別受益)にあたることはいうまでもない。しかしながら、結婚式や結納の式典そのものに生じた費用については、婚姻する者のみならずその両親ないし親戚一同にとって重要な儀式であることに鑑みると、両親が子の結婚式や結納の式典に生じた費用を支出したとしても、それを両親から子に対する「婚姻のため」の贈与と評価すべきではなく、特別受益にあたらない。」
② 仙台地裁平成5年9月7日
「右程度の援助(弁護士注:結婚披露宴費用のうち祝儀代を引いた残額二〇万円の援助)は、本来通常必要なものであるが、他の妹弟が結婚に伴う援助を受けていないことを考えると、特別受益に該当するものといわざるを得ない。」
③ 盛岡家裁昭和42年4月12日
「相続人が婚姻に際し、被相続人より挙式費用等を負担してもらっているが、その金額も高額でないので、いずれも民法903条にいう贈与として相続分の算定につき斟酌すべきではな」く、特別受益に該当しない。」

【その他の問題点・・土地使用借権が特別受益の可能性あり】
あなたがお父さん名義の土地の上に建物の持ち分を有しておられるのであれば、その土地をあなたの建物のために無償使用している(使用借権)の贈与と主張される可能性もあり、あなたの方でも特別受益が問題になりかねませんので、その点はご留意ください。

(弁護士 大澤龍司)

生命保険も遺産分割しないといけないのか【Q&A №299】


 先日夫が亡くなりました。
 夫には先妻との間に子がないため養女をもらっています。
 養女は早くに結婚し家をでています。その後に後妻に入りました。

 夫が保険をかけ死亡受取人が妻になっています。
 養女が保険金の遺産分割を要求しています。
 その他にも夫名義財産がありそれは半分にすることになっています。
 この場合養女に支払わないといけないのでしょうか?

記載内容  生命保険 受取人 不公平

(M・K)


【生命保険金は遺産分割の対象としないのが原則】
 生命保険金は遺産とは別個のものであるとするのが裁判所の判例です。
 その理由は、生命保険金の支払いは、生命保険契約に基づいて支払われるものであり、相続により支払われるものではないからというものです。
 したがって、生命保険金はあなたが全額を取得してよく、保険金を除外したその他の遺産について養女の方と遺産分割協議をすることになります。

【例外として遺産に持ち戻しされる場合もある】
 ただ、保険金額と遺産総額とを比較した場合、あなたが保険金を全額受け取ることが相続人間で著しく不公平となる場合には例外的に遺産の中に持ち戻されてしまい、遺産分割の対象となる場合があります(当ブログQ&A №298 もご参照ください)。

 質問のケースの場合、もし他の遺産額に比べて保険金の額が圧倒的に大きい、保険を除けば遺産はほとんど存在しないなどの事情があった場合には、遺産に組み入れる必要がある場合もあるでしょう。

【著しく不公平かどうかの判断材料】
 過去の裁判例では、生命保険金が遺産総額の約60%程度もあった場合には、生命保険金を遺産にもち戻し(繰り入れ)したものがあります。
 ただ、生命保険金と遺産総額との比較だけでなく、
・あなたと被相続人との婚姻生活が何年間であったのか ・あなたが被相続人の介護等をどの程度していたのか ・養女が家をでたきり、全く、帰ってきていないのかどうか ・あなたや養女の生活ぶりはどうか などという点も裁判所は判断材料にして、著しい不公平になるかどうかを判断することになりますので、その点もご留意ください。

生命保険が遺産に含まれる場合とは【Q&A №298】


・父(既に死亡)の遺産(土地建物1500万)→長男が相続)
・母(先日死亡)の遺産は預貯金のみ1000万。(専業主婦のため、原資は父の遺産の預貯金)
・相続人は長男と私。

 先日母は、「全ての遺産を長男に相続させる」旨の遺言書を残し死亡しました。

 長男は、預貯金だけでなく、死亡保険金(生命保険)を約1000万円も受け取っています。
 死亡保険金が遺産にならないことは調べましたが、その割合が大きいときや余りに不公平な時は、訴訟に於いて、遺産と認められる事があると知りました。

 父の相続時に土地建物は長男が相続しましたが、その他の一切の遺産については「家以外は何もない」と取り合ってもらえません。
 その内、母が余命宣告されたので、改めて父の遺産について問いただした所、父の遺産の預貯金は「全員で協議の上、母が相続した」「分割協議書は作成していない。日時も忘れた。」と主張しています。

 兄は、父の遺産の土地建物(1500万円)と生命保険1000万円を受け取り、母の遺産の貯金(750万円)を相続します。

 引きかえ、私は父の遺産も何一つもらえていないばかりか、今回母の遺産の遺留分しかもらえません。(およそ250万円)

 このような場合は、上記の不公平に当たりませんか?
 死亡保険金1000万円は、遺産と認められないのでしょうか?

記載内容  生命保険 受取人 不公平 特別受益 特段の事情

(ひびき)


【裁判例からみる判断基準】
 ご指摘の通り、生命保険は原則として遺産ではないものとして扱われ、受取人となった人物(今回は長男)が単独で全額を受領できます。
 ただ、この点に関する最高裁判所の裁判例では「保険金受取人である相続人とその他の相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合」には例外的に保険金も特別受益として持ち戻すことが可能であるとの判断が示されています。

 ここでいう民法903条とは、特別受益の遺産への持ち戻しに関する規定です。
 この判例では、不公平が民法903条の趣旨に照らし《到底是認することができないほどに著しい》ものであると評価すべき《特段の事情》と判断される場合にのみ、保険金の遺産への持ち戻しを認めています。

【具体的な数字でいうと・・】
 問題は、どの程度であれば、《到底是認することができないほどに著しい》ものであると評価すべき《特段の事情》とされるのかです。
 これまでの裁判例からいえば、遺産総額が約8423万円で、生命保険金額が約5150万円で、生命保険金の遺産総額に対する割合(5150万円÷8423万円)が約61%になるケースでは、持ち戻しを認めた高等裁判所レベルでの決定があります。
 遺産総額に対する割合だけで判断されるわけではありませんが、遺産総額の50~60%程度なら、《特段の事情》に該当する可能性があるといっていいでしょう。

【本件の場合には・・】
 質問ではお父さんの相続とお母さんの相続が記載されていますが、生命保険金はお父さんの相続の時の話ですので、お父さんの相続だけが問題になります。
 お父さんの遺産総額は建物が1500万円、預貯金が1000万円の合計で2500万円です。
 これに対して生命保険金が1000万円ですので、生命保険金は遺産総額の40%になります。
 遺産総額の半額以下ですので、著しく不公平とまではいかない可能性のある微妙なケースということになります。

【その他に考慮される事情】
 特段の事情の有無の判断には、前記のとおりの保険金額、遺産総額に対する割合の他に、

① 被相続人と受取人の同居の有無 ② 被相続人の介護等に対する受取人の貢献の度合い ③ 各相続人の生活実態等
が考慮されますので、調停や裁判等になれば、これらの点を調査の上、必要に応じて有利な点を主張されるといいでしょう。

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