大澤龍司法律事務所 相続問題無料相談ブログ

★持ち戻し免除を受けたい【Q&A №503】


【質問の要旨】
特別受益の持ち戻し免除について

記載内容  特別受益 免除 相続対策

【ご質問内容】
司法書士のもとで生前贈与の手続き、および遺言書作成をしましたが、現在、他の相続人から遺産分割申立書が来ました。
生前贈与手続き、遺言書作成を、司法書士に確認し、これなら生前贈与を受けたものは守られると聞いていたのですが、今になって、みなし相続財産として組み込まれることが分かりました
また、特別受益の免除を証明をしておけば、生前贈与を受けたものは持ち戻ししなくてよいという説明は一切ありませんでした
この場合、泣き寝入りするしかないのでしょうか?
宜しくお願い致します。

(あずき)


【税金の問題と相続の問題は別個である】
相続税対策として、被相続人の生前に金銭を贈与することがありますが、このような対策は節税にはなるものの、遺産分割については特別受益になります。
税務と相続(民法)の違いの例としては、死亡保険金は税務上は遺産として扱われるのに、民法上は遺産としては扱われない等、多々あります。

【相続分割(民法)では生前贈与は遺産の先渡しと考える】
生前に法定相続人の一部の人が財産の贈与を受けている場合には、相続に関する法律である民法では、《特別受益》として遺産に持ち戻します
これは相続人間での公平を図る目的で定められたものであり、生前贈与は遺産の先渡しと考えるということです。
具体的なケースで言うと、死亡時の遺産額が4000万円だが、あなたが生前に暦年贈与で合計1000万円を被相続人からもらっていたというケースであれば、その生前贈与金額を遺産に加算した遺産総額(5000万円)を前提に、これを法定相続分で分割することになります。
相続人が2人であるとすると、あなたの相続分は2500万円ですが、既に生前に特別受益があります。
そのため、あなたとしては2500万円から生前受益分を差し引いた1500万円しか相続できないということになります。

【持ち戻し免除について】
ただ、被相続人が、明示でも黙示でもよいので、遺産に持ち戻ししなくてもよいという意思表示をしていたことが証明できれば、特別受益であっても遺産に持ち戻す必要はありません
そして、黙示の持戻し免除の意思表示があったか否かについては、贈与の内容及び価額、贈与の動機、被相続人との生活関係、相続人及び被相続人の職業、経済状態及び健康状態、他の相続人が受けた贈与の内容・価額及びこれについての持戻し免除の意思表示の有無など諸般の事情を考慮して判断することになります

具体的には、
①家業承継のため、特定の相続人に対して相続分以外に農地などの財産を相続させた。
②被相続人が生前贈与の見返りに利益を受けている(被相続人との同居のための居宅建設における土地使用の権限付与など)
③相続人に相続分以上の財産を必要とする特別な事情がある場合(病気などにより独立した生計を営むことが困難な相続人に対して生活保障を目的としてなされた贈与、妻の老後の生活を支えるための贈与など)
などの場合には持ち戻し免除を主張するといいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)

★家賃が特別受益になるか。【Q&A №321】


 妹(次女)家族(母子家庭二人共就業している。娘は正社員)が、母名義の家に約10年間住んでいます。家賃は月5万円で母の預金口座に入れていました。以前、生活が苦しいということで、毎年50万円を5年間で250万円と敷金の30万円、それに子供の私立大の学費300万円(これは父から)を母から貰っています。
 この度父が亡くなり、その家賃のことをうるさく言う人がいなくなったり、生活が苦しいと言うので、家賃を母や主人(養子縁組をして法定相続人)と私が相談して免除しようということになりました。母は施設に入っており介護などの負担は3人ともありません。母の口座管理や身元引受人は私(長女)が引き受けています。今後、妹は母の家に母が生きている間、住み続けたいと言っており、その家賃が特別受益になるのかどうか?また、亡くなった後、スムーズに立ち退いてくれるかどうか、何か取り決めをしておいたほうが(書類にして)よいのかどうか。
 それと以前もらった250万+30万円は特別受益となるのかどうか。あと、妹が母の家に入る前に私たち家族がその母の家に入っていました。その入る際に、家をリフォームしてくれました。約300万円掛かったそうです。
 そこに私たち家族は9年ほど住まわせてもらいました。もちろん家賃も支払っていました。
 その後、一般の人が約10年住み、その後に妹家族が入りました。
 その時のリフォーム代は、生前贈与だと妹は申していますが、どうなのでしょうか?

記載内容  家賃 免除 使用貸借と特別受益 家賃の猶予 立ち退き

(まるさん)


【家賃の免除と特別受益の関係】
 妹さんが、これまで払っていた家賃を今後は払わずにお母さんの家に住むことを、家の所有者であるお母さんが認めるとした場合には、これまでの賃料を支払う賃貸借契約から、賃料を支払わない使用貸借契約に契約が変更されたことになります。
 この無償で使用する権利(使用借権)が特別受益になります。
 特別受益としてどの程度の価額かになるかについては争いがあります。
 支払いしなくてよかった賃料額を特別受益とするという見解がないわけではありませんが、賃料額を合計するとかなり多額になりすぎるということから、賃料額の総計を特別受益とはしないという見解が多いです。
 賃料を免除ではなく、支払いを猶予し、被相続人であるお母さんの死亡時(相続発生時)に清算するということにすることも一つの方法です。
 しかし、この場合には(使用貸借ではなく)賃貸借が継続しますので、次項の明け渡し請求が難しくなります。

【亡くなった後のスムーズな立ち退き】
 使用貸借契約の場合でも、賃貸人が死亡しても使用貸借は終了せず、当然には立退きを請求することはできません。
 そのため、使用貸借が終了し、使用貸人であるお母さんが死亡した場合には、建物を明け渡すという合意書を作成しておくといいでしょう。
 使用借権には、借地借家法が適用されませんので、明け渡すという合意書が無効となることはありません。
 ただ、裁判所のこれまでの判例を見ると、既に居住している者の立ち退きを認めることについては、かなり慎重であることも頭の隅に入れておく必要があるでしょう。

【使用貸借と特別受益との関係】
 仮に賃料なしとする場合、前記のように使用借権の設定の利益が特別受益となるものと思われます。
 ただ、土地の使用貸借の場合には、土地価額の1~3割程度の価額と評価できるのですが、家の使用貸借の場合には、その価額がかなり低くなります。
 特に、本件では最初は賃貸借であったのに、使用貸借としたのですから、居住者の権利は、賃借権という強い権利から使用借権という弱い権利になっています。
 そのため、使用借権の設定といっても、無償で使用できるようにはなったが、その反面、権利性を犠牲にしていることになり、それなりの設定の対価を支払っていることになります。
 このことを考えると、使用借権の価額はかなり少ないものになる可能性があります。

【結局は・・】
 賃料を確保するという方向で行けば賃貸借になり、明け渡しが困難になります。
 しかし、賃料をもらわないという方向で行けば使用貸借になり、(賃貸借に比べると)明け渡しがしやすいが、賃料分を損し、しかも絶対に明け渡しが確実なものでもありません。
 どちらを選ぶかは経営判断というべきものです。
 賃料の支払いを猶予して(ということは相続時の明渡は求めない方向になる)、相続に清算するというのが、妥当ではないかと思いますが、この点はあなた方でご検討ください。

【リフォームは贈与ではありません】
 家はお母さん名義ですので、そのリフォームはあくまでお母さんの家の価値が上がっただけであり、その利益を受けるのはお母さんです。
 あなた方はなんらの金銭的な贈与を受けていません。
 そのため、お母さんがリフォームをした家に最初に住んだというだけでは特別受益には該当しないでしょう。

【毎年50万円と敷金30万円は特別受益か】
 妹さんは生活が苦しく、毎年50万円を5年間もらっていたということです。
 月額にすると約4万円と少額であり、生活費の援助として扶養義務の範囲内とされる可能性が高く、又、お母さんとしては相続分の前渡しというような意図からしたものではないと思われますので、特別受益にはならないと思われます。
 なお、敷金の30万円というのは、妹さんがお母さん名義の家屋を賃貸するときに支払うべき30万円を免除されたという趣旨で理解すると、この分も生活費の援助的な側面が強く、特別受益にはならない可能性があります。

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