大澤龍司法律事務所 相続問題無料相談ブログ

未分割の土地を含む遺言分割指定がある時【Q&A №585】


【質問の要旨】
被相続人が未分割の配偶者の不動産を子である相続人に譲ると遺言したが、裁判所ではどう判断されるのか?

記載内容  数次相続 共有 未分割 

【ご質問内容】
 被相続人の遺言に、先に死亡したその配偶者との未分割状態の共有の自宅を、3相続人(子供)中のAに引き続き住めるよう譲るとあり、法務局ではまず、配偶者の持ち分9分の6を法定分割した後、被相続人の持ち分9分の6をAに登記すると云う事でしたが、自宅が住所不銘記で却下、家裁では遺言分割の承諾が他の相続人B.Cから得られず、審判できないと云われ、取り下げさせられました、最終日全員の前に、裁判官が表れ(陪審員の要請があったと思わせる)ちらりと遺言に目を通し、配偶者の未分割分は直接3人の相続人に譲られると断定しました。
 法務局の説明では、全員の承諾のもとでは可能である、つまり遺言分割ではなく協議書による分割と解釈したので、家裁の裁判官の云う事には釈然としません、今後地方裁判も視野にこの点をはっきりさせて置きたいので宜しくお願いします。

(fumimasa)


【事案の整理・・父が死亡した後、その相続登記前に母が死亡したケースと理解】
 まず、事案の内容を整理します。
(以下の要約は、質問からは直接は読み取れないものの、弁護士3名がほぼこのような事実関係を前提にしての質問であろうと考えた内容を記載しております)
① 先にお父さん(配偶者)の方が死亡し、遺産である不動産の相続登記をしないうちにお母さん(被相続人)が亡くなった。
② そのお母さんは「未分割状態の共有の自宅を、3相続人(子供)中のAに引き続き住めるよう譲る」と遺言した。
③ Aは、法務局で遺言に基づいて登記をしてもらおうとしたが、遺言書には自宅不動産の所在地等の記載がなかったため、このままでは物件が特定しておらず、登記はできないと言われた。
④ そのため、家裁に調停を申し立てたが、他の相続人B、Cの承諾が得られず、取り下げという結果になった。
と仮定して、説明をしていきます。
  なお、今回の質問には登記に関する部分が含まれています。
 わかる限度で説明はしていきますが、念のために登記の専門家である司法書士さんにも確認されるといいでしょう。

【相次いで相続が発生した場合のそれぞれの相続分】
 前項で記載したとおりの事実関係であると仮定すると、相続の経過は以下のとおりとなります。

① まず、お父さんが亡くなったことにより、自宅のうちお父さんの持分であった9分の6が、各相続人に相続されます。
 遺言書がなく、遺産分割協議もなされていないのだとすれば、法定相続分に従い、お母さんが9分の3、A~Cが各9分の1を相続します。
② 次にお母さんが亡くなり、「未分割状態の共有の自宅を、3相続人(子供)中のAに引き続き住めるよう譲る」との遺言があったとのことですので、お母さんの持分はAにすべて遺贈されたのであれば、お母さんの自宅持分(もともと有していた9分の3と、お父さんから相続した9分の3の合計である9分の6)をAが相続します。

 結局、自宅はAが9分の7、B及びCが9分の1という共有状態になるということになります。

【自宅が特定していない点についての法務局の見解について】
 ただ、遺言では前記のとおり、自宅不動産の所在地が明記されていないことから、法務局はこの遺言では不動産が特定されていないので、このままでは登記はできないと言われたのだと思われます。

その上で、もし登記をしたいのなら、法務局としては
① 遺言に記載された自宅とは被相続人が共有持分を有している自宅であることを判決で確定してもらうか、
② 相続人全員が遺言書の自宅とは、被相続人が共有持ち分を有している自宅であることを前提で遺産分割協議する。

のどちらかの方策を取れば、遺言の不動産が特定しないという点が解決し、登記が可能になるとの見解だったろうと思われます。

【遺言ではAが自宅全部を相続することはできない】
 お母さんの遺言の内容がはっきりはしませんが、仮にその内容が《Aの居住している自宅すべてをAに相続させる》というような内容であったとしても、そもそもお母さんの持分は9分の6でしかなく、未分割のまま放置されていたからといって、お母さんの自宅の持分が増えるわけではありませんので、Aが自宅全部を取得することできません。
 ただ、遺産をどのように分けるかについて、法定相続人全員が分割協議で合意をすれば、遺言と異なる内容でも、分割合意が優先します。
 そのため、Aが自宅を単独相続(全部をAの所有に)したければ、他のB及びCの同意を得て、《自宅名義はAの単独名義にするが、その代わりに代償金等を他の兄弟に支払う》等の合意をすれば、その合意の効力として自宅をAの単独名義にすることが可能です。

【裁判所が遺産分割の審判をしなかった理由】
 次に、裁判官が、「配偶者の未分割分(お父さんの持ち分)は直接3人の相続人に譲られると断定した」という点を考えてみましょう。
 Aとしては、お母さんの遺言には自宅全部をAに相続させると記載されているため、父の遺産の自宅全部の相続を主張したのに対して、《Aさんが全部取得するようなことはない。お父さんの持分が、法定相続分に従って子供らに9分の1ずつ相続されることについては、全員の同意がない以上、法的に動かしようがない》ということを言いたかったものと推測されます。
 B及びCから、自宅を全てAに譲るという内容で同意が得られず、遺産分割協議がまとまらなければ、遺言書の内容を実行するしかありません。
 しかし、家裁の審判では、遺言書の内容を実行せよという命令を出すことはできず、地裁で裁判をする必要があります。
 そのため、家庭裁判所は「審判できない」との判断をし、調停を取り下げさせたものと思われます。

共有名義の地代【Q&A №568】


【質問の要旨】
共有名義の土地の賃料を分配した時に、贈与税の支払いが必要か

記載内容  共有 地代 贈与税

【ご質問内容】
相続して共有名義になっている土地の地代が入ります。
一人が代表して受け取り、確定申告して固定資産税と所得税を払っています。
地代を他の相続人に分配する場合、贈与税は掛かってきますか

(もん)


【詳しくは税理士に相談する必要があります】
 まず、今回のご質問は贈与税にかかわる税務の質問であり、弁護士の専門分野ではありません。
 ただ、せっかくご質問をいただきましたので、わかる範囲で簡単に回答しておきます。
 正確なことを知りたい場合には税理士に相談されることをお勧めします。

【共有土地の賃料分配に贈与税はかかりません】
 遺産分割前の賃貸不動産で発生する賃料については、平成19年の最高裁の判決(参照最判平成17年9月8日民集59巻7号1931頁)で
①賃料は遺産ではない。
②賃料は各法定相続人が各々の法定相続分に応じて取得する。

という判断が出ています。
 そのため、集まった賃料から必要経費を引き、その残高を法定相続分に応じて配分する場合、それは各人の有する不動産持ち分に応じた当然の収入であり、贈与ということにはなりません。
 そのため、贈与税はかかりません。

【共有者それぞれが確定申告等をしたほうがよい】
 現在は、一人の方が代表して確定申告をし、固定資産税や所得税を支払っているとのことですが、本来は各共有者が法定相続分に応じて、その取得した賃料を個別に確定申告をするべきものだと思われます。
 代表して一人の方が確定申告をしている場合、税務上、どんなリスクがあるかを知りたいのなら、一度税理士に相談されることをお勧めいたします。

(弁護士 岡井理紗)

遺産の対象財産と計算方法【Q&A №559】


【質問の要旨】
保険金や共有の不動産などを考慮すると、遺産分割はどうなるか

記載内容 共有 賃貸 保険金

【ご質問内容】
相続人兄と私のみ
遺産は共有名義の家(持分兄6:父4)
死亡保険金1450万円(受取人私)あり。
家は同居を前提に父が1450万円出したが、喧嘩により同居を断られ一度もその家には住まず、アパートを借り生活。
何度もお金をかえしてくれと頼んだが、聞いてもらえず。
少額の個人年金の受取と兄と私の援助で生活。
2年前父とのトラブルで兄家族は隣の市へ引越。
その1年後父が他界。
葬儀の際、家は父が亡くなる半年ほど前から人に貸していることを聞く。(父は知らない。)
今回、家を売りたいから、早くサインをしてと連絡が来る。
家は兄が相続。(2680万円で売却予定。)
生命保険は私が受取る。
父の葬儀代?円、アパートのリフォーム代192万円、他に亡くなった後かかった費用は兄と私の折半という遺産分割書を作成す ると。
兄は1060万円しかもらえず、私は生命保険を全部受取るんだから文句ないよなという感じです。
生前父に兄は400万円程度、私は家賃など約350万お金を援助しています。
兄は共有なのに10年間自分たちだけで住み続け、その後無断で人に貸し収入(10万円程度/月)も独り占めにしていた。
実際のところ父の遺産はいくらと考えられますか?
兄は12年ほど前に土地(100万程度の価値)を譲り受けています。
分割の内容は後で決めるとして、取り急ぎ売ることの同意を早くしろとも言われています。
今同意するのは何か私の不利益となりますか?

(たいよう)


【遺産内容について】
まず共有名義の家(以下、家といいます)は、お父さんの持ち分が40%ですので、その40%の持ち分が遺産の中にはいります
これにお父さん名義のその他の財産(預貯金や株式等の有価証券、動産など)が遺産になります

【保険金は遺産ではありません】
あなたが受取人として受け取った死亡保険金は、遺産分割では、原則として遺産とは扱われません(相続税の申告では遺産の中に含まれますが、それは税金の問題です。法律的には、遺産分割の関係では原則としては遺産でないとの判例があります(当ブログQ&A №298)。

【お父さんの家を使っていた点は特別受益になるか】
家 は被相続人であるお父さんとお兄さんの共有ですので、もし、お兄さんが自ら居住していた場合には、その共有持ち分については無料で使用しているのですから、その無料使用分(使用借権)が特別受益になるのか、遺産に持ち戻されるかどうかが問題になります。
土地の無料使用については特別受益になると思われますが、家屋の無償使用については、権利性が低いとされ、特別受益になることは少ないです(当ブログQ&A №457)。
特に本件では家全部ではなく、共用持ち分ですので、お兄さんが使用しているのなら特別受益ではないということになるでしょう。
ただ、今回の質問ではお兄さんが他人に貸し、賃料という経済的な利益を得ています。
そのため、もし、お父さんがその賃貸を了承しているのであれば、その賃料のうちのお父さん持ち分相当分である40%分は特別受益という主張をしてもいいだろうと思います(この問題も当ブログQ&A №539に同様の記載があります)。
又、お父さんに無断で貸したというのであれば、不法行為に基づく賠償請求権という債権(賃料の40%相当分が損害額 ということになります)が成立する可能性があり、遺産に含まれるという主張も可能でしょう(ただ、従来、お兄さんが無償で使用するのを認めていたので、賃貸にしても損害はないはずという反論もあり得ます)。
なお、お父さん死亡後の賃料についていえば、相続人がその持ち分に応じて遺産とは別に請求できるという判例があります(当ブログQ&A №240)。

【債務の扱い】
お父さんの賃借しているアパートの リフォーム代とあります。
賃借物件を賃借人であるお父さんがリフォームし、その価額が192万円という高額であるというのは考えにくいので、賃借物件の立退きに際しての原状回復費用の可能性があります。
その前提で考えれば原状回復費用はお父さんの生前の賃借に関する費用ですので、お父さんの生前債務と同様に扱っていいでしょう。
次の葬儀代については相続債務ではありませんが、あなたが葬儀に出席されていたのなら、相続債務扱いで負担をするような解決例が多いです(当ブログQ&A №545)。
以上に記載したように、生命保険は除外して、《家の持ち分+他の預貯金+有価証券+動産+賃料の持ち分相当額 》が遺産になり、《家のリフォーム代と葬儀代》が相続債務になるものと思われます。

(弁護士 大澤龍司)

父が支払っていた共有建物の光熱費【Q&A №478】


【共有建物の住居部分の家賃光熱費について】
賃貸店舗のある物件で、二分の一持ち分三〇年前、建築したときから、保存登記もされています。
父親と共有で、共同経営していました。
私の住まいとして、父親がその物件で住めばいい、家賃光熱費いらないからと三〇年家族ですんでいます。
父親が亡くなり、父親の持ち分が相続で姉になり、過去一五年分家賃光熱費請求してきました
土地全部父親の名義でしたが相続で姉の名義です。ちなみに地代も請求してきました
私は、建物全体経費電気水道局他支払いしている。相続後姉は、父親の名義のテナントから、家賃光熱費受け取っている。
わたしの持ち分所有権保存登記されています。相続の時生前贈与扱いです。
姉の請求納得いかない
経費二分の一も支払いしてくれない。
よろしくお願いします。

記載内容 光熱費 共有 賃料

(りく)


【考えるポイント】
相続人は、被相続人(本件ではお父さん)の持っている権利や義務を受け継ぎます。
そのため、地代、家賃や光熱費の支払いの要否については、お父さんとあなたとの権利や義務がどうなっていたかを確認する必要があります。
以下においてはそのような観点から検討していきます。

【地代について】
まず、お姉さんから請求のあった地代について検討します。
土地はお父さんの単独所有、建物はお父さんとあなたとで各2分の1の共有ですので、あなたはお父さんの土地の2分の1を使用していることになります。
土地利用につき、あなたがお父さんに賃料を支払っていたというのであれば、あなたとお父さんのとの間に賃貸借契約が成立しており、お父さんから土地を相続(ということは賃貸人の地位も相続)したお姉さんに対し、賃料を支払う義務があります。
ただ、あなたが賃料を支払わず、お父さんも請求しないことについて(暗黙でも)合意があったということであれば、お父さんとあなたとの間には、土地を無償で使用させる使用貸借契約が成立しており、相続でお父さんの土地を取得したお姉さんは、お父さんと同様にあなたに土地を無償で使用させる義務があり、賃料請求はできません
ただ、あなたは使用借権という無償で土地を使う権利をお父さんからもらったのですから、その使用借権が特別受益とされる可能性があります。
しかし、質問では少なくとも不動産については遺産分割協議が終了しているようですし、他の遺産についても遺産分割協議が終了しているようであれば、特別受益の問題は既に解決済みとして扱うといいでしょう。

【家賃について】
建物は、賃貸店舗に出されていた分と、あなたの居住用にされていた分があるようですので、分けて記載します。
賃貸店舗に出されていた分については、誰が賃料を取得していたのかによって異なりますが、あなたが賃貸人として賃料全部を取得していた場合、その賃料の中には本来はお父さんが取るべき分もあったはずです。
お父さんが、あなたから自分の建物持ち分に相当する賃料相当額を請求しなかったのであれば、その分も使用貸借同様の関係になり、その使用貸借権がお父さんからあなたへの生前贈与として特別受益になります。
次に、あなたが建物の一部を住居として使用していたことについてですが、お父さんとしては家賃はいらないということですので、その無償使用分も使用借権になり、その権利の価額が特別受益になります(なお、遺産分割協議が終了していれば特別受益問題は解決済みであることは上記「地代について」の末尾に記載したとおりです)。
いずれにせよ、あなたが建物を無償で使用するということをお父さんが認めていたのであれば、建物の持ち分をお父さんから引き継いだお姉さんとしても、お父さんと同じようにあなたに無償で貸与すべき義務があり、家賃を請求することはできないという結論になります。

【光熱費、経費について】
お父さんの死亡までは、建物全体経費電気水道局他の支払いをあなたが負担し、光熱費はお父さんが負担いたということですので、そのような内容の分担の合意が成立していたと考えてよく、お父さんの時代の精算は不要と考えていいでしょう
ただ、相続開始後は、お姉さんが底地全部や建物の持ち分を相続したということですので、費用関係については、お姉さんとの間で協議をされ、新たな合意をされるといいでしょう。

【弁護士と相談されることも考える】
以上、原則的な考え方を記載しました。
ただ、お姉さんの態度から見ると、調停や訴訟に発展する可能性もありそうです。
また、事案の内容によっては、より詳しく聞くと回答が変わってくる場合もあります。
相続に詳しい弁護士と法律相談をされることも考えられるといいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)

相続した株式の扱い【Q&A №418】


①非上場の株を親から相続しようとしたら3人相続人がいて、話し合いがまとまりません。
 この場合、その株はどうなるのでしょうか?
②その後、遺言書がでてきて、私に株を相続させる、文面で、遺言執行人もわたしでした。
 この場合、他の相続人の同意なしで、名義変更できますか?

記載内容  株式 共有 総会に出席

(sasa)


【相続した遺産の扱いは、遺産の内容により異なる】
 被相続人が死亡した場合、遺産が各相続人にどのような形で移動するのかは、遺産の内容により異なります。
 預貯金であれば、その法定相続分に応じて直ちに分割され、各相続人が、金融機関に単独で請求することができます(但し、金融機関がすぐに支払いをするわけではありません。⇒相続Q&A №148を参照)。
 これに対して、土地の場合には、相続した土地を、法定相続人がその相続分で共有することになります。

【株式の場合には不動産のような扱い‐準共有になる】
 株式については、預貯金のような当然に分割されるのではなく、土地と同じように、全部の株式を相続人が相続分に応じて共有するという形になります。
 なお、このような共有状態を、不動産であれば共有といいますが、株式の場合には権利ですので、「準」共有(⇒民法第264条参照)と言います。

【株式の権利行使は民法の共有の規定に基づき行う】
 準共有状態にある権利である株式について、どのようにして権利行使するかという点が問題になりますが、これについては、共有の場合の権利行使の条文(民法第251条、第252条、第264条、会社法106条を末尾に記載しておりますので、ご参照ください)に基づき決定されます。
 株主総会に出席はするには多数決で出席者を決定することが必要です。
 株式を売却することは処分に該当しますので、全相続人の同意が必要です。

【遺言書が出てきた場合の扱い】
 今回の質問では、遺言書が出てきており、あなたが遺言執行者ということですので、あなたが遺言に基づき単独で権利行使ができることになります。
 なお、公正証書遺言であれば、直ちに執行可能ですが、自筆証書遺言であれば家庭裁判所に遺言検認(⇒相続Q&A №121を参照)の手続きをする必要がありますので、この点はご注意ください。

民法
第251条(共有物の変更)
 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ共有物に変更を加えることができない。
第252条(共有物の管理)
 共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。
第264条(準共有)
 この節の規定は、数人で所有権以外の財産権を有する場合について準用する。ただし、法令に特別の定めがあるときは、この限りではない。

会社法
第106条(共有者による権利の行使)
 株式が二以上の者の共有に属するときは、共有者は、当該株式についての権利を行使する者一人を定め、株式会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければ、当該株式についての権利を行使することができない。ただし、株式会社が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りではない。

共有持分と相続放棄の関係【Q&A №402】


 持分1/2の共有土地所有者がその土地を抵当に入れたまま死亡し、遺族が相続放棄しています。
 債権回収会社に私が代わりに支払い、抵当権抹消手続きをしたいのですが、可能でしょうか?
 抹消手続きに必要な書類一式はお金と引き換えにくれるとの事ですが、登記手続きの権利者は本人死亡なので、誰か代わりに手続きすることが可能でしょうか?   抵当が外れたら、相続財産管理人の選任を申し立てて、相続人不存在確定したら、共有者の自分に帰属するのを待つつもりです。
 他には債務も、遺産もないようです。よろしくお願いいたします。

記載内容  相続財産管理人 登記 共有 利害関係人 予納金

(みなみ500)


【共有持分と相続放棄】
 質問者の方は他の方(Aさんとしておきましょう)と土地を共有されていたが、そのAさんが死亡し、相続人が全部相続放棄したというケースです。
 このような場合、民法に《共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がいないときは、その持分は他の共有者に帰属する(255条)》という条文があります。
 質問の場合は相続放棄の結果、相続人がいなくなったケースですが、この場合にも同条文が適用されると考えていいでしょう。
 その結果、質問者の方はAさんの共有持分を取得し、単独所有権者になっています。

【登記は相続財産管理人に対して請求する】
 質問者の方はAさんの借金を債権回収会社に支払い、抵当権の抹消書類をもらうようです。
 ところが、この抹消書類で抵当権抹消登記を申請できるのは持分権者であるAさんです。
 しかし、Aさんには相続人がいないのだから、一体、誰に抵当権抹消登記を請求するのか(登記義務者は誰か)という問題が発生します。
 次に、Aさんの持分が無くなり、質問者の方が単独所有になったのですが、この登記(所有権移転)もAさんに協力してもらう必要があります。
 しかし、Aさんの相続人がいない場合には、Aさんの持分移転登記を誰に請求するのだろうか(この場合の登記義務者は誰か)という問題も発生します。
 結論をいえば、遺産の管理をしてもらう相続財産管理人を選任してもらうことを家庭裁判所に申立する必要があります。
 選任された相続財産管理人がAさんの遺産の管理人として登記をすることになります。

【利害関係人なら相続財産管理人の選任申立を急ぐ】
 「利害関係人」であれば相続財産管理人の選任を申し立てることができる(民法952条)と記載されています。
 質問者の方はAさんの借金を支払ったのですから、借金支払分の返還請求権を有する債権者ですし、又、登記を請求できる立場にもありますので、利害関係人であることは間違いなく、あなた自身が申立することは可能です。
 Aさんの抵当権抹消も共有持ち分移転も財産管理人の関与が必要ですので、相続財産管理人の選任を急がれるといいでしょう。

【財産管理人制度についての補足】
 なお、相続財産管理人について簡単に説明しておきます。
 相続財産管理人の選任申立をするには裁判所にお金(予納金)を納付する必要があり、その金額は大阪家庭裁判所では約100万円で、かなりの多額です。
 次に質問者が財産管理人の選任の申立をした場合でも、財産管理人は相続人の関係の手続きのみをするのではなく、遺産の総整理をします。
 そのため、相続財産管理人の手続きが終了するまでにはかなりの期間がかかり、質問者の方の手続きだけが優先されるわけではないことも理解しておく必要があります。

分割割合が書かれていない遺言【Q&A №373】


  母が亡くなりました。遺言書に私と妹で分ける様に書いてあります。姉妹二人とも同居していません。介護はふたりでやりました。不動産は妹が相続します。妹は維持管理におかねがかかるから預貯金を多く欲しいといいます。比率はどの様に考えたらいいですか?

記載内容  割合 預金 共有

(みくに)


【2分の1ずつ分割相続すると考えられます】
 遺言書には、分割する財産とその分割割合(例えば、不動産全部を妹さんに、その他の財産はあなたと妹とで2分の1ずつ、というような)を書くことが望ましいです。
 ただ今回のように、分割割合を書いていない遺言がすべて無効かというと、そうとも限りません。
 遺言者であるお母さんの意思を推測して、有効な遺言とすることもできます。
 今回の遺言書の記載文言がわからないのですが、たとえば、《不動産は妹さんに、残りの財産は2人に相続させる》というような内容であれば、他に2人の間で相続分が異なると記載されていない限りは、不動産以外は同じ割合で分割すると考えていいでしょう。
 なお、《不動産は妹さんに》とだけ書かれてあり《残りは2人に相続させる》という条項がない場合でも、残りの財産については、法定相続分で分割するのですから、相続人があなたと妹さんだけだとすると、結局半分ずつであり、上記と同じ結論になります。

【遺言書と異なる内容の遺産分割協議も可能です】
 妹さんが《(不動産の)維持管理におかねがかかるから預貯金を多く欲しい》と言っておられるようですが、あなたが妹さんの申し出を受けて、そのような内容の遺産分割協議書を作成することも可能です。
 法定相続人全員が同意すると、遺言書の記載内容と異なっても有効であり、遺言書より遺産分割協議の内容が優先します。
 ただ、妹さんは不動産という財産をもらっているのだから、預貯金は少なくてもいいよ、というのが普通のように思います。
 そのため、あなたとしては、《あなたは不動産をもらっているのだから、維持管理費用は自分で出してください。預貯金は遺言どおりに半分ずつにしましょう》と言って、妹さんの申し出を断り、残りの遺産を半分ずつ分けることを考えてもいいでしょう。

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