大澤龍司法律事務所 相続問題無料相談ブログ

★内縁の妻からの葬儀費用の請求【Q&A №547】


【質問の要旨】
内縁の妻が立て替えていた葬儀費用と入院費用を回収できるか?遺族年金はどうなるか?

記載内容 葬儀代 喪主 内縁の妻

【ご質問内容】
内縁の夫がなくなり(重婚的関係)本妻が体裁もあるので喪主を努めたいと言い、本妻が喪主、施主が内縁の妻で葬儀を終えました。
葬儀費用はとりあえず施主が払いました。
葬儀費用は折半(口約束)と約束したのに払ってくれません。
そのほかに入院費もかなりの金額を内縁の妻が払いました内縁の夫の遺産から、葬儀費用、入院費用を請求する事は可能ですか?
また、葬儀費用、入院費用、をもらうことにより、遺族年金の申請をするにあたって、内縁の妻の証明に不利になりますか

(ban)


【入院費用は相続債務であり、返還請求ができるが・・】
内縁の夫の入院費は本来その夫が支払うべきものであるのが未払いになっているものですから、相続の債務であり、遺産から支払う必要があります。
そのため、相続人に立替入院費の支払いを請求できます
なお、その請求先は法定相続人全員であり、支払いは各法定相続分に応じた分です。
そのため、子がいる場合であれば、法律的に請求できるのは、配偶者である妻に対しては立替分の2分の1のみです。

【葬儀費用について】
葬儀の喪主は妻であり、施主は内妻であるあなた、費用はあなたと妻と折半するとの口頭の合意があったにもかかわらず、妻の方が折半分の支払いに応じないという前提で考えると、折半の合意が成立したことが証明できれば、あなたは妻に半額を請求することができます
ただ、口頭ですので、《言った、言わない》の議論となり、結局、合意の証明なしとして、内妻であるあなたの請求が認められない可能性も高いでしょう。

【遺族年金の請求について】
遺族年金については厚生年金保険法により、《配偶者》が第一順位の受給権を有しています(厚生年金保険法第59条の2項。末記条文を参照)。
民法における配偶者は戸籍上の妻のみですが、この厚生年金保険法における《配偶者》には、戸籍上の妻のみならず、内縁の妻も含まれます(末記の厚生年金保険法第3条を参照。なお、以下においては厚生年金保険法の配偶者の意味で使用する場合には《配偶者》と記載します)。
今回の件では、戸籍上の妻が存在し、かつ、内縁の妻も存在しますので、《配偶者》に該当する人が2名になり、どちらが《配偶者》と扱われるのかという問題があります。
仮に戸籍上の妻がいても、《事実上の離婚状態》であり、かつ、あなたが夫の収入で生計を維持しているという立場であれば、遺族年金をもらえる立場になります(平成27年10月2日大阪地裁の判決が参考になります。⇒【相続判例散策】戸籍上の妻と内縁の妻、遺族厚生年金の受給者はどっち?参照)
上記裁判例も参考にして述べれば、《事実上の離婚状態》とは、婚姻関係が実体を失って形骸化し、かつその状態が固定化して近い将来に回復される見込みがない場合をいい、具体的には次のようないろんな事項を検討した結果で判断されることになります。
①別居期間 ②別居の経緯 ③別居期間中の婚姻当事者の婚姻関係修復の努力の有無 ④別居後の経済的依存関係の有無(婚姻費用的なものを支払っているか) ⑤別居している夫婦の連絡あるいは面会状況 ⑥夫の内縁の妻との生活状況
単に別居して長期間経過しているというだけで内縁の妻が遺族年金は受けることのできる《配偶者》になるわけではありませんのでその点をご留意ください。
なお、遺族年金の支給を受ける要件として、死亡した者の収入により生計を維持していることが要件となっています。
さて、入院費や葬儀費の請求すること自体は、遺族年金の受給と直接関係しません。
ただ、もし、あなたが独自に多額の財産を有しており、それで入院費を支払い、又、葬儀費を支払ったというのであれば、《死亡した夫の収入で生計を維持したとは言えない》ということで生計維持要件を欠き、受給できなくなる可能性があります

(弁護士 大澤龍司)

厚生年金保険法
(遺族)
第五十九条
  遺族厚生年金を受けることができる遺族は、被保険者又は被保険者であつた者の配偶者、子、父母、孫又は祖父母(以下単に「配偶者」、「子」、「父母」、「孫」又は「祖父母」という。)であつて、被保険者又は被保険者であつた者の死亡の当時(略)その者によつて生計を維持したものとする。ただし、妻以外の者にあつては、次に掲げる要件に該当した場合に限るものとする。
(略)
2  前項の規定にかかわらず、父母は、配偶者又は子が、孫は、配偶者、子又は父母が、祖父母は、配偶者、子、父母又は孫が遺族厚生年金の受給権を取得したときは、それぞれ遺族厚生年金を受けることができる遺族としない。
(用語の定義)
第三条
2  この法律において、「配偶者」、「夫」及び「妻」には、婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含むものとする。

★【相続判例散策】戸籍上の妻と内縁の妻、遺族厚生年金の受給者はどっち?(大阪地裁 平成27年10月2日判決)

戸籍上の妻と内縁の妻、遺族厚生年金の受給者はどっち?
大阪地判平成27年10月2日(平成25年(行ウ)256号)

【ケース】
厚生年金保険の被保険者であった被相続人と内縁関係にあったと主張する女性が老齢厚生年金及び老齢基礎年金の支給を請求したところ、被相続人と戸籍上の妻との婚姻関係が形骸化しているとは認められないとして支給しない旨の決定をされたため、その決定の取り消しを求めた事案。

【裁判所の判断の概略】
 厚生年金保険法の目的等に鑑み、同法上の「配偶者」には、戸籍上の配偶者のみならず、事実婚関係にある者も含まれるものとしている(同法3条2項)。
 戸籍上の配偶者を有する被保険者等が重ねて他の者と内縁関係にあるという、いわゆる重婚的内縁関係にある場合にあっては、原則として、戸籍上の配偶者が「配偶者」に当たるというべきである。
 しかし、被保険者等が戸籍上の配偶者を有する場合であっても、その婚姻関係が実体を失って形骸化し、かつ、その状態が固定化して近い将来解消される見込みのないとき、すなわち、事実上の離婚状態にある場合には、戸籍上の配偶者はもはや「配偶者」に該当せず、重婚的内縁関係にある者が「配偶者」に当たる。
 実体を失っており形骸化しているかどうかの判断基準としては、被保険者等と戸籍上の配偶者との婚姻関係が上記のような事実上の離婚状態にあるか否かについては、別居の経緯、別居期間、婚姻関係を維持ないし修復するための努力の有無、別居後における経済的依存の状況、別居後における婚姻当事者間の音信及び訪問の状況、重婚的内縁関係の固定性等を総合的に考慮する必要がある。
 本件では、被相続人と戸籍上の配偶者の夫婦関係は別居前から芳しくなく、別居は一度も解消されないまま約6年10カ月という比較的長期間に及んでいること、婚姻関係の維持ないし修復するための努力を一切行っていないこと、別居後経済的依存関係は認められないこと、音信及び訪問は財産関係の清算を目的とするものがほとんどで、被相続人の死亡当時にはほぼ断絶状態であったこと、他方内縁の妻と約6年7カ月にわたって事実上夫婦としての共同生活を送っており、その関係も相当程度安定かつ固定していた。
 そのため、被相続人と戸籍上の配偶者とは事実上の離婚状態にあったと認められ、内縁の妻に対する老齢厚生年金等の不支給決定等は違法である。

【弁護士のコメント】
 戸籍上の配偶者と内縁の配偶者が存在する場合に、遺族厚生年金を受給できる「配偶者」とはどちらのことを指すのかが問題になります。
 原則として戸籍上の配偶者が受給することになるのだろうということは想像がつくと思いますが、この裁判例は、内縁の配偶者が受給できることができる場合も例外としてあるということを明らかにしました。
 その判断は、上記下線部で示したような様々な事情を総合的に考慮してなされ、戸籍上の配偶者との婚姻関係が形骸化していて、事実上の離婚状態にあるといえるような状態だといえる場合にのみ、内縁の配偶者が受給できるということになるのです。
 単に戸籍上の配偶者と別居して、内縁の配偶者と暮らしているというだけで内縁の配偶者が受給者になるという単純な話ではなく、それぞれの具体的な事情を考慮して判断されますので、注意が必要です。

内妻が受けた贈与の立証【Q&A No.468】


 長いあいだ一緒に暮らした彼が亡くなる直前に私に現金を渡してくれました。
 彼の遠い親戚で相続人に当たる人がでてきて、お金の話ばかりします。
 そんな人に法的に権利があって、彼の遺志が踏みにじられるのが悔しいです。

記載内容  内縁の妻 生前贈与 預金引き出し

【ご質問の詳細】
 肺ガンの余命宣告された彼が、亡くなる前に現金を渡してくれました。
 長い間一緒に暮らし、信頼し合える良きパートナーで、生活費や税金支払い等もその都度頼まれて私がカードで降ろしていました。
 彼の母親の介護も私が引き受けていましたが、後を追う様に数日後、亡くなりました。
 贈与なる最後の預金引出しも私が行い、手渡しで彼から現金を頂きました。
 二人の火葬を行い、火葬費や治療費もその中から支払っています。
 やがて遠い親戚の相続人(50年以上も会っていない従兄弟)が現れ、預金の流れや資産の事ばかり気にしています。
 病床で話合い、互いに納得して頂いた現金ですが、正当な贈与だと確信を持って良いでしょうか?
 私宛のメール(エンディングノートのような内容)に同様の記載があります。
 自分が居なくなった後の生活を心配してくれる感謝の気持が大きく、彼の手で現金の重みを感じ取ってもらってから受け取りたかった事が真実です。
 生前に司法書士に依頼するように言われましたが、在宅緩和ケアで付きっきりの看病の中、法的な手続きする事など考えにも及びませんでした。
 何より相続人となる従兄弟が、故人を偲ぶより、資産の事ばかり気にしている事が腹立たしく、そんな人が法的には権利があり、彼の遺志まで踏みにじられてしまうのは無念でなりません。
 今後どう対処すれば良いでしょうか?
 どうか宜しくお願い致します。

(ラベル)


【内縁の妻は相続では保護されない】
 質問から見ると、あなたは《内縁の妻》という立場になります。
 内縁の妻には相続分はありません。
 もし、内縁関係にあるのなら、彼に遺言書を作成してもらう、あるいは贈与契約書を作成すべきでした。
 あなたとしては相続という主張はできず、生前にあなたに対する贈与があったのかどうかが証明できるかどうかが焦点になります。

【残っている彼の物は相続人に引き渡す必要があります】
 これまで彼に全く見向きも付き合いもなかった親戚が急にお金のことにこだわってくると、今まで介護に苦労されていたあなたが腹立たしく思われる気持ちはよくわかります。

 しかし、相手方のいとこが相続人(正確には、彼の相続人であるお母さんの相続人)であれば、彼が残した遺産は衣類や家具から預金通帳まで、すべて相続人であるそのいとこに権利が帰属します。
 そのため、法的には相続人から「彼の遺品である預金通帳などを渡せ」と言われれば拒否するのはむずかしいでしょう。

【贈与を裏付ける証拠がどれほどあるかの勝負です】
 あなたが彼の死亡直前に受けた生前贈与ですが、引き出し当時のカルテなどから彼がまだ正常な判断能力を有していたのであれば、贈与として認められる余地があります。
 問題は、彼があなたに贈与したという点をどのように証明するかということです。
 彼からのメールに贈与する理由や動機などが記載されていればそれも証拠となり得ると思われます。
 現時点で彼は死んでいるのですから、残された証拠で反論するしかありません。
 もし、相手方が弁護士を立てて本格的な返還請求を行う可能性が高いのであれば、あなたも早めに弁護士に相談し、どのような手段で贈与を立証できるのか対策を立てておかれるといいでしょう

(弁護士 大澤龍司)

質問する

当ブログでは、相続に関するご質問に弁護士がお答えします。ベテラン弁護士の長年にわたる経験に基づく回答です。無料・匿名でご質問いただけますのでお気軽にご利用下さい。

事務所での有料相談はこちら

直接、お聞きして、的確に回答します。今、何が問題で、どう解決すべきかをわかりやすく説明します。

最近の相続ブログ

アーカイブ

カテゴリー

大澤龍司法律事務所

〒530-0047
大阪市北区西天満4-3-25
梅田プラザビル別館7階A703号

お気軽にご相談ください!(電話要予約)
お気軽にご相談ください!(電話要予約)
FAX:06-6361-6043 メールでのお問い合わせはこちら 月〜金曜日(祝日を除く)
    • 大阪メトロ堺筋線・谷町線「南森町」駅
      ...徒歩約7分
    • 大阪メトロ堺筋線・京阪電車「北浜」駅
      ...徒歩約10分
    • 大阪メトロ御堂筋線・京阪電車「淀屋橋」駅
      ...徒歩約15分
事務所ブログ 大原訴訟ホームページ

ページの先頭へ