大澤龍司法律事務所 相続問題無料相談ブログ

20年前に妻に名義変更された土地は遺産か【Q&A №529】


【質問の要旨】
20年ほど前に父から母へ名義切り替えした不動産は、父の遺産か

記載内容 名義 贈与 土地

【ご質問内容】
父が他界し、遺産相続について質問です。
実家は土地も建物も父がなくなる随分前に(20年程前)母名義に切り替えしておりますが、父の遺産に含まれるのでしょうか?
名義は母なので、父の遺産には含まれないのでしょうか?
教えていただけますか。
宜しくお願い致します。

(ふーちゃん)


【他人名義の不動産は被相続人の遺産に含まれないのが原則】
元々はお父さんの所有であった不動産が、生前にお母さん名義に移転されていた場合、その不動産は原則として、お父さんの遺産に含まれません。
ただ、債権者対策として偽装登記したとかいう事情があり、かつ、その事実を証明することができるのであれば、遺産に含めることが可能です。
ただ、現在の名義人としては、そのような偽装登記ではなかったのだと主張する場合が多いでしょうから、話し合いがつかなければ、最終的にはお母さん(登記名義人)を相手に、「この土地はお父さんの遺産である」という訴訟を起こして決着をつけざるを得ないでしょう。
なお、20年ほど前の移転ということですが、その時点でお父さんが認知症にかかっており、意思能力(判断能力)がないような状態であったというのであれば、(それも証明が必要ですが)その不動産の移転は無効であって、お父さんの遺産に属するということになります。

【夫から妻への不動産の移転の場合】
お父さんがお母さんに不動産を移転したとしか、質問には記載されていません。
何を原因とする移転なのかは、移転の際の事情をお母さんにお聞きになるとともに、不動産登記簿謄本(全部事項証明書)を取り寄せて、登記原因を見れば判明しますが、おそらく、贈与で移転されたものと思います。
ご存知だとは思いますが、婚姻後20年間を経過した後の夫婦間での居住用不動産等の贈与はその不動産価額が2000万円以下なら贈与税が全くかかりません。
そのため、お父さんとしてはその制度を利用し、贈与税を支払うことなく、お母さんに不動産を贈与したのだと思われ、それ以外の売買などというのが原因となる可能性は極めて低いでしょう。

【特別受益等の問題が生じるが・・】
仮に被相続人であるお父さんからお母さんへの贈与があった場合、その贈与は特別受益になり、お父さんの遺産分割の際に、遺産に持ち戻して計算することになります。
この特別受益については当ブログQ&A №164Q&A №334をご覧ください。

(弁護士 大澤龍司)

名義を換えた母の家は誰のものか【Q&A №442】


 母は一人暮らしで一軒家です。
 すぐ隣に次女夫婦の一軒家があります。
 長女の私は遠方です。
 母はまだ元気ですが、なにかと近くにいる次女を頼りにする気持ちがあり、これから面倒かけるのは次女だからと言われました。
 しかし金融財産はほとんどなく、あるのは8000万円で建てた築15年の家が母の唯一の財産です。
 母が亡くなったら次女と二人で家を売り、結果的に面倒をみた方に多い割合でお金をゆずろうとは思っていました。
 名義変更は私に相談もありませんでした。
 このままだと私には相続の権利はないのでしょうか。

記載内容  特別受益 名義貸し 名義

(ノースポール)


【まず、お母さんが登記に関与しているのかを確かめる】
 質問ではお母さんから妹さんへ登記が移転されたことが前提となっています。
 その前提で回答していきます。
 まず、お母さんがこの登記の移転に関与しているかを確認しましょう。
 お母さんが知らないところで登記移転がなされているのなら、その登記は無効ですので、登記を返還するようにお母さんから妹さんに申し入れてもらう必要があります。

 

次に、お母さんが登記をしたかどうかわからないような状態 ― 例えば認知症で判断能力がないような場合にもその登記の移転は無効です。
 ただ、この場合にはお母さんの判断能力がありませんので、成年後見人の選任の申立をし、その成年後見人が取戻しの手続きをすることになるでしょう(ただ、現実問題として成年後見人がそのような手続きをするところまではしない可能性がありますが)。
 もし、お母さんが関与して登記を移転されたというのであれば、それは生前贈与ということになり、不動産は妹さんのものになります。
 現段階ではあなたとしては何もできません。

【お母さんが死亡した場合に遺留分減殺請求の意思表示をする】
 お母さんが死亡された場合、登記移転された不動産以外にお母さんの遺産がない場合には、あなたとしては《遺留分減殺請求》ができます。
 あなたの法定相続分が2分の1だとすると、あなたには死亡時の遺産に生前贈与分を加算した額の4分の1をもらえる制度 ―遺留分減殺制度((相続ブログQ&A №430ご参照)― があります。
 今回のケースではお母さんが死亡した日から1年以内に、妹さんに対して遺留分減殺の意思表示をし、不動産の4分の1を返還してもらうことができます。
 ただ、この手続きはむずかしい点もありますので、相続に詳しい弁護士に相談されるといいでしょう。

息子が買った父名義の自動車は遺産か【Q&A №384】


 15年以上前に購入した車ですが、購入時に私が印鑑登録をしていなかったため、父の名義で購入しました。購入費用、税金、維持費、自動車保険等は私が払っています。このたび父が亡くなり、車が相続の対象となりました。当初は「いらない」と言っていた弟が、相続すると言い出しました。そして相続するまで「乗るな」と言ってきました。このような請求ができるのでしょうか。以下、相手からのメールです。

『なんの根拠も示さないままに「あれは私の車です。」と主張してるのがおかしい。相続対象が3人であるということを認められないままで、自由気ままに乗車するのを認められないということを言っている。』
相続の対象であることは伝えていますし、名義こそ父であるが全費用負担しているのは私であることも伝えており、相手も認めています。また、家族間では私の車として周知されていました。

よろしくお願いします。

記載内容  自動車 名義 購入費用

(サムライブルー)


【本来はお父さんの遺産ではないが・・】
 まず、問題の車が誰の物(所有)であるかが問題になります。
 特段の事情がない限り、その車の代金をあなたが全額支払っているのであれば、それはお父さんの遺産ではなく、あなた自身の財産だと主張することが可能です。
 問題はあなたが支払ったということの証明方法ですが、もし、あなたの口座から購入代金(ローン代金)が支払われているのなら、名義はお父さんではあるが、実際はあなたの車両である(ので、遺産にはならない)と主張されることも不可能ではありません。
 ただ、これまでの経過で、あなたが、その車をお父さんの遺産として認めたというのなら、とりあえずは、その前提で話を続けざるを得ないでしょう。
 なお、交渉で話が解決せず、調停などをする場合には、《実は、あの車は私が代金を支払ったのであり、その裏付けとしてこのような証拠がある》という形で新たに主張を展開することも考えていいでしょう。

【継続使用を主張できる理由を考えると・・】
 仮に自動車がお父さんの遺産であるとした場合、次は、お父さんとあなたとの間で、車の使用についてどのような契約があったかが問題になります。
 あなたとしてはお父さんから車の使用を認められていたと主張するといいでしょう。
 その使用関係は法的にいえば、無償使用(使用貸借契約)ということになります。
 あなたは、車の保険料や自動車税、維持費等を負担しているようですが、これは車を使用するものが負担するものであって、この支払いをもって使用料(賃料)を支払っていたとは言えません(難しい言葉では《対価関係がない》ということになります)。
 使用貸借は、賃料を支払っている賃貸借契約よりも借主の立場が弱いのですが、それでもお父さんから合意で使用を認められているのであり、この関係は、貸主であるお父さんの死亡によっては終了しませんので、お父さんとの契約で今後も使用を続けることができるはずだと主張されるといいでしょう。
 なお、車の使用については、口頭での約束で成立し、必ずしも書面で契約していなくともよいということも記憶しておくといいでしょう。

亡父のみが生活費を負担した場合の母の貯金は遺産か【Q&A №358】


 共働きで 家のローン・生活費は 全て父が出し 母の収入は全て母名義で預金されていた場合・・・相続の対象にはなりませんか。

記載内容  借名預金 名義 預金 特別受益 生活費の負担

(千)


【生活費を分担していた夫婦と比べれば】
 お父さんの収入が生活費に充てられ、お母さんは自分の収入を預金として貯めておくことができたというケースです。
 ご相談の趣旨は、お母さん名義の預金は、結局、お父さんの負担によりできた預金ではないか、その分をお父さんの遺産ということで対処できないかということです。

【母の財産であり、父の遺産にはならない】
 この点、お父さんが自分の収入を、お母さん名義で預金していたというのであれば、実質的にはお父さんの遺産であったといえる可能性があります。
 今は銀行の扱いが厳しくなりましたが、昔は家族名義を借用した預金(借名預金などと呼ばれていました)が多く見られた時代がありました。
 その場合、実質的にそのお金を入金した元手は誰のお金だったのか(≒誰の収入だったのか)を主張立証することで、お母さん名義の預金だがお父さんの遺産であると扱うことができる余地がありました。
 しかし、本件では、お母さんが自分の収入を自分名義の預金口座に預け入れたということですので、お母さんの財産であり、お父さんの遺産になる可能性はないでしょう。

【特別受益にもならない】
 お父さんが生活費を負担したため、お母さんが自分の収入を全て預金に回すことができたということであれば、お母さんに特別受益があり、その経費負担分を遺産に持ち戻せないかという疑問が出てきます。
 しかし、夫婦の一方が生活費を出した場合でも、その金額が特別に多額ではない場合―たとえば月額10数万円程度―であれば、夫婦の扶助義務の実行であるとして特別受益にはならないと思われます。

息子名義で購入した不動産と特別受益【Q&A №263】


 先日祖母が亡くなり、現在父と叔父(父の弟)の間で遺産分割について協議中です。

 30数年前に祖母がアパートを建てたのですが、その際建物の名義は祖母、土地の名義は父にしていました。長男に家を継がせるという考えが強く、先々のことを考えてのことだったようです。
 アパートの家賃収入などは全て祖母で、父はこのアパートに関する事には一切ノータッチでした。固定資産税はずっと父が払ってきました。

 叔父の主張は、この土地は生前贈与に当たるから法律上それも遺産に加えた上できっちり半分ずつにするのが当然だというものです。

特別受益に当たるのでしょうか?

記載内容  名義 生前贈与 遺産 固定資産税

(おタル)


【特別受益にあたる可能性もありますが・・】
 土地がお父さん名義ということですが、どのような原因でお父さん名義になったのでしょうか。
 登記原因により、特別受益の問題になったり、名義貸しの問題になったりしますので、場合分けをして回答します。

①まず、問題の土地が元々はお祖母さん名義であったのを、お父さん名義にしたというのであれば、登記の原因としては贈与になる可能性が高く、この場合には土地の価額が特別受益なります。
②次に、第三者(他人)から土地を購入した際に、お父さん名義にしたというのであれば、その購入代金が誰の名義で支払いされたかが問題となります。
 お祖母さんが土地代金を出したが、登記名義はお父さんにしたというのであれば、 その土地の実質的な所有者はお祖母さんという主張が出てくる可能性があります。
 この場合には、特別受益の問題は発生せず、土地の名義上はお父さんであっても、  実質的にはお祖母さんのものであり、その遺産であるという扱いになります。
③お父さんが土地代金を出したが、その代金はお祖母さんからもらったものであるとすると、お祖母さんからもらった土地代金相当額が贈与になり、この代金額が特別受益の内容になります。

 このように、お父さん名義の土地でも、登記に至る事情により回答が異なってきますので、登記簿謄本を確認して登記原因を調査し、かつ、購入した土地ということであれば売買の実情を調査する必要があるでしょう。

【固定資産税の支払いは考慮される可能性がある】
《土地が実質上、お父さんのものである場合》
 お父さんがアパート(土地及び建物)の固定資産税を支払ってきたということですが、土地がお父さんの所有物とされる場合(前項①③の場合)には、当然お父さんが土地の固定資産税の支払いをする必要があり、この分をお祖母さんの遺産分割で返還を求めることはできません。
 但し、お父さんとしては、自分の土地の上にお祖母さんの建物があり、土地を無償使用されていることになります。お祖母さんとしては、土地の賃料の支払いを免れているわけですから、過去の賃料相当額を特別寄与として、遺産分割の際に請求することも考えていいでしょう。
 あるいは、無償使用させたこと自体(使用借権)により、お祖母さんが利益を受けているのですから、その無償使用できた利益自体を特別寄与として請求することも可能です。

《お父さんの土地所有権が認められず、お祖母さんの遺産になる場合》
 前項の②の場合であれば、土地はお祖母さんの遺産になります。
 その時には、お父さんは、本来の土地所有者であるお祖母さんの固定資産税を支払ってきたわけですから、お祖母さんの遺産が減少することを防いだとして、固定資産税の支払い分をお祖母さんの遺産に対する特別寄与として請求することが可能でしょう。

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