大澤龍司法律事務所 相続問題無料相談ブログ

養子縁組で相続関係はどう変わるのか。【Q&A №345】


 昨年4月に祖母が亡くなりました。
相続人としては実子2人(私の母・叔母(妹))と養子(私の父:婿養子のため養子縁組しておりました。)の計3人になると思います。
 祖母は負の財産があり、私の母は相続放棄しました。叔母も放棄する予定です。父は既に他界しております。
 この前、税務署から連絡があり、私と弟が相続人であるから、相続する意志があるのかを聞かせて欲しいとの事でした。
 私の母が相続放棄しているので、その子(祖母にとっての孫)の私達には相続の権利はないと思っていたのですが、税務署の言い分は私と弟は亡くなった父の代償相続人だという事でした。

 家庭裁判所に問い合わせると、父の養子縁組より前に出生している私と弟は代償相続人にはなり得ないと返答を頂きました。(放棄手続きについても、相続権がないのだから放棄の手続きをとっても受理されないだろうとも言われました。)  その旨を税務署に伝えると、祖母と血の繋がりがあるだとか、放棄しない・できないのであれば相続を承認したとみなすと一方的に告げられて非常に困っています。

 そもそも私と弟に相続権があるのか(当然あっても放棄します)、またもし相続権がないのであれば税務署にどのような形で通告すればよいのか、アドバイスを頂ければ幸いです。宜しくお願い致します。

(無礼な税務署職員)


【結論から言えば、家庭裁判所の見解が正しい】
 結論から申し上げますと、家庭裁判所の見解が正しいです。
 税務署にも納得して頂ける内容にするため、民法の条文と文献、判例を記載した回答にしました。
 難しいかもしれませんが、ご理解ください。

【子の代襲相続に関する民法の規定】
 民法の代襲相続の規定は次のようなものです。
《民法第八百八十七条  被相続人の子は、相続人となる。
2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。》

 この条文の下線部分は、「被相続人の直系卑属でない者は代襲相続人になれない」という意味です。

【直系卑属でない者は代襲相続できない】
 父さんが被相続人の養子ですので、子になります。
 問題は、そのお父さんの養子縁組前の子供であるあなた方が、被相続人の直系卑属にあたるかどうかです。
 さきほど記載した民法887条2項の但し書き(上記の下線部分)は昭和37年の民法改正で新設された条文であり、「もっぱら養子の縁組前の子を相続から除く」目的でさだめられたものです(参考文献:有斐閣『新版 注釈民法(26)』247頁6行目以下。図書館などでこの本を探してご確認ください)。

【養子縁組前の子は直系卑属にならない】
 そうすると、問題は、養子縁組前に生まれた養子の子が被相続人の直系卑属になるかどうかという点に絞られます。
 この点については、養子縁組前に生まれた養子の子は、被相続人との間で血族関係をもたない、すなわち直系卑属にならないということが、古くからの確定した裁判例です(大審院判決昭和19年6月22日民集23巻371頁等。なお、これ以外にも判例がありますが、前記『注釈民法』に記載されていますのでご参照ください)。

【養子縁組前の子は代襲相続しない】
 以上のとおりであり、結局、あなた方は縁組前の子であるので、被相続人の直系卑属にはなりません。
 そのため、民法第887条2項の但し書きによりあなた方は代襲相続人にはならず、被相続人であるお祖母さんの相続をすることはありません。
 税務署にはこの回答を印刷してお見せするといいでしょう。

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