大澤龍司法律事務所 相続問題無料相談ブログ

結婚時の親の援助と奨学金について【Q&A №589】


【質問の要旨】
奨学金(学費)は4割増しで遺産から引かれるのか?

記載内容  奨学金 結婚費用 学費

【ご質問内容】
 相続人は私と妹と妹の3男(養子縁組)の3人です。
 父の日記より、私の結婚時、両親が買ってくれた着物の代金と私が既にローンで買っていた毛皮等の残金を払ってくれていました。(40年前)その他に持参金を数十万頂いております。

 妹の奨学金ですが、親の遺産から4割増しで引くとあります。
 法律は全くの門外漢で分からないのですが、奨学金が4割増しで親の遺産から引かれるものでしょうか?

 母は、20年ほど前に亡くなり、一人息子である父だけでした。何とかH11年からの5年もの日記を3冊持ち帰りましたが、葬儀の翌日妹家族が全て処分してしまいました。
 几帳面な父の遺品と遺言書はありません。
 H11年以前の5冊25年分は妹が持っています。

(ルミ)


【前提となる事実関係】
 今回は「妹さんの奨学金」の借入経過について少し抽象的な部分があるため、次のようなご相談と理解し、回答させていただきます。

① 妹さんは奨学金(学費)をかつて自力で借入、返済をした。
② 他方で、お姉さん(相談者)は結婚の際に着物や持参金をお父さんからもらっている。
③ お父さんの日記には、「妹の奨学金は4割増しで遺産から引く」という記述がある。(=お父さんとしては、妹は自費で奨学金を借入、返済させたので、遺産分けの時は妹に奨学金の分だけ多めに4割増しで渡して欲しい、という心情で日記を書いた。)
④ ③のような扱いは法律上正しいのか。奨学金が4割増しになるような理由があるのかを相談したい。

【日記は遺言としての法的効力を持ちません】
 まず前提として、日記は遺言としての効力を持ちません。
 そのため、日記のとおり遺産分けをする必要はありません。
 日記にあるお父さんのお気持ちを尊重して遺産分けをすること自体は珍しくありませんが、法的に従う義務がないことはご理解下さい。
 以上の前提でいえば、妹さんの奨学金を考慮して、遺産を妹さんに多めに渡さなければならない理由はありませんし、4割増しにする理由もありません。

【結婚費用・持参金は特別受益にならない可能性も高い】
 まず、お姉さんのいわゆる嫁入り道具や持参金は特別受益にあたる可能性があり、嫁入り道具として購入してもらった着物の代金や持参金数十万円などは、特別受益とされることと考えられます。
 (この点は当ブログQ&A №507に同様の質問がありますのでご参照下さい)
 ただ、家庭裁判所の調停では、妹さんや弟さん(養子)の結婚に際してもそれなりの資金提供をされているケースが多く、嫁入り道具や持参金額が格別に高い価額ではないような場合以外は、特別受益はお互い様として帳消しにしてはどうかという対応を調停委員が言われることが多いです。

(弁護士 北野英彦)

私立大医学部の学費は特別受益か【Q&A №375】


 養父が亡くなりました、私は養父と養子縁組をしています。私は実父に大学費用などを出してもらい、私が独立したときに母は養父と再婚しました。
 養父は前の結婚で医師になった一人息子がいます。
 医師であった養父ですが25年まえに彼の私大医学部の予備校費用や入学金、学費など彼に多大な費用が掛かり大変だったとよくこぼしていました。これは特別受益になりますか?

記載内容  私立大学 医学部 学費

(花)


【医学部の学資、独立後の養子の2点が問題】
 本件では、まず、第1点として、学資、特に私大の医学部(きわめて多額になる)の学資の支払いをしてもらったことが特別受益になるのかどうかが問題になります。
 次に、あなたが養子になったのが、あなたの《独立》後であるという点が、特別受益問題にどのように影響してくるかという点も問題になります。

【学資の支払いについて】
 2人の子供が相続人であった場合、一方は大学卒で、他方は高校卒で、いずれも被相続人から学資を出してもらったケースについて考えましょう。
 親としては、子供たちにそれなりの教育を受けさせてやりたいと考えるのが普通でしょう。
 ただ、その学力や本人の希望などもあり、一方は大卒、他方は高卒ということもありえます。
 大卒と高卒の場合、大卒の人が特別受益を受けたという考えもあります。
 しかし、大卒と高卒になった点に合理的な理由があれば、被相続人である《親の扶養義務の履行の範囲内であり、親の裁量》であるとして、特別受益にはならないというべきでしょう。
 参考までにいえば、過去の判例で次のようなものがあります。

「……子供の個人差その他の事情により、公立・私立等が分かれ、その費用に差が生じることがあるとしても、通常、親の子に対する扶養の一内容として支出されるもので、遺産の先渡しとしての趣旨を含まないものと認識するのが一般的であり、仮に、特別受益と評価しうるとしても、特段の事情がない限り、被相続人の持戻し免除の意思が推定されるものというべきである。」 (大阪高裁決定平成10.12.6)

【私大医学部などの膨大な学費の支払いについて】
 但し、学費の額が極めて高い場合、例えば本質問のように私大医学部ということになると、額が非常に多い(私が聞いているところでは、入学金や学費で5000万円を超すところも少なくない)のであれば、特別受益とするべきでしょう。
 遺産全体の額とのバランス(たとえば遺産が10億円程度もあれば、それほど問題にするべきものではないでしょうが)を考えて、その学資支払い分が多額というのであれば、他の相続人間にとってあまりにも不利な結果になるような場合は、特別受益として考えてもいいというのが私の意見です。

【独立後の養子であることが結論に及ぼす影響について】
 質問では、あなたは実のお父さんから学費を出してもらい、その後、あなたが、《独立してから養子になった》というように読み取れます。
 もし、そうであれば、お父さん(養親)は実子さんに学資を出された当時、特別受益というようなことを考えてはいなかったのではないでしょうか。
 養子になる以前は、いずれも当時のそれぞれの実親の扶養により、大学に行っていたのであり、その学費に差があったとしても、それは当時の実親の経済的な資力やあなたの志望等の問題であり、学費に差があってやむを得ない面があります。
 特別受益が相続人間の不平等を是正する趣旨をもっている点を考慮すると、学費の差は、当時の状況としてはやむを得ないものということもできると思います。
 又、養親としても、養子になる以前の実子の学費まで相続で問題にされるとまでは考えていなかったと推測すべきであり、持ち戻し免除が適用される可能性もあります。
 ただ、今回の質問は、確定的な答えをできる内容ではありません。
 そのため、できれば、相続に詳しいお近くの弁護士に法律相談され、より具体的な事情をお話された上で、弁護士のアドバイスを受けることをお勧めします。

養育費は遺留分から控除できるか【Q&A №314】


主人は再婚です、子供一人いて離婚し、私と結婚しました。
 私たち夫婦には、子供はいません。
 別れた子供が、高校卒業後、専門学校へ行く学費を2年間 毎月6万送金しました。
 この度、遺言書を作成しました。
 遺留分で、その分差し引いて貰えますか。

記載内容  養育費 学費 未成年 特別受益 専門学校

(あさちゃん)


【扶養義務の履行は特別受益に当たらない】
 父親は子に対して養育義務がありますので、養育費として相当な金額の支払いは、特別受益にはなりません。
 養育費としてどの程度が相当かは、家庭裁判所で用いる次のような養育費算定表がありますので、ご主人の収入を前提にこの表で判断されるといいでしょう。(養育費・婚姻費用算定表
 本件で問題となる専門学校の学費は、養育費としての送金だと思われます。
 そうすると、未成年者に対する父親としての扶養義務の範囲内での送金として扱われる可能性が高く、扶養を超える特別受益となることは少ないです。

【遺留分でも考慮されない】
 養育費が特別受益になった場合には、遺留分の算定の際にその受益分が遺産に持ち戻され、遺留分として受け取ったという扱いになります。
 しかし、前記のとおり、毎月送金した金額を特別受益とするのは難しいので、子どもの遺留分を減らすことはできないでしょう。
 参考までにいえば、学費で特別受益に該当するには、私立の医科大学・医学部のように多額の入学金や高額な学費を支払った場合などのかなり特別な事情が必要でしょう。

40年前の特別受益と貨幣価値の変動【Q&A №279】


 父が亡くなり相続人は 母と子供三人です。
 子供の一人が私立医大を卒業し入学金・学費・寄付金等約2000万円を父が支払いました。
 他の二人は国立大学だったため100万円以下でしたこの2000万円は特別受益だと思いますが、約40年前の金額なのでインフレを加味すると現在の貨幣価値になおすと約5倍です。
 持ち戻しは2000万円X5=10000万円の計算でいいのでしょうか?

記載内容  貨幣価値 物価指数 学費

(徹)


【入学金等は特別受益に該当する】
 私立医大に入学・卒業するための入学金や学費、寄付金2000万円を被相続人に支払ったというのであれば、その金額は特別受益になります。
 約40年も前の話ということですが、特別受益については、どんなに古いものであっても特別受益として、遺産分割時の持ち戻しの対象になります。

【金銭での贈与は、その後の価値変動を考慮に入れる】
 約40年前の2000万円と現在の2000万円とは価値が異なります。
 特別受益の持ち戻しにおいては、金銭であれば、金銭価値の変動を考慮することになります。
 特別受益があった場合には、その価額は相続時の価額で評価されます。
 金銭の場合には、価値が変動しますので、昔の特別受益が実行された当時の金額を現在の時点(相続時点)の価額で引き直すとどの程度の金額になるかを評価する必要があります。

【消費者物価指数を参考にする】
 過去の金銭を現時点の金額に評価する簡単な方法としては、政府の統計である消費者物価指数を利用するといいでしょう(ただ、現実の判決はこのほかにも様々な評価を取り込みますので、そう単純ではありません)。
 手元の資料を確認すると、約40年前からみて、現在は約4倍に消費者物価が上昇しています。
 そのため、4倍を乗じて、約8000万円という金額を特別受益と計算するのが妥当だと思われます。

【あなた方の学費も同じ考え方で考慮される】
 あなた方の学費もお父さんから出ているようですので、その分も特別受益として物価指数により増額された金額で考慮されることになります。

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