大澤龍司法律事務所 相続問題無料相談ブログ

老舗かばん店「一澤帆布」のお家騒動に見る相続問題(第5回)

遺言・・それは生き方を反映するもの

【複数の遺言書があるのはどんな場合だろうか?】
一澤帆布では2通の遺言書があり、正反対の内容が記載されていた。
複数の遺言書があるというケースは決して少なくない。
人間の気持ちだから変わる事もあるし、特に遺言書を書くような年齢になれば気持ちが不安定になることもあるだろう。
当初は同居している長男に遺産を相続させるという公正証書遺言を作ったが、自分の面倒を十分に見てくれないと不満を持っていれば、たまたま遊びに来た次男の優しさにほろっと来て、次男に全ての遺産をやろうというような気持ちになることもあるだろう。

【複数の遺言書がある場合はどうなる?】
さて、遺言書が複数ある場合、どちらの遺言が効力があるのか?
法律的に言えば、後に作られた方の遺言書が有効になる。
先に作成された遺言書が和紙に達筆で書かれ実印が押されていても、あるいは公正証書遺言であっても、後で作成された遺言書が優先する。
だから一旦遺言書を書いてもらったからといって、それで大丈夫ということはない。

【人を支配する手段としての遺言】
ホテルからレストランまで、莫大な資産を持っている人から「先生、遺言書を書き換える手続きをしてくれなはれ・・」と依頼されたことがあった。
その人は同居している長男の嫁と折り合いが悪く、長男に離婚することを迫った。
しかし、長男は離婚しようとはしない。それなら遺言書を書き換えて遺産をやらないようにしてやるという展開だ。
私はこの依頼を受けなかったが、その人はやはり遺言を作り直したという。
子供たちが仲良くするための工夫をし、親の優しさを死後に残す遺言もあれば、このような生きている間に、自分の支配を貫くための遺言もある。
遺言は、文字通り、その人が遺す言葉である。どのような遺言を作成するかは、その人次第、遺言はその人の生き方を反映しているということかもしれない。

                                  (2010年2月 R記)

老舗かばん店「一澤帆布」のお家騒動に見る相続問題(第4回)

本物かニセ物か、どちらの方がいいですか?

自筆遺言証書サンプル   ???

自筆遺言証書サンプル【筆跡鑑定が決め手となった?】
最初の裁判では、第2の遺言書が本物だという結論を出した。
警察の科学捜査研究所OBから3通の筆跡鑑定書が出ており、いずれも第2の遺言書を本物とする結論だったという。

【筆跡鑑定とは】
私の理解するところでは、筆跡鑑定とは、筆跡にはその人特有の癖があり、文字の形態(縦長か横長か、角ばっているかや丸いのか)、筆順やはね・止めの仕方などを比較して同一の人が書いたかどうかを判断するものである。
しかし、同じ人でも年齢や状況で字形が変化するし、筆順も筆勢も変化する。
たとえば、元気なときとパーキンソン病や脳梗塞などになったときでは字が変化するし、日記と遺言書や年賀状では文字を書く丁寧さが異なるであろう。

おそらく一番の問題は、偽遺言書は、死んだ人の関係者(相続人である子供)かその道の専門家が作るということである。
裁判になって筆跡鑑定がされることが当然予想されるから、どのような筆跡かを事前に綿密に調査し、かつ似た筆跡になるように練習もするだろうし、もともと血がつながっているから筆跡が似ているということもあるかもしれない。
筆跡鑑定自体には限界があるように思われる。

【筆跡鑑定についてはこんな経験がある】
遺言書が偽造だという事件で、科学捜査研究所のOBの先生に遺言書の筆跡鑑定をお願いに行ったことがある。
鑑定料が弁護士費用より高かったことにも驚いたが、もっと驚いたのは、その鑑定の先生から「本物かニセ物か、どちらのほうがいいのですか」と質問されたことだ。
「当方はニセ物だと考えています」と申し上げたら、その後、「あの遺言書はニセ物でした」という連絡があった。

当然のことながら、その先生に筆跡鑑定を依頼した(もちろん、高い鑑定料を支払った)。しかし、その事件を担当して約35年も経過した今でも、解けぬ疑問がある。
もし、あのとき、「当方は本物だと考えています」と申し上げたら、その先生は「あの遺言書は本物でした」という連絡をくれたのではなかろうか?

ちなみに、事件の相手方からは遺言書は本物だという鑑定書が出た。
相手方の鑑定人も「本物かニセ物か、どちらのほうがいいのですか」と質問したのであろうか。

ついでにひとこと。
昔の映画でアラン・ドロンがニセのサインの練習をしている場面があったように記憶しているけれど、あれは何という映画であったろうか?

注:掲載している遺言書の写真は、サンプル用に作成した架空の遺言書です。
  依頼者からお預かりする遺言書に関しては、秘密を厳守いたしますので、ご安心ください。

老舗かばん店「一澤帆布」のお家騒動に見る相続問題(第3回)

遺言書をめぐって繰り返される裁判、まさに"骨肉の争い"… 大澤photo6

【判決大逆転 本物から偽物に】
最初の裁判では、第2の遺言書が本物だという判決が最高裁で確定した。
しかしその後、新たに裁判が起こされ、今度は、偽物と最高裁が判断した。
この判決は「骨肉の争いが形勢逆転、『筆跡』巡り割れた最高裁判決」というタイトルで報道された。
しかし、負けた長男側が納得しない。
近く、3度目の裁判が起こされる予定だという。

【どんな遺言書であったのか】
ネットで調べてみると、先代の書いた最初の遺言書は、巻紙に毛筆で書かれており、「一澤」の実印が押されていたという。
しかし、第2の遺言書は便箋3枚に「一沢」という認印が捺印されていたという。

話は横道にそれるが、「一澤帆布」のかばんには、右の写真のような形で製造販売者を表示するラベルというか、ロゴというかわからないが、縫い付けられていた。
この漢字の表示を見て、「おぉ、一澤帆布じゃないか」などいう友人もおり、「昔から使っているんだ」というような答えを私は返して、いい気持ちになっていた。
だから、このような私の気持ちから言えば、遺言書は巻紙に毛筆で書かれているのがいかにも由緒正しく、かつ望ましく、相応しい。
便箋3枚に認印といえばあまりに安直でわびしく、「おいおい、ブランドの価値が下がるじゃないか」と言いたくなるような気がする。
(もちろん、便箋に認印だからと言って、それで遺言書が無効だというわけではないが)
さて、元にもどって、ではどうして最初の裁判では第2の遺言が本物と認められたのであろうか。
次回には、この点を考えてみる。

                                  (2010年1月10日記:R)

老舗かばん店「一澤帆布」のお家騒動に見る相続問題(第2回)

残された2通の遺言書。偽造されたものかどうか… 大澤photo6【一澤帆布は閉店している】
この正月に知恩院に行ったときに一澤帆布の店の前を通った。
店は閉められており、店の扉には「お知らせ:申し訳ございませんが、当分の間、休業させていただきます」という貼り紙がしてあった。
その閉まっている店から左3軒目には「一澤信三郎帆布」店が営業していた。
ショーウインドウにはあのなつかしい帆布のかばんが飾られている。
寒い日であったにもかかわらず、店の外にも、店の中にもお客さんが入っていた。
一体どういうことになったのだろうか?

【さて、お家騒動の中味は・・】
一澤帆布は個人商店ではなく、「一澤帆布工業株式会社」が正式な名称である。
先代一澤信夫氏の引退後、三男の信三郎氏が社長となって、家業を引き継ぎ、発展させてきたが、長男は銀行に勤めており、店の経営には全く関与していなかったという。
ところで先代は三男らに会社の株式を相続させるという内容の遺言書(最初の遺言という)を書き、弁護士がその遺言書を保管していたようだ。
しかし、先代が死亡した後に、長男が、会社の株式は長男らに相続させるという、全く正反対の遺言書(第2の遺言という)を持ち出した。

第2の遺言が有効であるとすると、それより先に作成された最初の遺言は効力を失うことになる。
株式を相続したものがこの繁盛している店の経営権を握ることになる。
店を実際に切り盛りしてきた三男は当然のことながら第2の遺言に納得しない。
「これは兄貴が勝手に作った、偽造の遺言だ」(と三男は言ったであろう)ということで、長男と三男との間に争いが発生し、当然、2人の間では調整がつかず、裁判沙汰となった。
裁判の主な論点は、「第2の遺言は有効かどうか?」である。
ストレートに言えば、「第2の遺言書は偽造されたものかどうか?」である。
さて、裁判の結果はどのようなものだったか、これについては次回に・・
                                  (2010年1月9日記:R)

老舗かばん店「一澤帆布」のお家騒動に見る相続問題(第1回)

京都ぶらり散歩:龍馬の結婚式場跡から一澤帆布へ
大澤photo6 車で走っても京都の面白さはわからない。
街を歩けばなにかしら面白いものがある。
今年の正月の収穫は「坂本龍馬 お龍『結婚式場』跡」の石碑の発見だ。
道路脇にポツンと立っていた。
どこにあるかって?教えない。
自分で足で歩き、眼で探すことだ。
結婚式場跡の石碑は見つからないかもしれないが、その替わりにもっと面白いものが見つかるかもしれないから。

【お気に入りのかばんを作っていた】
今から30年ほど前のことだ。
京都の知恩院に行ったときに変わったかばん屋を見つけた。
いかにも手作りという味わいのあるがっちりした帆布のかばんを売っていた。
値段はかなり高かったが、ショルダーバッグを買った。
仕事にも遊びにも使い、事務所にも裁判所にも持ち歩いた。
ほつれたり穴があいたりしたから結局3個ほどを買った。
その店が一澤帆布だった。

【遺産をめぐって、いまだに紛争中】
最近、「『一澤帆布』お家騒動」の記事を見た(平成21年12月26日:朝日新聞)。
相続問題でもめ、裁判をしていることは知っていた。
しかし、いまだに紛争は解決していないようだ。
一体、何が問題になったのか、弁護士の目から見た感想・コメントを次回から数回にわたって書いてみることとする。

                                  (2010年1月9日記:R)

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