大澤龍司法律事務所 相続問題無料相談ブログ

★居住の利益と特別受益【Q&A №457】


【質問のまとめ】
① 被相続人と相続人の一人が建築費用を折半して建てた家があります。
  被相続人の生前、その家には、相続人が一人で住んでいました。
  相続人に特別受益がありますか?
② 被相続人の家に相続人の一人が同居して、
  相続人の生活費の多くを被相続人が負担していました。
  相続人に特別受益がありますか?

記載内容  居住利益 特別受益 建築費用

【ご質問内容】
遺産に不動産が含まれています。
土地は被相続人名義、家屋は建築費を被相続人と相続人Aが半分づつ負担し共同名義で相続人Aが居住しています。
被相続人は相続人Bと同居しており、Bは生活費として月に3万程度負担していました。
上記の場合、相続人A・Bともに特別受益になりますか?
また共同名義の家屋の現在の価値の半分が遺産の対象として含まれるのでしょうか?
特別受益と遺産との場合では相続分に価値的な違いが出てくるのでしょうか?

(迷える羊)


【Aの特別受益は居住利益】
 わかりやすくするために、被相続人がお父さん、AとBはその息子という前提で話をしていきます。
 お父さんとAとがそれぞれ建築費用を出して建築し、共有である家を、Aがお父さんから(半分)借りて住んでいたというケースです。
 Aの特別受益は、その家屋が共有である(つまり、家屋の半分はお父さんのものである)にもかかわらず、家屋の全部を使用している利益(正確に言うと、お父さんの持ち分を利用している点についての利益)と思われます。
 具体的には、その家の家賃相当額の半額(正確には土地利用料も考えられるが)を免除されたものとして、これを特別受益だと主張することになるでしょう。

【同居者の生活費の部分は特別受益が減殺される】
 Bについては、特に記載されてはいませんが、お父さんの家に無償で同居していたとすれば、家賃相当額が特別受益であるとの考えもあり得そうです。
 しかし、親と同居の場合には、扶養義務のある親子関係の同居であること、Aのような独自の居住状況ではないことや、親の面倒や介護をしていた等の理由からか、家賃相当額が特別受益になると主張されることは少ないようです。
 むしろ、このBのようなケースでは、親の介護をした等とかを根拠として、特別寄与等の主張が出てくる可能性さえあります。
 次に、Bは生活費を3万円出しているとのことですが、現実の生活費よりかなり低額であっても、被相続人と相続人が親子の関係であればお互いに扶養義務を負っていますので、特別受益とならない場合も多いです(この点は当ブログ【Q&A №254】母の生活費負担と特別受益・寄与分もご参照ください)。
 参考までに言えば、過去の裁判例では月十数万円程度の生活費提供でも特別受益にならないとしたものがあります。

【建物評価額の半額は遺産に組み込み】
 最後に、お父さんの有する共有持ち分は被相続人の遺産になります。
 おそらく本件のような場合には、Aが居住している家(正確にいうと被相続人の土地とその土地上の建物の共有持ち分)を相続で取得し、Bは被相続人と同居している家を相続で取得するということになりますが、それぞれの価額に差があれば、他の預貯金の相続で調整するか、代償金の支払いで調整することになるでしょう。
 評価基準時ですが、遺産の場合には遺産分割時点となります。
 特別受益の場合の評価時点は不動産等については、特別受益のあったときではなく、相続開始時とするというのが裁判例です。

(弁護士 大澤龍司)

★増築費用の贈与を受けた証明【Q&A №378】


 兄弟3人で遺産分割の調停中です。20年前に長男が自宅の増築費用として、父から700万円の贈与を受けているので、この金額を長男の特別受益として認めてほしいと調停員に要望しました。調停員が証拠はありますかと尋ねてきたので、長男が書記官に提出した回答書に「振込みで受領」と記載している事が証拠と言ったところ、それだけでは不充分と言われました。他にどのような証拠が必要なのですか。長男は増築費用700万円は借用したもので、生活費の不足分で返済したと言っている。遺産分割の対象は預金と特別受益のみです。次男は預金の1/3のみで了解しており、長男の特別受益については問題として取り上げることに反対しています。

記載内容  建築費用 調停 返済 贈与 貸金 消滅時効

(スカイツリー)


【贈与か貸金か】
 自宅を新築した際、お父さんから金700万円が送金されたことについては、長男も認めています。
 問題は、その送金分が、《贈与》か《貸金》なのかという点です。
 その送金分が長男に対する《贈与》であれば、特別受益として、遺産に繰戻される可能があります。
 しかし、貸金であるとすると、返済の問題と、返済していない場合には、消滅時効の問題が生じてきます。
 長男は《その後、生活費援助で返金した》という主張ですので、貸金だったという立場です。
 貸金であると主張するのなら、長男の側で返済を証明する必要があります。
 又、送金時期が20年前ですので、消滅時効期間《10年間》が経過しており、時効で貸金返還請求権は消滅しているということも将来、主張するかもしれません(参考までにいえば、特別受益では消滅時効という問題は発生しません)。

【贈与の証明はあなたがしなければならないが・・】
 長男は貸金だと主張し、あなたは特別受益であると主張しているので、貸金であること及びその弁済をしたことは長男が証明する必要があります。
 しかし、反面、あなたとしては、贈与を主張している以上、その点を証拠で証明する必要があります。
 普通のケースなら、贈与を主張する側としては、長男が一度も金銭を返還していないこと(贈与なら返還不要であるため)や、借用書等の契約関係書類がなかったこと(貸金なら借用書があることが多い)等を証拠で明らかにする必要があります。
 当時、贈与税の申告をしていたというのであれば、その申告書の控えなどを入手されると決定的な証拠になるでしょう。
 又、返済しているというのなら、長男にその証拠を提出してもらうように要請し、その裏付けがないというのであれば、弁済の証拠なしとして、《貸金》ではなく、《贈与》だったのだという主張をすることも可能でしょう。

【長男の弁済の主張についての反論】
 今回の質問の件では、長男は生活費の不足分で返済したという主張をしているようです。
 この点については、そのような事実が本当にあるのかの調査をするために、お父さんの預貯金口座の履歴を取り寄せすることも考えていいでしょう。
 履歴を確認して、お父さんが十分な年金等を得ている、あるいはかなり多額の預貯金等があるということなら生活費の援助はいらないでしょう。
 又、お父さんの預貯金額が毎月減額しているというような事実が判明したのなら、生活費はその預貯金から出ており、長男はなんらの援助もしてはいないという推測ができます。
 援助しているとしても、その長男の援助は借金の返済ではなく、《親族間の扶養義務の履行》として、長男が実行したものであり、借金の返済ではないと反論することも可能です。

【調停は裁判ではない】
 20年前の送金が贈与か貸金か、そのいずれについても証明は困難な場合が多いです。
 質問のケースはあなたのご主張のように贈与の可能性も高いように思います。
 しかし、調停は裁判ではありません。
 贈与か貸金かを最後まで争うのもいいでしょうが、勝訴するとは限りませんし、弁護士費用も必要です。
 不満が残っても、調停委員の意見も参考にし、中間的な解決として、送金分の一部を特別受益として算入する等の方向を検討してもいいでしょう。

母の土地を改良した長男の相続分【Q&A №58】


 母が所有していた土地及び建物が、道路拡張のため市に収用されることになりました。
 母は移設費用及び土地収用代金を受け取り、長男名義の家を新築する資金を長男に渡しています。(土地は母名義のままです)

 私は母が渡した資金の全てが、特別受益になると主張していますが、兄は「家を建てるため盛土を行った。その費用は母の土地の価値を上げたものであり、特別受益とは認められない、家の建築費用だけが、特別受益だ」と主張しています。

「生計の資本としての贈与」としては、どちらの主張が正しいでしょうか?

記載内容  特別受益 建築費用 寄与分

(まっちゃん)


【生前の建築資金贈与は特別受益にあたる】
 被相続人であるお母さんの生前に長男が住宅建築資金をもらったのですから、その住宅建築資金は特別受益になります。
 ただ、今回の質問では、その資金の一部がお母さんの土地の盛り土等の土地改良に利用され、土地の価額が増加しています。
 そのため、もらった金額全額を特別受益とするのではなく、特別受益から土地価額増加分を控除するべきではないかという議論が発生します。

【土地の価値増加をどう扱うか】
 生前に被相続人から贈与などを受けた場合には、特別受益として遺産にその受益額を加算して、相続人間の公平を図るというのが、特別受益制度です(いわば、生前の贈与を相続財産の前渡しとして考慮し、生前贈与を受けた人の相続分を一定程度減らすものです)。
 今回の質問では、お母さんの遺産である土地の価額は盛り土等をした状態で評価されます。これに建築資金の全額を特別受益として遺産に加算すると、その土地価額増加分だけ、遺産が増加することになります。
 しかし、これでは土地価額の増加分が二重計上されていることになり、長男にとって不公平すぎるようです。

【土地価額増加分は特別寄与で解決する】
 相続人間の公平という観点からは、何らかの形で土地価値が増加したことを考慮する必要がありそうです。
 これについては、特別受益から土地価格の増加に要した費用(=盛土の費用)を控除するという考え方もあるでしょうが、一旦は長男の手元にわたっているのですから、筋を通せば建築資金については全額を特別受益とするしかないでしょう。
 しかし、法律は、特別受益という制度を定める一方、寄与分という制度を設けて、相続人が遺産の増加に貢献した場合、遺産が増加した分は当該貢献をした相続人に優先的に分け与える事にしています。
典型的には、子どもが親の事業を手伝い大きく発展させた場合や、子どもが親に多額の贈与をした場合などがあります。
 今回の質問では、相続人である長男が(元手は贈与されたものとはいえ)自分のお金を土地改良に提供し、土地(遺産)の価値が増加したことになります。
 そうしますと、長男が遺産の増加に貢献したものとして、土地の価格増加分は長男の寄与分と考えるというのが公平な解決になると思われますので、兄弟間の協議で円満解決されるのがいいでしょう。

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