大澤龍司法律事務所 相続問題無料相談ブログ

知的障害がある相続人【Q&A №569】


【質問の要旨】
相続人に知的障害がある場合

記載内容  意思能力 知的障害 成年後見

【ご質問内容】
相続人の一人に知的障害があります。
サインや印鑑を押す程度はできますが、それで承諾したことになるのでしょうか。
それとも、特別な手続きが必要なのでしょうか。

(りょう)


【サインができるかどうかではなく、判断能力の有無が問題となります】
サインができるということですが、自分の手で署名をする行為ができるかどうかはあまり法的に意味がありません。
問題は、その人が判断能力(意思能力)があるかどうかです。
知的障害とは異なりますが、認知症になった方についていえば、その程度は軽重があり、重度のものであれば判断能力がなく、その人が署名捺印してもその文書は有効なものにはなりません。
反面、軽い物忘れ程度のものであれば、判断能力があるとされ、その方の署名捺印した文書は有効になります。
要するに、その方がサインや印鑑を押すことができるかどうかではなく、その方がサインする書類の意味内容を理解できるかどうかが問題となります。

【医師に判断してもらう】
認知症の場合には、《長谷川式認知テスト(以下、「長谷川式」といいます》やMMSEなどの判断能力を調査するテストがあります。
知的障害のある場合、療育手帳等で障害の等級認定がされていることも多いとは思いますが、認定の時期がかなり前であったり、又、認定基準からだけでは、判断能力の有無を判断しがたい場合もあると思われます。
そのため、専門分野のお医者さんにどの程度の判断能力があるのかを確認してもらうことを考えていかれるといいと思います。

【判断能力がない場合には後見人を付ける】
検査などの結果、判断能力が欠けていると判断された場合は家庭裁判所に対し成年後見人の選任を求める審判を申し立てるしかないでしょう。
裁判所が選任した後見人が就いた場合、その方が本人に代わって書類への署名捺印をすることになります。

(弁護士 大澤龍司)

認知症の母の現金を姉弟に横領された件【Q&A №563】


【質問の要旨】
他の相続人による不正出金を取り戻せるか

記載内容 不正出金 意思能力

【ご質問内容】
母が2月に亡くなりました
母は不動産収入があり、毎月必ず47万ほどの収入が郵便局の口座に振り込まれています。
母は、2013年10月に脳梗塞で倒れて、その後は認知症のため判断能力がなくなり、弟と姉が郵便局の現金口座を管理していました
老人施設に入ったために、毎月20万から22万くらいの費用がかかりました。
その分以外は、母は認知症で使いようがないので、そのまま残っているはずで、毎月毎月、47万から税金分を引いて、32万円。
そこから22万円かかっても、毎月10万円ずつ、2013年11月から2017年1月まで38ヶ月間で、380万円。
プラス年間でで80万円が不動産の管理会社より入金がありますから240万円プラス。
合計で620万ほどは、どう考えても残っていないとおかしい母自体が施設で寝たきりの生活でもちろん現金を使うことはできないのでおかしいはずなのです。
しかし、母が亡くなった後の現金が100万円にも満たないのです。
2013年10月の脳梗塞を起こす前を含めるとプラスで500万ほどは残っているはずで合計で約1000万円の相続になるはずなのです。
以上の件から、明らかに、姉と弟による不正な出金が明らかなことだと思います。
母の状態が脳梗塞で判断能力がなく、ほぼ寝たきりで介護施設での生活でした。
その上で後見人制度も利用せずに3年間いましたから。
今、母の口座のある郵便局に記録を申請していますが、この場合は、この本来あるべきはずの金額は取り戻していくことは可能なのでしょうか?
どういう手順で行うことがベストなのか
知りたいと思い、メールさせていただきました。
よろしくお願い致します。

(ジュン)


【お母さんの意思能力と出金との関係】
質問にあるように、お母さんに判断能力がない場合に預貯金が引き出されているのなら、その預金はお母さんの意思に基づかないものであるということはできます。
にお母さんに判断能力があっても、お母さんの意思とは関係なく出金されたのであれば、その出金は違法なものだといえます。
しかし、仮にそれらのような出金があったとしても、出金された金銭がお母さんのために使用されていたのなら、お母さんに損害はなく、不法行為にも、不当利得にもならず、その出金を返還せよという話にはなりません

【使途不明金があるかないかを確認する】
そのため、まず、お母さんのためではなく、その他の目的でなされた出金があるかどうかを調査する必要があります。
]これを知るためには、お母さんの口座について、どのようなものがあり、どのように入出金されていたかを金融機関に照会することになります。
現在、お母さんの口座のあるゆうちょ銀行に取引履歴の照会をされているようですが、それ以外に利用されていた金融機関があればその履歴の確認も必要でしょう。
入出金履歴の取り寄せができたなら、その内容を詳細に検討する必要があります。
個別に出金を点検して、お母さんのためとは思われない出金があるかどうかを確認していくことが必要です。
《本来あるべきはずの金額》とは、そのような検討の結果で判明するものです。

【使途不明金を誰が引き出し、何の目的で使ったかも確認する】
使途不明金(正確に言えば、お母さんのため以外に使用された金銭)があるのなら、その使途不明金を誰が引き出したかを確認するのが次の作業になります。
お母さんの預貯金通帳や取引印、キャッシュカードを誰が保管していたのか、カードなら出金したATMがどこに設置されたものであるかにより誰が出金したのかを推測できるでしょう。

【損害賠償請求権は相続される】
出金されたお金があり、そのお金がお母さんのために使われていないということなら、お母さんはその引出者に対して不法行為による損害賠償を請求することができます。
お母さんが亡くなった後は、この権利は相続人に相続されます
今回の件で相続人が子供3人であるとすると、あなたはお母さんの持っていた損害賠償請求権の3分の1を相続しますので、出金者に請求をし、話し合いをされるといいでしょう。

【話し合いがつかない場合には調停を考える】
ただ、今回の問題のような不正出金については、円満な話し合いで解決するのはむずかしいことが多いです。
その場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を起こすことを考えるといいでしょう。
家裁の遺産分割調停は費用もそれほどかからず、又、調停委員も関与しますので問題が解決することも多々あります。
しかし、あなたの請求どおりになることは少なく、お互いが譲歩を迫られることも多いということも知っておかれるといいでしょう。
どうしても、あなたの考える請求額を全額もらいたいというのであれば、その場合には相続分に応じた不法行為に基づく損害賠償 請求訴訟を起こすしかありません。
この訴訟は素人の方には難しいので、相続に詳しい弁護士に相談されるといいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)

認知症の診断と遺言能力【Q&A №497】

【質問の要旨】
認知症との診断書がある場合、遺言は無効か

記載内容  成年後見 意思能力 回復

【ご質問内容】
姉が、母を連れて、認知症の専門医のところに行き、26年9月
その診断結果が、
MMSE 29     17(母の数値)   5
1日常の意思決定を行うなめの認知能力
 見守りが必要
2 自分の意思の伝達能力
 具体的な要求に限られる トイレ食事とか
になってました。

それで、姉がそれをもとに、成年後見制度を申請しようとしたのですが、結局しませんでした。
母は、認知症でしたが、買物もでき、自分で判断できる状態で、この診断書とだいぶ、ちがってました。
そして、26年11月に「すべての財産を私に譲る」、という遺言書をかきました。

28年3月
母は、延命治療をやるかどうか聞かれたとき、やらない、といい、おおきな病院に転院しようとしたのですが、その時の紹介状には、(一般医)「軽度の認知症であるが、日常会話もでき、判断能力はある」とかかれてました。
転院はしなかったのですが、このような状態の場合、遺言書はゆうこうでしょうか?
遺言状を執行した場合、姉が認知症の専門医の、26年9がつの診断書をたてに、遺言無効の訴えをおこしそうなので。
成年後見制度を利用できるような状態の場合だと、遺言は無効になるのでしょうか?

(fgfhh)


【認知症だからといって、必ずしも遺言は無効にはならない】
認知症といっても程度があります。
軽度の認知症の場合には遺言をする能力は認められます。
また、成年被後見人がついた場合でも、その方が判断能力(意思能力)を回復した場合には、医師2名以上の立ち会いをし、一定の方式を条件に遺言を有効とする制度も認められています(成年被後見人の遺言制度 民法973条)。
従って、認知症だからといって、遺言が認められないわけではありません。

【認知症の程度を判断する基準・・MMSEと長谷川式認知スケール】
判断能力を判定するものとして、長谷川式認知スケールがあります。
このテストは、30点満点で認知症の程度を示すテストであり、日本で多く採用されています。
今回、認知症専門医で検査されたMMSE(ミニメンタルステートメント検査の略称)というのは、長谷川式にはない図形検査や自発的に文書を書かせるような質問も存在しますが、検査の年月日や場所等の質問をする等、長谷川式と同じ部分も多いです。
長谷川式と同じく30点満点であることや上記のように質問内容がほとんど重なっていることなどから見て、長谷川式認知スケールとほぼ同様のものと考えていいでしょう。
これまでの裁判例を見ると、長谷川式認知スケールについては10点あたりが遺言能力の境目になりそうです。(この点については【コラム】意思能力と長谷川式認知スケールに関する判例の紹介および【長谷川式認知スケールと意思能力についての裁判例一覧表】をご参照ください。)
お母さんの検査結果がいくらなのか、質問ではわかりにくいですが、仮に17であれば遺言するに足る判断能力がないとは言えない可能性が高く、また、5であれば、よほどのことがない限り遺言能力がない可能性が高いという結論になるでしょう

【紹介状の記載から見た場合は判断能力がありそうだが・・】
お母さんの転院の際の紹介状には「軽度の認知症ではあるが、日常会話はでき、判断能力はある」との記載があるということですので、その約1年半前の遺言書作成時、お母さんは遺言をするに足る判断能力があったように思われます。
しかし、その際、どんな検査をしたのかも知りたいところですし、また、一旦、MMSEで、仮に5点だとされたのであれば、どうして判断能力が回復したのかの説明も必要でしょう。
いずれにせよ、どの時点で認知症のテストをしたのか、どのような検査結果が出たのか、また、入院しているような場合にはどのような言動をしていたのかをカルテや看護記録から探る等、事実を確認して、その結果を総合して判断をするしかないというのが回答になります。

(弁護士 大澤龍司)

生前の財産管理と相続対策【Q&A №485】


【質問の要旨】
施設にいる叔母の財産管理をすることはできるか

記載内容  老人ホーム 財産管理 成年後見

【質問の内容】
15年ほど前に有料老人ホームに入居し、その後、問題を起こした関係から叔母の財産管理を施設がすることになりました。
同じ系列の施設間移動は3回ほどしているようなのですが、直近の施設に移ってからは、以前の所では請求書が届いていたのですが、現状の施設に移ってからは数回のお願いもしているのですが契約書も見せて頂けていない状況です。
このたび、高齢でもあり重度の肺炎のため、その施設を退所して系列の病院に入院した関係から現状までに出納状況、出来れば私物、資産等の管理を私の方に変更依頼もかけたのですが、たらいまわし状態で何の返事も頂けなく困っております。
対処方法ございますでしょうか?
叔母は現状、意識もはっきりしておりません。

(たんちゃん)


【あなたの立場について】
あなたと叔母さんとは親族という関係にはなりますが、それだけでは、叔母さんの財産に関与できる立場にはなりません。
あなたが叔母さんのことを心配しており、これまでに面倒を見てこられたとしても、法律的には他人であり、叔母さんの財産に関与することができるということにはなりません。
施設から見ればあなたは他人であり、あなたからの要望に対して何らの連絡もしないというのは、法律的には当然であり、その点で施設の対応は間違ってはいません。
むしろ、他人であるあなたに安易に叔母さんの財産内容を明らかにし、あるいは財産を渡したような場合には、施設として責任を問われることも考えられるということになります。

【叔母さんの後見人になると財産調査ができるが・・】
現在、叔母さんが意識もはっきりしていない状況であれば、財産管理も十分にできないでしょう。
このような状態にある叔母さんについては、家庭裁判所に成年後見人の選任申立をすることができます。
成年後見人になれば、叔母さんの財産を管理しますので、施設に契約内容や費用の照会も可能ですし、施設に預けた物件などがあればその引き渡しを求めることも可能です。
ただ、成年後見人になるのは、通常の場合は叔母さんの推定相続人(もし現在叔母さんが死んだ場合に相続人になると法律で定められている人)です。
あなたが推定相続人でない場合には成年後見人になれる可能性は少なく、その場合には、施設でも、また、現在入院中の病院でも、これまでに施設がしたと同様の扱いをされるのはやむを得ないでしょう。
他の人が成年後見人に選任されたというのであれば、事情を話してその後見人から調査をしていただくしかないでしょう。

(弁護士 大澤龍司)

借名預金は遺産になるか【Q&A №483】


【ご質問の要旨】
父の死後、遺産分割協議がされたが、その後、父が貯金していたと思われる義母名義の口座が見つかった。
この口座のお金を、父の遺産として相続することができるか。

記載内容  借名預金 名義貸し 意思能力

【ご質問の内容】
父が平成24年1月に亡くなりました。
私は、外国に住んでいるので、弁護士とやりとりして、情報が金庫から見つからない状態で、父の銀行口座などを昔家で見かけた銀行や郵便局からのタオルやカレンダーを元に銀行の変遷を加味して、幾つかの口座を見つけて、其れを義母と等分しました。
義母は、介護2で気が定かでは有りません。
義母は、老人ホームに入居して、父の会社の年金と国の年金と生命保険で暮らしています。
その後、今年の春、私が日本に行き、家の掃除やごみ捨てや片付けを2ヶ月程している時に、父の思いや毎年口座のお金のバランスや判子や銀行手帳、保険手帳、金庫を開ける数字などが出てきました。
その中に父が最後迄管理していた父の口座と義母名義の銀行口座が出て来ました。
義母は働いていません。
この口座は父のお金だと思うのですが 半分貰う権利が私にあるのでしょうか
残された家族は私と義母の2人だけです。

(yspads)


【原則は名義を基準に判断】
今回のような家族の名義を借りた預金を一般に「名義預金」や「借名預金」などといい、一昔前はよく見られました。
このような預金であっても、外形上は名義人から判断され、特に誰も指摘をしなければ銀行は義母の預金であるとして各種手続を進めると思われます。

【預金を行った人物を実質的に判断】
ただ、中身の金銭を積み立てた実質的な預金者が別に存在することが判明した場合、話が変わってきます。
すなわち、預金の中身は、実際に預金を行ったお父さんの財産(遺産)であると判断される場合もあるということです。
この場合、あなたにも法定相続分を相続する権利があることになります。
そのため、この点が裁判で争われた場合に、生前の生活状況や収入状況などを当時の資産(たとえば給与口座の取引履歴など)から判断し、名義預金であったことが認められるケースもあります。
但し、義母のものではなく、お父さんのものであるという点の証明はあなたの方でする必要がありますから、裁判所がお父さんのものであることを十分に納得するような証拠を出す必要があります。
もしお父さんが預金したことに間違いなさそうでしたら、他の預金口座の取引履歴などと照らし合わせ、お父さんの口座からその義母の口座に積み立て(送金など)されていることなどの事情を確認されると良いでしょう。

【意思能力の問題が予想される】
ただ、実際の手続は厄介なものになる可能性があります。
今回は(少なくとも形式上は義母名義のため)義母にもお父さんの遺産であることを認めてもらい、その旨の書類に署名押印をしてもらって銀行に提出する必要があると思われます。
しかし、義母が気が定かでない状態であれば、義母が意思能力を欠いて署名押印ができない(あるいは、署名があっても無効になる)可能性があります
この場合、義母に成年後見人を付ける申し立てが必要となるなど、面倒な手続が必要となりますので、ご注意ください。
また、成年後見が必要なケースであるとすると、以前にした遺産分割協議も無効になる可能性もあることに注意が必要です。

(弁護士 大澤龍司)

★親の財産使い込みは罪になるか? 【コラム】

後見人になった子による親の財産使い込みは罪になるか?

記載内容  使い込み 意思能力 横領

【子の使い込み】
 相続事件では、認知症の親の介護をしていた子が、親の生前に親の財産を使い込んでしまっていたという事例が数多くあります。
 このような使い込みをした子が罪に問われることはあるのでしょうか。

【同居親族の財産犯は刑が免除されるという原則】
 お父さんが認知症になったことから、子(例えば長男)がお父さんの財産を管理しているケースを考えてみましょう。
 後見人である長男が、被後見人であるお父さんの財産を使いこんだ場合、業務上横領罪が成立します。
 しかし、刑法は直系血族及び同居の親族らとの間で窃盗・詐欺・横領に当たる犯罪が行われたとしても刑は免除すると定めています(244条。末尾に条文を記載しておりますのでご参照ください)。
 刑法は「法は家庭に入らず」ということで、家庭内の問題は家庭内での解決しなさいという趣旨で定められています。
 そのため、このような関係にある場合には、警察に訴えても捜査が開始されることはないのが普通です。

【後見人は例外になる】
 しかし、最近、後見人になった親族の使い込みについては業務上横領罪の成立を認めて刑は免除しないという裁判が相次いでいます(最判平成20年2月18日、最判平成24年10月9日、東京高判平成25年10月18日など)。
 2つの最高裁の判例はいずれも、成年後見人の後見の事務は公的性格を有するものであって、成年被後見人のためにその財産を誠実に管理すべき法律上の義務を負っているから、成年後見人と成年被後見人との間に刑法244条1項所定の親族 関係があっても、刑法上の処罰を免除もできないと明言しています。
 つまり、後見人という公的な責任を負った以上、その責任の方が優先され、親族だからといって刑が免除されることはないということです。
 現在のところ、業務上横領についての裁判例のみですが、同様の考えをすれば、後見人が被後見人の財産を窃盗したり、詐取した場合にも適用されそうです。
 最近、後見人の財産取込が問題となっています。
 遠からず、後見人が窃盗をし、あるいは詐欺を行うという具体的なケースが起訴されることになり、親族であっても刑罰に処せられるという裁判例が積み重なっていくことになると思われます。

(弁護士 大澤龍司)

騙して遺言を書かせると罪になるのか 【Q&A №458】


【質問のまとめ】
認知症で遺言作成能力がなくなっていた母の遺言書が出てきました。
三女が下書きをして、認知症の母を騙して書かせたものです。
そんなものを書かせることは犯罪ではないですか? 

記載内容  意思能力 詐欺 警察

【ご質問内容】
 母は当時認知症で遺言作成能力はありませんでした。
 診療記録や介護記録や認知症の検査結果があります。
 私長女は母から「三女に下書きをして来たから遺言書書けと言われて書いた」と聞いていましたが、検認時に初めて見ました。
 次女の息子(たった一人の男の孫)に「墓を守って貰いたい為、不動産をその孫の名前にした」と聞いていました。
 その言葉から「孫に遺贈する」内容だと思いました。
 しかし検認された遺言書は遺贈の件も墓の話も一切なく、重い病気にかかっている次女に不動産(仏壇のある古い家)を押し付け、長女と三女に貯金を二分の一ずつ相続させるとの内容です。
 三女は「お母さんの希望を尊重して下書きしてきた」と母に渡したとメールに書いてます。
 要介護5の母は三女の下書き通りに書けば自分の希望通りになると必死で書いたと思われます。
 意思ではないので遺言書を無効にするのは当然ですが、認知症の母に騙して書かせた三女に罪は問えないものでしょうか?
 三女は親のキャッシュカード7枚作成し出金し返していません。
 金融機関の取引履歴でわかっています。
 この使途不明金を有耶無耶にする為にこのような遺言書を書かせたものと思います。

(azurea)


【詐欺になっても、処罰されることはない】
 騙して遺言書を作成させたというのであれば詐欺になる可能性が考えられます。
 ただ、仮に詐欺罪にあたる行為がなされたとしても、親子(法律的に言えば直系血族)間での詐欺は処罰の対象になりません(刑法 251条、244条。末尾に条文を記載しておりますのでご参照ください)。

【対応策は遺言無効と生前の取込分の返還を求める方法で】
 刑法で処罰されないとなると、民事上の対応として次の2つの方策が考えられます。

①遺言書の無効を主張する。
 お母さんについて認知症の検査がされているのであれば、その結果によっては遺言が無効とされる可能性があります。
 その検査が長谷川式認知スケールなら30点が満点ですので、10点以下であれば意思(遺言)能力なしとして無効になる可能性が高いでしょう。
【コラム】意思能力と長谷川式認知スケールに関する判例の紹介参照)

次に、仮に生前に取込(無断出金)された分があるのなら、生前なら、お母さんがその出金者に対して不当利得返還請求あるいは不法行為による損賠賠償請求ができます。
 お母さんが死亡された場合、これらの権利は相続分に応じて相続人が取得しますので、上記遺言の無効とともに、取込財産の相続分に応じた分の返還を求めるといいでしょう。

【弁護士との相談も考える】
 いずれにせよ、認知症の程度の判断、カードでの出金をしたのが三女であるのかどうかなど証明も必要ですし、また、三女の行動から見て、話し合いで簡単に決着がつくようには思われません。
 もし、可能であれば、相続に詳しい弁護士に事情を説明され、とるべき方策を協議されるといいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)

刑法
(親族間の犯罪に関する特例)
第244条
 配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第二百三十五条の罪、第二百三十五条の二の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。
2  前項に規定する親族以外の親族との間で犯した同項に規定する罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
3  前二項の規定は、親族でない共犯については、適用しない。
(準用)
第251条  第二百四十二条、第二百四十四条及び第二百四十五条の規定は、この章の罪(詐欺罪等)について準用する。

【追加質問に対するコメント】
 質問者からメールでコメントいただいた点について、補足して説明しておきます(原則としてコメント・再質問に対する応答はしておりませんので、すべてのメールに同様の対応ができるわけではないことをご理解ください)。

> ?末尾の条文がちょっと読みにくかったです。普通の書体が良かったと思います。  ご指摘ありがとうございます。
 早速書体を変更しました。

> ?詐欺は他人より身内の方が防ぐのが難しいんです。
本当は身内こそ厳しく罰せられるべきだと思います。
 ご指摘のとおり、家族内での不正なやりとりを防ぐのは難しいです。
 ただ、刑法は「法は家庭に入らず」という前提で作られています。
 そのような問題は、家族間で解決しなさいという考えです。
 刑法の条文がある以上、法律家である弁護士としては、掲載したような内容の回答になります。

> 三女が後見人になっていたら、処罰されたんでしょうか?  後見人である場合には、後見人のする業務は公的なものであることから、直系血族の間でも親族相盗例(刑法244条等)の適用はなく、業務上横領罪が成立するというのが裁判所の見解です。

 なお、この点は興味ある問題ですので、近日中に当事務所のコラム(8/18up済【コラム】親の財産使い込みは罪になるか?)に解説記事を掲載する予定です。

> ?騙して書かせているので相続欠格にはならないでしょうか?相続欠格になった場合は代襲相続が出来るようですが、それには当てはまらないでしょうか?  「詐欺によって遺言をさせた」場合は、相続の欠格事由となります(891条4号)。
 但し、欠格を主張するあなたの方で、詐欺を証明する必要があります。
 なお、仮に詐欺で欠格になった場合、その子は代襲相続ができます。

(弁護士 大澤龍司)

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