大澤龍司法律事務所 相続問題無料相談ブログ

★不正出金とその調査【Q&A №537】


【質問の要旨】
交通事故で長年寝たきりだった祖父の遺産は調査できるのか?

記載内容  不正出金 医療費 成年後見人

【ご質問内容】
初めまして。
突然ですが祖父の遺産についてご相談があります。
私の父方の祖父が最近亡くなりました。
父には妹が二人居て三人兄弟です。
祖父が12年ほど前に交通事故で植物人間状態になり、ずっと寝たきりで最近亡くなりました。
祖父が寝たきりの状態の管理は全て次女に任せていたみたいです。
そして遺産整理をしてたところ、年金を二ヶ月で45万円をずっともらっていたはずなのに祖父の口座には預金が全くなかったらしいです。
次女に聞いたところ医療費で消えたと言っていましたが寝たきりの状態なのにそこまで費用がかかったとは自分は思えないのです。
しかも交通事故で寝たきり状態になったので加害者からの保険金が4000万円ほど入ってきてたそうです。

そこで質問なんですが
①本当に医療費で消えたのかを調べられる手立てがあるのか
②調べるとしたら父はどうしたらいいのか
を簡単に教えて頂きたいです。
よろしくお願いします。

(ゼン)


【成年後見人に確かめるのが一番、早い】
お祖父さんが交通事故で植物人間状態になった、損害賠償で4000万円をもらったということですが、もし、その点が間違いないのであれば、お祖父さんには成年後見人がついているはずです。
賠償額が極めて多額ですので、4000万円は保険会社が支払ったものと思われます。
保険会社としては、当然、交通事故の被害者であるお祖父さんの状態―植物状態で意識がなく、判断能力(意思能力)がないことを知っていますので、お祖父さんに成年後見人がついていない限り決して示談はしませんし、また、賠償金も支払うこともありません。
成年後見人の選任される場合には、家庭裁判所は必ず法定相続人であるあなたのお父さんの意向を確認しますので、お父さんに聞いて見られるとご存知だと思います。
成年後見人がついているのであれば、その成年後見人が(少なくとも成年後見人に就任以降の)お祖父さんの財産管理をしていますので、その内容の開示を求めるといいでしょう。
なお、お祖父さんが死亡し、相続が開始したのであれば、成年後見人から法定相続人に対して、通常の場合、財産引継ぎ等に関する連絡が間違いなくあるはずだということも覚えておいていいでしょう。

【成年後見人がつく前の取り込みの可能性があった場合の対処】
成年後見人が就任する前に、お父さんの妹が預貯金を使いこんだ可能性があるのであれば、お祖父さんの金融機関の取引履歴を調べるといいでしょう(調べ方については本ブログの相続問題Q&A№98に詳細に記載しておりますのでご参照ください)。
金融機関がわからない場合には、まず郵便局、そして郊外であれば農協等はかならず調査の対象にする必要があります。
なお、金融機関の調査ではどこの支店かというところまで調べる必要があります(但し、金融機関によっては全国の支店での口座の有無を照会してくれるところがあるが、それはごく一部のみです)。
支店がわからないのであれば、年金を受け取っていたのであれば、その年金の受け入れ口座を社会保険庁に確認することから、被相続人の口座が判明する場合があります。
また、同様に電気やガス等の引落口座を調査することにより、口座が判明することがあります。

【医療費の確認方法】
《本当に医療費で消えたのか》を調べるのなら、お祖父さんの入通院していた医療機関に医療費がどれだけ支払いされていたのかを確認されるといいでしょう。
お父さんは被相続人であるお祖父さんの法定相続人ですので、病院は回答をしてくれます。
ただ、その際、法定相続人であることの証明を要求されますので、予め戸籍や除籍謄本を用意されておくといいでしょう。
なお、死亡時の病院はわかっているが、それ以前の病院がわからないというのであれば、死亡時の病院のカルテも取り寄せが可能ですので、そのカルテの中の病歴等の欄を確認すると、それまでに治療を受けた病院等が記載されていることが多いです。

(弁護士 大澤龍司)

★後見人による着服、不正出金【Q&A №534】


【質問の要旨】
後見人である長男が、母の貯金をおろしていた

記載内容 不正出金 成年後見人 横領

【ご質問内容】
関係者は、最近亡くなった母(被相続人)と4人の子供です。
老人ホームで痴呆状態の母には、3,000万円の貯金資産があった筈(証拠書類あり)ですが、後見人だった長男から、「全て下ろして、貯金は残ってない」と言われ、騒動が続いてます。
過去、長男は母に無断で、キャッシュカードで何回も50万円/日限度に下ろして自分の懐(自分名義口座)に入れてました。気づいた4男が詰問したところ、その事は口頭で白状し、横領行為を認めています。
但しその録音記録はない。
明らかに後見人による業務上横領罪ですが、刑法の規定により、直血の親族、若しくは同居人には、刑罰が免除される、という事で裁判しても勝訴の見込みが立たなく、後見人を除く3人兄弟で困っております。

<質問>
1)裁判において、長男は「お袋に頼まれて、若しくは許可を得て、貯金を下ろした」とウソの弁明で押し通すと思われます。それを崩す方法は何かありますか
2)亡母の生活費、老人ホーム費用は遺族年金で十分に足りており、貯金に手をつける必要は全くない状況でした。
3)亡母の老人ホームでの健康状態、判断能力について、医学的な診断書を準備できれば、(1)の長男の真っ赤なウソを突き崩せるものでしょうか。
4)これから遺産をもらえなかった3人の兄弟が取れる抵抗手段につき、アドバイス下さい。

(庭の千草)


【親族相盗に該当しても、民事裁判で請求が可能である】
成年後見人である長男が成年被後見人である母の預貯金を使ったというケースに関する質問です。
このようなケースでは法律上は刑事と民事の問題の双方から考える必要があります。
民事の問題は、刑事上の問題とは無関係であり、親族相盗例に該当しても民事裁判で損害賠償請求や金銭の返還請求も可能です
参考までに言えば、刑事事件としても、親族が成年後見人の場合には、親族相盗例に該当する場合でも刑罰に問われます
参考判例: 家庭裁判所から選任された成年後見人が業務上占有する成年被後見人所有の財物を横領した場合、成年後見人と成年被後見人との間に刑法244条1項所定の親族関係があっても、同条項は準用されないと判断した判決として、最高裁平成24年10月9日決定。
コラム【相続判例散策】親族相盗例が適用されないケース(最高裁平成24年10月9日決定)もご参照ください。

【成年後見人の使い込みの証明は難しくない】
長男が成年後見人になった後は、母の財産は全て成年後見人の口座に移されます。
そのため、その預貯金を引き出すのは成年後見人以外にはありません
又、施設に入っているということであれば、母のために多額の出費をするということも通常は考えにくいので、成年後見人が引き出した金銭は成年後見人が使ったものと判断されることになります。

【成年後見人になる前の引き出し分について】
成年後見人になる前の引き出し分については、引出者が誰であるのか、又、被相続人のためにつかったのかどうかが問題になります。
使いこんだ長男がウソをつく事態を想定し、予め、これらの点に関する客観的資料(払戻伝票等の文書)を集め、ウソに対処できるようにしておくといいでしょう(当ブログQ&A №362Q&A №317をご参照ください)。

【成年後見人選任前の行為については、母の判断能力が問題となる】
成年後見人がつくということは、母の判断能力(意思能力)がないということです。
長男が、成年後見人がつく前に《母から贈与を受けた》と主張するのなら、その時点での母の判断能力が問題となります。
そのような場合に備えて、母の入通院していた病院や医院のカルテや看護日誌、介護施設の介護記録を取り寄せしておき、母に判断能力がないことが立証できれば、母からの贈与の存在やその効力がなかったことを証明でき、長男に対する反論ができるでしょう。

【長男以外の相続人の対抗手段】
前記のとおり長男が成年後見人になってから以降の引き出し分についての証明はそれほど困難ではありません。
又、成年後見人になる前の預貯金の引き出しに関する対応も前記のとおりです。
問題は、長男が財産を隠すということも想定しておく必要があるということです。
裁判で勝訴し、長男は他の相続人に金銭を支払えという判決が出ても、長男が財産を隠すと、1円も取れない可能性があります。
そのため、長男の銀行口座や不動産等、資産内容をできるだけ早期に確認しておく必要があります。
又、長男が資産隠しをするような気配があれば弁護士に依頼して、仮差押の手続きをしてもらう必要があるということも覚えておくといいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)

★★【相続判例散策】親族相盗例が適用されないケース(最高裁平成24年10月9日決定)

親族である後見人が被後見人の財産を横領した場合には、親族であっても刑罰に問われます! (親族相盗例が適用されません!)
(最高裁平成24年10月9日決定)

【ケース】
家庭裁判所から選任された成年後見人である成年被後見人の養父が、成年被後見人の財産を横領した事案。

【裁判所の判断】
裁判所はこのケースについて、次のような判断をしました。
「家庭裁判所から選任された成年後見人の後見の事務は公的性格を有するものであって、成年被後見人のためにその財産を誠実に管理すべき法律上の義務を負っているのであるから、成年後見人が業務上占有する成年被後見人所有の財物を横領した場合、成年後見人と成年被後見人との間に刑法244条1項所定の親族関係があっても、同条項を準用して刑法上の処罰を免除することができないことはもとより、その量刑に当たりこの関係を酌むべき事情として考慮するのも相当ではないというべきである。」

【弁護士のコメント】
 刑法には、「親族相盗例」と呼ばれる規定があります(刑法244条)。
 この規定は、窃盗等だけではなく詐欺や横領などにも準用されており、これらの罪を親族間で起こした場合には、特例として刑を免除し、または告訴がなければ公訴を提起することができないとするものです。
 後見人が被後見人の親族であるという場合に、その後見人が被後見人の財産を横領した場合にも、この規定が適用されるように思えます。
 しかし、裁判所は、家庭裁判所の選任・監督のもとに被後見人の財産を占有・管理する後見人が、被後見人の財産を横領した場合については、その後見人が被後見人と親族関係にあったとしても、親族相盗例は適用されないと判断しました
 これはつまり、家庭裁判所に選任されて成年後見人になった以上、親族であっても、公的立場から職務を遂行する義務(判例では「成年被後見人のためにその財産を誠実に管理すべき法律上の義務」と説明されています)を負っているということです。
 なお、この判決より前に、未成年後見人に選任されていた未成年被後見人の祖母が、後見の事務として業務上預かり保管中の被後見人の口座から貯金を引き出して横領した事案について、以下のような判決があります。

(最高裁平成20年2月18日決定)
【ケース】
未成年後見人に選任されていた未成年被後見人の祖母が、後見の事務として業務上預かり保管中の被後見人の口座から貯金を引き出して横領した事案。

【裁判所の判断】
「刑法255条が準用する同法244条1項は、親族間の一定の財産犯罪については、国家が刑罰権の行使を差し控え、親族間の自律にゆだねる方が望ましいという政策的な考慮に基づき、その犯人の処罰につき特例を設けたにすぎず、その犯罪の成立を否定したものではない。
 一方、家庭裁判所から選任された未成年後見人は、未成年被後見人の財産を管理し、その財産に関する法律行為について未成年被後見人を代表するが(民法859条1項)、その権限の行使に当たっては、未成年被後見人と親族関係にあるか否かを問わず、善良な管理者の注意をもって事務を処理する義務を負い(同法869条、644条)、家庭裁判所の監督を受ける(同法863条)。また、家庭裁判所は、未成年後見人に不正な行為等後見の任務に適しない事由があるときは、職権でもこれを解任することができる(同法846条)。このように、民法上、未成年後見人は、未成年被後見人と親族関係にあるか否かの区別なく、等しく未成年被後見人のためにその財産を誠実に管理すべき法律上の義務を負っていることは明らかである。
そうすると、未成年後見人の後見の事務は公的性格を有するものであって、家庭裁判所から選任された未成年後見人が、業務上占有する未成年被後見人所有の財物を横領した場合に、上記のような趣旨で定められた刑法244条1項を準用して刑法上の処罰を免れるものと解する余地はないというべきである。」

【弁護士のコメント】
 この判決は、成年後見ではなく未成年後見のケースではありますが、親族相盗例制定の背景を説明した上で、後見の事務が公的性格であることを示し、後見人が被後見人の財産を横領した場合には、親族相盗例は適用されないと判断しているものです。
 あわせてご参照ください。

★母の預貯金を成年後見人に取り戻してほしい【Q&A №519】


【質問の要旨】
母名義の預金を成年後見人は取り戻してくれるのか

記載内容  成年後見人 不正出金 取り戻す

【ご質問内容】
アルツハイマーの母は実家で一人暮らしをしております。
子供は私と姉の二人姉妹です。
父(認知症)は5年前に他界いたしました。
姉とはこの亡父の遺産(家屋・土地・融資産を姉が相続するという公正証書あり)のことで 私から家裁に申し立てをする関係となり 一応和解はいたしました。
現在母の介護に関することは母とは別居の姉が施設通所の手配等をやっています。
ご相談したいのは 介護が始まってから 姉が母の金融資産すべてを自宅に持ち帰り管理し始めました
これまでそれらの開示を求めましたがそれには応じませんでした。
姉は母から預かるように頼まれたと言います。
実は 亡父の時も 公正証書を作成し 生前中に父名義の預貯金を全額おろしそれを自分名義の口座に移しておりました。
恐らく 母にも同様のことをしている可能性が高いです。
母に成年後見人を申し立てることを考えましたが 述べたように母名義の預貯金は前述のようになっているなら管理するものはもう0、ないという事態も十分考えられます。
また、アルツハイマーの母は自分で判断は出来ません。相手の言いなりに行動します。
父の時と同様 母に姉はすべてを自分に預けることを一筆書かせているでしょう このような状況でも母の預金を母名義に成年後見人で戻すことは可能ですか
アドバイスをよろしくお願いいたします。

(林檎)


【預金の取り返しは難しい】
成年後見人は本人(お母さん)の権限のほぼすべてを代理する権限を持っていますので、理屈上はお母さん名義の預金をお姉さんから取り返す権限もあります。
たとえば借用書も整った相手から貸し金を返してもらう場合や、交通事故の加害者に対して損害賠償請求を行う、というように相手方の責任がはっきりしている場合であれば、後見人が積極的に権利を行使してお金の支払を請求するケースは確かにあります。
しかし、成年後見人があえて親族内での紛争を起こしてまで不正出金の取り返しに動き出すことはごく例外的なことであり、そうそう見ないケースです。
というのは、お母さんが自分の意思で(意思能力を失う前に)お姉さんに預金を預けたのか、それとも無断で不正出金をしているのかは外形的にはわかりにくく、明らかな証拠をつかむのが難しいからです。

【お父さんの話は別問題】
ただ、今回はお姉さんがお父さんの相続について周到な対策を整えて遺産を独り占めした経緯があるようですので、お母さんの預金についても同様の不正出金をしている可能性が高いようです。
しかし、法律上はそれだけで不正出金があると断定できるわけではありません。あくまでお父さんの話とお母さんの問題は別物だ、ということです。
もしお姉さんの不正出金を明らかにしたいのであれば、お姉さんの預金引き出しがお母さんの意思に基づかないものであったことを確証づける証拠が必要です。
ただし、確証があっても、後見人は家庭裁判所の監督の下に動きを取るため、家庭裁判所がどのような判断をするかにより後見人の動きが変わってくる可能性があることはご理解ください。

(弁護士 北野英彦)

★★認知症の母の預金引き出しは違法か【Q&A №383】


 認知症の母の預金を「本人からの依頼」と言って払い戻しをするのは違法でしょうか?
 母は現在入院中の要介護3で認知が進んできております(ここ一年)。
 特に「認知症」の診断は医師から受けておりません(診断を拒否するため)。
 息子である私は遠方のため、近くにいる母の兄弟が世話をしてくれておりました。特に一番下の妹夫婦が頻繁に顔を見せておりました。
 入院費や生活費は母が管理のもと叔父、叔母たちがやってくれておりました。
 最近、一番下の妹夫婦がかなりまとまったお金を口座からおろしていたことが発覚しました(1,000万円近く)。
 問いただしても「姉さん(母)に頼まれたから」の一点張り張りです。
 母はその時々で言うことが違います。
 ただ、入院中の母は使い道がありません。
 依頼認知症の、診断書かなければ窃盗?横領?とかの罪に問うことは出来ませんか。
 開き直っており「やることはまたまだあるからな」と妹の旦那に捨てせりふのように言われました。
 腹も立ちますが、それ以上のことをしてないか(妹の旦那を養子にする、遺言書を勝手に書かせる)とても心配です。
 成年後見人の申請をするつもりですが、認定をもらうまでの間は手のつけようがないのでしょうか?

記載内容  認知症 成年後見人 預金

(るる)


【窃盗や横領に問うことはできるか】
 お母さんの一番下の妹さん夫婦がお母さんの預金を、お母さんの同意なしに勝手に引き出したということであれば、窃盗や横領罪が成立します。
 この犯罪の成立と、お母さんの認知症との関係ですが、お母さんが認知症であり、意思能力がない場合には、窃盗や横領が成立する可能性が高くなります。
 しかし、お母さんが認知症でない場合には、お母さんの同意があった可能性もあり、窃盗や横領の成立の可能性は少なくなります。
 ただ、いずれにせよ、お母さんとその妹さんの関係は、別居した親族(2親等)になりますので、刑法の規定(末記参照条文:刑法第244条2項)により、お母さんの告訴がない限り、これらの罪で処罰されることはありません。
 参考までにいえば、仮に妹さんがお母さんに無断で出したというのであれば、払戻し請求書のお母さんの署名欄は、妹さんが偽造したものということになり、有印私文書偽造及び同行使の罪にも該当します。
 しかし、いずれにせよ、警察としてはすぐに捜査を開始するようなことは、通常は考えにくいです。

【養子縁組や遺言書の作成への対処】
 《妹の旦那を養子にする、遺言書を勝手に書かせる》ことを心配されているようですが、その可能性はありえます。
 そのため、お母さんの認知症の程度がひどく、物事の判断がつかないような状態であれば、早期に成年後見の申立をし、後見人に財産管理をしてもらう必要がありそうです。
 現在は要介護3ということですが、身体障害であるのか、認知症のような精神的なものであるのかはっきりしませんが、仮に認知症により要介護3であったとしても、ただちに成年後見を付することができるかどうか疑問です。
 ただ、成年後見は財産管理がまったくできない場合ですが、それより認知症の程度が軽い(しかし、完全な財産管理ができない)場合には、裁判所に保佐人の選任申立をすることができます。
 保佐人が選任された場合には、お母さんとしては多額の預金を引き出すような場合には保佐人の同意が必要になります(保佐人の同意を得なかった行為は取り消すことができます)。
 裁判所により保佐人が選任されたということなら、妹さん夫婦にとっては強いけん制になり、勝手な行為が収まるかもしれませんので、検討されるといいでしょう。
 なお、金融機関に、お母さん以外の人には支払いしないように内容証明で申入れすることも考えられますが、このような申入れをしても、妹さん夫婦がお母さんに同行し、預金払戻書を銀行員の前で記載させれば、銀行として払戻しを拒否はできず、結局、有効は手段にはならないでしょう。

(弁護士 大澤龍司)

参考条文:刑法第244条(親族間の犯罪に関する特例)
1 配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第235条の罪、第235条の2の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。
2 前項に規定する親族以外の親族との間で犯した同項に規定する罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
3 前2項の規定は、親族でない共犯については、適用しない。

長男が財産管理をはじめたら【Q&A №376】


 昨年9月に父が他界。遺産分割協議書などの処理も終わったとたん、兄が母親の家に行き、実印と通帳を預けろと言いに来たそうです。
 理由は年寄りの一人暮らしは危険だから、紛失したら大変だ。そうです。母が断ると「俺のことが信用できないのか?」と凄んで、実印だけは持って行っていまったそうです。
 このままでは、いつ通帳も母親のいない間に勝手に持ち出されるか不安でたまらないと母が困っています。
 兄は、母の家の40分くらいの距離、私(次男)は遠方です。
 特に兄は「自分は長男だから、処理は長男がする」と主張するようです。この兄の行動を止める方法はありますでしょうか?よろしくお願い申し上げます。

記載内容  成年後見人 財産管理 遺産調査

(麿)


【お母さんのことはお母さんが決める】
 お母さんの財産管理は、お母さん自身で決定することです。
 そのお母さんが、お兄さんの《要請》で通帳をお兄さんに預けるということになれば、それを防ぐ方法はありません。
 あなたとしては、お兄さんが預貯金を使いこんだ結果、相続開始時点では遺産が何もなくなっているということを心配されておられるのでしょう。
 しかし、現時点で(将来の)法定相続人であるあなたが、お母さんの財産管理をすることはできませんし、お兄さんがお母さんの財産管理をするのを防止することもできないという結論になります。
 ただ、以下に述べることも参考にされるといいでしょう。

【成年後見は使えないか・・】
 ただ、お母さんが認知症などで財産を管理できない状態(Q&A №249、№280)であれば、成年後見人の選任の申立が可能です。
 その申立をした場合、財産管理につき、法定相続人になる人の間で争いがある場合には、裁判所は第三者(司法書士や弁護士)を指定しますので、お母さんの財産の保全をすることができます。

【お母さんとの関係を密接にする】
 法律的はことではありませんが次の方法も考えられます。
 あなたとお母さんの関係が、お兄さんとお母さんとの関係より密接であれば、お兄さんの申し出を断るようにお母さんに言って、実行してもらうことができるかもしれません。
 結局、もっとも確実な方法は、(遠隔地におられるので難しいでしょうが)お母さんとあなたが同居し、お兄さんがお母さんを無理矢理説得することがないよう見守るという方法が有効です。
 あるいは、お母さんがお兄さんの言いなりにならないようお母さんを説得しておく、ということしかないように思います。

【将来の遺産争いに備えて、今、するべきことは・・】
 お兄さんの態度を見ていると、将来、お母さんの遺産紛争が発生する可能性がありそうです。
 その場合には、お母さんがどこの金融機関のどの支店を利用しているのか、又、株式を持っているのなら、どこの証券会社に口座を有しているのかを、現段階で調査・把握しておく必要があります。
 法定相続人は、遺産である預貯金の調査ができます。
 そのため、お兄さんがどれほどのお金を持ち出したのかを調査するために、調査すべき金融機関等を把握しておくのが、一番有効な方法かもしれません。

不正出金を止める手段【Q&A №280】


義理の父は痴呆で名前がかけないはずです なのに義理の母とその家の嫁が今かなりの貯金をおろしています。
家の嫁は家を継ぐように委託されています。
どのような場合そういう権限があるのですか この場合違法ではないのでしょうか?
もし違法なら父の死去時何をすべきか あと母の貯金も毎月かなりの額減らしています。
たぶん遺産分けの時にはほぼ空っぽです 生活費以上は説明責任があると聞きましたが本当ですか 母の死去時はどうすればいいですか 義理の兄が7年前なくなり保険が1.3億入ったようです 二人兄弟で主人も印を押しました こちらも父がかけたお金は遺産として考えられないでしょうか?
知り合いが言うには義理の父の医師の証明が決めてだそうです グレーゾーンのようで ただ黙ってみているのがつらいです まるで死ぬのを待っているようです

記載内容  不正出金 成年後見人 認知症 生命保険 保険料

 

(そらすら)


【どの程度の認知症かを検査する】
 義理のお父さんが認知症であり、その程度が高度(ひどい)場合には、判断能力(意思能力)がないということで、義理のお父さんの行為は無効になります。
 義理のお母さんが、義理のお父さん名義の預金を引き出すには委任状が必要ですが、お父さんの判断能力のない場合には委任状が無効になります。
 そのため、まず、義理のお父さんの認知症の程度を調べる必要があります。
 可能であれば、お医者さんに検査をしてもらってください。
 長谷川式認知スケールという簡単なテストをしてくれるはずです。

【ひどい認知症であった場合は成年後見の申し立てを考える】
 長谷川式認知スケールは30点満点ですが、10点以下である場合には意思能力なしとして扱われる可能性が高いです。
 認知症が原因で、名前も書けないという程度なら10点以下の可能性が高いでしょう。
 その場合には家庭裁判所に成年後見申立の手続きをしましょう。
 裁判所は義理のお父さんの財産を管理する成年後見人を選びます。
 成年後見人は、義理のお父さんの財産(たとえば預金や保険など)を全部確保し、後見人の名義にして管理しますので不正出金ができなくなります。

【家を継ぐように委託されても、預金引き出しの権限はない】
 「家の嫁」は家を継ぐように委託されているということですが、誰から委託されているのでしょうか。
 もし、ひどい認知症である義理のお父さんからであれば、意思能力なしとして、そのような委託は無効になります。
 委託が有効であったとしても、「家を継ぐように」ということだけであれば、預金の引き出しまではできず、「家の嫁」は権限外の違法行為をしていることになります。
 義理のお母さんと「家の嫁」が違法な出金をしている場合、義理のお父さんが死亡後にその出金額を調査し、損害賠償を請求することになります。
 法的に言えば、「不当利得返還請求」あるいは「不法行為による損害賠償請求」をすることになります。その場合、請求できるのは、不正出金額のうち、請求者の相続分に相当する金額です。

【お母さんの預金引き出しについて】
 お母さんの預金の引き出しがされているようですが、お母さんが正常な判断能力があれば、これは違法にはなりません。
 自分の財産をどのように使おうと誰も文句はいえないからです。
 なお、お母さんが死亡したときに預金が全部出されていたという点ですが、お母さんの意思に基づいて誰かに贈与されていたということであれば、相続人には遺留分が認められていますので、相続人が子であれば、法定相続分の半分の返還を求めることができます(遺留分減殺請求といいます)し、他方、お母さんの意思に基づかない引出であれば、義理のお父さんの場合と同様に不当利得返還請求や損害賠償請求ができます。
 「生活費以上は説明責任があるという言い方も聞きました」ということですが、このような説明責任はありません。
 むしろ、遺留分や不当利得等の請求をする側が、生活費以上の金銭を引き出したという点を立証する必要があります。

【保険金は遺産の対象外である】
 義理のお兄さんが亡くなり、その死亡保険金が入ってきたということですが、死亡保険金は原則として遺産にはなりませんし、義理のお父さんがそれまでに支払った保険料も特別受益になることはありません。
 保険金と遺産の関係でいえば「義理のお父さんの医師の意見が決め手」ということはありません。

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