大澤龍司法律事務所 相続問題無料相談ブログ

父親の介護と遺産に関する約束【Q&A №535】


【質問の要旨】
父親の施設の入所代、病院代などについては半分が長男、亡くなったら全額長男と言われて困っている

記載内容 介護 扶養 約束

【ご質問内容】
静岡に住んでいる主人の父親(81)の話ですが、私達は結婚してから横浜住まいです。
夏に子どもを連れて遊びに行くぐらいでした。
主人は長男なのですが、母親の連れ子で姉2人父親の連れ子で、主人と妹(音信不通)今の両親で一男一女(一男は死亡)の家族構成なのです。
今まで両親は2人でアパートに住んでいましたが、何年か前だと思いますが、2人共介護が必要になったみたいです。
2人の仲も悪くなったようで、父親は年金で施設、母親は姉の家に連れていきました。
今になって父親とは他人なので、通帳も印鑑も渡すので、こちらで面倒をみろというのです。
私達も近くて、金銭的な余裕があれば見てあげたいですが、とても見てあげられない状況です。
施設の入所代、病院代、などは半分が長男。
何かあって父親が亡くなったら、全額長男。
父親は退職金も入っていたと思うし、わが家も経済的に無理だし、いままでの生活がまるでわからないので、どうしたらいいかわかりません

助けて下さい。

(なな)


【相続については相続放棄も考えておく】
本件で相続に関するのは《施設の入所代、病院代、などは半分が長男。何かあって父親が亡くなったら、全額長男。》とある点です。
お父さんの死亡時点で施設費の未払料金や借金等の債務等が存在する場合、遺産と債務を比較し、債務が多いようであれば、相続放棄ができます。
相続放棄すると、遺産を受け取ることはできませんが、債務の支払いもする必要が無くなります。
相続放棄はお父さんが亡くなり、相続が開始したことを知った日から3ケ月以内に家庭裁判所に申立する必要があります(詳しくは当ブログQ&A №455などをご参照ください)。

【今、するべきことについて・・ご主人には扶養義務がある】
それ以外の質問に書かれていることは相続問題ではありません。
ただ、お困りのようですので、簡単にコメントを付しておきます。
まず、ご主人はお父さんの子であるので、お父さんを扶養する義務があります。
ただ、ご主人が経済的なゆとりがないというのであれば、如何ともしがたいので、義務を尽くすことができないと回答するしかないでしょう。
もし、私が今回の相談を受ければ次のようなアドバイスをするでしょう。

①《お父さん》の心身の状態を確認する。
最初に《お父さん》が自分で物事を判断できるような状態なのかどうか、身体的にどのような状態なのかという、心身の状態を確認する必要があります。
判断能力がないのであれば、成年後見人を選任するということも考える必要があります。
この点は、施設に入っているということですので、施設に事情を説明して、教えてもらうことができると思います。

②《お父さん》の財産を確認する。
次に、《お父さん》の財産を次の3つの面から確認する必要があります。
・現在の月々の年金分などの入金分と施設の使用料との出金分の収支の内容、差額を確認する。
・次に《お父さん》の財産(不動産や預貯金、借金)として何があるかを確認する。
・更に過去にどれだけの金銭が動いているのか(退職金がどうなったのか、預貯金からの引き出しはどうなっているのか)を確認する。
これらの確認は、これまで財産を管理していた人に対して教えてもらうことになります。

③判断をする。
以上の確認をした上で、ご主人が扶養義務を尽くすことができるのか、できるとしてどのような形でしていくのかを判断する。

上記①~③の調査をしていけば、どうしてもお父さんの面倒を見るという方向になってしまいますが、その時でもできないことはできないとはっきりと述べる勇気が必要でしょう。

(弁護士 大澤龍司)

★子どもの国民年金掛金と特別受益【Q&A №527】


【質問の要旨】
肩代わりした国民年金約240万円は、特別受益に該当するか

記載内容 年金 継続的 扶養

【ご質問内容】
20才から支払う義務がある国民年金「金額240万円程度」を肩代わりして支払いました(アルバイトで支払い能力がなかったため)。
そろそろ遺言書を作成すべき時期かと思案していますが。
この過去に支払った金額は特別受益に該当するのでしょうか。
宜しくお願い申し上げます。

(素浪人)


【事案によっては特別受益にあたる場合もある】
被相続人であるあなたが、相続人に対して「生計の資本としての贈与」をした場合、特別受益として、遺産分割の際に遺産に持ち戻されます(当ブログQ&A №164Q&A №334等参照)。
問題はどのような金銭等の提供が、《生計の資本》としての贈与になるかです。
例えば、相続人である長男の自宅買入資金として500万円を援助したというのであれば、特別受益になることは間違いありません。
しかし、今回のご相談は、毎月数万円程度の金銭を渡した、あるいはその程度の債務を立替支払いしたような場合です。
このような、毎月は少額でも多年にわたると金額も大きくなるような場合に、特別受益になるかどうかという問題になります。
お金を渡していれば贈与ではないかという反論が出そうですが、被相続人である親が子である相続人にお金を渡す場合、親の子に対する扶養義務の履行として渡しているとされる場合もあり、その場合には渡した金銭は特別受益にはなりません。

【判断基準はどういうものか】
次に、扶養義務の履行か否かを判断する基準は何かということが問題になります。
遺産の総額、一度に渡されたものかどうか、又、月々の支払い等であればその額はどうか、渡された期間やその交付する理由などが判断基準となるでしょう。
過去の家庭裁判所での審判例では、遺産総額や被相続人の収入状況から考えて、月に10万円に満たない送金は扶養的金銭援助にとどまるが、月10万円を超えるものは生計の資本としての贈与になり、特別受益になると判断したものがあります(東京家審平成21年1月30日・家月62巻9号62頁)。
(詳しくは【相続判例散策】毎月の送金が特別受益にあたるのか?をご参照ください。)

【遺言書の作成上の注意】
これから遺言書を作成するが、被相続人のした国民年金の立替分を特別受益にならないようにしたいというのであれば、次のような方法を考えられるといいでしょう。
① 国民年金立替分については《持ち戻しの免除する》との意思を遺言書に明記する。
② なぜ、持ち戻しの免除をするのかという理由を遺言書の付言事項として記載し、併せて他の相続人が特別受益という問題を持ち出さないようにという内容の遺言者の希望を記載する。
これらの①及び②の方法の双方を採用し、その内容を遺言書に記載することで解決されるといいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)

在宅介護費用と特別寄与【Q&A №507】


【質問の要旨】
看護を負担した相続人が他の相続人に費用請求できるか

記載内容  介護 扶養 不公平

【ご質問内容】
私が、仕事を休んで、平成22年7月から平成25年1月まで自宅で看護(導尿行為、バイタルチェック、塩分1日8グラムの食事作り)を行ってきました。
相手(姉2人)は近所に住んでいながら、一切協力せずに遊びまわり、扶養義務調停にも出廷せず、扶養義務調停が終わる前に父親は亡くなりました。
一番上の姉は生前贈与(住宅購入資金の一部として現金300万円)を昭和48年頃に貰い、高校と短大も我儘を言って私立に通っていました。
私と下の姉は公立高校で終わっております。
短大卒業後すぐに結婚しましたので嫁入り道具と、結婚資金等は、両親が出しています。
なお、私は平成22年2月に腰に金属を入れる手術を行っておりその後絶対安静時に看護が始まり現在は酷い後遺症が出ております。
財産は私たちが住んでいる土地建物しかありません。
土地は路線化で2800万円位(約82坪)建物の名義は13分の11は、私の名義になっております。父親名義の分の建物の評価は53万円程です。

(くま)


【介護費用は請求できないが、特別寄与の可能性がある】
親子間では互いに扶養義務があります。
そのため、子であるあなたが約2年半もの間、自宅でお父さんの介護をしたとしても、これは扶養義務を履行しただけであり、これをしなかった他の扶養義務者(今回は2人のお姉さん)に請求することはできません。
親子間に扶養義務が定められている以上、子として介護等をするのは当然のことであり、他の扶養義務者に介護のための労力等の費用を請求することはできないというのが、今の法律です。
しかし、あなたが介護をしたことにより、ヘルパー代や看護師料、老人ホーム入居費用等が減り、その分、遺産の減少が食い止められたというような事情があれば、その減額分を《特別寄与》として請求すれば、遺産から支払ってもらえる可能性があります。
(なお、介護の努力がどのように遺産分割に反映されるかという点は、当ブログQ&A №386Q&A №254などにも同様の話が出ておりますのでご参照下さい。)

【住宅購入資金の生前贈与は特別受益になる】
一番上のお姉さんが住宅購入資金の一部として金300万円をお父さんからもらったというのであれば、特別受益になりますので、遺産に持ち戻した上で遺産分割をすることになります。

【短大への進学に関する費用は原則として特別受益にならない】
一番上のお姉さんが短大に行かせてもらった点ですが、教育については子の能力の問題もあり、又、親の子に対する扶養の問題であり、遺産の前渡しという意味は持たないという判例もあることから、原則として特別受益にならない可能性が高いです。
ただ、私の担当した案件ですが、私立の医大に行った場合には、その授業料額が莫大であることや医師という社会的に重要な資格を取得することから、特別受益として対応したことがあります(なお、当ブログQ&A №375を参照ください)。

【参考判例】
大阪高裁決定平成19年12月6日
「被相続人の子供らが、大学や師範学校等、当時としては高等教育と評価できる教育を受けていく中で、子供の個人差その他の事情により、公立・私立等が分かれ、その費用に差が生じることがあるとしても、通常、親の子に対する扶養の一内容として支出されるもので、遺産の先渡しとしての趣旨を含まないものと認識するのが一般であり、仮に、特別受益と評価しうるとしても、特段の事情のない限り、被相続人の持戻し免除の意思が推定されるものというべきである。」

【結婚資金について裁判例は分かれるが・・】
結婚資金については、裁判例がわかれていますが、私は挙式費用などは、特別受益には当たらないと考えています。
その理由は、挙式費用は、結婚式という一過性の支出であり、後に残るものではないことや、結婚式が結婚する当事者のみならず、その両親や親戚のためにするという側面を有すること、更に親としても相続分の前渡しとして挙式費用を出すのだという意識はなく、持ち戻し免除が推測されること、更に通常の場合、すべての子が多かれ少なかれ親の援助で結婚式をしていると思われることなどからです。
なお、嫁入り道具や持参金などは金額が高額であれば特別受益に該当するでしょう。

【参考判例】
① 名古屋地裁平成16年11月5日
「嫁入り道具や持参金等がこれ(弁護士注:特別受益)にあたることはいうまでもない。しかしながら、結婚式や結納の式典そのものに生じた費用については、婚姻する者のみならずその両親ないし親戚一同にとって重要な儀式であることに鑑みると、両親が子の結婚式や結納の式典に生じた費用を支出したとしても、それを両親から子に対する「婚姻のため」の贈与と評価すべきではなく、特別受益にあたらない。」
② 仙台地裁平成5年9月7日
「右程度の援助(弁護士注:結婚披露宴費用のうち祝儀代を引いた残額二〇万円の援助)は、本来通常必要なものであるが、他の妹弟が結婚に伴う援助を受けていないことを考えると、特別受益に該当するものといわざるを得ない。」
③ 盛岡家裁昭和42年4月12日
「相続人が婚姻に際し、被相続人より挙式費用等を負担してもらっているが、その金額も高額でないので、いずれも民法903条にいう贈与として相続分の算定につき斟酌すべきではな」く、特別受益に該当しない。」

【その他の問題点・・土地使用借権が特別受益の可能性あり】
あなたがお父さん名義の土地の上に建物の持ち分を有しておられるのであれば、その土地をあなたの建物のために無償使用している(使用借権)の贈与と主張される可能性もあり、あなたの方でも特別受益が問題になりかねませんので、その点はご留意ください。

(弁護士 大澤龍司)

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