大澤龍司法律事務所 相続問題無料相談ブログ

亡父の預金引き出しと相続放棄【Q&A №553】

【質問の要旨】
相続放棄したら仕送りしていた金銭はどうなるのか

記載内容 預金 引き出し 承認

【ご質問内容】
父の死亡後、多額の負債の連帯保証人をしていたことがわかり、子である私たちきょうだい三人全員が相続放棄をすることになりました。
遺産は預貯金40万円ほどと軽自動車1台。ほかにはありません。
父は年金と私たちきょうだいからの仕送りで生活していました。
相続を放棄してしまうと預貯金から仕送り分を返してもらうことはできない、という解釈であっていますか

(おがわ)


【仕送りは貸金ではない】
親子間では困っていたら助け合う義務(扶養義務といいます)があると定められています(民法第877条第1項。末記条文を参照ください)。
子が親に仕送りするような場合にはこの扶養義務の履行に該当すると考えられます。
そのため、子から親に対する仕送りは貸金ではなく、返還を要しない贈与となり、親は返還義務を負いません
そのため、お父さんの遺産から返還を受けることができないという結論になります。

【参考説明:子の親に対する貸金と子の相続放棄との関係】
前項で述べたように、親に対する仕送りは貸金ではないと考えられます。
ただ、本件の質問を離れて、仮に子が親に貸金があった場合、相続放棄との関係がどうなるかも説明しておきます。
相続放棄とは遺産の相続をしないということです。
子であるあなた方が相続放棄をした場合、お父さんの遺産である車や預貯金40万円を相続することはできません。
しかし、子が親に対して貸金のような債権を持っていた場合、子が相続放棄しても、その貸金債権はなくなりません。
相続放棄は親からの遺産をもらわないということであって、あなた方が従来から持っている親に対する貸金債権までなくなることはなく、あなた方は親の遺産に対して貸金の請求ができます

【参考説明:相続財産管理人の選任が必要】
問題は、この請求をした場合に、誰が支払いをしてくれるかです。
相続放棄をしない場合、法定相続人が遺産の権利者になりますので、その権利者の権限として遺産を自由に処分でき、債務の支払いもできます。
これに対して、相続放棄をした場合、その放棄した相続人は遺産を自由に処分する権限はなく、債務の支払いをすることができません
相続放棄をしない法定相続人がいれば、その人が遺産と債務を承継しますので、その人に支払い請求をすることになります。
もし、すべての相続人が放棄をした場合で、貸金を有している債権者が債権の支払いを求めたいのなら、その債権者が家庭裁判所に相続財産管理人の選任の申立をする必要があります。
選任された相続財産管理人が遺産を管理・調査し、債権者に支払いをしてくれます。
ただ、財産管理人選任の申立をする場合、原則として、予納金として裁判所に90万円から100万円を納付する必要があります。
今回の質問の場合、遺産が少ないのでそのような手続きはするメリットはないでしょう。
なお、財産管理人が選ばれた場合、この申立をした債権者の債権の弁済が優先されるわけではなく、債権額に応じた平等弁済になることも理解しておかれるといいでしょう。

【勝手に遺産から弁済をうけた場合の扱い】
相続放棄したにもかかわらず、その放棄した方が遺産から勝手に貸金の返済を受けた場合、その相続人は遺産を取り込んだとして、相続放棄の効力がなくなることがあります
相続放棄が無効になった場合、その相続人は、お父さんの債権者から請求があれば債務の支払いをしなければならないこともありうることにご注意ください。

民法 第877条
(扶養義務者)
1.直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
(以下略)

(弁護士 大澤龍司)

譲渡制限株式の相続と譲渡【Q&A №525】


【質問の要旨】
相続譲渡の承認申請をしたが、承認される前に相続が発生

記載内容 株式 譲渡制限 承認

【ご質問内容】
譲渡制限株式を親が持っていて、それを私に譲渡するということで、2月にその会社に承認をもとめたら、承認は取締役会の承認が必要で、次の取締役会は半年後だといわれました
説明をきいただけで、合意はしていない。
そのとき、名義書換書類は会社に提出したのですが、3月に親が死亡してしまいました
そのあと、4月に姉が勝手に、その会社に電話をして、相続人の兄弟間(3人)で話し合ってから、後で連絡するから、名義書換を保留にしてくれ、という電話があったそうです。
すると、その会社は、姉のそのとおりにしてしまい、名義書換、取締役会の承認をしませんでした。
そこで、請求の日から2週間以内に承認又は不承認の通知をしていないときは、譲渡について承諾したものとみなす(会社法145条1号)。の規定を主張したのですが、その会社は、兄弟間ではなしあってくれ、というだけで、全然わたしの主張におうじてくれません。
先に、親から譲渡を受けてから、名義書換請求、譲渡承認申請したにもかかわらず、後で、生じた相続を理由として、名義書換請求、譲渡承認を拒否するというのは、おかしい、とおもうのですが、どう、対応したらいいでしょうか
調停を申請する場合、費用はいくらかかるのでしょうか?(弁護士費用除く)
期間はどれぐらいかかるのでしょうか
何回ぐらい調停はひらかれるのでしょうか

(akaba)


【遺産である株式の扱い】
株式が遺産の場合には、金銭債権ではないため、法定相続人全員が共有する(正確には《準共有》)ということになり、株式譲渡のためには、共有者全員の同意が必要です。
参考までに言えば、被相続人の預貯金については、金銭債権ですので、相続発生と同時に、各法定相続人に相続分で分割されます。
そのため、遺産の中に5000万円の預貯金があり、法定相続人は子が5人というケースでは、被相続人の死亡と同時に、各人が1000万円ずつを相続し、単独で銀行に1000万円を請求することが可能です。

【本件の質問の場合は譲渡があった】
今回の質問のケースでは、被相続人であるお父さんの生前に、株式が質問者の方に譲渡されており、それを前提として会社に譲渡承認請求をしたケースでスので、株式は生前にあなたに譲渡されており、遺産に含まれないと考えられます。

【本件の場合、株式譲渡承認があったと見なされる】
今回のケースでは譲渡承認請求をしていますので、会社としては、承認か不承認かを2週間以内に判断しなければなりません
定例の取締役会がいつであろうと、会社としては譲渡承認請求があれば、早期に取締役会を開催し、譲渡を承認するか否かを決定しなければなりません。
もし、2週間以内に取締役会を開催しなかったというのであれば、ご指摘の通り、承認と見なされます
そのため、あなたは会社に株主であることを主張することができます。
又、遺産ではありませんので、他の相続人の反対があっても、あなたとし ては単独で名義書換を請求することができ、議決権などの株主の権利を行使することができます。

【調停の申立費用及び期間】
調停の申立を考えられているようですが、その場合は遺産分割の調停ではなく、会社相手に株主としての権利行使を認めよ、あるいは名義書換をせよという内容になると思われます。
調停申立の費用は対象となるものの価額によって異なります。
今回の質問のようなケースでは、株式の価額を前提に、調停費用が決定される可能性が高いです。
仮に問題となる株式の価額が1000万円だとすると、調停申立費用には印紙は2万5000円分を貼り、これとは別に郵券(切手)代が約5~600円程度、必要になります。

【調停4~5回程度の期日で結論が出る】
調停の回数は事件ごとにケースバイケースとしか言いようがないのです。
ただ、私の長年にわたる調停委員の経験から言えば、4回から5回で解決するケースが多いです。
ただ、不調になる場合にはそれより少ない回数で打ち切られる場合が多いでしょう。

(弁護士 大澤龍司)

限定承認と相続放棄【Q&A №488】


【質問の要旨】
相続放棄の注意点等

記載内容  返済 承認 遺品整理

【ご質問内容】
独居の叔父がなくなり甥である自分が相続人となりました。
若干の現金と一戸建ての遺産がありますが、人の良い叔父が連帯保証人になっていないか心配しております。
遠方に住んでおり、叔父の交友関係など全くわからないので、限定承認か相続放棄を考えております。
この場合注意することはありますか?
また、相続放棄をする場合、独り暮らしの叔父の遺品整理をしてしまうと単純相続したことになってしまいますか
相続放棄をした場合、家の後始末も全くしなくてよいと言うことでしょうか?
既に、叔父の自動車税や固定資産税、電気、水道、ガス、電話などの支払いをするように手配しています。
アドバイスのほどよろしくお願いいたします。

(ちょろ)


【遺産の整理と保証債務】
相続放棄は法定相続人が被相続人の相続をしないと家庭裁判所に申し立てることです。
相続放棄をすると遺産の中の預貯金や不動産、株式等、一切の財産を相続でもらうことはできなくなります。
反面、被相続人の債務(借金等)も相続されず、支払う必要はなくなります。
ただ、預貯金を払い戻す等、遺産を使うような行為があった場合には、相続放棄は認められません。
今回の場合は、遺産の整理ということですが、厳格にいうと遺品(例えば鍋・釜・布団等)の整理も遺産の処分に該当するので、放棄できないということになりそうです。
しかし、私としては、例示したような鍋等の価値のないものを処分する程度であれば単純承認とされることはなく、放棄が可能だと思います。
但し、価値ある物品(例えば絵画や彫刻等)を売却するような場合には、遺産の処分に該当し、法的には放棄ができない(正確にいうと、放棄してもその効果を被相続人の債権者に主張できない)ということになります。

【限定承認はほとんど使われていない】
民法の条文を見ていると限定承認は財産と借財を確認したうえで、相続をするという制度であり、合理的な制度のように見えます。
しかし、不動産の相続などで、税務上は相続とはみなされず多額の税金が課される等の使い勝手の悪い面があるため、私自身は今まで1回も扱ったことがなく、他の弁護士がこの手続きをしているのを見たこともありません。

【保証債務の有無の確認はむずかしい】
被相続人が保証債務を負っているのに、相続放棄をしなかった場合、この保証人の地位も相続人に承継される可能性があり、その場合には相続人が保証債務の支払いをする必要があります。
問題は、ほとんどの場合、保証人となっているかどうかが判明しないということです。
私の経験では、被相続人である母親が死亡した後、約10年経過してから、父親のしていた会社が破産し、会社の債務の連帯保証をしていた母親の保証債務が現実化したというケースがありました。
この場合には、被相続人からの何も財産などはもらっていなかったことから、相続放棄の手続きをし、結局、放棄が認められたことがあります。
叔父さんがどのような社会的な地位にいたのかを調べる必要があるでしょう。
もし、叔父さんが会社の社長や役員をしていたのであれば、会社の借財に連帯保証をしている可能性も考えられ、慎重に遺産調査をする必要があります。
相続放棄は相続開始を知ってから3ケ月以内に申立する必要がありますが、もし、調査に時間がかかるのであれば、放棄期間伸長願いを裁判所に提出するといいでしょう(ブログ【コラム】相続放棄期間の伸長参照)。

【遺産の整理はしなくてもいいのか・・】
法律的には、相続放棄をするのであれば、遺産に手をつけない方がいいでしょう。
しかし、遺族としての立場から言えば最低限の遺産整理もしないと社会的な非難を受けかねません。
そのため、価値あるものは何らかの形で保管しておき、価値のないものは廃棄するということで折り合いをつけるのがいいでしょう

【自動車税や固定資産税、電気等の支払いについて】
叔父の自動車税や固定資産税、電気、水道、ガス、電話などの支払いをするように手配していることようですが、あなたが相続人としてその行為をしているのであれば、単純承認とみなされる可能性が高いです。
もし、そのような支払いの手配を停止できるのであれば、停止されるのが望ましいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)

質問する

当ブログでは、相続に関するご質問に弁護士がお答えします。ベテラン弁護士の長年にわたる経験に基づく回答です。無料・匿名でご質問いただけますのでお気軽にご利用下さい。

事務所での有料相談はこちら

直接、お聞きして、的確に回答します。今、何が問題で、どう解決すべきかをわかりやすく説明します。

最近の相続ブログ

アーカイブ

カテゴリー

大澤龍司法律事務所

〒530-0047
大阪市北区西天満4-3-25
梅田プラザビル別館7階A703号

お気軽にご相談ください!(電話要予約)
お気軽にご相談ください!(電話要予約)
FAX:06-6361-6043 メールでのお問い合わせはこちら 月〜金曜日(祝日を除く)
    • 大阪メトロ堺筋線・谷町線「南森町」駅
      ...徒歩約7分
    • 大阪メトロ堺筋線・京阪電車「北浜」駅
      ...徒歩約10分
    • 大阪メトロ御堂筋線・京阪電車「淀屋橋」駅
      ...徒歩約15分
事務所ブログ 大原訴訟ホームページ

ページの先頭へ