大澤龍司法律事務所 相続問題無料相談ブログ

★使用貸借と特別受益【Q&A №484】


【質問の要旨】
賃料相当額を特別受益として引かれるのか

記載内容  賃料 使用借権 持ち戻し

【ご質問内容】
裁判認知により相続人となりましたが、被相続人所有の空き家に住んでいた年数分の賃料(1000万円)を、特別受益として遺留分から差引くと言われています。
建物は、数年前に贈与の約束(契約書)があり、私(婚外子)の母が建替え、被相続人の死亡以前に母名義となっています。
土地は、私に遺贈の遺言があります。
それでも特別受益として賃料相当額を引かれなければならないのでしょうか

(カピバラ)


【使用貸借であれば賃料の支払いは不要】
被相続人であるお父さん所有の空家をあなたが使用していたということを法律的に考えてみます。
お父さんがあなたに賃料を請求するようなことはなかったのであれば、あなたはお父さんから無償(ただ)でその家を利用することを認められたということになり、法律的には使用貸借という関係になります。
あなたの立場から言えば、無償で使用する権利(使用借権)をお父さんから与えられたということになりますので、賃料を支払う必要はないでしょう。

【使用借権が特別受益になる可能性がある】
ただ、あなたが、被相続人からただで使用する権利(使用借権)をもらったということが特別受益とされる可能性があります。
使用借権の価額については当該対象物件の5~10%程度の価値があるものだとされることが多いです(但し、裁判例の解説などを読むと10~30%ではないかという見解もあります)。
しかし、建物価額は評価証明額を前提として算定されることが多いですが、建物の評価証明額が極めて少額な場合も多く、そのため、上記の割合では使用借権価額が極めて少額になります。
一方で、被相続人であるお父さんは土地や建物の固定資産税分を負担しています。
その物件をあなたが無償使用しているのであれば、最低限、土地や建物の固定資産税分の支払い分程度は免れたという利益を受けていたことになり、その相当額が特別受益とされる可能性があります

【建物贈与の影響】
建て替える前の建物は、生前に贈与されていますが、誰に贈与されたのかがご質問では明らかではありません。
もし、あなたに贈与されたのであれば、建物価額があなたの特別受益として持ち戻されますが、その場合の特別受益額は、《建物価額-使用借権額》でいう計算式で算定されます。
贈与があったとしても、あなたが使用借権を取得した事実は消えませんので、使用借権取得が特別受益となる点は否定できません
但し、上記考え方はあくまで一つの考え方にすぎず、異なる見解もありえます。

【持ち戻し免除の可能性もあるので弁護士に法律相談を】
なお、今回のご質問から受ける印象ですが、お父さんとしては遺産への持ち戻しを免除するという意思をお持ちであった可能性もあります。
また、前項に記載したように使用借権を設定した後、その建物を取得した場合にどのような形で特別受益に反映させるかについても、弁護士により見解の相違がありえます。
いずれにせよ、今回のご質問が含む問題については、難しい点も多いので、近くの相続問題に詳しい弁護士に事情を詳しく説明され、相談されることをお勧めします

(弁護士 大澤龍司)

遺産が何もない場合の特別受益による持ち戻し【Q&A №406】


 兄弟三人のうちの一人に対し、親が住宅取得資金という名目で1,000万円を贈与しています。
 他の二人には何もありません。
 その後、やがて親が他界した場合、他界した時点、つまり相続開始時において親の財産が何もない場合には、遺産分割の対象物がないということになりますし、その場合、特別受益の持ち戻しも、遺留分の減殺請求も、何もできないということになりますか?
 どちらも相続開始時に遺産が存在して初めて成り立つ制度ですか?そうだとすれば、兄弟のうち一人だけが得をし、後の二人はもらえず仕舞いということになりますか?

記載内容  持ち戻し 生前贈与 遺産がない 遺留分減殺

(鎌ちゃん)


【特別受益制度としては、特別受益者が生前贈与分を返還する義務はない】
 特別受益では、その特別受益分を遺産に持ち戻し(組み入れ)て、次の式で算定されるみなし遺産を前提に各相続人の相続分を算定していきます。
   《現存する遺産》+《特別受益》=《みなし遺産》
 この《みなし遺産》につき、各法定相続人に対する配分を計算します。
 今回のケースでは、特別受益が1000万円であり、法定相続人が子3人ですので、そのままの状態で相続が開始した場合、各人の法的相続分は次のとおりです。
   《現存する遺産》0円+《特別受益》1000万円=《みなし相続財産》1000万円
 各人の具体的法定相続はみなし相続財産を3分した333万円強です。
 ただ、特別受益というのは現実に生前にもらった財産を返還させるというものではなく、現存する遺産分割の際、その特別受益を受けた分はその人が既にもらったとして、後の遺産分けをしなさいという制度です。
 特別受益は既に生前にもらったお金を出しなさいという制度ではありません。
 そのため、今回のケースでは、特別受益を受けた人については、本来は333万円強しかもらえないはずですが、それ以上に1000万円の生前受益があるので、遺産から配分はなしというにすぎず、その人が差額の666万円強の金銭を返還させるということはありません。

【特別受益という制度では、遺産がない場合の不公平はやむを得ない】
 「これでは生前に多く贈与を受けた人の一人勝ちになってしまう。不公平ではないか。」というお気持ちを持たれる方が少なくないでしょう。
 しかし、親が、(生存中に)三人いる子のうち、誰にどれだけの財産を贈与するかは親自身の自由なのです。その結果、今回のケースのように、全財産を誰か一人に贈与してしまい、他の人には遺産が残されないという不公平は、法律上やむを得ないものと考えられています。

【遺留分なら、返還をしてもらえる】
 生前に多額の財産が、特定の相続人に贈与されている場合、それを取り戻す制度としては、遺留分というものがあります。
 本来、遺産はその被相続人が自由に処分してよいものであり、全額を一人の子供に生前贈与しても、また、遺言書で一人の子供に与えてもなんら差支えのないはずのものです。
 ただ、他の相続人のためにある程度の財産を与えるようにするというのが遺留分という制度です。
 本件のように全財産1000万円が一人の相続人に贈与されていた場合であれば、他の相続人は本来の相続分の2分の1(本件では6分の1の限度)を遺留分として、返還請求ができます。
 ただ、遺留分は被相続人の死亡を知って1年以内に遺留分を行使する(遺留分減殺)という意思表示をする必要がありますので、期間を経過しないようにご注意されるといいでしょう。

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