大澤龍司法律事務所 相続問題無料相談ブログ

★愛人の子にも相続権はあるか【Q&A №70】


 父が車の自損事故で亡くなり、損保会社から死亡保険金がおりると連絡がありました。母は健在で私は一人っ子ですが父に認知している子供がいると知らされました。
 損保会社の方は保険金の受取は相続ではないので保険金の受取割合は3人で話し合うようにと言われました。
 法定相続では母が1/2、私が2/6、認知した子が1/6になると思いますが、愛人から慰謝料を受け取っていないし、20年以上苦しめられているのでたとえ1/6でも持っていかれるのは納得できません。相手は代理人として弁護士をたてました。
 今後どの様に進めていったらいいのでしょう。。

記載内容  生命保険 慰謝料 時効

(大阪のおばちゃん)

 

(この回答は平成25年9月4日に出た最高裁の判例に基づき、それまでの回答内容に変更を加えております)
 夫が愛人を作った場合、妻はその愛人に対して、不法行為の損害賠償請求ができますが、この請求は不法行為の存在を知ってから3年以内に請求しないと消滅します。
 しかし、この請求は、あくまで、妻から愛人に対して請求できる権利であり、愛人の子自身が不法行為(不貞行為)をしたわけではありませんので、愛人の子に対する損害賠償を請求はできる余地はありません。
 したがって、慰謝料を理由に相続取り分を少なくするという主張はできないことになります。
 
 なお、参考までに言えば、妻の立場から不法行為(不貞行為)による損害賠償請求が可能ですが、その不法行為(夫の不貞行為)があったことを知ってから3年以内に請求しないと時効で消滅します。

 そのため、不貞行為が継続していたのであれば、現在(請求したとき)から遡って過去3年間の不貞行為については、損害賠償を請求する余地があるかもしれません。

【保険金は相続財産ではない?】
 保険で死亡保険金の支払いがされる場合、その死亡保険金は遺産とはならず、相続の対象とはなりません(生命保険は誰が相続できるのか【Q&A №26】)。
 そのため、保険契約で特定の保険金受取人が指定されている場合には、その指定された者が保険金全額を取得します(この取得は相続ではなく、保険契約の効果として受取人が取得します)。
 保険契約で受取人が定められていない場合の死亡保険金については、生命保険会社との契約書(取引約款)か、あるいは簡易保険のように法律で、誰が権利を取得するのかが定められているものと思いますので、念のため保険会社にどういう契約になっているのか確かめられた方がいいでしょう。

 もし、そのような定めがない場合には、法定相続分を参考にして支払を請求するしかなく、愛人の子から保険金の4分の1を請求されると、それを拒否することは難しいものと思われます。

 

【非嫡出子も他の子と同じ割合で相続します・・最高裁の判断が出ました】
 最高裁判所は、非嫡出子の相続分を2分の1とする民法の規定は、遅くとも平成13年7月時点で、憲法14条1項に違反するようになったと判断しました(最大決平成25年9月4日:判例コラム【非嫡出子の相続】)。
 そのため、現在では、非嫡出子(愛人の子)は、嫡出子と同じ相続分になるので、愛人の子からは保険金の4分の1を請求されることになるでしょう。

相続権に時効は無いのですか。【Q&A №558】


【質問の要旨】
面倒をみなかった相続人が今になって権利を主張してきたが、相続権に時効はないのか?

記載内容 介護 相続権 時効

【ご質問内容】
私の祖父(昭和42年4月に死亡)の件で叔母(9人キョウダイの末っ子、唯一、生存している祖父の子供)が調停を申し立て、現在、審判
父は長男ではありませんが、親と同居し、祖母(昭和62年2月死亡)の介護を母と二人で全面的に担って来ました
祖母が生きている間、叔母たち父のキョウダイは、常に「親を、ちゃんと見い。よう任さん(父に相続させようとしない)」と言い続け、父にすると、隣近所や姉妹の嫁。

ところが、父のキョウダイたちは、叔母が死んでから、「田圃を売って分けろ」と主張し出して、父は「話が違う」と、田圃の1筆でも売って分けるという案を受け入れようとせず、平成8年4月に死亡してしまいました。
私も、調停が始まって以来の相続人の態度を見ていると、権利ばかり主張してと色んな意味で怒りが出ます。
もし、祖母が生きている間に「田圃を売ってまで分けろ」と叔母たちが主張していたら、祖母の介護を当然に引き受ける事になったでしょう。そういう負担を一切したくなかったから、「分けろ」とは、一言も主張しなかったのです。
 「よう任さん」と言いながら、母親の介護を一人のキョウダイに任せ切りにした揚げ句、延々50年も粘り続けて。

私が、先生にお尋ねしたい事は、「相続権に時効は無いのですか?」という事です。

(コバヤシ)


【相続分を主張する権利に時効はなく、介護をしていなかったとしても相続権はある】
祖母の介護が必要な間は相続分の主張をせずに、介護をすべてあなたのお父さんらに任せておきながら、祖母が亡くなり、介護の必要がなくなった後になって、祖父の相続分を主張されたという事案であり、あなたとしてはとても腹立たしいことでしょう。
しかし、祖父の子である叔母さんは祖父の相続人ですので、相続の発生(祖父の死亡)とともに、叔母さんは相続分に応じた権利を取得します
遺産分割協議をしなかったからと言って、この取得した権利が時効で消滅することはありません
また、介護を一切しなかったからといって、それで叔母さんの相続権がなくなるというものでもありません
そのため、たとえ相続開始から50年もの長期間が経過していても、祖父の相続人である叔母さんには自らの法定相続分に従った相続権を主張できるということになります。

【今後「寄与分を定める処分の申立て」をする】
祖父が亡くなった当時に遺産分割協議書を作成していなければ、あなたが「父が祖母の介護をする代わりに他の兄弟は相続分を主張しないという暗黙の合意があったはずだ」と主張したとしても、叔母さんには「そんな約束はしていない」と言われてしまうでしょう。
あなたのお話では調停から審判に移行しているようなので、これまでに遺産分割協議はしておらず、今、遺産分割の審判をしているのだと思われます。
その場合には、遺産分割とは別に、遺産分割の審判をしている裁判所に対して「寄与分を定める処分の申立て」をするという方法が考えられます。
そうすると、寄与分についても遺産分割の審判の中で一緒に判断することになりますので、その中で、お父さんが祖母の介護を全面的に引き受けていたことをお父さんの《特別の寄与》として主張し、お父さんの相続分を増やすことにより、叔母さんに支払う額を減らすということです。
ただ、寄与分とは、単に被相続人のために貢献したというだけではなく、財産の維持または増加のために《特別の寄与》をしたことが必要であるとされています。
介護したことにより、入院費やヘルパー代が助かったというような点を証明する必要があり、証明できた分だけが特別寄与として認められますので中々ハードルが高く、主張すれば簡単に認めてもらえるというものではありません。
お父さんが祖母の介護を全面的に引き受け、その結果、遺産が減少するのを防止できたということがわかる資料を用意され、寄与分の審判に出されるといいでしょう。

(弁護士 岡井理紗)

被相続人との共有マンションの家賃の扱い【Q&A №546】


【質問の要旨】
マンションの共有者である長男が、被相続人に対し収益の返還請求権を持っていると主張している

記載内容 共有物 賃料 時効

【ご質問内容】
被相続人と長男が一棟建て賃貸マンションを所有していました。
分割協議が進まず調停へと進む状況です。
これまで賃貸マンションの収入は被相続人が管理し、収入も返済や税金の支払も行ってきました
長男代理人は2分の1所有の賃貸マンションからあがる収益は本来自分の物であり、返還請求権をもっていると主張しています。
この主張は認められるのでしょうか?
またこの被相続人に対する債権は何年前まで有効なのですか?
時効はあるのでしょうか
この債務を遺産に加えると他の相続人の相続分はなくなるといっています。

(mujun)


【兄が本当に共有者であるかどうかを念のために確かめる】
お父さんと兄で共有持ち分が各2分の1であるのに、被相続人が賃料収入全部を得ていたということですが、2つの面で疑問(あるいは問題といってもいいでしょう)がありそうです。
まず、第1は、兄の持ち分2分の1というが、実質はお父さんが建築資金を出しており、名義だけを長男のものにしていたのではないか?という点です。
この疑問は①長男名義の2分の1は実質上はお父さんの遺産ではないのか?
あるいは②お父さんがお兄さんに建築資金を生前贈与(特別受益)したのではないか?
という問題に発展しますので、念のために上記の①及び②の観点から、是非、調査されるといいでしょう。
なお、ローンがあるようですので、その借入名義がお父さんだけか、兄でもあるのか、又、頭金などは誰が負担したのかを、お父さんの取引履歴等なども参考にして調査されるといいでしょう。

【兄はお父さんに賃料の返還請求はできない可能性が高い】
次に、兄としてはお父さんが賃貸に出していることぐらいは知っていたと理解するべきでしょう。
にもかかわらず、賃料の半額を請求しなかったのはなぜかという疑問があります。
この点については、賃貸を始めるときにお父さんと兄との間で、お父さんが賃料を全部取得するということで合意(暗黙を含めて)があり、管理はお父さんがし、賃料収入はお父さんがもらう、ローンの支払いや固定資産税の支払いは全てお父さんがするとの合意があったと考えるのが普通の理解でしょう。
もし、その前提が正しいとすると、お父さんが全額を取得することを、兄は了解していたのですから、兄が被相続人であるお父さんに不当利得等の請求はできないことになります。

【仮に無断で賃貸していた場合には】
しかし、万一、お父さんが兄に知らせず、勝手にマンションの賃貸をしていたのだとすると、兄からお父さんに対して不法行為による損害賠償請求及び不当利得返還請求として賃料額のうちの兄持ち分額に相当する金額を請求することが可能になります。
この場合、お父さんが兄の分のローンの支払いをし、かつ固定資産税も立替支払いをしていたのであれば、その分は請求額から控除されますし、場合によれば管理料相当分も控除することも可能です。
なお、不法行為で請求する場合には、勝手に貸していることを知ってから3年で、不当利得返還請求をする場合なら10年で請求権が消滅時効にかかりますので、それ以前の分は時効を主張されると、兄は請求できないということになります。

【兄請求の債務を遺産に加えるどうなる?】
   今回の質問のケースでは兄の請求が成立しない可能性があります。
仮に請求できるとしても、お父さんが賃料から兄のローンの支払いをし、かつ、兄の分の固定資産税も支払っていたというのであれば、法的に認められる返還額はそれほど多額にはならず、請求すると遺産が無くなるようなことはないと思われます。

【特別寄与について】
兄に賠償あるいは返還請求ができない場合でも、賃料全額をお父さんに取得させたということが特別寄与として認められ、兄がその額を取得できる可能性はあり得ます。
ただ、この場合でも、兄の分のローンの支払いや固定資産税の立替支払い、管理料相当額等が考慮されますので、兄の寄与分としてはそれほど多くないように思います。

(弁護士 大澤龍司)

★成年後見人に対する損害賠償請求【Q&A №509】


※同じ方から2つに分けてご質問いただきましたが、回答は1つにまとめています。

【質問の要旨①】
後見開始前の不正出金はどうなるか

記載内容  時効 後見人 不正出金

【ご質問内容①】
認知症の母に成年後見人が付いています。(弁護士)
弟2人が、成年後見が開始される2ケ月前、母が認知症になったのを境に、母の預金、国債、年金型生命保険を2,700万ほど勝手に解約しています。
財産保全処分の審判も、成年後見申したてから1ケ月ほどで出ました。
成年後見人と面談しました弟達は、母がくれると言ったので、もらっただけだと言いました。
解約したもので300万で、それ以前にも3000万ほど預金を引き出しています。
2人は、3000万円は母から贈与されたお金だと、認めたとのちに、成年後見人からお聞きしました。
ですが、現時点でも預金が、1億以上あるため返還請求はしないという後見人の判断です。
弟達がもらったというお金は遺産相続時に特別受益として扱う物との判断です。
そこで質問なのですが、現在成年後見人が返還請求をしないと、このお金が、不当利得というものに当たる場合時効がくると、3000万+3000万のお金は遺産相続時には無効になるのでしょうか?
裁判所に申し立などした方がいいのかと思っていますが、よく判りません。教えてください。

【質問の要旨②】
自分が受取人であった保険を成年後見人が解約した

【ご質問内容②】
母に,成年後見人(弁護士)がついております。
母の財産に生命保険の、変額個人個人年金保険GFというものがあり、母自身で加入しました。
一時払い方式で500万円支払、目標額550万円年金支払い開始日 平成29年4月21日となっています。
母がもしも、平成29年4月21日までに亡くなると、死亡保険金受取人である私が550万円を受け取る事になっていました。
平成29年4月22日以降は母の年金として支払われるという保険です。
成年後見人の元に保険会社から目標金額に達したので、年金受け取り開始日を早めることができる旨連絡がありました。
このまま置いておいても1円も増額しないと思い込まれ、解約手続きされ、1年後5、503、630円振り込まれました。
3、630円増額されていました。
母から私に残す保険だからと、聞いておりました。
最近、後見人になぜ解約したのか聞きましたら、【置いていても1円も増額しないと勝手に思い込みました。】と言われました。
平成29年4月21日までにもしも母が亡くなったら、遺産相続の分に組みこまれるお金でなかったが、現在は組み込まれています。
私が遺産相続人になった時には、成年後見人にこの保険の解約の損失550万円を損害賠償できますか?

(アン)


【債権は10年間の時効で消滅】
弟さんたちが引き出した多額の預金が、お母さんの意思に基づかない場合(お母さんが認知症で判断能力がない場合を含みます)、お母さんは引き出した弟さんに対して不当利得返還請求をする権利(債権)を持つことになります。
この権利は10年で時効にかかりますので、お母さんが長生きした場合、時効消滅する可能性があるというのは質問で指摘されているとおりです。

【就任前の不正出金についての成年後見人の動きは鈍い】
不正出金の被害者はお母さん自身であり、あなたとしては法的には何らの権利もなく、後見人が動かない限り、不正出金分の回収もできません。
成年後見人にはお母さんの財産を保全すると役目がありますので、お母さんの預貯金からの不正引き出しがあれば、引き出した者に対して返還を請求するべきだとも言えます。
しかし、成年後見人は将来の財産保全に動くが、過去の財産の散逸については中々動こうとはしないというのが実情です(正確に言えば、後見人次第です。私の経験でも後見人が過去の不正出金を取り戻したというケースが1件だけですが、ありました)。
なお、成年後見人は裁判所が選任するものであり、後見人が職務を果たしていないのであれば、裁判所に事情説明書的なもの(上申書という題名でよい)を提出し、その中でどんな不正出金があったのかを証拠をつけて提出するといいでしょう。
成年後見人が成年被後見人の財産を横領していたというケースですが、裁判所の後見人に対する監督が不十分であったことから後見人の監督裁判所に損害賠償を命じた判決もあります。
参考判例:広島高判平成24年2月20日 家事審判官が、成年後見人が被後見人の財産を横領していることを認識していたのに、これを防止する監督処分をしなかったことは、家事審判官に与えられた権限を逸脱して著しく合理性を欠くとして裁判所の責任を認めた。
そのため、上申書が出てくれば、裁判所としても、そのまま放置するのではなく、後見人から意見を聞く可能性が高く、場合によれば後見人が不正出金分の回収に動き出すことも考えられます。

【特別受益と消滅時効】
不正出金分を返還請求する権利は10年で時効にかかりますが、特別受益には時効はなく、10年以上前の生前贈与分でも遺産に持ち戻されます。
ただ、特別受益は被相続人の意思に基づく贈与などで問題にされるものですが、質問の場合は被相続人の意思とは関係なく引き出されたものであり、特別受益ではなく、単なる不法行為等の請求権の問題にすぎないと見れば、10年間で消滅時効になるということも考えられますので、ご留意ください。

【後見人の保険解約等の行為には口は出せない】
お母さんが生きておられる以上、あなたはお母さんの財産について、法的には何らの権利権限もありません。
後見人としてお母さんの財産の維持・保全という立場で対応すればよく、あなたの保険金受け取りにまで配慮して保険を維持する義務はありません。
ただ、お母さんとしてはかなりの財産をお持ちであり、判断(意思)能力があった当時にあなたのことを思って保険に入り、あなたを受取人としていたのであれば、財産が極端には減ったような場合ではない限り、保険解約をする必要もないようにも思います。
しかし、仮に後見人が保険解約をし、それによって受取人であったあなたが損害を受けることになるかもしれないとしても、あなたが法的に損害賠償できません。
このことは、お母さんが、判断能力がある時点で保険を解約した場合に、あなたがお母さんに損害賠償をすることができないのと同じことだと思えば理解がしやすいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)

母の名義を借りていた建物【Q&A №464】


【ご質問のまとめ】
20数年前に賃貸用建物を建て、母名義の登記をしました。
以来、賃貸の回収、ローンの返済、固定資産税すべて私が行ってきました。
数年前に母が亡くなり、兄と父がこの建物を渡せと言ってきます。
時効の主張はできますか?

記載内容  名義貸し 固定資産税 時効

【ご質問内容】
20数年前に賃貸用に建物を数軒建てました。
名義は母で土地名義は祖父です。
収入は私、返済も私、その他の不動産の固定資産税も私で父と兄はノータッチでした。
10数年前に祖父、数年前には母も他界しているのですが、最近父と兄がその賃貸用の建物を渡せと圧力をかけてきます。
私は母には名義を借りただけと思い、建築当初から自分のものだから返済も遅れずにしてきました。
時効を使うことは難しいでしょうか。
返済中でもうすぐ終わります。

(kamemonn)


【不動産は誰のものか】
 まず、質問の賃貸物件が誰の所有ということから確認しておきましょう。
 今回の物件がお母さん名義だとしても実質上は質問者の所有という場合もあり得ます。
 ただ、そのようなことが認められるためには、その物件を建てたのは実質的には質問者だということ及びその代金も質問者が支払った、ただ、登記だけ名義を借りたというような事情が必要です。
 本件でそのような事情があるのなら、取得時効ではなく、そもそもその物件は自分の所有ということを主張されるといいでしょう。
 なお、賃料は誰の名義で回収していたのか、支払っていたローンは誰の名義であったのかという事情の検討する必要があります。
 これらの名義がお母さんだとすれば、その不動産があなたの所有だという主張は通りにくいでしょう。

【時効取得の可能性について】
 所有者でなくとも、時効で不動産の所有権を取得できる場合があります。
 自分の所有物だと思っていた場合なら10年間、他人の物であることを知っていた場合なら20年間、不動産を占有することで時効で土地を取得することが可能です。
 ただ、質問者の方が自分の所有物として占有しているという要件が必要です(このような占有を自主占有といいます)。
 取得時効の要件である自主占有とは、質問者の方が《自分で所有者と思っていた》だけではだめで、他の人から見て所有者と見られるような外形(外観)が必要だということです。

  周りからみて、自分の所有物として占有している
×  自分の所有物だと思って占有している

 今回の場合、賃料は誰の名義で回収していたいのか、支払っていたローンは誰の名義であったのか固定資産税はあなたに課税されていたのかという各点が問題になります。
 これらの点が全てお母さんということであれば、あなたはお母さんに替わって賃貸物件の管理をしていただけにすぎないということになります。
 また、あなたが他の相続人らに対して自分の所有物だということを主張し、それが認められていたというような事情があればそれは有利な事情になります。
 結局、あなたとしては所有者として占有していたという気持ちがあったとしても、裁判所や世間一般の常識的な判断として、所有者と見られるような外形が存在していないかぎり、時効での取得を主張するのは困難でしょう。

(弁護士 大澤龍司)

★20年以上前の不正出金【Q&A №456】


【質問のまとめ】
17年前に亡くなった祖母の遺産であったはずの預貯金から、不正出金したと思われる伯父の妻からお金を取り返すことはできますか?

記載内容  不正出金 生前贈与 時効

【ご質問内容】
 17年前に亡くなった祖母の遺産のことでご相談します。
 祖母は戦死した祖父の遺族年金受給し、亡くなる3年前に施設入所(世帯分離)。
 共同相続人の伯父は7年前に他界。
 母は現在、障害のため出廷不可。
 先日、伯母(伯父の妻)より祖母の郵貯の残高証明が送られてきました。
 残額は247円。
 手紙には、以下の主張が書かれておりました。
1.祖母の入所前に、私に通帳と印鑑を渡した。生前だから法的に問題がない(公正証書も通帳もなく、使途不明。)
2.私の父の借入書が残っていたため、それで相殺する(伯母の誤認識で完済済み。)
3.当時母と私に預金があるため、相続は不要

 3回忌の連絡すらなく、今回初めて生前贈与の話を聞きました。
 伯母は表見相続人であり、真正相続人である母の相続権を侵害しているのではないでしょうか?この内容は、相続権回復請求できるのでしょうか?
 自身が不正を働いている事実をきちんと認識して情報を開示し、分割協議に応じてもらうにはどうしたらよいでしょうか?
 祖母が入所する前に金額は1600万程度あったそうです。
 伯母は我が家の三文判を自分で購入していました。勝手に委任状を作成されたのか、農協の口座も解約されていました。
 伯母の父は出征せず、戦争で苦労していません。生涯一度も働いたことのないのに、母に祖母が亡くなったら金をとりに来ると罵ったそうです。
 お知恵を拝借したく、どなたかお願いします。

(hiro)


【相続回復請求はできない】
 相続回復請求ができないかという点にお答えします。
 法律で相続回復請求権が定められています(民法884条)が、この権利は戸籍上では相続人だが、実際は相続人でない人表見相続人といいます)が遺産を引き継いだ場合に、本当の相続人真正相続人といいます)が引き継いだ遺産を返せという権利です。
 例えば、被相続人である養親の同意もなく、勝手に養子縁組届出をした養子が遺産を全部取得した場合、他の相続人(例えば被相続人の兄弟)から遺産を返せという請求をする権利です。
 今回の質問の場合、伯母さんは戸籍上の相続人ではありませんので、遺産を不正に取得していたとしても相続回復請求をすることはできません
 ただ、次にのべるような手段が考えられます。

【お祖母さんに無断出金で着服の場合は、消滅時効が問題となる】
 もし、お祖母さんの生前に、伯母さんがお祖母さんから預かった預貯金通帳から無断でお金を出金し、着服したというケースで考えてみます。
 この場合、お祖母さんには伯母さんに対する不当利得返還請求権や不法行為に基づく損害賠償請求権が発生します。
 お祖母さんが死んだ場合には、これらの請求権は法定相続人が法定相続分で相続します。
 お祖母さんに配偶者はなく、子が叔父さんとあなたのお母さんだけだとすると、お母さんの法定相続分は2分の1であり、あなたのお母さんは伯母さんに対する返還請求権や損害賠償請求権の2分の1を相続で取得したことになります。
 ただ、お祖母さんの死亡したのが17年前のことだとすると、伯母さんの着服は更にそれ以前のことになりますので時効で消滅しているかどうかが問題となります。
 不当利得返還請求権であれば消滅時効は10年ですので、既に時効で請求できません。
 そのため、請求するとすれば不法行為に基づく損害賠償請求でしょう。
 この場合は着服という不法行為があった日から20年間で時効になりますので、着服行為から20年以内であれば請求が可能です。

【お祖母さんが生前贈与した場合】
 通常、多額の生前贈与があった場合には、遺留分減殺請求をすることができる場合が多いです。
 ただ、遺留分減殺請求権は、相続開始の時から10年を経過したときは消滅してしまいますので、本件の場合は、減殺請求はできないという結論になります。

【現在、するべき作業は何か】
 以上に述べたように、相続回復請求はできませんし、遺留分減殺請求もできません。
 そのため、法的に請求をするとなれば、不法行為に基づく損害賠償請求しかありません。
 伯母さんがいつ着服したのか(この点は時効に関連します)、また、どこの金融機関のどの支店からいくらを出金したのか、果たして伯母さんが取り込んだといえるのか(これらのの点は不法行為の証明に必要です)も確認し、その裏付資料も入手しておく必要があります。
 これらの確認のためにはお祖母さんの金融機関に問い合わせをする必要がありますが、10年以上経過した分については多くの金融機関が関係資料を処分していることも多く、その点の解明ができない可能性も高いでしょう。

【分割協議に応じてもらえるかどうか・・】
 本来ならば、伯母さんが遺産総額を明らかにし、着服した額も明らかにしてくれればいいのでしょうが、現実問題としてはそのような対応をすることは期待できないでしょう。
 結局は前項に述べたように証拠を示して、追及していくしかないということになるでしょう。
 ただ、いずれにせよ、多くの法的な問題点があり、また、資料収集の必要性もありますので、できれば相続問題に詳しい弁護士に相談し、どのような手段が取れるのかを確認されるといいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)

★使い込まれた預金は取り戻せるか【Q&A №336】


 母親は、高齢で、認知症で入院していて、退院の見込みはありません。
 万が一の事があった場合の事を考えています。
 数年前から、母親の年金と貯金を長男が使い込んでいます。
 これは、通帳等を確認すれば、わかると思いますが、何年前までさかのぼって調査する事が可能でしょうか?
 時効はあるのでしょうか?
 また、もし、裁判を起こしたとして、どのくらいの期間を要するのですか?
 費用は、どのくらいかかるのでしょうか?

記載内容  期間 調停費用 裁判費用 弁護士費用 金融機関の取引履歴 特別受益 時効

(KOKO)


【履歴の調査は通常は5年ですが・・】
 まず、《通帳等は何年前までさかのぼって調査する事が可能でしょうか?》という質問にお答えします。
 金融機関は原則として10年間は帳簿を保存しています。
 ただ、取引履歴(入出金の動き)の照会については、通常は照会をした時点から5年間分を回答することが多いです。
 5年分でたりず、それ以前も調査したいというのであれば、頑張れば10年までさかのぼって照会ができるはずです。
 なお、一部の農協や信用金庫などでは、更に遡って履歴が取れる場合もありますが、これはあくまで例外的な場合だとご理解ください。

【時効はあるのか】
① 調査についての時効はありませんが、前項に記載したように、保存期間が経過することにより金融機関に保存されている取引履歴が無くなる可能性がありますのでご注意ください。(お母さんの使いこまれている金銭の返還請求の時効は、場合により異なります。)
② お母さんの同意を得ない使い込みについては不当利得返還請求が可能ですが、これは取り込み行為から原則10年間で消滅時効にかかります。
③ お母さんの同意を得て、贈与を受けているという場合には、特別受益になる可能性がありますが、その場合には時効はありませんので、全ての特別受益が遺産に繰り戻されます。

【裁判や調停を起こした場合の期間について】
 遺産分割については裁判前に調停を起す場合が多いですが、通常は5回前後(期間でいえば6~8ケ月程度)で解決することが多いように思います。
 ただ、案件により異なりますので、あくまで目安とお考えください。
 次に裁判をする場合には、これも案件により異なりますが、通常は判決まで2年間程度かかることが多いように思います。

【費用はどの程度かかるか】
 費用としては、調停を申し立てした場合には、申立費用として印紙が1200円(被相続人が1人の場合)、郵便切手を数千円程度、裁判所に納付する必要があります。
 裁判になると、仮に1000万円を請求すると、訴状に貼る印紙は5万円で、2000万円を請求する場合には8万円の印紙を貼る必要があります。これに郵便切手が数千円程度かかります(但し、相手方が多い場合には増額されます)。
 なお、弁護士に依頼すると、弁護士に依頼したときの着手金と事件が終了した場合の報酬を支払う必要があります。
 この費用は、紛争の対象となる金額及び事件の難かしさ、弁護士の経験等により異なりますので、弁護士に法律相談する際、確認されるといいでしょう。

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