大澤龍司法律事務所 相続問題無料相談ブログ

★後見人による着服、不正出金【Q&A №534】


【質問の要旨】
後見人である長男が、母の貯金をおろしていた

記載内容 不正出金 成年後見人 横領

【ご質問内容】
関係者は、最近亡くなった母(被相続人)と4人の子供です。
老人ホームで痴呆状態の母には、3,000万円の貯金資産があった筈(証拠書類あり)ですが、後見人だった長男から、「全て下ろして、貯金は残ってない」と言われ、騒動が続いてます。
過去、長男は母に無断で、キャッシュカードで何回も50万円/日限度に下ろして自分の懐(自分名義口座)に入れてました。気づいた4男が詰問したところ、その事は口頭で白状し、横領行為を認めています。
但しその録音記録はない。
明らかに後見人による業務上横領罪ですが、刑法の規定により、直血の親族、若しくは同居人には、刑罰が免除される、という事で裁判しても勝訴の見込みが立たなく、後見人を除く3人兄弟で困っております。

<質問>
1)裁判において、長男は「お袋に頼まれて、若しくは許可を得て、貯金を下ろした」とウソの弁明で押し通すと思われます。それを崩す方法は何かありますか
2)亡母の生活費、老人ホーム費用は遺族年金で十分に足りており、貯金に手をつける必要は全くない状況でした。
3)亡母の老人ホームでの健康状態、判断能力について、医学的な診断書を準備できれば、(1)の長男の真っ赤なウソを突き崩せるものでしょうか。
4)これから遺産をもらえなかった3人の兄弟が取れる抵抗手段につき、アドバイス下さい。

(庭の千草)


【親族相盗に該当しても、民事裁判で請求が可能である】
成年後見人である長男が成年被後見人である母の預貯金を使ったというケースに関する質問です。
このようなケースでは法律上は刑事と民事の問題の双方から考える必要があります。
民事の問題は、刑事上の問題とは無関係であり、親族相盗例に該当しても民事裁判で損害賠償請求や金銭の返還請求も可能です
参考までに言えば、刑事事件としても、親族が成年後見人の場合には、親族相盗例に該当する場合でも刑罰に問われます
参考判例: 家庭裁判所から選任された成年後見人が業務上占有する成年被後見人所有の財物を横領した場合、成年後見人と成年被後見人との間に刑法244条1項所定の親族関係があっても、同条項は準用されないと判断した判決として、最高裁平成24年10月9日決定。
コラム【相続判例散策】親族相盗例が適用されないケース(最高裁平成24年10月9日決定)もご参照ください。

【成年後見人の使い込みの証明は難しくない】
長男が成年後見人になった後は、母の財産は全て成年後見人の口座に移されます。
そのため、その預貯金を引き出すのは成年後見人以外にはありません
又、施設に入っているということであれば、母のために多額の出費をするということも通常は考えにくいので、成年後見人が引き出した金銭は成年後見人が使ったものと判断されることになります。

【成年後見人になる前の引き出し分について】
成年後見人になる前の引き出し分については、引出者が誰であるのか、又、被相続人のためにつかったのかどうかが問題になります。
使いこんだ長男がウソをつく事態を想定し、予め、これらの点に関する客観的資料(払戻伝票等の文書)を集め、ウソに対処できるようにしておくといいでしょう(当ブログQ&A №362Q&A №317をご参照ください)。

【成年後見人選任前の行為については、母の判断能力が問題となる】
成年後見人がつくということは、母の判断能力(意思能力)がないということです。
長男が、成年後見人がつく前に《母から贈与を受けた》と主張するのなら、その時点での母の判断能力が問題となります。
そのような場合に備えて、母の入通院していた病院や医院のカルテや看護日誌、介護施設の介護記録を取り寄せしておき、母に判断能力がないことが立証できれば、母からの贈与の存在やその効力がなかったことを証明でき、長男に対する反論ができるでしょう。

【長男以外の相続人の対抗手段】
前記のとおり長男が成年後見人になってから以降の引き出し分についての証明はそれほど困難ではありません。
又、成年後見人になる前の預貯金の引き出しに関する対応も前記のとおりです。
問題は、長男が財産を隠すということも想定しておく必要があるということです。
裁判で勝訴し、長男は他の相続人に金銭を支払えという判決が出ても、長男が財産を隠すと、1円も取れない可能性があります。
そのため、長男の銀行口座や不動産等、資産内容をできるだけ早期に確認しておく必要があります。
又、長男が資産隠しをするような気配があれば弁護士に依頼して、仮差押の手続きをしてもらう必要があるということも覚えておくといいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)

★親の財産使い込みは罪になるか? 【コラム】

後見人になった子による親の財産使い込みは罪になるか?

記載内容  使い込み 意思能力 横領

【子の使い込み】
 相続事件では、認知症の親の介護をしていた子が、親の生前に親の財産を使い込んでしまっていたという事例が数多くあります。
 このような使い込みをした子が罪に問われることはあるのでしょうか。

【同居親族の財産犯は刑が免除されるという原則】
 お父さんが認知症になったことから、子(例えば長男)がお父さんの財産を管理しているケースを考えてみましょう。
 後見人である長男が、被後見人であるお父さんの財産を使いこんだ場合、業務上横領罪が成立します。
 しかし、刑法は直系血族及び同居の親族らとの間で窃盗・詐欺・横領に当たる犯罪が行われたとしても刑は免除すると定めています(244条。末尾に条文を記載しておりますのでご参照ください)。
 刑法は「法は家庭に入らず」ということで、家庭内の問題は家庭内での解決しなさいという趣旨で定められています。
 そのため、このような関係にある場合には、警察に訴えても捜査が開始されることはないのが普通です。

【後見人は例外になる】
 しかし、最近、後見人になった親族の使い込みについては業務上横領罪の成立を認めて刑は免除しないという裁判が相次いでいます(最判平成20年2月18日、最判平成24年10月9日、東京高判平成25年10月18日など)。
 2つの最高裁の判例はいずれも、成年後見人の後見の事務は公的性格を有するものであって、成年被後見人のためにその財産を誠実に管理すべき法律上の義務を負っているから、成年後見人と成年被後見人との間に刑法244条1項所定の親族 関係があっても、刑法上の処罰を免除もできないと明言しています。
 つまり、後見人という公的な責任を負った以上、その責任の方が優先され、親族だからといって刑が免除されることはないということです。
 現在のところ、業務上横領についての裁判例のみですが、同様の考えをすれば、後見人が被後見人の財産を窃盗したり、詐取した場合にも適用されそうです。
 最近、後見人の財産取込が問題となっています。
 遠からず、後見人が窃盗をし、あるいは詐欺を行うという具体的なケースが起訴されることになり、親族であっても刑罰に処せられるという裁判例が積み重なっていくことになると思われます。

(弁護士 大澤龍司)

亡祖母が購入したピアノの所有者は誰か【Q&A №361】


 10年ほど前に亡くなった祖母が、亡くなる前に私にピアノを買ってくれました。
 3年前に両親が離婚し、父は家に残り母が家を出て、私は母方につきました。ピアノは置き場に困ったことと父が「置いておいてもいい」と言っていたこともあり、その後も買ってもらった当時に住んでいた家(父が住んでいる家)に置いていました。
 ところが2年ほど前から、父が「このピアノは自分の家にあるんだから自分のものだ。」と主張するようになりました。言われる都度に私も「ピアノは私のものだ。」と主張していたのですが、先日用事で父の住んでる家に行った時にピアノが無くなっていることに気付き、父を問い詰めたところ「売った。あれは俺のものだからお前に売った金の請求権は無い。ここに置いていたお前が悪い。」といったようなことを言われました。また、売って手に入れたお金を何に使ったかを聞いたところ「色々」と口ごもるばかりで答えてくれません。
 私としてはピアノは祖母の形見でもあったので何とか売った分のお金だけでも取り返したいのですが、この場合は請求することが可能でしょうか?
 それとも父の言う通り本当に請求出来ないのでしょうか?

記載内容  生前贈与 横領

(Mira)


【ピアノは誰の所有になるのか・・】
 今回の質問のキーポイントは、《ピアノの所有権は誰にあるのか?》という点です。
 この点により、回答が分かれてきます。

【お祖母さんがあなたに贈与した場合】
 あなたが、お祖母さんからピアノを贈与されたのであれば、ピアノはあなたの所有となります。
 従って、あなたの所有であるピアノを、お父さんに預かってもらっていただけなのに、それを無断でお父さんが売却したことになります。
 その場合、あなたとしてはピアノという物に対する所有権を侵害されたのですから、《ピアノの所有権を侵害された》ということで、お父さんに対してピアノの時価相当の損害賠償請求をすることが可能になります。
 通常の場合、あなたが請求できるのは、お父さんがした売買で受け取った売却代金額です。
 ただし、お父さんが、ピアノを安く叩き売ったのであれば、現実に受け取った売買代金ではなく、それより高いピアノの相当額を請求することも可能です。

【お祖母さんが自分の物と考えていた場合には】
 ただ、お祖母さんとしてはあなたに弾かせることは考えていたにしても、あなたにあげる(贈与)とまで考えていなかったというのであれば、所有権はお祖母さんのものであり、それを相続でお父さんが取得したということになります。
 この場合、お父さんがピアノを売却することについては、なんら問題はなく、あなたが売買代金を請求することはできません。

【所有権の証明はあなたがしなければならない】
 あなたは自分の所有権が侵害されたことを理由として、損害賠償請求をするのですから、ピアノがあなたの所有という点をあなたが証明する必要があります。
 もし、損害賠償請求をするのなら、生前、お祖母さんがピアノについてどのように言っていたのか、又、それを証言してくれる人は誰なのか、証拠集めをしておく必要があるでしょう。

★不正出金を疑われた場合の対処【Q&A №360】


 拙い文章ですが、お知恵をお貸しください。
 遺産整理をしていた兄から連絡があり以下の様な事象が発生しました。
「お前が面倒を見たときから母の預金が2年で500万円減っている。横領などで弁護士を立て訴えるぞと。」
 母親が死ぬ2年程前から私が母の面倒を見ていました。(私の家で私の家族と一緒に生活していました。)
 面倒を見ている間は母の預金通帳を預かり、正確な金額は覚えていませんが預金を利用したのは間違いありません。
(了承を得て私の家族および母の生活費や母の治療費、私の車の頭金。私の子供にお小遣いなど。)

 ここで質問です。
①私が問われる罪は何に該当するのでしょうか。
②了承を得ていたとはいえ、大きい買い物などの領収書などしか保管しておらず、生活費や一部の母親の治療費の領収書はすでにありません。使途不明金として生活費などを不当利得請求された場合、請求されたとおりに支払わなければいけないのでしょうか。
③500万円という金は特別受益に該当するのでしょうか。不当出金に該当するのでしょうか。
④支払いの意志がまったくないわけではなく、私の家族は「面倒をみて了承を得て使っていた金を面倒を見てない人から請求されるのはおかしい。」と怒っています。
⑤来るべき日のためにできることをお教えください。

記載内容  不正出金 横領 両親の面倒 介護費用 特別受益 特別寄与 不当利得

(する)


【刑法上の犯罪としては窃盗あるいは横領罪、私文書偽造等ですが・・】
 他人の預金を無断で引き出した場合には、横領罪又は窃盗罪が成立する可能性があります。
 又、引出に際してお母さんの署名・捺印をしなければならないので、有印私文書偽造・同行使罪も成立する可能性があります。
 ただ、これらの罪はあくまでお母さんに無断でした場合ですので、質問のように《お母さんの承諾があった》ということが証明できれば犯罪は成立しません。
 又、お母さんとあなたは直系血族関係ですので、万一、お母さんに無断でした場合であっても、刑法では親族間の犯罪の特例という規定があり、窃盗罪や横領罪については刑が免除されます(末記条文をご参照ください)。
 従って、警察沙汰にはならない可能性が高いと思われます。

【領収書がない点について】
 多額の金銭は別として、通常の場合、月額で10数万円程度の生活費などは領収書がなくとも認められる場合が多く、不当利得にはならないでしょう。
 なお、病院等の医療機関や介護施設の領収書などが多額になる場合の領収書がない場合には、再発行してもらうか、あるいは支払い額がわかるもの(たとえば医療機関なら診療報酬明細書)等をもらっておかれるといいでしょう。
 ただ、何百万円単位の多額の金銭が引き出されている場合に、その使途がお母さんのために使ったのでない場合には、次項に記載する区別にしたがって処理されることになるでしょう。

【不当利得か特別受益か】
 2年間で500万円が減っているということですが、この金銭のうち、生活費やお母さんのために使ったのではない金銭については
① お母さんから贈与を受けたものである場合には特別受益の問題になります。
② お母さんに無断で引き出した場合には不当利得又は不法行為で返還する必要があります。

【家族の言い分について・・・親の面倒を見たことと遺産分割の関係】
 「親の面倒をみていたのに・・・面倒を見てない人から請求されるのはおかしい。」という主張は、感情としてはよくわかります。
 しかし、法律的にいえば、子は親の扶養義務を負っており、法的には親の面倒を見ることはむしろ当然とされています。
 法律では、相続というのは決して親の面倒を見た報酬やご褒美ではありません、というふうに考えます。
 ただ、相続人である子が親の面倒を見たことで親の財産の支出を食い止め(ヘルパー代や施設代を出さなくてもよかった)、親の財産形成に特別の寄与があった(家業に無償で従事した)といえる場合には、寄与分を主張をし、遺産を余分にもらうことができます。

【参考条文:刑法第244条(親族間の犯罪に関する特例)】
  配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第二百三十五条(窃盗)の罪(・・中略・・)又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。 ※横領についても同様の刑の免除の条文があります。

★親の預金を無断で出金することは窃盗か【Q&A №291】


 父の死後二年経過した時点で、相続行為がなされぬまま、父の名義で株のネット証券に口座を開設し、父の預金を移して株の運用をしていました。その後、遺産相続のため、そのお金を(損出はありませんでした)元の父の口座に戻したあと、自分の口座に全額振り込みました。一部は委任状を自分で作成、残りはATMで処理しました。
 以上は他の相続人の了解はもらっていません。これからそのお金を相続人と分ける予定ですが、私文書偽造、同行使、詐欺罪、窃盗罪に問われるでしょうか?親族相盗で許されますでしょうか?教えてください。

記載内容  不正出金 窃盗罪 親族相盗例 横領

(富士山)


【刑事問題になりにくい】
 遺産は各相続人の共有財産ですので、厳密に言えば勝手に自分のために浪費したり自分の預金口座に移し替えたりすれば刑法上、窃盗や横領などの罪に該当します。
 しかし、質問でもご指摘されているように刑事事件になりにくいのが現状です。
 これは、刑法には、親族相盗例という規定があり、親族間の窃盗や横領、詐欺などは処罰されない(正確には《刑を免除する》という条文がある)ことから、警察も捜査をしないからです。
 警察としては、家族内の問題なので、よく話し合って解決するようにという立場をとるのでしょう。

【銀行に対する関係では犯罪が成立するが・・】
 そのほか、委任状を無断で作成したという点について、有印私文書偽造、同行使罪の成立の余地はありますし、これには親族相盗例というものはありません。
 ただ、問題の実質は結局のところ家庭内の遺産分割問題ということに変わりはありません。
 特に本件では、最終的にお金を持ち逃げしたわけではなく、遺産分割協議に応じるということであれば、他にかなり悪質な事情や銀行からの被害申告でもない限り、警察が動くことも考えにくいと思われます。

質問する

当ブログでは、相続に関するご質問に弁護士がお答えします。ベテラン弁護士の長年にわたる経験に基づく回答です。無料・匿名でご質問いただけますのでお気軽にご利用下さい。

事務所での有料相談はこちら

直接、お聞きして、的確に回答します。今、何が問題で、どう解決すべきかをわかりやすく説明します。

最近の相続ブログ

アーカイブ

カテゴリー

大澤龍司法律事務所

〒530-0047
大阪市北区西天満4-3-25
梅田プラザビル別館7階A703号

お気軽にご相談ください!(電話要予約)
お気軽にご相談ください!(電話要予約)
FAX:06-6361-6043 メールでのお問い合わせはこちら 月〜金曜日(祝日を除く)
    • 大阪メトロ堺筋線・谷町線「南森町」駅
      ...徒歩約7分
    • 大阪メトロ堺筋線・京阪電車「北浜」駅
      ...徒歩約10分
    • 大阪メトロ御堂筋線・京阪電車「淀屋橋」駅
      ...徒歩約15分
事務所ブログ 大原訴訟ホームページ

ページの先頭へ