大澤龍司法律事務所 相続問題無料相談ブログ

亡兄に使い込まれた私のお金を請求できないか【Q&A №463】


【ご質問のまとめ】
40年ほど前に私のお金を800万円使い込んだ兄が、先日亡くなりました。
兄は1億円の財産を遺し、すべて姉が相続しました。
お金を取り返すことはできないですか?

記載内容  相続債務 消滅時効 包括遺贈

【ご質問内容】
兄弟は8人で私は末っ子です。
去年長男の兄が亡くなり、その兄には私が若い頃40年前貯金をしていた800万円使われていましたが返してもらえないまま亡くなりました。
遺産は1億万円位あったそうです。
しかし相続人は姉になっていました。
それから兄は奥さんには先だたれてます。
子供もいませんでした。
証人は沢山いますが、借用書がないのがだめかなと諦めようと思っていても何か悔しくて何とかならないものでしょうか!?

(ノンちゃん)


【40年前の使い込みの返還請求について・・・時効で消滅している可能性が高い】
わかりやすくするために、まず、お兄さんが現在も生きておられるとして、考えてみます。
あなた自身の預貯金をお兄さんが使いこんだということですが、それがあなたに無断であったのなら、あなたとしてはお兄さんにその使い込まれた金額の返還請求が可能です。
その根拠は、不法行為に基づく損害賠償請求及び不当利得返還請求権です。
但し、請求権には消滅時効があります。
消滅時効の期間は次のとおりです。

上記①の不法行為であれば使い込まれたことを知ってから3年間です、ずーっと、使い込みを知らなかった場合には使い込みの時点から20年間です。
②の不当利得の場合には返還請求できる日(使い込みの翌日から)10年間です。
現在まで40年間が経過しているということであればいずれにしても消滅時効にかかりますので、お兄さんが消滅時効と主張するのであれば、請求はできません。

【消滅時効にならない・・時効中断がある・・場合】
ただ、お兄さんが使い込みを認めていた(但し、あなたがその点を証明する必要があります)のであれば、その認めた時点から10年以内なら消滅時効は完成しません。
これを時効の中断といいます。
そのように請求を認めた事実がないかどうか、例えば最近10年間以内にお兄さんから使い込みを認めたような謝罪の書面を送付されていないか、あるいはそのような内容を録音したことがないかどうかを確認されるといいでしょう。
もしあれば、それで時効中断になるかどうか、弁護士に相談されることをお勧めします。

【時効中断している場合はお姉さんに請求する】
以上に説明したことを前提に、本件について考えてみます。
もし、あなたの持っている請求権が時効で消滅していないのなら、お兄さんに請求できることになるはずですが、本件ではお兄さんは既に死亡されており、相続人がお姉さんということのようです。
その詳しい事実関係は明らかでありませんが、おそらくお兄さんが《すべての遺産をお姉さんに相続させる》という遺言書を作成されていたのでしょう。
もしそうであれば、お姉さんは、お兄さんの遺産全部を相続するとともに、その債務を承継します民法990条、民法896条:末尾に記載した条文をご覧ください)。
そのため、あなたとしては、お姉さんに対して債務を承継したとして請求をすることが可能です。

【兄弟には遺留分減殺請求がない】
質問者の方はご存知と思いますが、念のために遺留分がないことも記載しておきます。
ある法定相続人に遺産の全部が行くような場合、他の相続人には遺留分減殺請求が認められています。
しかし、兄弟姉妹には遺留分減殺は認められておりません。
そのため、本件では1億円の遺産がお姉さんに行ってもあなたは遺留分減殺請求ができないということになります。

(弁護士 大澤龍司)

〔参照条文〕
民 法
(包括受遺者の権利義務)
第990条  包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。
(相続の一般的効力)
第896条  相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

★増築費用の贈与を受けた証明【Q&A №378】


 兄弟3人で遺産分割の調停中です。20年前に長男が自宅の増築費用として、父から700万円の贈与を受けているので、この金額を長男の特別受益として認めてほしいと調停員に要望しました。調停員が証拠はありますかと尋ねてきたので、長男が書記官に提出した回答書に「振込みで受領」と記載している事が証拠と言ったところ、それだけでは不充分と言われました。他にどのような証拠が必要なのですか。長男は増築費用700万円は借用したもので、生活費の不足分で返済したと言っている。遺産分割の対象は預金と特別受益のみです。次男は預金の1/3のみで了解しており、長男の特別受益については問題として取り上げることに反対しています。

記載内容  建築費用 調停 返済 贈与 貸金 消滅時効

(スカイツリー)


【贈与か貸金か】
 自宅を新築した際、お父さんから金700万円が送金されたことについては、長男も認めています。
 問題は、その送金分が、《贈与》か《貸金》なのかという点です。
 その送金分が長男に対する《贈与》であれば、特別受益として、遺産に繰戻される可能があります。
 しかし、貸金であるとすると、返済の問題と、返済していない場合には、消滅時効の問題が生じてきます。
 長男は《その後、生活費援助で返金した》という主張ですので、貸金だったという立場です。
 貸金であると主張するのなら、長男の側で返済を証明する必要があります。
 又、送金時期が20年前ですので、消滅時効期間《10年間》が経過しており、時効で貸金返還請求権は消滅しているということも将来、主張するかもしれません(参考までにいえば、特別受益では消滅時効という問題は発生しません)。

【贈与の証明はあなたがしなければならないが・・】
 長男は貸金だと主張し、あなたは特別受益であると主張しているので、貸金であること及びその弁済をしたことは長男が証明する必要があります。
 しかし、反面、あなたとしては、贈与を主張している以上、その点を証拠で証明する必要があります。
 普通のケースなら、贈与を主張する側としては、長男が一度も金銭を返還していないこと(贈与なら返還不要であるため)や、借用書等の契約関係書類がなかったこと(貸金なら借用書があることが多い)等を証拠で明らかにする必要があります。
 当時、贈与税の申告をしていたというのであれば、その申告書の控えなどを入手されると決定的な証拠になるでしょう。
 又、返済しているというのなら、長男にその証拠を提出してもらうように要請し、その裏付けがないというのであれば、弁済の証拠なしとして、《貸金》ではなく、《贈与》だったのだという主張をすることも可能でしょう。

【長男の弁済の主張についての反論】
 今回の質問の件では、長男は生活費の不足分で返済したという主張をしているようです。
 この点については、そのような事実が本当にあるのかの調査をするために、お父さんの預貯金口座の履歴を取り寄せすることも考えていいでしょう。
 履歴を確認して、お父さんが十分な年金等を得ている、あるいはかなり多額の預貯金等があるということなら生活費の援助はいらないでしょう。
 又、お父さんの預貯金額が毎月減額しているというような事実が判明したのなら、生活費はその預貯金から出ており、長男はなんらの援助もしてはいないという推測ができます。
 援助しているとしても、その長男の援助は借金の返済ではなく、《親族間の扶養義務の履行》として、長男が実行したものであり、借金の返済ではないと反論することも可能です。

【調停は裁判ではない】
 20年前の送金が贈与か貸金か、そのいずれについても証明は困難な場合が多いです。
 質問のケースはあなたのご主張のように贈与の可能性も高いように思います。
 しかし、調停は裁判ではありません。
 贈与か貸金かを最後まで争うのもいいでしょうが、勝訴するとは限りませんし、弁護士費用も必要です。
 不満が残っても、調停委員の意見も参考にし、中間的な解決として、送金分の一部を特別受益として算入する等の方向を検討してもいいでしょう。

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