大澤龍司法律事務所 相続問題無料相談ブログ

特別受益だと認めさせたい【Q&A №577】


【質問の要旨】
①子や孫への生前贈与は特別受益にあたるか?
②預貯金のみを相続したいが、どのように協議を進めればいいか?

記載内容  特別受益 生前贈与 調停

【ご質問内容】
 父が被相続人。相続人は私・兄・妹です。
 兄は兼業農家の跡取りとして、遺産全部を受け継いで当然と考えており、妹も同意しています。
 私はこれまで、父からまとまった金銭を受け取ったことが全くなく、この相続では預貯金の3分1を受け取ることを希望しています。

①父が生前、兄や兄の子(孫)に金銭を渡したことは、特別受益にあたるでしょうか。
 特別受益にあたるなら、相続遺産に加えたいですが、妥当でしょうか。
 心配なのは兄がすんなり認めるかです。認めさせる方法を教えて下さい。

②遺産分割協議は駆け引きの場だと思います。
 どんなことに注意すればいいでしょうか。
 大切なことを教えてください。

(のえる)

【あなたの申し出はどう評価できるか】
 あなたの相続分は3分の1ですが、それは遺産全部について、その3分の1です。
 遺産の中には不動産もあると思いますが、その不動産についてもあなたは3分の1の相続分があります。
 もし、遺産の中に不動産があるのに、あなたが預貯金の3分の1のみの相続で我慢するというのであれば、不動産については法定相続分を取得しないという大幅な譲歩をしていることになります。
 お兄さんとしては決して損な話ではありません。

【生前引渡分の扱い】
 生前にお父さんがお兄さんに金銭を渡していたのであれば、おそらく生前贈与に該当するでしょうから、遺産分割の際には、特別受益として遺産に持ち戻される可能性が高いです。
 ただ、お孫さんについての生前贈与ですが、お兄さんとその子であるお孫さんとは、別の人格ですので、お兄さんの特別受益と見なされる可能性は低いでしょう。

【お兄さんはすんなりとは認めない可能性が高い】
 あなたの提案する預貯金の3分の1の相続でお兄さんがすんなりと認めるかという点についても述べます。
 都会では相続をお金で割り切ることが多く、あなたの提案でお兄さんが納得することも多いでしょう。
 しかし、郊外などで農業をされているような方については、跡取りが遺産全部を取得するものだという考えを持つ方が多く、又、周囲の親族もそのような方向で圧力をかけてくるということも多いようです。
 このような地域性に加えて、妹さんが遺産はいらないという意向であるなら、お兄さんとしては《あなたにだけなぜ遺産を与えるのか》ということで、あなたの提案に難色を示す可能性が高いと思われます。
 又、お兄さんの立場から言えば、お父さんの農業を手伝ったので、特別寄与として遺産から優先的に支払いをせよと主張することも考えられます。

【調停制度の利用をお勧めします】
 このように本来は当然遺産分割するべきなのに、遺産分割をしないというようなケースでは調停制度を利用されるといいでしょう。
 調停はお兄さんの住んでいる地域の家庭裁判所に申立をします。
 手続き等がわからないのであれば、家庭裁判所に行って、どのように申立をすればいいかをお聞きになるといいでしょう。

 調停のいいところは、調停委員という第三者がお兄さんとあなたの話の双方を聞き、円満な解決の助けをしてくれるということです。
 裁判所で第三者が法律を前提に解決しますので、お兄さんとしても納得せざるを得ない場合が多いですし、あなたのように預貯金の3分の1でいいということであれば、調停委員としてもお兄さんを鋭意説得してくれるものと思います。

【調停での対応のコツ】
 調停のコツとしては、最初は全部の財産の3分の1を請求し、その後、調停委員の説得で預貯金の3分の1に応じる形をとるといいでしょう。
 調停は互いに譲り合って解決するという制度ですので、最初に譲ったところから出発すると更なる譲歩を求めれらますので、この点はよく覚えておかれるといいでしょう。

【調停は裁判ではない】
 なお、お兄さんや親戚の方などは、《裁判沙汰にして》などというかもしれません。
 しかし、調停は裁判ではなく、円満な解決を望む制度です。
 相続についての話し合いは本当に難しく、私(弁護士大澤)の経験でも話し合いで解決することは本当に少ないです。
 お兄さんがあなたの希望に従った解決をしないのなら、早期に調停を申し立てることを考えるといいでしょう。

【弁護士の知恵も借りる】
 なお、あなたの遺産問題で何が問題になるかを知っておくためにも相続に詳しい弁護士に相談するといいでしょう。
 何が問題であり、あなたが本来はどの程度の財産をもらえるのかを教えてくれるはずです。
 あなたの考えで間違っているところはないかどうか、弁護士の眼からみれば何が問題点になるのか、それらを知った上で、調停の申立をして、問題を解決するのがベストだと思います。

(弁護士 大澤龍司)

★亡父との共有名義マンションの使用借権【Q&A №539】


【質問の要旨】
亡父が出資して共有所有者となっているマンションに、姉が居住したり、賃貸に出したりした場合

記載内容 購入資金 持ち分 特別受益

【ご質問内容】
父親が亡くなり姉妹で財産を分けることになりました。(母はすでに亡くなっています)
姉は生前父にマンション購入資金として1200万円出してもらいました
残りのローンは姉が払いました。
しかし税金対策だったのでしょう、父が出した分を共有所有者として登記していました。
父は生前、姉に自分の持ち分を買い取ってほしいとの話もしていましたが、姉も買い取ることはできず、相続分として父の分が残りました。
姉は最初は自宅として使用し、後にマンションを賃貸に出して収入を得ています
姉から父に賃貸の代金を一部払った時期も1年ほどありましたが後に払った様子はありません。
今ではその所有分の価値も1/3程になっています。
共有の持ち分になると、特別受益が1200万円だとは言えないのでしょうか
言えないのなら、共有所有者の父がもらわなかった賃料の一部をみなし財産として算入できますか?
あるいは、使用借権を無償で得ていたことにはなりませんか
その場合の金額の算定は?
私は姉だけが住宅資金をもらっているのに、遺産が1/2づつというのはどうも納得できません。
不平等感をなくすいい方法があればご教授ください。

(tomo)


【今回の質問は《購入資金援助》と言う意味では、特別受益にならない】
通常の場合であれば、被相続人が法定相続人のマンション購入資金の一部を出した場合には、金銭の生前贈与として特別受益になります。
ただ、今回の案件では、お父さんが出した分はお父さんが自分の持ち分として共有登記されていますので、金銭の移動はありません
したがって《購入資金援助》としての贈与はなく、お姉さんの特別受益は存在しません
マンションのお父さんの持分は、お父さん自身の遺産となり、遺産分割の対象となります。

【お父さんの共有持ち分の使用は、居住用であれば特別受益にならない】
お姉さんがマンションを居住用にしていたとき、お父さんの持分を無償で使用している点では、お姉さんはお父さん持ち分につき、使用借権(無償で使用する権利)をもらったということになり、特別受益となる可能性があります
そのため、マンションの使用貸借について判断した裁判例を検索しましたが、発見できませんでした(参考までに言えば、土地の使用貸借は特別受益になるとの裁判例はあります)。
学者の意見では、建物使用貸借は遺産の前渡しという性格が薄く、又、財産権として強い権利ではないこと、更に被相続人の意思としては遺産分割の持戻し免除の意思が推定されるということから、特別受益にはならないとの見解が多いです。

【お父さんの建物持分をお姉さんが他人に賃貸している場合】
問題は、お姉さんが自ら居住するのではなく、他人に貸して賃料を得ている場合です。
これについても参考になるような裁判例も学者の意見もみつかりませんでした。
ただ、あなたの立場から言えば、使用貸借は他人に賃貸した段階で終了しており、その後にお父さんの持ち分相当の賃料分もお姉さんが得ていたのは特別受益になると主張するか、あるいはお父さんが賃貸に出すのを知らない場合には不当利得にしないと不公平だと主張されるといいでしょう。
このような主張をした場合に裁判にまでいけばどのような結論になるか、興味のあるところではありますが、お父さんの持ち分に相当する賃料分は特別受益として遺産に持ち戻される可能性もあるでしょう。

(弁護士 大澤龍司)

★【相続判例散策】毎月の送金が特別受益にあたるのか?(東京家審平成21年1月30日)

毎月の送金が特別受益にあたるのか?
(東京家審平成21年1月30日)

【ケース】
平成4年から平成6年の間、被相続人から相続人の一人に対して一月に2万円から25万円の送金がなされていた事例で、相続人の一人への特別受益にあたるかが問題になった。

【裁判所の判断】
裁判所は、以下のような内容の判断をしました。
遺産総額や被相続人の収入状況からすると、一月に10万円を超える送金は生計資本としての贈与であると認められるが、これに満たないその余の送金は親族間の扶養的金銭援助にとどまり生計資本としての贈与とは認められないと思慮する。
一月に10万円未満の送金については、親族間の扶養的金銭援助にとどまり生計資本としての贈与とは直ちに認められないと思慮するが、その余の送金はいずれも一月に10万円以上の送金がなされており、返済されたと認められる証拠がないことからすると、これらの一月に10万円を超える送金は生計資本としての贈与であり、いずれも特別受益と認められる。

【弁護士のコメント】
裁判所は、この事案については、月に10万円程度なら扶養義務の範囲での援助といえるが、それ以上の送金については、扶養義務の範囲を超えた「生計の基礎として役立つような財産上の給付」であると言えるので、特別受益になると判断したということです。
月に何万円程度が扶養義務の範囲といえるかどうかは、遺産総額や被相続人の収入状況によって変わりますので、月に10万円というのは固定額ではないことに注意が必要です。

20年前の土地売買と特別受益【Q&A №513】


【質問の要旨】
祖父の土地を叔母たちが売買で手に入れたら、相続はないのか?

記載内容  売買 特別受益

【ご質問内容】
私の母はわたしが5歳の時なくなりました。
それから30年後母かたの祖父が亡くなりわたしが代襲相続することになりましたが。
2人の叔母はすでに祖父の土地を売買で手にいれていて、土地の登記も済んでいました
日付を見ると20年前に土地は祖父から叔母たちのものになっています。
この場合わたしには土地の相続はもうないということでしょうか
よくわからないので、教えていただければありがたいです。

(たんぽぽ)


【不動産の移転が贈与でない限り、特別受益にならない】
お祖父さんの遺産が叔母さん2人の名義になっているようですが、それが贈与で移転されたものなら特別受益の問題になります。
しかし、売買で移転したのであれば、特別受益の問題は発生しません
ただ、当時の相場から見て、特別に安い金額で売買されたというのであれば、その相場価額との差額分が特別受益となる可能性はなくはありません。
しかし、特別安い金額であったという点は、あなたの方で証明する必要があります。
その証明ができないとすると、お祖父さんの土地は既に生前に叔母さんらに売却されており、その登記も完了している以上、この土地は遺産にはならないでしょう

(弁護士 大澤龍司)

★持ち戻し免除を受けたい【Q&A №503】


【質問の要旨】
特別受益の持ち戻し免除について

記載内容  特別受益 免除 相続対策

【ご質問内容】
司法書士のもとで生前贈与の手続き、および遺言書作成をしましたが、現在、他の相続人から遺産分割申立書が来ました。
生前贈与手続き、遺言書作成を、司法書士に確認し、これなら生前贈与を受けたものは守られると聞いていたのですが、今になって、みなし相続財産として組み込まれることが分かりました
また、特別受益の免除を証明をしておけば、生前贈与を受けたものは持ち戻ししなくてよいという説明は一切ありませんでした
この場合、泣き寝入りするしかないのでしょうか?
宜しくお願い致します。

(あずき)


【税金の問題と相続の問題は別個である】
相続税対策として、被相続人の生前に金銭を贈与することがありますが、このような対策は節税にはなるものの、遺産分割については特別受益になります。
税務と相続(民法)の違いの例としては、死亡保険金は税務上は遺産として扱われるのに、民法上は遺産としては扱われない等、多々あります。

【相続分割(民法)では生前贈与は遺産の先渡しと考える】
生前に法定相続人の一部の人が財産の贈与を受けている場合には、相続に関する法律である民法では、《特別受益》として遺産に持ち戻します
これは相続人間での公平を図る目的で定められたものであり、生前贈与は遺産の先渡しと考えるということです。
具体的なケースで言うと、死亡時の遺産額が4000万円だが、あなたが生前に暦年贈与で合計1000万円を被相続人からもらっていたというケースであれば、その生前贈与金額を遺産に加算した遺産総額(5000万円)を前提に、これを法定相続分で分割することになります。
相続人が2人であるとすると、あなたの相続分は2500万円ですが、既に生前に特別受益があります。
そのため、あなたとしては2500万円から生前受益分を差し引いた1500万円しか相続できないということになります。

【持ち戻し免除について】
ただ、被相続人が、明示でも黙示でもよいので、遺産に持ち戻ししなくてもよいという意思表示をしていたことが証明できれば、特別受益であっても遺産に持ち戻す必要はありません
そして、黙示の持戻し免除の意思表示があったか否かについては、贈与の内容及び価額、贈与の動機、被相続人との生活関係、相続人及び被相続人の職業、経済状態及び健康状態、他の相続人が受けた贈与の内容・価額及びこれについての持戻し免除の意思表示の有無など諸般の事情を考慮して判断することになります

具体的には、
①家業承継のため、特定の相続人に対して相続分以外に農地などの財産を相続させた。
②被相続人が生前贈与の見返りに利益を受けている(被相続人との同居のための居宅建設における土地使用の権限付与など)
③相続人に相続分以上の財産を必要とする特別な事情がある場合(病気などにより独立した生計を営むことが困難な相続人に対して生活保障を目的としてなされた贈与、妻の老後の生活を支えるための贈与など)
などの場合には持ち戻し免除を主張するといいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)

過去処分した不動産の売却代金調査と特別受益【Q&A №482】


【ご質問の要旨】
1 被相続人が事実婚時代に贈与等を行った場合、婚姻後に特別受益と扱われるか 2 被相続人が過去に売却した不動産の代金についての調査

記載内容 特別受益 不動産売却 取引履歴

【ご質問の内容】
被相続人は、結婚せずに20年以上同じ異性と暮らし、二人で家を購入し(名義がどうなっていたかは不明)共働きででローンの返済をしていましたが、異性が年金受給できる年齢に達する数年前に家を売り、ローン返済後の所得を持ち、異性の故郷のある土地へ二人で引越したのを機に結婚しました。
以来二人は働いていません。
私は被相続人の兄弟で、法定相続人です。
婚姻前の不動産所得は被相続人と配偶者の共用財産ですが、被相続人の財産分もあると思います。
こういった場合、調停か審判になった時、被相続人の不動産所得分として、配偶者の特別受益と見なされますか?
不動産所得額や財産分与があったのかなど、具体的には配偶者以外、誰もしらない状況です。
宜しくお願い致します。

(もっち)


【財産分与は相続の対象にならない】
ご質問の中に、「財産分与」という言葉が出てきます。
財産分与というのは、法律的には、離婚の際に、財産をその夫婦間で分ける手続です。
この財産分与が遺産で問題になることは少ないといえます。
なぜなら、財産分与は、離婚した妻(場合によれば夫)に対する支払いであり、その内容は婚姻後に夫婦で形成した財産の分割なので、仮に妻が財産分与を受けてもそれは実質的に自分の財産を戻してもらったということであり、その分は遺産にはならないからです。
また、そもそも離婚しているのですから、復縁しない限り、その妻が相続人となることもありません。
ご質問の被相続人は、離婚しているわけではなさそうなので、財産分与の有無を考える必要はないといえます。

【生前の財産譲渡は特別受益になる可能性がある】
今回のご質問で財産分与という趣旨は、おそらく、生前に配偶者が財産をもらっているのではないか、その分は遺産計算上、どうなるのかということでしょう。
そのように生前に財産をもらっているのであれば、それは特別受益として、遺産の分割時に遺産に含めて計算されることになります。

【今するべきことは、なによりも調査です】
被相続人の財産が、その生前、残された配偶者に移されているかどうかについては調査が必要です。
なぜなら、調停にせよ、裁判にせよ、被相続人の財産が配偶者に移されていることを認めてもらうためには、裏付となる証拠を集めなければならないからです。
そのため、早急に遺産調査を始める必要があるでしょう。
   《不動産の調査》
まず、かなり前に不動産を売ったようですが、その辺から調査を開始しましょう。
① 売却後に故郷に居を移したということですので、自宅を売却した可能性が高いと思われます。そこで、住所の移動状況を探るために、被相続人の戸籍附票を取寄せましょう。ご質問内容からは、売却した不動産は、故郷に移る前の住所地であることがうかがわれます。
② さらに、その不動産のある市町村から名寄帳を取寄せ (【コラム】名寄帳の取り寄せ参照)、当該不動産の登記上の所在地や、そのほかの不動産所有の有無等を調査しましょう。
③ 不動産の所有状況が判明した場合は、法務局でその不動産の登記を調べることで、被相続人がいつ、誰に売却したのかが分かります。

《金銭の動き・・取引履歴の調査》
前記不動産の調査によって不動産の売却時期が判明した場合には、続いて、金融機関の取引履歴を調べることが必要です。
どこの金融機関を調べるかは、支店名まで特定する必要があるので難しいところですが、不動産の登記に住宅ローンの抵当権などがついていた場合、その抵当権者である金融機関(あるいはその関連会社)から支店名を探り出し、その支店に対して取引履歴の照会を行うとよいでしょう。
そして、その取引履歴のうち、不動産売却当時の大きな入金があれば、それが売買代金の可能性が高いといえます。
その代金額が配偶者の共有持ち分と大きく異なる、あるいはその後引き出されているなどという事実があれば、その時点で財産が贈与等されていると理解して、その後の対応を考える必要があるでしょう。

【弁護士に相談してもいいでしょう】
ご質問からは、被相続人の遺産については、現在、ほとんど判明していないように見受けられます。
そこで、前記のような調査が必要不可欠となるわけですが、一方で、処分された不動産や金融機関の支店が判明するとは限りません
ただ、質問のケースに応じてどのような調査方法が最適なのか、調査の結果によりどのように対応するなかなどについて、相続に詳しいお近くの弁護士に相談することを考えられるといいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)

亡父と私が購入した兄名義のマンションは遺産か【Q&A No.467】


① 父が主な出資者、兄名義のマンションがあります。
  父がなくなり、次いで母もなくなりました。
  マンションの残債の一部に私の預金600万円が当てられています。
  この600万円は寄与分ですか?兄に返還請求できますか?
② 母が私名義で貯金していました。
  この貯金は生前贈与ですか?遺産ですか?

記載内容  特別受益 家賃 生前贈与

【ご質問内容①】
 亡父に預けていた預金(約600万:裏付け資料なし)を兄名義だが父が出資のマンションのローンの残債に充当する。
 私が無償で居住OK(兄は黙認)。
 亡き父が"いずれお前のものに!"(亡父)
 母も同じ発言。
 母が亡くなった今も、名義変更されておりません。
 この現状の中、亡母の相続協議では¥600万は"寄与"それとも、兄に"返還請求"?
 また、無償の家賃は"特別受益"それとも兄へ返還すべきものでしょうか?

【ご質問内容②】
 亡くなった母親から"お前名義で貯金しているからね。"と言われていました。
 この度の相続にあたって、資産管理を任されていた兄に、存在の確認と引き渡しを申し出たところ、"預かっているから引き渡すよ。"の返事がありました。
 この様な場合、この貯金は贈与=特別受益として扱うのか、手渡しが終わってないから親の遺産だとして扱うのかが判りません。
 どのように判定すべきかをご教授願います。

(泉南のくま)


①について

【マンションは誰のものか?】
 まず、マンションは誰のものかという点を確認しておく必要があります。
 お金を出したのがお父さんであっても、名義がお兄さんだということであれば、原則、お兄さんの所有とみていいでしょう。
 この場合、お父さんが出資した金額がお兄さんの生前贈与となり、特別受益として遺産に持ち戻されることになります。

【あなたがお父さんに預けていた600万円の扱い】
 あなたがお父さんに600万円を預けていたようですが、その証明はできないということであれば、あなたがその600万円についてお兄さんに返還を求めることはむずかしいでしょう。
 また、マンションがお父さんのものではないという前提であれば、あなたの寄与分にはなる余地はありません
 ただ、その600万円についてもお父さんからお兄さんにわたった(お父さんが出資した金額だ)という点が証明できるのであれば、その分もお父さんからお兄さんへの生前贈与(=特別受益)として考え、その600万円も遺産に持ち戻すことになります。

【マンションの所有権をもらうことはできないか?】
 お父さんがマンションを《いずれお前のものに!》と言われたようですが、マンションがお父さんの遺産であれば、お父さんから生前贈与でもらったと主張できる可能性がなくはありません。
 しかし、最初に述べたようにマンションはお兄さんのものという前提に立てば、お父さんが何を言ったかにかかわらず、あなたがそのマンションの所有権を取得することはできないということになります。

【無償利用は特別受益になるか】
 あなたが利用しているのはお兄さんのマンションであり、お父さんの遺産ではありません。
 そのため、その無償使用はお兄さんとの関係で問題になるとしても、お父さんの遺産で問題になることはなく、家賃相当分が特別受益になることはありません。

【弁護士に相談が必要なケース】
 今回はお兄さん名義であることから、マンションはお兄さん所有として考えていきました。
 しかし、お父さんがマンションを《いずれお前のものに!》と言ったということは、お父さんとしては自分の所有物であることを前提にしていたと考えることも可能です。
 前提となる事実関係が異なれば結論も異なります。
 本件については、具体的な事実を説明したうえで、相続に詳しい弁護士に相談され、マンションがお父さんの所有となる余地はないかどうか検討してもらうこと、また、その場合にどのような寄与分特別寄与や特別受益がどのようになるのか、回答を得られることをお勧めします。

<strong②について
【お母さんがあなた名義でしていた預金について】
 お母さんがあなた名義でしていた預金については、あなたがその通帳や証書、取引印をもらっていない限り、原則、お母さんの遺産になります。
 ただ、お兄さんがお前に渡すよということを言っており、全相続人がそれに異議がないのなら、その預金分はお母さんの遺産ではなく、あなたがお母さんから生前贈与(=特別受益)されたものとして扱うことになるでしょう。

(弁護士 大澤龍司)

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