大澤龍司法律事務所 相続問題無料相談ブログ

アパートの生前贈与【Q&A №587】


【質問の要旨】
父からアパート(建物のみ)を生前贈与した。
父の死亡後、妹から土地を含めた評価額を元に計算した金額を特別受益として請求されたが、どこまで特別受益とみなされるのか。

記載内容  アパート建物 生前贈与 評価額

【ご質問内容】
 平成23年に父より昭和63年に木造建築されたアパート建物のみ生前贈与を受け登記し、アパート経営をしておりましたが、27年6月に父が他界しました。
 23年固定資産税評価額は、約二百万円、他界した27年は約百五十万円です。
 相続人は私と妹の2人ですが、今になって、妹よりアパートの特別受益を主張しており、その評価は、収益還元法によれば、52,950,000円と固定資産税評価額とは、かけ離れた金額を請求されています。
 その根拠は、土地も含めた価格のようで、年額収入4,236,000円、投資家期待利回り8%によるものだそうです。しかし、土地は既に遺産分割により相続登記が長男である私に完了しております。
 地元の不動産屋によれば、土地と建物を分けての評価は難しく言われております。
本来遺産分割におけるアパート建物だけの特別受益評価額は、どのようになるのでしょうか?
 お忙しいところ、恐縮ではございますが、出来るだけ早急にご回答いただければありがたいです。よろしくお願い申し上げます。

(キンメダイ)


(敬称略で記載しております。ご了解ください)

【遺産分割協議が完了しているのかどうかで結論が異なる】
 父は、生前にあなたにアパート建物を贈与したとのことですので、この生前贈与分は特別受益として遺産に持ち戻して、遺産分割をするべきものです。
 ただ、質問には《土地は遺産分割によってあなたに相続登記されている》との趣旨の記載があります。
 もし、既に父の遺産全部について遺産分割協議が終了しているのであれば、今更、妹としては特別受益分を遺産に持ち戻せという主張はできません。
 妹の立場としては、遺産分割合意は錯誤や欺罔によるものであるとして、遺産分割協議の無効を主張するしかないということになります。

次に、遺産のうち一部(今回でいえば、アパートの敷地)のみの遺産分割合意をし、それに基づき登記を移転しただけで、預貯金や株式等他の遺産についてはまだ遺産分割協議が終了していないという場合には、いまだ特別受益の主張は可能ということになります。

【建物の評価は固定資産評価額が原則、ただし使用借権の上乗せもありうる】
 仮に遺産分割がすべて終了していないということであれば、特別受益が問題になりえます。
 その際の建物自体の評価は、遺産分割調停などでは固定資産評価額でされることが多いです。
 もし、違う額を主張するのであれば、その証明として鑑定等が必要になります。
 問題は建物額だけではなく、土地の使用権も生前贈与されたことになり、その価額を加算する必要があるということです。
 土地の賃料などを支払っていないということなら、建物底地の使用借権の贈与があったとされることになります。
 使用借権は土地価額の10~15%の場合が多いです。
 もし、あなたが賃料を支払っていたというのであれば、借地権ということになり、底地価額の40~60%を加算する必要があります。

【評価の時点及び賃料はどうなるか】
 評価の時点は相続開始時の建物価額や底地の価額を前提として計算します。
 なお、生前贈与を受けたのちの賃料収入などは、建物および底地利用権に含まれていますので、原則として、別途請求されることはありません。

(弁護士 岡井理紗)

特別受益だと認めさせたい【Q&A №577】


【質問の要旨】
①子や孫への生前贈与は特別受益にあたるか?
②預貯金のみを相続したいが、どのように協議を進めればいいか?

記載内容  特別受益 生前贈与 調停

【ご質問内容】
 父が被相続人。相続人は私・兄・妹です。
 兄は兼業農家の跡取りとして、遺産全部を受け継いで当然と考えており、妹も同意しています。
 私はこれまで、父からまとまった金銭を受け取ったことが全くなく、この相続では預貯金の3分1を受け取ることを希望しています。

①父が生前、兄や兄の子(孫)に金銭を渡したことは、特別受益にあたるでしょうか。
 特別受益にあたるなら、相続遺産に加えたいですが、妥当でしょうか。
 心配なのは兄がすんなり認めるかです。認めさせる方法を教えて下さい。

②遺産分割協議は駆け引きの場だと思います。
 どんなことに注意すればいいでしょうか。
 大切なことを教えてください。

(のえる)

【あなたの申し出はどう評価できるか】
 あなたの相続分は3分の1ですが、それは遺産全部について、その3分の1です。
 遺産の中には不動産もあると思いますが、その不動産についてもあなたは3分の1の相続分があります。
 もし、遺産の中に不動産があるのに、あなたが預貯金の3分の1のみの相続で我慢するというのであれば、不動産については法定相続分を取得しないという大幅な譲歩をしていることになります。
 お兄さんとしては決して損な話ではありません。

【生前引渡分の扱い】
 生前にお父さんがお兄さんに金銭を渡していたのであれば、おそらく生前贈与に該当するでしょうから、遺産分割の際には、特別受益として遺産に持ち戻される可能性が高いです。
 ただ、お孫さんについての生前贈与ですが、お兄さんとその子であるお孫さんとは、別の人格ですので、お兄さんの特別受益と見なされる可能性は低いでしょう。

【お兄さんはすんなりとは認めない可能性が高い】
 あなたの提案する預貯金の3分の1の相続でお兄さんがすんなりと認めるかという点についても述べます。
 都会では相続をお金で割り切ることが多く、あなたの提案でお兄さんが納得することも多いでしょう。
 しかし、郊外などで農業をされているような方については、跡取りが遺産全部を取得するものだという考えを持つ方が多く、又、周囲の親族もそのような方向で圧力をかけてくるということも多いようです。
 このような地域性に加えて、妹さんが遺産はいらないという意向であるなら、お兄さんとしては《あなたにだけなぜ遺産を与えるのか》ということで、あなたの提案に難色を示す可能性が高いと思われます。
 又、お兄さんの立場から言えば、お父さんの農業を手伝ったので、特別寄与として遺産から優先的に支払いをせよと主張することも考えられます。

【調停制度の利用をお勧めします】
 このように本来は当然遺産分割するべきなのに、遺産分割をしないというようなケースでは調停制度を利用されるといいでしょう。
 調停はお兄さんの住んでいる地域の家庭裁判所に申立をします。
 手続き等がわからないのであれば、家庭裁判所に行って、どのように申立をすればいいかをお聞きになるといいでしょう。

 調停のいいところは、調停委員という第三者がお兄さんとあなたの話の双方を聞き、円満な解決の助けをしてくれるということです。
 裁判所で第三者が法律を前提に解決しますので、お兄さんとしても納得せざるを得ない場合が多いですし、あなたのように預貯金の3分の1でいいということであれば、調停委員としてもお兄さんを鋭意説得してくれるものと思います。

【調停での対応のコツ】
 調停のコツとしては、最初は全部の財産の3分の1を請求し、その後、調停委員の説得で預貯金の3分の1に応じる形をとるといいでしょう。
 調停は互いに譲り合って解決するという制度ですので、最初に譲ったところから出発すると更なる譲歩を求めれらますので、この点はよく覚えておかれるといいでしょう。

【調停は裁判ではない】
 なお、お兄さんや親戚の方などは、《裁判沙汰にして》などというかもしれません。
 しかし、調停は裁判ではなく、円満な解決を望む制度です。
 相続についての話し合いは本当に難しく、私(弁護士大澤)の経験でも話し合いで解決することは本当に少ないです。
 お兄さんがあなたの希望に従った解決をしないのなら、早期に調停を申し立てることを考えるといいでしょう。

【弁護士の知恵も借りる】
 なお、あなたの遺産問題で何が問題になるかを知っておくためにも相続に詳しい弁護士に相談するといいでしょう。
 何が問題であり、あなたが本来はどの程度の財産をもらえるのかを教えてくれるはずです。
 あなたの考えで間違っているところはないかどうか、弁護士の眼からみれば何が問題点になるのか、それらを知った上で、調停の申立をして、問題を解決するのがベストだと思います。

(弁護士 大澤龍司)

内妻が受けた贈与の立証【Q&A No.468】


 長いあいだ一緒に暮らした彼が亡くなる直前に私に現金を渡してくれました。
 彼の遠い親戚で相続人に当たる人がでてきて、お金の話ばかりします。
 そんな人に法的に権利があって、彼の遺志が踏みにじられるのが悔しいです。

記載内容  内縁の妻 生前贈与 預金引き出し

【ご質問の詳細】
 肺ガンの余命宣告された彼が、亡くなる前に現金を渡してくれました。
 長い間一緒に暮らし、信頼し合える良きパートナーで、生活費や税金支払い等もその都度頼まれて私がカードで降ろしていました。
 彼の母親の介護も私が引き受けていましたが、後を追う様に数日後、亡くなりました。
 贈与なる最後の預金引出しも私が行い、手渡しで彼から現金を頂きました。
 二人の火葬を行い、火葬費や治療費もその中から支払っています。
 やがて遠い親戚の相続人(50年以上も会っていない従兄弟)が現れ、預金の流れや資産の事ばかり気にしています。
 病床で話合い、互いに納得して頂いた現金ですが、正当な贈与だと確信を持って良いでしょうか?
 私宛のメール(エンディングノートのような内容)に同様の記載があります。
 自分が居なくなった後の生活を心配してくれる感謝の気持が大きく、彼の手で現金の重みを感じ取ってもらってから受け取りたかった事が真実です。
 生前に司法書士に依頼するように言われましたが、在宅緩和ケアで付きっきりの看病の中、法的な手続きする事など考えにも及びませんでした。
 何より相続人となる従兄弟が、故人を偲ぶより、資産の事ばかり気にしている事が腹立たしく、そんな人が法的には権利があり、彼の遺志まで踏みにじられてしまうのは無念でなりません。
 今後どう対処すれば良いでしょうか?
 どうか宜しくお願い致します。

(ラベル)


【内縁の妻は相続では保護されない】
 質問から見ると、あなたは《内縁の妻》という立場になります。
 内縁の妻には相続分はありません。
 もし、内縁関係にあるのなら、彼に遺言書を作成してもらう、あるいは贈与契約書を作成すべきでした。
 あなたとしては相続という主張はできず、生前にあなたに対する贈与があったのかどうかが証明できるかどうかが焦点になります。

【残っている彼の物は相続人に引き渡す必要があります】
 これまで彼に全く見向きも付き合いもなかった親戚が急にお金のことにこだわってくると、今まで介護に苦労されていたあなたが腹立たしく思われる気持ちはよくわかります。

 しかし、相手方のいとこが相続人(正確には、彼の相続人であるお母さんの相続人)であれば、彼が残した遺産は衣類や家具から預金通帳まで、すべて相続人であるそのいとこに権利が帰属します。
 そのため、法的には相続人から「彼の遺品である預金通帳などを渡せ」と言われれば拒否するのはむずかしいでしょう。

【贈与を裏付ける証拠がどれほどあるかの勝負です】
 あなたが彼の死亡直前に受けた生前贈与ですが、引き出し当時のカルテなどから彼がまだ正常な判断能力を有していたのであれば、贈与として認められる余地があります。
 問題は、彼があなたに贈与したという点をどのように証明するかということです。
 彼からのメールに贈与する理由や動機などが記載されていればそれも証拠となり得ると思われます。
 現時点で彼は死んでいるのですから、残された証拠で反論するしかありません。
 もし、相手方が弁護士を立てて本格的な返還請求を行う可能性が高いのであれば、あなたも早めに弁護士に相談し、どのような手段で贈与を立証できるのか対策を立てておかれるといいでしょう

(弁護士 大澤龍司)

亡父と私が購入した兄名義のマンションは遺産か【Q&A No.467】


① 父が主な出資者、兄名義のマンションがあります。
  父がなくなり、次いで母もなくなりました。
  マンションの残債の一部に私の預金600万円が当てられています。
  この600万円は寄与分ですか?兄に返還請求できますか?
② 母が私名義で貯金していました。
  この貯金は生前贈与ですか?遺産ですか?

記載内容  特別受益 家賃 生前贈与

【ご質問内容①】
 亡父に預けていた預金(約600万:裏付け資料なし)を兄名義だが父が出資のマンションのローンの残債に充当する。
 私が無償で居住OK(兄は黙認)。
 亡き父が"いずれお前のものに!"(亡父)
 母も同じ発言。
 母が亡くなった今も、名義変更されておりません。
 この現状の中、亡母の相続協議では¥600万は"寄与"それとも、兄に"返還請求"?
 また、無償の家賃は"特別受益"それとも兄へ返還すべきものでしょうか?

【ご質問内容②】
 亡くなった母親から"お前名義で貯金しているからね。"と言われていました。
 この度の相続にあたって、資産管理を任されていた兄に、存在の確認と引き渡しを申し出たところ、"預かっているから引き渡すよ。"の返事がありました。
 この様な場合、この貯金は贈与=特別受益として扱うのか、手渡しが終わってないから親の遺産だとして扱うのかが判りません。
 どのように判定すべきかをご教授願います。

(泉南のくま)


①について

【マンションは誰のものか?】
 まず、マンションは誰のものかという点を確認しておく必要があります。
 お金を出したのがお父さんであっても、名義がお兄さんだということであれば、原則、お兄さんの所有とみていいでしょう。
 この場合、お父さんが出資した金額がお兄さんの生前贈与となり、特別受益として遺産に持ち戻されることになります。

【あなたがお父さんに預けていた600万円の扱い】
 あなたがお父さんに600万円を預けていたようですが、その証明はできないということであれば、あなたがその600万円についてお兄さんに返還を求めることはむずかしいでしょう。
 また、マンションがお父さんのものではないという前提であれば、あなたの寄与分にはなる余地はありません
 ただ、その600万円についてもお父さんからお兄さんにわたった(お父さんが出資した金額だ)という点が証明できるのであれば、その分もお父さんからお兄さんへの生前贈与(=特別受益)として考え、その600万円も遺産に持ち戻すことになります。

【マンションの所有権をもらうことはできないか?】
 お父さんがマンションを《いずれお前のものに!》と言われたようですが、マンションがお父さんの遺産であれば、お父さんから生前贈与でもらったと主張できる可能性がなくはありません。
 しかし、最初に述べたようにマンションはお兄さんのものという前提に立てば、お父さんが何を言ったかにかかわらず、あなたがそのマンションの所有権を取得することはできないということになります。

【無償利用は特別受益になるか】
 あなたが利用しているのはお兄さんのマンションであり、お父さんの遺産ではありません。
 そのため、その無償使用はお兄さんとの関係で問題になるとしても、お父さんの遺産で問題になることはなく、家賃相当分が特別受益になることはありません。

【弁護士に相談が必要なケース】
 今回はお兄さん名義であることから、マンションはお兄さん所有として考えていきました。
 しかし、お父さんがマンションを《いずれお前のものに!》と言ったということは、お父さんとしては自分の所有物であることを前提にしていたと考えることも可能です。
 前提となる事実関係が異なれば結論も異なります。
 本件については、具体的な事実を説明したうえで、相続に詳しい弁護士に相談され、マンションがお父さんの所有となる余地はないかどうか検討してもらうこと、また、その場合にどのような寄与分特別寄与や特別受益がどのようになるのか、回答を得られることをお勧めします。

<strong②について
【お母さんがあなた名義でしていた預金について】
 お母さんがあなた名義でしていた預金については、あなたがその通帳や証書、取引印をもらっていない限り、原則、お母さんの遺産になります。
 ただ、お兄さんがお前に渡すよということを言っており、全相続人がそれに異議がないのなら、その預金分はお母さんの遺産ではなく、あなたがお母さんから生前贈与(=特別受益)されたものとして扱うことになるでしょう。

(弁護士 大澤龍司)

★20年以上前の不正出金【Q&A №456】


【質問のまとめ】
17年前に亡くなった祖母の遺産であったはずの預貯金から、不正出金したと思われる伯父の妻からお金を取り返すことはできますか?

記載内容  不正出金 生前贈与 時効

【ご質問内容】
 17年前に亡くなった祖母の遺産のことでご相談します。
 祖母は戦死した祖父の遺族年金受給し、亡くなる3年前に施設入所(世帯分離)。
 共同相続人の伯父は7年前に他界。
 母は現在、障害のため出廷不可。
 先日、伯母(伯父の妻)より祖母の郵貯の残高証明が送られてきました。
 残額は247円。
 手紙には、以下の主張が書かれておりました。
1.祖母の入所前に、私に通帳と印鑑を渡した。生前だから法的に問題がない(公正証書も通帳もなく、使途不明。)
2.私の父の借入書が残っていたため、それで相殺する(伯母の誤認識で完済済み。)
3.当時母と私に預金があるため、相続は不要

 3回忌の連絡すらなく、今回初めて生前贈与の話を聞きました。
 伯母は表見相続人であり、真正相続人である母の相続権を侵害しているのではないでしょうか?この内容は、相続権回復請求できるのでしょうか?
 自身が不正を働いている事実をきちんと認識して情報を開示し、分割協議に応じてもらうにはどうしたらよいでしょうか?
 祖母が入所する前に金額は1600万程度あったそうです。
 伯母は我が家の三文判を自分で購入していました。勝手に委任状を作成されたのか、農協の口座も解約されていました。
 伯母の父は出征せず、戦争で苦労していません。生涯一度も働いたことのないのに、母に祖母が亡くなったら金をとりに来ると罵ったそうです。
 お知恵を拝借したく、どなたかお願いします。

(hiro)


【相続回復請求はできない】
 相続回復請求ができないかという点にお答えします。
 法律で相続回復請求権が定められています(民法884条)が、この権利は戸籍上では相続人だが、実際は相続人でない人表見相続人といいます)が遺産を引き継いだ場合に、本当の相続人真正相続人といいます)が引き継いだ遺産を返せという権利です。
 例えば、被相続人である養親の同意もなく、勝手に養子縁組届出をした養子が遺産を全部取得した場合、他の相続人(例えば被相続人の兄弟)から遺産を返せという請求をする権利です。
 今回の質問の場合、伯母さんは戸籍上の相続人ではありませんので、遺産を不正に取得していたとしても相続回復請求をすることはできません
 ただ、次にのべるような手段が考えられます。

【お祖母さんに無断出金で着服の場合は、消滅時効が問題となる】
 もし、お祖母さんの生前に、伯母さんがお祖母さんから預かった預貯金通帳から無断でお金を出金し、着服したというケースで考えてみます。
 この場合、お祖母さんには伯母さんに対する不当利得返還請求権や不法行為に基づく損害賠償請求権が発生します。
 お祖母さんが死んだ場合には、これらの請求権は法定相続人が法定相続分で相続します。
 お祖母さんに配偶者はなく、子が叔父さんとあなたのお母さんだけだとすると、お母さんの法定相続分は2分の1であり、あなたのお母さんは伯母さんに対する返還請求権や損害賠償請求権の2分の1を相続で取得したことになります。
 ただ、お祖母さんの死亡したのが17年前のことだとすると、伯母さんの着服は更にそれ以前のことになりますので時効で消滅しているかどうかが問題となります。
 不当利得返還請求権であれば消滅時効は10年ですので、既に時効で請求できません。
 そのため、請求するとすれば不法行為に基づく損害賠償請求でしょう。
 この場合は着服という不法行為があった日から20年間で時効になりますので、着服行為から20年以内であれば請求が可能です。

【お祖母さんが生前贈与した場合】
 通常、多額の生前贈与があった場合には、遺留分減殺請求をすることができる場合が多いです。
 ただ、遺留分減殺請求権は、相続開始の時から10年を経過したときは消滅してしまいますので、本件の場合は、減殺請求はできないという結論になります。

【現在、するべき作業は何か】
 以上に述べたように、相続回復請求はできませんし、遺留分減殺請求もできません。
 そのため、法的に請求をするとなれば、不法行為に基づく損害賠償請求しかありません。
 伯母さんがいつ着服したのか(この点は時効に関連します)、また、どこの金融機関のどの支店からいくらを出金したのか、果たして伯母さんが取り込んだといえるのか(これらのの点は不法行為の証明に必要です)も確認し、その裏付資料も入手しておく必要があります。
 これらの確認のためにはお祖母さんの金融機関に問い合わせをする必要がありますが、10年以上経過した分については多くの金融機関が関係資料を処分していることも多く、その点の解明ができない可能性も高いでしょう。

【分割協議に応じてもらえるかどうか・・】
 本来ならば、伯母さんが遺産総額を明らかにし、着服した額も明らかにしてくれればいいのでしょうが、現実問題としてはそのような対応をすることは期待できないでしょう。
 結局は前項に述べたように証拠を示して、追及していくしかないということになるでしょう。
 ただ、いずれにせよ、多くの法的な問題点があり、また、資料収集の必要性もありますので、できれば相続問題に詳しい弁護士に相談し、どのような手段が取れるのかを確認されるといいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)

★相続放棄と遺留分【Q&A №447】


生前贈与を受けた人が相続放棄をした場合,特別受益はどうなりますか?
また,生前贈与を受けた人が相続放棄して,遺留分減殺請求をされた場合はどうですか?

記載内容  生前贈与 遺留分 相続放棄

【質問詳細】
被相続人(父)、相続人A(長女)B(次女)C(長男・末)がいます。
Aは生前に1,000万、B・Cは500万ずつ贈与を受けています。
父の遺産は現金500万、不動産1000万です。
Aは上記1,000万円の他に、父が生前の2年前にAの子二人(孫にあたる、共に成人)
に100万円ずつ生活支援のお礼としてお金を渡したこと、それ以前に色々な事象にてお金(総額で2~300万円か)を貰っていたことを考慮し、遺産を放棄することにしました。
相続人BとCは父生前のA及び子に対する過大な贈与を受けたことが不満で、遺産1,500万円に各々の生前贈与(特別受益)を加算し、分配すべきと主張しています。
Aとして相続を放棄するのに、差額をB・Cに払う義務あるのですか?
併せてB・Cの遺留分について減殺請求権があった場合どうなりますか?

(goo)


【相続放棄すると特別受益の問題は発生しない  Aさんが、お父さんの遺産について相続放棄をする前提で回答していきます。
 相続放棄をすると、Aさんは法定相続人ではなくなり、遺産分割の問題は発生しません。
 遺産分割はBさんとCさんとの間でするだけになります。
 特別受益は、遺産分割の際、法定相続人に生前贈与分などがある場合にその贈与分を遺産に持ち戻すという制度です。
 しかし、その生前贈与を受けた人が法定相続人でなくなれば、特別受益の問題は発生しません

【相続放棄しても遺留分の問題は発生する
 相続放棄をした場合でも、その人が多額の生前贈与を受けていたのであれば、他の法定相続人(正確に言えば遺留分権利者)から遺留分減殺請求を受ける場合もありえます

例えば、生前に1億円の贈与を受けた人がいたため、遺産が0円であったような場合で、その贈与を受けた人が相続放棄をするケースを考えてみましょう。
 贈与を受けた人は相続放棄をしているのですから、特別受益の問題は発生しません。
 しかし、遺留分は法定相続人にある程度の遺産(法定相続分の半分程度)だけは渡るようにしようという制度ですので、生前贈与を受けた人は請求に応じて、遺留分に該当する遺産を渡さなければならないということになります。

本件のケースでは遺留分減殺請求はできない
 遺産は法定相続人AさんとBさん、Cさんに生前贈与計2000万円遺産が計1500万円その他に200万円と2~300万円の生前贈与分があるとの前提ですので、遺留分計算の基礎となる遺産額は4000万円になります。
 Bさんとしては生前贈与分500万円と今回の遺産分の半額である750万円の1250万円がお父さんの遺産から入ることになります。
 Aさんの相続放棄によって、Bさん及びCさんの遺留分は本来の法定相続分2分の1の半分(4分の1)になっています。そうするとBさんCさんのそれぞれの遺留分は1000万円となります。

(Bさんの)得た額 遺留分が侵害されていませんので、Aさんが遺留分減殺請求をされることは法的にはないケースでしょう。

生前贈与の立証について【Q&A №429】


 贈与を成立させるために振込の記録が必要で、贈与者の口座から引き落としの記録はあるが受領者側に振り込まれた記録がないと相続税の対象にされてしまうという記事を目にしますが そもそも、だったらお金をもらってはいない つまり、それが死ぬ10年も前のことで100万円だとしたらどうでしょう。

記載内容  生前贈与 相続税 振込

(dronjo)


【今回の問題は相続とは直接関係ありませんが・・・】
 今回の質問は贈与の問題ですが、贈与が認められないと遺産として扱われるのかということも記載されています。
 そのような財産が遺産として扱われるのか、生前贈与とされるのかという2つの面から考えていきます。

【税務上の扱いは?】
 税務署としては、被相続人であるお父さんの口座から出金されている以上、出金分を預貯金として課税できません。
 ただ、その出金分が手元に残っているのか、誰に行ったのかを調べることになります。
 手元に残っておれば遺産として課税対象にするでしょうし、誰かがもらっておれば贈与税の課税対象にするでしょう。
 はっきりしない場合には、税務署としては、その出金がかなり以前にされた(例えば質問にあるように10年も前に出金された)のであれば、お父さんが使ったのかもしれないとしてそれ以上の追及はしないでしょう。
 しかし、つい最近ということであれば手元に残っている遺産として課税対象にするべく調査をし、税金を増やす努力するでしょう。
 それ以上の詳しい話は、専門家である税理士にお聞きになられた方がいいでしょう。

【特別受益とされるかどうか】
 次に相続 ― 法律の問題から言えば、そのようなものが特別受益かどうかという面から考えていきましょう。
 特別受益を証明するためには、ある金額が被相続人預貯金から出金されているだけでは足りず、それが被相続人以外の人に渡っていることを証明する必要があります。
 他の者に渡されているという点が証明できなければ、《贈与者が使っただけじゃないか》という可能性も否定できず、特別受益の主張は認められないことになります。
 ただ、出金が窓口で現金出金されている場合には、払戻票が作成されています。
 そのコピーを取り寄せたところ、被相続人の筆跡ではなく、法定相続人の誰かの筆跡であるとすれば、その者が特別受益を得た可能性が高くなります。
 同様に払戻伝票に被相続人の代理人として法定相続人の名前が記載されておれば、その者が被相続人に金銭を渡したということがない限り、特別受益として扱われる可能性が高くなります。
 ただ、注意するべきことは、特別受益かどうかは、払戻票の筆跡等だけで決定されるものではないということです。
 裁判になれば、その他の事情(例えば、その出金当時、法定相続人が金もないのに車を買ったとか等・・・)も考慮して判断されることだという点を理解しておくといいでしょう。

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