大澤龍司法律事務所 相続問題無料相談ブログ

大叔母から預金の引き出しを頼まれた【Q&A №427】 0427


 私の母の叔母は高齢で一人で住んでいました。
 その叔母が脳梗塞で入院しました。
 私は今叔母の面倒を見ています。
 叔母は、私に私に委任状を書いたから、代理人として叔母の普通預金と定額預金のお金を受け取って病院の支払いなどに使ってほしいと言います。
 叔母の脳梗塞はさらに進んでいます。
 普通預金と定額と合わせるとかなりの額です。
 叔母に何かあった場合、相続人は高齢で意識のはっきりしていない母になります。
 私が叔母の委任状で代理人としてその貯金を受け取り、病院の支払いや、叔母の葬儀に使ってお金が残った場合、母にそのお金を返さないと税金もかかってくるでしょうし、叔母が言うように受け取るべきか迷っています。

記載内容  代理人 財産管理 脳梗塞

(あきら)


【もらうのか、預かるのか?】
 「委任状を書いたから、代理人として叔母の普通預金と定額預金のお金を受け取って病院の支払いなどに使ってほしい」とお母さんの叔母さん(あなたからすれば大叔母)が言っておられるようですが、大叔母さんは払い戻しを受けた金銭をあなたにあげる(贈与)気持ちなのか、それとも預かって欲しいというだけなのでしょうか。
 その点に関する大叔母さんの意志をはっきりと確認しておく必要があります。
 質問からははっきりとしませんので、場合分けして回答します。

【預かる場合の対処法】
 大叔母さんとしては、あなたに財産をあげるのではなく、管理してほしいということであれば、あなたは金銭の保管者になります。
 ただ、金銭についてはトラブルがつきものです。
 大叔母さんの預貯金を全部解約して、あなたの名義で預貯金するような場合には、《大叔母をだまして財産を取り込んだ》などという影口が聞こえそうです。
 法律以前の問題ですが、もしあなたの名義の預金口座を作るにしても、必要最小限の金額を移動するだけにするのがいいでしょう。
 どうしても預貯金全額を預からなければならない必要性があるというのなら、あなた自身の口座とは別に、大叔母さんから預かった分だけの独自の口座を作り、その分からは自分の用途に使わないようにする・・大叔母さんから預かった財産とあなたの独自の財産をはっきり区別する必要があります。
 なお、大叔母さんが認知症など、意思能力が乏しくて、《金銭の管理ができないような状態》だから預からなければならないというのであれば、成年後見人の選任を考えるべきでしょう。

【預かった場合の相続との関係】
 預かっている最中に、大叔母さんが死亡した場合には相続が発生します。
 その場合には、あなたが預かった金銭の残金は大叔母さんの相続人(あなたのお母さん)に渡すことになります。
 預かっているだけであれば、預かった金銭は相続人に渡すということになるだけですので、相続税の問題は発生しません。
 ただ、あなたの名義に移したということで、贈与があったのではないかと税務署から疑われることも考えておくといいでしょう。
 そのため、預かったということをはっきりとさせるために、金銭管理の方法や解約、返還等についてきっちりとした契約書を作成するとともに、あなたの分とは異なる独自の財産であるとして管理をしておく必要があります。

【もらう場合は贈与税がかかる】
 もし、大叔母さんの意志があなたにあげるというのであれば、贈与になります。
 病院の費用を支払うという負担付の贈与となりますし、更には大叔母さんの面倒を見るという負担付の贈与も考えられますので、その点についても大叔母さんの意志をはっきりと確認する必要があるでしょう。
 贈与の場合には贈与税の申告が必要ですが、法定相続人に対して金銭を渡す必要はありません。
 但し、法定相続人から遺留分減殺請求されることもありますので、ご留意ください。


脳梗塞の父から後妻が生前贈与を受けた【Q&A №398】 0398


 

【質問の要旨】

脳梗塞で介護状態だった父が死亡。
脳梗塞で倒れた後、義母の連れ子と養子縁組を行い、義母と連れ子名義の5000万円の土地建物を、父の預金から生前贈与で購入。
遺産分割の際、私の相続分は預金400万円のうち100万円と言われたが、遺留分減殺請求はできるか。


【ご質問内容】

7年程前に重度の脳梗塞で倒れ介護生活を送っていた父が、半年前に亡くなりました。父は再婚で私には継母なのですが、その継母には娘(継母の連れ子)がいます。
その連れ子と父が、脳梗塞で倒れた翌月に養子縁組をし、その半年後には継母と連れ子の名義で土地と家屋を購入するために、父の預金から継母と連れ子に現金を生前贈与していた、という事実を父が亡くなった数日後に初めて知りました。連れ子が嫁いでからの父の再婚だったので、連れ子は私や父と暮らした事もありません。父は重度でしたので半身麻痺、言語障害、記憶障害などがありました。連れ子は弁護士をたてて手続きをしたと言っています。そして私が7年間知らなかったという事を、自分も知らなかった事を知らなかったと、とぼけています。継母とは口をきいていません。
土地と家屋は合わせて約5000万一括払いです。継母と連れ子でどんな割合で贈与してもったのかわかりませんが、この度の遺産分割で「遺産は預金400万で、あなたの分は100万」と言われました。あまりに不公平ですし、当時の父の状況からは考えられない疑問も多々あります。持ち戻し及びこの場合、遺留分減殺請求はできますか?

(にこりん)

【本件の問題点は大きく2つ】

本件では後に述べるように、
①お父さんの意思能力(判断能力)がなく無効ではないか。
②判断能力があったとしても、遺留分減殺請求ができないか。
という2つの問題があると整理できます。

【判断能力がなかった場合(贈与及び養子縁組無効を主張)】

今回の最大の問題は、まず生前贈与あるいは養子縁組した時にお父さんに意思能力があったかという点です。
もし、意思能力がなかった場合はこれらの行為が無効となりますので、贈与された金銭の返還を請求でき、また、養子縁組も無効となるため、後妻の娘(父の養子)が法定相続人でなくなります。
お父さんは脳梗塞で言語障害や記憶障害があったというのであれば、養子縁組及び贈与当時、入院していた病院や入所していた施設のカルテ、介護記録等を取り寄せされて、お父さんの意思能力がどの程度であったかを判断されるといいでしょう。
意思能力の有無に関する検査として有名なのは長谷川式認知スケールという検査(30点満点)です。
カルテにそのテスト結果が記載され、その点数が10点以下であれば、意思能力はなかったとされ、養子縁組や贈与が無効とされる可能性が高くなります。
贈与が無効になった場合に返還請求できる金額は、(推測を含みますが)次のように計算されます。

(計算式)
 法定相続分 後妻(継母)・・・2分の1
       あなた(子)・・・2分の1
       後妻の娘 ・・・相続分なし

5000万円の贈与が後妻に3000万円、娘に2000万円の割合だった場合

① 後妻に対しては、後妻の相続分が2分の1あるため、贈与額3000万円の2分の1の限度、1500万円を返還請求できる
② 後妻の娘に対しては、娘の相続分がゼロのため、贈与額2000万円全額を返還請求できる

【判断能力があった場合(遺留分減殺請求)】

次に、父に判断能力があった場合、あなたは贈与を受けた後妻(継母)や連れ子に対して遺留分減殺請求が可能です。
遺留分減殺請求は、被相続人の有していた財産のうち、最低限度の相続分を保障するため、一定限度で法定相続人(子や父母等)が贈与あるいは遺言で遺贈された財産を取り返すことができる制度です。

(遺留分減殺請求の計算例)
(遺留分の計算)
配偶者(後妻)・・・法定相続分2分の1
後妻の娘(養子)・・・法定相続分4分の1
あなた    ・・・法定相続分4分の1

あなたの遺留分は法定相続分4分の1のさらに2分の1、つまり8分の1が遺留分と計算されます。

(取り戻す遺産の計算)
遺留分で取り戻す財産の額は、現在の遺産(預金400万円)に生前贈与5000万円を持ち戻し加算した計5400万円になります。
あなたの遺留分はこの8分の1、つまり675万円です。
そうなると、あなたは現存する遺産400万円全額と、さらに加えて不足額の275万円を後妻及びその娘(父の養子)に遺留分減殺請求することができます。

【他の主張として、贈与の意思がなかったということも・・】

これ以外の主張として、お父さんに仮に意思能力があったとしても、贈与の意思はなかったということも可能かもしれません。
銀行の払い戻し伝票あるいは送金書類の筆跡がお父さんのものではなく、また、当時のお父さんの経済状況からみて、そのような多額の金銭を贈与できない、  さらに言えば、贈与税の支払いもしていない等の事情があれば、お父さんとしては贈与を知らず、後妻らがお父さんに無断で金銭を動かしたのだという点を主張することも可能かもしれません。
なお、今回のように、贈与等の無効を主張したり、遺留分減殺請求を行う、というのであれば、上記のように非常に複雑な計算など法的な知識と判断が必要になります。そのため、あらかじめ相続に詳しい弁護士と法律相談をし、詳しい事情を説明されるといいでしょう。
適切なアドバイスをしてくれると思います。
相続法改正の影響(遺留分減殺について)
今回の相続法の改正により、令和元年7月1日以降に発生した相続については、遺留分減殺は《金額》を請求するという形になりました。
改正前のように、不動産を含めての遺産全部についての減殺ということではなくなりましたので、ご注意ください。
詳しくは「相続法改正9 遺留分制度に関する見直し」を参照してください。


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