大澤龍司法律事務所 相続問題無料相談ブログ

★遺言が2つ出てきたらどちらが有効か【Q&A №69】


 1通目の遺言書には押印がなく無効であると判断されました。(本人直筆作成)
 2通目の遺言書がありました。それも直筆での作成であり、日付はその1通目の遺言書よりも、約1か月前に作成されたもので、その遺言書には押印がしてあります。
その場合、2通目の遺言書が有効になるのでしょうか。

記載内容  自筆証書遺言 署名押印 遺産分割

(こまったさん)


【押印のない遺言書は無効です】
 遺言する本人が直筆で作成する遺言書を自筆証書遺言といいます。
 自筆証書遺言は、その全文、日付、氏名を遺言者本人が直筆で書き、印鑑を押さなければ、法律上の遺言書としての効力はありません。
 1通目には押印がないということですので、遺言書が有効になるための法律上の要件を満たしておらず、その効力はありません。
 2通目の遺言書には押印があるということですので、遺言書の全文、日付や氏名が自書されているのなら、法律上は有効な遺言となります。
 遺言書が2通あった場合、後に作成されたものが、遺言書としての効力を持ちます。
 ただ、本件の場合は遺言書は2通あったということですが、そのうち、1通が要件を欠いているということですので、もう1通の要件を充たした遺言書が効力を持つのはやむをえないでしょう。

【1通目の遺言書の内容にしたい場合は分割協議で・・】
 なお、有効な遺言書があっても、相続人間の全員が同意して、遺言書とは異なる内容の遺産分割協議をすることもできます。
 押印のない1通目の遺言書の内容にしたいというのなら、相続人間で協議されるといいでしょう。

押印のない遺言書は有効か【Q&A №50】


 妹が死亡、遺言書があります。本人の直筆です。
 相続のことが書いてあり、最後に日付、本人の氏名まで書いてありますが、押印や母印等は押してありません。

 このような遺言書は有効なのか無効なのか教えてください。

記載内容  自筆証書遺言 遺言無効

(こまったさん)


【押印のない遺言は遺言としての効力を持ちません】
 遺言については、形式が法律で厳格に定められています。
 被相続人本人が作成する自筆証書遺言では、特にこの形式の不備で無効か否かが争われることもよくあります。
 さて、今回の問題である押印・拇印ですが、印は遺言書が有効になるために不可欠な要件として法律で明記されています(民法968条1項)。
 ご相談のように押印・拇印を欠く遺言は無効です。
 実は、今年、当事務所で相談を受けた遺産事件で、押印がされていない遺言書がありました。当方は、そのような遺言は無効であると主張して、裁判を起こし、結局、その遺言書の内容とは異なる内容の遺産分割を行いました。

【ここまで厳しくしなくとも・・・という気持ちもしますが】
 本文も署名もきちんとされているのに、単に押印を欠くだけでここまで厳しくしなくとも・・・と思われる方もおられるかもしれません。
 しかし、遺言は遺言者の最後の意思表示であり、その内容の真偽を二度と遺言を作った本人に確認することができないものです。
 又、遺言書は、その人が残した遺産という重要な財産についてのものであるため、極めて厳格な形式が求められているものです。
 なお、参考までに言えば、本文に押印がなくとも、遺言を入れてあった封筒などに署名押印があれば、封筒が遺言本文と一体のものとして、署名押印があると扱った裁判例も存在します(東京高等裁判所平成5年8月30日判決など)。

【コラム】自筆証書遺言の書き方

自分で遺言書(自筆証書遺言)を書く方法
  遺言の方式には、自筆証書、公正証書、秘密証書、その他に特別の方式もあります。
今回は、自分で書く自筆証書遺言の書き方を紹介します。

【全文を自筆で書く必要がある】   自筆証書遺言をするには、遺言者が遺言書の全文を自分で書かなければなりません。
  字が下手だからといって、誰かに書いてもらったり、ワープロで作ったものではダメです。
  また、遺言書には、作成した日付、氏名も自分で記載し、押印しなければなりません。

【印鑑は実印でなくてもよい】   押印は、実印でも認印でも構いません。
  訂正があっても構いませんが、その場合、訂正箇所に押印し、訂正変更したことを記入して署名をする必要があります。

【要件を満たさない遺言書は無効】   自筆証書遺言はこのような要件が一つでも不足すると無効となり、遺言書どおりの内容を実現することはできません。

【遺言書を発見した場合】  遺言者が死亡し、自筆証書遺言が発見された場合には、家庭裁判所で検認という手続をする必要があります。
裁判所が遺言書を開封し、その内容を相続人に見せるための手続きです。

【自筆遺言の長所と短所】 まず、一番の長所は自分だけで簡単に作成することができるという点です。
いろいろ要件があって大変だと思われるかもしれませんが、その他の方式と比べれば、とても簡単です。
短所は、わかりにくい場所に隠していた場合には、遺言書を見つけてもらえないということです。
また、遺言書を見つけた人に不利な内容だったという場合、その遺言書が廃棄されるかもしれないという点も大きな欠点です。

★【コラム】遺言の特徴について

1)遺言制度とは
遺言とは、自分が死んだら自宅は長男にあげたい、預金は妻にあげたい・・という意思を尊重し、その人の死後に、その意思どおりの財産の移動等を実現する制度です。
  ただし、遺言がその内容どおりの結果を発生させるには、口頭(口でいうだけ)では足りず、法律で定められた一定の方式に従った遺言書という形にしなければなりません(⇒これについては、次回、詳しく述べることにします)

2)遺言は死んでから効力が発生する
今回は遺言の特徴について、説明します。
遺言どおりの結果が実現するのは、遺言者が亡くなってからです。
例えば、お父さんが亡くなる前に、(長男が遺言でもらえるはずの)土地が他人に不法占拠された場合にも、長男からはその不法占拠者に「出て行ってくれ」と言うことはできません。又、長男の債権者としても、遺言書でもらえるはずの財産を差押することはできません。

3)遺言はいつでも撤回することができる
遺言は、いつでも撤回することができます。
そのため、お父さんが長男に土地をあげるという遺言書を作ったとしても、その後、気が変わって、次男にあげたいと考えるようになると、お父さんは、前の遺言書を撤回して、次男に土地をあげるという内容の遺言書を作成することができます。

4)遺言を代理で作ることはできない
遺言は、遺言者自身の意思を尊重する制度です。
遺言は本人以外の人が代理して作ることはできません。
それが、たとえどんなに信頼できる人であっても、代理は認められません。

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