大澤龍司法律事務所 相続問題無料相談ブログ

詐欺による特別受益証明書の取消し【Q&A №518】


【質問の要旨】
虚偽の説明で実印を渡したら、相続は無効になるのか?

記載内容  実印 騙された 詐欺

【ご質問内容】
祖父が40年ほど前に亡くなりました。
祖父には、妻(祖母)と7人の子供がいました。
私は、次男の子供です。
祖父の相続にて、長男が、妻(祖母)と自分以外の兄弟6人の特別受益証明書を作成し、祖父の不動産を独り占めしました。
当時、遺産分割協議は実施されていなく、特別受益をしてもらっていない兄弟が2人いて、どのように実印が長男に渡ったのか覚えていません。
また、1人は、虚偽の説明で、実印を渡したと言っています。
他の兄弟は、すでに他界し、どのような経緯で実印が長男に渡ったのかわかりませんが、いとこの話によると、半強制的に持っていかれたらしいと言っていました。
現在、長男が3,4年前に他界(現在、祖父の土地は長男の嫁の名義)し、どのようにして実印を集めたのかわかりません。

そこで質問です。
実印を渡してしまった兄弟は、祖父の相続をあきらめるしかないのでしょうか?
虚偽の説明で実印を渡した場合は、無効になるのでしょうか
長男がもはや他界しているので、生存者の叔父の証言の方が有効でしょうか?
もし、有効だったならば、祖父の相続をやり直すことはできますか?
長男の嫁と争わなければいけませんか?

(姪っ子)


【詐欺ならば取り消しが可能です】
詳しい話はわかりませんが、もし虚偽の事実を告げられて実印を押印してもらった場合、その意思表示は詐欺行為に基づく意思表示として、取り消しの対象になることがあります。
たとえば、「車の名義変更に実印が必要なので貸して欲しい。」などと、全く違う用途を説明されて実印を渡したら特別受益証明書に実印を押されてしまった、というような場合であれば、その実印(意思表示)は取り消しうる、ということになります。

【取り消し期間は5年間】
ただ、詐欺に基づく取り消し権は、詐欺に気づいた時点から5年で消滅します(気づかない場合も20年で消滅)。
そのため、今回のように40年も前の話であればもはや取り消し期間が経過し、実際に取り消すことは難しいでしょう。

【証言だけで覆すのは難しい】
仮に期間の問題を無視するとしても、叔父さんの「騙されて実印を渡した。」という証言だけで特別受益証明書を取り消すことは難しいでしょう。
「死人に口なし」と言いますが、たとえ反対の証言がなくとも、裏付けのない証言だけでは、裁判所も証言の信用性を認めることができず、あなたの主張は認められないままとなる可能性が高いでしょう。

(弁護士 北野英彦)

騙して遺言を書かせると罪になるのか 【Q&A №458】


【質問のまとめ】
認知症で遺言作成能力がなくなっていた母の遺言書が出てきました。
三女が下書きをして、認知症の母を騙して書かせたものです。
そんなものを書かせることは犯罪ではないですか? 

記載内容  意思能力 詐欺 警察

【ご質問内容】
 母は当時認知症で遺言作成能力はありませんでした。
 診療記録や介護記録や認知症の検査結果があります。
 私長女は母から「三女に下書きをして来たから遺言書書けと言われて書いた」と聞いていましたが、検認時に初めて見ました。
 次女の息子(たった一人の男の孫)に「墓を守って貰いたい為、不動産をその孫の名前にした」と聞いていました。
 その言葉から「孫に遺贈する」内容だと思いました。
 しかし検認された遺言書は遺贈の件も墓の話も一切なく、重い病気にかかっている次女に不動産(仏壇のある古い家)を押し付け、長女と三女に貯金を二分の一ずつ相続させるとの内容です。
 三女は「お母さんの希望を尊重して下書きしてきた」と母に渡したとメールに書いてます。
 要介護5の母は三女の下書き通りに書けば自分の希望通りになると必死で書いたと思われます。
 意思ではないので遺言書を無効にするのは当然ですが、認知症の母に騙して書かせた三女に罪は問えないものでしょうか?
 三女は親のキャッシュカード7枚作成し出金し返していません。
 金融機関の取引履歴でわかっています。
 この使途不明金を有耶無耶にする為にこのような遺言書を書かせたものと思います。

(azurea)


【詐欺になっても、処罰されることはない】
 騙して遺言書を作成させたというのであれば詐欺になる可能性が考えられます。
 ただ、仮に詐欺罪にあたる行為がなされたとしても、親子(法律的に言えば直系血族)間での詐欺は処罰の対象になりません(刑法 251条、244条。末尾に条文を記載しておりますのでご参照ください)。

【対応策は遺言無効と生前の取込分の返還を求める方法で】
 刑法で処罰されないとなると、民事上の対応として次の2つの方策が考えられます。

①遺言書の無効を主張する。
 お母さんについて認知症の検査がされているのであれば、その結果によっては遺言が無効とされる可能性があります。
 その検査が長谷川式認知スケールなら30点が満点ですので、10点以下であれば意思(遺言)能力なしとして無効になる可能性が高いでしょう。
【コラム】意思能力と長谷川式認知スケールに関する判例の紹介参照)

次に、仮に生前に取込(無断出金)された分があるのなら、生前なら、お母さんがその出金者に対して不当利得返還請求あるいは不法行為による損賠賠償請求ができます。
 お母さんが死亡された場合、これらの権利は相続分に応じて相続人が取得しますので、上記遺言の無効とともに、取込財産の相続分に応じた分の返還を求めるといいでしょう。

【弁護士との相談も考える】
 いずれにせよ、認知症の程度の判断、カードでの出金をしたのが三女であるのかどうかなど証明も必要ですし、また、三女の行動から見て、話し合いで簡単に決着がつくようには思われません。
 もし、可能であれば、相続に詳しい弁護士に事情を説明され、とるべき方策を協議されるといいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)

刑法
(親族間の犯罪に関する特例)
第244条
 配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第二百三十五条の罪、第二百三十五条の二の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。
2  前項に規定する親族以外の親族との間で犯した同項に規定する罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
3  前二項の規定は、親族でない共犯については、適用しない。
(準用)
第251条  第二百四十二条、第二百四十四条及び第二百四十五条の規定は、この章の罪(詐欺罪等)について準用する。

【追加質問に対するコメント】
 質問者からメールでコメントいただいた点について、補足して説明しておきます(原則としてコメント・再質問に対する応答はしておりませんので、すべてのメールに同様の対応ができるわけではないことをご理解ください)。

> ?末尾の条文がちょっと読みにくかったです。普通の書体が良かったと思います。  ご指摘ありがとうございます。
 早速書体を変更しました。

> ?詐欺は他人より身内の方が防ぐのが難しいんです。
本当は身内こそ厳しく罰せられるべきだと思います。
 ご指摘のとおり、家族内での不正なやりとりを防ぐのは難しいです。
 ただ、刑法は「法は家庭に入らず」という前提で作られています。
 そのような問題は、家族間で解決しなさいという考えです。
 刑法の条文がある以上、法律家である弁護士としては、掲載したような内容の回答になります。

> 三女が後見人になっていたら、処罰されたんでしょうか?  後見人である場合には、後見人のする業務は公的なものであることから、直系血族の間でも親族相盗例(刑法244条等)の適用はなく、業務上横領罪が成立するというのが裁判所の見解です。

 なお、この点は興味ある問題ですので、近日中に当事務所のコラム(8/18up済【コラム】親の財産使い込みは罪になるか?)に解説記事を掲載する予定です。

> ?騙して書かせているので相続欠格にはならないでしょうか?相続欠格になった場合は代襲相続が出来るようですが、それには当てはまらないでしょうか?  「詐欺によって遺言をさせた」場合は、相続の欠格事由となります(891条4号)。
 但し、欠格を主張するあなたの方で、詐欺を証明する必要があります。
 なお、仮に詐欺で欠格になった場合、その子は代襲相続ができます。

(弁護士 大澤龍司)

将来「あなたに相続させる」という約束【Q&A №407】


9年程前の話ですが、父方の祖母が亡くなった際に、父方の祖父の土地と家屋について、父方の伯母三人が気兼ねなく使用したいため、名義を伯母3名にしたい(祖父と私の父は亡くなっています)との申し出がありました。
 その際、伯母達が亡くなった後に相続で困ることのないよう、『私に問題なく相続されるように書類を作っておく』との約束でした。(伯母3人にはそれぞれ2人の子供がいます)
 私の父は長男で、姉弟の中で男一人であったので、跡継ぎとして親族間での合意があり、また、その一人娘の私が跡継ぎということも、親族間で合意が取れていました。
(ただ、父が病気だったこともあり、祖父が亡くなった際土地の名義は父に変更せず、そのまま私が受け継ぐことになっており、名義は祖父のままでした)
 先日、一人の伯母より、名義を変えた土地について「あなたの土地ではない、相続の権利もない」と言われました。
 他の2名の伯母は、今のところその様な事は言っていませんが、いつ意見が変わるかはわかりません。
 また、現在、約束であった『私に問題なく相続するための書類』は作成されていません。
 私の相続が前提で名義を伯母達に変えた土地について、約束が破られたことによる相続放棄の取り消しはできますでしょうか。
 また、取り消しができない場合、どういった方法があるでしょうか。
 ご教授頂けますと、幸いです。

記載内容  詐欺 騙される 将来の相続

(くろ)


【詐欺の証明ができるかが問題になる】
 既に伯母さんに登記が移転しているのですから、それをあなたが詐欺を原因として取り戻そうとするなら、裁判なら伯母さんたちがあなたをだましたという点を証明する必要があります。
 その証明はあなたがする必要があり、それができなければあなたが敗訴することになります。
 過去の《言った。言わない》ということの証明は困難ですし、「私に問題なく相続されるように書類を作っておく」という話があったとしても、それも作られていないのであれば、詐欺を証明するのはやはり難しいという気がします。

【詐欺以外としては、不動産の移転の合意があったとする方法もあるが・・】
 なお、詐欺というのではなく、将来、あなたにその不動産の移転を約束していたので、それを履行せよとの請求をすることも可能です。
 しかし、その場合でも、そのような合意があったことはあなたが立証することになり、それができなければあなたの方が敗訴することになります。

【跡継ぎという約束だけでは役に立たない】
 なお、あなたを跡継ぎにするという話が出ていたということですが、それだけでは問題は解決しません。
 跡継ぎという言葉だけでは、所有権の移転とは何の関係もない話です。
 そんな話があったというだけでは、本件の土地建物の相続関係には影響を及ぼさないと考えて良いでしょう。

【あるとすれば遺言くらいだが・・】
 なお、あなたとしては伯母さんに、将来、不動産を戻してもらうように話をすることも可能です。
 しかし、遺産分割に関する約束を生前に行っても法律的には無効です。
 どうしてもというのなら、法的に不動産を確保しようと思えば、伯母3人に遺言書を作成してもらうしかないでしょう。
 ただ、今回のケースで伯母さんたちが遺言を書いてくれる可能性は少なく、また、仮に遺言書を伯母さんたちが作成してくれたとしても、遺言書はいつでも撤回可能ということも覚えておいていいでしょう。

【一か八かの裁判しかない】
 以上のように考えますと、あなたが本件の土地建物について相続権を主張できる余地は極めて少ないものと考えられます。この場合に執りうる手段としては、まだあなたと対立していない伯母の協力を得て、当時あなたを騙して相続をしたことを立証する証拠を取りそろえて裁判をするくらいでしょう。しかし、ほかの伯母自身が、当時協力しあってあなたを騙したことを認めてあなたに協力してくれる可能性は低いと思われますし、一か八かの裁判をするしかない、という状況であるのが実際のところかと思われます。

詐欺・脅迫による遺言の無効【Q&A №322】

I’m? 
 公正証書遺言の遺言執行者とその代理人弁護士との間で遺留分減殺請求の交渉をしていますが共同相続人の一人である遺言執行者Aが強気の為、交渉が難航しています。
 この公正証書遺言を無効に出来れば一機に遺産分割の進展が望めると思い相談いたします。民法891条(相続人の欠格事由)では、遺言を無効とする5項目を定めておりますが4項の脅迫や詐欺により遺言が無効とされた判決事例を教えて下さい。

記載内容  詐欺 脅迫 欠格事由 受遺者 公正証書の取り消し

(キギ)


【当事務所の使用している判例検索システムでは参考判例は見当たらない】
 民法891条は「相続人となることができない」者(相続欠格者)を列挙していますが、その4号に、「詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者」が記載されています。
 ご相談の内容は、詐欺・脅迫によって遺言がなされた場合、その詐欺・脅迫をした者を相続欠格者として遺言の効力を否定するような案件が問題となった判例はないかというものです。
 結論から申し上げれば、当事務所が使っている第一法規の判例検索システムで検索しても、詐欺・脅迫と相続欠格が問題となった判例は出てきませんでした。
 また、当事務所でも同種の争点が問題となる案件を扱ったことはありません。

【参考までに】
 今回の質問では《公正証書を無効》にする手段として、相続の欠格事由が使えるかどうかを検討されています。
 しかし、相続の欠格とは、ある相続人の相続資格を否定するだけであり、公正証書遺言自体を無効にするものではありません。
 もし、公正証書自体を無効にしたいのであれば、相続人として(被相続人が有していた)詐欺・強迫による取消権を相続で取得したとして、その取消権を行使するという方法も検討の余地があります。
 参考までに付言しておきます。

※本件には直接関連しませんが、相続欠格については昭和63年の仙台地裁の判決がありましたので、「【判例散策】昭和63年5月31日 仙台地裁判決」で解説しています。

母が勝手に書いた委任状【Q&A №256】


 父方の祖母が他界した時に、叔父(私の父(他界)の兄。)が家へ来て、「母(私から見ると祖母)の預金を下ろしたいから、委任状を書いてくれ」という説明で、私が不在だったため、私の母が、代筆で委任状を2通書きました。
 8年ほど経ち、祖母の土地の相続はどうなっているのか、疑問に思った私の母が、登記簿を調べたところ、その土地は、叔父の物となっておりました。
 どのような手順で相続したのか、書類の提出を求めたところ、一通の委任状のコピーが届きました。それは、この土地は叔父が相続するという内容の物でした。
 当時、土地相続の相続放棄についての話など一切なく、委任状を書かされたわけですが、その内容は全く見ておらず(半分折りになっており、相続内容が書かれた左面とは逆の右面に署名捺印しており、意図的に、内容を見られないようにしていたのかも?)この委任状が有効なのか疑わしい限りです。
 しかし、8年前の事で記憶もあいまいで、こちらが書類をきちんと確認しなかった事に、悔しい思いです。虚偽の説明で、委任状を書かせた叔父が許せません。
 この委任状は、私の許可なく、母が代筆していますが、それでも有効になるのでしょうか?
 本人が書いてない委任状と、虚偽の説明で書かされたという点から、この書類を無効にすることは、できないものでしょうか?

記載内容  委任状 偽造 勘違い 詐欺

(makomu)


【本人の意思に基づかない委任状は無効】
 まず、当然のことですが、本人の意思に基づかない委任状は無効です。
 ただ、代筆であっても、障害で字が書けない人を代筆することもありますし、横で指示して書かせる方式でも直ちに無効というわけではありません。
 問題は、本人が書いたかどうかではなく、本人の意思に基づくものといえるかどうかです。

【黙示の承認ないし追認の可能性はないのか・・】
 お母さんが委任状を書いたとき、あなたがその作成のことを知らず、又、その後もお母さんの代筆を承認しておらず、同意もしていないというのなら、委任状は無効です。
 その無効な委任状に基づきなされた叔父さんへの相続登記も無効になります。
 しかし、もしあなたがお母さんの代筆を知って放置していたとか、お母さんの委任状作成を暗に認めていた(あるいは、母の代筆がもめ事になるのを避けようと思い仕方なく黙認した)というような場合には、裁判で委任が有効と認定される可能性があります。
 なお、叔父さんが相続登記をするには、あなたの委任状だけではなく、その他にあなたの実印を押捺し、かつあなたの印鑑証明書を添付して登記申請をする必要があります。
 叔父さんへの相続登記が完了していたというのなら、誰があなたの実印の押捺をし、又、誰があなたの印鑑証明書を叔父さんに渡したのかという疑問も出てきます。
 登記を無効と主張するには、これらの点も勝手にされたのだということを証明する必要があります。

【詐欺について】
 不動産登記のための委任状であることをはっきりと説明せずに、あるいは虚偽の説明をしたというのであれば詐欺により、委任を取り消しすることも考えられます。
 ただ、8年も前のことであり、記憶がはっきりしないということであれば、この点の証明が可能かどうかという疑問があります。
 又、詐欺で騙されたのはあなたではなく、お母さんということになりますが、その前提で考えるならあえて詐欺という必要もなく、あなたが関与しておらず、あなたの意思に基づく委任状ではないということで十分です。
 結局、登記の無効を主張するのであれば、あなたの意思に基づかないという点を根拠にするのがいいでしょう。

虚偽の遺産分割協議書に押印をした場合について【Q&A №192】


 虚偽の遺産分割協議書は有効なのでしょうか…?

 兄と妹の二人です。
(兄には嫁と子供二人・長女と長男がおります)
 父が平成17年、母が平成20年6月17日に亡くなりました。
 その後、遺産相続のことについては、縁を切ると脅されていました。
 平成22年12月4日に、急に、一方的に連絡があり、兄が勝手に作成してきた遺産分割協議書(同二枚)を差し出され、謝らないといけないことがあると、いきなり泣き出し私の相続金を借金の穴埋めに遣い込んでしまい私への遺産金が無くなってしまったと訴えられ、自分の(兄)家も手放さなければならいし…ばれたら、嫁とも別れなくてはならないと泣き脅しされ、泣く泣く、その場では、私が泣いてあげれば全てが丸く納まるのか!?と思ってしまい虚偽の遺産分割協議書(同二枚)の一枚(兄の保管用)のみにサインと捺印(実印)をしてしまいました。
 私の保管用の虚偽の遺産分割協議書には、兄のサイン捺印(実印)はありますが、私は白紙にしています。(納得は出来ていなかった為)それでも?
 一方の虚偽の遺産分割協議書にサイン捺印(実印)をしてしまった以上、無効にはならないのでしょうか。
 私は、結局、遺産金はもらえず仕舞いです。しかし一年前に、私に内緒で、新しい家を購入して引越しもされていました。

記載内容  詐欺 遺産分割協議書

(クマコ)


【遺産分割協議書は1通あればよい】
 遺産分割協議書は1通作成されれば、それで有効です。
 あなたが持っている協議書に印鑑を押していなくとも、お兄さんの持っている分割協議書は無効にはなりません。
 お兄さんの持っている分割協議書に相続人全員の実印が押され、印鑑証明書がついていると金融機関から遺産である預金の払い戻しも受けることができ、登記もできます。
 お兄さんはその1通を使って、遺産を自分のものにしたのでしょう。

【詐欺等で取り消しや損害賠償を求めることも考えられるが・・】
 お兄さんが述べた事情が虚偽であったとすれば、詐欺を理由として分割協議を取り消しできる可能性がありますし、不法行為による損害賠償も可能かもしれません。
 ただ、問題は、お兄さんの詐欺を証明できるかどうかです。
 裁判に勝つためには、詐欺であることをあなたが証明する必要があります。
 具体的に言えば、お兄さんが、質問にあるようなことを言ったことやそれが嘘であったことなどを裁判所にわかってもらう必要がありますが、その点の証明ができるかどうかという問題です。

【今後の手続きは?】
 さて、問題はどのような手続きでお兄さんから遺産を取り戻すかということです。
 もし詐欺を働くようなお兄さんであれば、返還せよと言っても、簡単に返還してくれないでしょう。
 通常は、遺産分割協議書が無効であるとして、遺産分割調停をするのが望ましいです。
 しかし、調停をしても、もし詐欺を働くようなお兄さんであれば、返還せよと言っても、簡単に返還してくれないでしょう。
 当事務所は、質問と似たようのケースを扱うこともよくありますが、残念ながら調停でまとまったケースは一例もありません。
 訴訟になった場合、勝訴の可能性もありますが、敗訴の可能性もあります。
 いずれにせよ、訴訟になる可能性があるケースですので、早期に、相続に詳しい弁護士に相談され、詳しく事情を説明した上で、その意見をお聞きになるといいでしょう。
 その上で、訴訟のリスクもわかった上で、事件を依頼するかどうかを検討されたことをお勧めします。

兵庫県弁護士会 (URL:http://www.hyogoben.or.jp/)

だまされて借金を相続させられた【Q&A №71】


 2年前に父が亡くなったのですが、父には多額の借金があり、父の死後すぐに父方の祖父母・叔母に相談した所、自分たちの財産を売っても良いと言ってもらえました。
 ですが、相続するのは母ではなく兄というのが条件だったので、母が兄に説明し兄も一時的に借金を背負うのなら良いと言ったので、兄が多額の借金を背負いました。
 母と私も、借金は背負いましたが兄ほどではないです。
 ですが、全ての手続きが終了した後に祖父母達から、自分たちの財産は一切売る気は無いと言われました。
 結局、私たちが全ての借金を背負ったのですが、兄は借金は一時的なものでは無くなったので、母が自分を騙したと言っています。

 兄は母に騙されたと言っているのですが、今から兄が母を訴えて相続権を変更・放棄することは可能ですか?
 また、それが認められた場合、母は何か罪に問われるのでしょうか?

記載内容  相続放棄 詐欺 借金

(マロン)


【現時点では、相続放棄はできません】
 「兄は母に騙されたと言っているのですが、今から兄が母を訴えて相続権を変更・放棄することは可能ですか?」という質問ですが、相続では、借金などマイナスの財産も引き継がれますので、借金が財産(不動産・預貯金などプラスの財産)よりも多い場合には相続放棄をすることが可能です。
 但し、相続放棄は、被相続人(本件ではお父さん)の死亡を知ってから3ヶ月以内に裁判所に申立をする必要があります。
 ご質問の場合、お父さんの死亡からすでに2年経過していますので、相続放棄の期間は終了していますし、おそらく遺産もそれなりに利用しているでしょうから、現時点では相続放棄をすることはできません。

【お母さんを訴えても相続には何の関係もありません】
 遺産の分割については、祖父母の方たちが財産を売却して借金の返済資金を用意するという前提になっていたのであれば、その前提が崩れているわけですから、「錯誤」あるいは「詐欺」で遺産分割が無効ないし取り消すことができるとして、遺産分割のし直しをすることも考えられます。
 しかし、遺産分割をしなおしたとしても、債権者(銀行・貸金業者など)に対する関係では、既にした借金の支払を無効にし、あるいは債務の相続を否定することは難しいでしょう。
 また、質問を見る限り、お母さんもお兄さんを騙すつもりがなかったと思われますので、詐欺での取り消しはむずかしいと思われます。
 結局、錯誤などなんらかの理由で遺産分割をやり直し、お兄さんが背負っていた多額の借金を相続人間で不公平のないように分担し直すのが一番妥当な解決方法でしょう(なお、詐欺あるいは錯誤で遺産分割をしなおしても、お母さんが刑法上処罰されることはありません)。

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