大澤龍司法律事務所 相続問題無料相談ブログ

限定承認と相続放棄【Q&A №488】


【質問の要旨】
相続放棄の注意点等

記載内容  返済 承認 遺品整理

【ご質問内容】
独居の叔父がなくなり甥である自分が相続人となりました。
若干の現金と一戸建ての遺産がありますが、人の良い叔父が連帯保証人になっていないか心配しております。
遠方に住んでおり、叔父の交友関係など全くわからないので、限定承認か相続放棄を考えております。
この場合注意することはありますか?
また、相続放棄をする場合、独り暮らしの叔父の遺品整理をしてしまうと単純相続したことになってしまいますか
相続放棄をした場合、家の後始末も全くしなくてよいと言うことでしょうか?
既に、叔父の自動車税や固定資産税、電気、水道、ガス、電話などの支払いをするように手配しています。
アドバイスのほどよろしくお願いいたします。

(ちょろ)


【遺産の整理と保証債務】
相続放棄は法定相続人が被相続人の相続をしないと家庭裁判所に申し立てることです。
相続放棄をすると遺産の中の預貯金や不動産、株式等、一切の財産を相続でもらうことはできなくなります。
反面、被相続人の債務(借金等)も相続されず、支払う必要はなくなります。
ただ、預貯金を払い戻す等、遺産を使うような行為があった場合には、相続放棄は認められません。
今回の場合は、遺産の整理ということですが、厳格にいうと遺品(例えば鍋・釜・布団等)の整理も遺産の処分に該当するので、放棄できないということになりそうです。
しかし、私としては、例示したような鍋等の価値のないものを処分する程度であれば単純承認とされることはなく、放棄が可能だと思います。
但し、価値ある物品(例えば絵画や彫刻等)を売却するような場合には、遺産の処分に該当し、法的には放棄ができない(正確にいうと、放棄してもその効果を被相続人の債権者に主張できない)ということになります。

【限定承認はほとんど使われていない】
民法の条文を見ていると限定承認は財産と借財を確認したうえで、相続をするという制度であり、合理的な制度のように見えます。
しかし、不動産の相続などで、税務上は相続とはみなされず多額の税金が課される等の使い勝手の悪い面があるため、私自身は今まで1回も扱ったことがなく、他の弁護士がこの手続きをしているのを見たこともありません。

【保証債務の有無の確認はむずかしい】
被相続人が保証債務を負っているのに、相続放棄をしなかった場合、この保証人の地位も相続人に承継される可能性があり、その場合には相続人が保証債務の支払いをする必要があります。
問題は、ほとんどの場合、保証人となっているかどうかが判明しないということです。
私の経験では、被相続人である母親が死亡した後、約10年経過してから、父親のしていた会社が破産し、会社の債務の連帯保証をしていた母親の保証債務が現実化したというケースがありました。
この場合には、被相続人からの何も財産などはもらっていなかったことから、相続放棄の手続きをし、結局、放棄が認められたことがあります。
叔父さんがどのような社会的な地位にいたのかを調べる必要があるでしょう。
もし、叔父さんが会社の社長や役員をしていたのであれば、会社の借財に連帯保証をしている可能性も考えられ、慎重に遺産調査をする必要があります。
相続放棄は相続開始を知ってから3ケ月以内に申立する必要がありますが、もし、調査に時間がかかるのであれば、放棄期間伸長願いを裁判所に提出するといいでしょう(ブログ【コラム】相続放棄期間の伸長参照)。

【遺産の整理はしなくてもいいのか・・】
法律的には、相続放棄をするのであれば、遺産に手をつけない方がいいでしょう。
しかし、遺族としての立場から言えば最低限の遺産整理もしないと社会的な非難を受けかねません。
そのため、価値あるものは何らかの形で保管しておき、価値のないものは廃棄するということで折り合いをつけるのがいいでしょう

【自動車税や固定資産税、電気等の支払いについて】
叔父の自動車税や固定資産税、電気、水道、ガス、電話などの支払いをするように手配していることようですが、あなたが相続人としてその行為をしているのであれば、単純承認とみなされる可能性が高いです。
もし、そのような支払いの手配を停止できるのであれば、停止されるのが望ましいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)

★夫の退職金で夫名義のローンを返済【Q&A №412】


 その後、夫は会社を定年退職し退職金をもらった。退職金全額を、夫は妻に渡した。
 妻は全額を「自宅兼収益物件のローン支払いにあてた」と言った。
 この件について質問です。

(1)この渡した退職金の1/2にあたる金額は特別受益として遺留分算定の基礎財産に加算できますか?

 父と母が持ち分1/2ずつの共有名義の「収益物件の不動産」があります。この「収益物件の賃料」は、全額、父の口座に入金されていました。そして、入金された後、この「収益物件の賃料」を母が毎月定額出金していました。母は、「収益物件の賃料」を管理するために、出金していたようです。母は、この定額出金した金額を自分名義の通帳にいれてるかどうかは不明です。現金で持っているかもしれません。この件について教えてください。

(1)母が管理している父の持ち分の不動産の「賃料」は、名義預金として遺留分減殺請求の基礎財産に加算できますか?

(2)遺留分減殺請求の基礎財産に加算できるとしたら、何年前まで遡れますか?

記載内容  贈与 退職金 返済

(ikasama)


※同じ方から2回に分けてご質問をいただきましたが、回答は1つにまとめています。

【各月のローンの支払い分が特別受益となり、遺産に持ち戻される】
 不動産の名義は共有であるところ、ローンは夫だけというケースです。
 妻としてはローンの支払いをしないのに、夫が各月のローンの支払いをしますので、妻の財産が増えていく(正確にいうと、その不動産には抵当権がつけられているでしょうから、その債務が減少する)ということになります。
 ローンの支払い分のうち、妻の共有持ち分に該当する分の支払い額が特別受益になり、遺留分計算の基礎財産として、遺産に持ち戻されることになります。

【退職金で支払った残ローン分も特別受益になる】
 今回、退職金でローンの残額を一括して返済したということですので、その一括支払い分のうち、妻の持ち分に相当する分が特別受益になり、遺産に持ち戻されます。
 なお、質問では夫の退職金を妻に渡したという表現があります。
 しかし、その退職金は結局、ローンの支払いに充てられているのですから、妻に渡したという点は無視してもよく、結局、夫の退職金で不動産のローンが完済されたと考えて差支えありません。

【遺留分権利者に損害を与えることを知っていたということが前提だが・・】
 遺留分の算定の際の遺産に持ち戻されるのは、相続開始1年前までの贈与です(民法1030条後段)。
 したがって、条文から見れば、1年を超えて遡った時点での贈与については、《遺留分権利者に損害を与えることを知っていた》場合に限定してのみ、持ち戻しが認められるはずです。
 しかし、最高裁は特別受益に該当するような相続人に対する贈与は、その贈与が相続開始よりも相当以前になされたものであっても、特段の事情のない限り、民法1030条の定める要件を満たさないものであっても、遺留分減殺の対象となるものと解するのが相当であると判断しています。・・・※注1。
 今回の質問のケースは、おそらくかなりの長期間にわたるローンの支払いですが、このようなかなり以前の分でも特別受益である限り、遺産に持ち戻されますし、ましてや、最近、夫の退職金でローンを支払い、その利益を受けているのであれば、その分も特別受益として、持ち戻しになることは確実だと言っていいでしょう。

※注1・・最高裁判決:平成10年3月24日(民集52巻2号433頁)

【賃貸人名義人が賃料を取得するが、他の持分権者に持分相当額を支払う必要がある】
 まず、不動産賃貸の賃料については賃貸人が受け取りますので、賃貸契約書を確認する必要があります。
 契約書で賃貸人が夫(お父さん)であれば、賃料を受領する権利は夫にあり、受け取った賃料は夫のものです。
 但し、妻が共有持ち分を持っていますので、特段の合意がない限り、妻も持ち分に相当する賃料を夫に請求できる権利があります。

【賃料全額を妻が預金しているとすれば、特別受益の可能性もある】
 賃料は、一旦、夫の口座に入り、そのうちから一定額を妻が出金していたということですが、その出金が何に使用されたのかによって結果が異なります。
  《賃料管理の費用》として、或は《生活費としての夫婦の婚姻費用》などに支出されたのであれば、その分は特別受益にはなりません。
 この場合、一定額を支払った後に残存するお父さんの口座(正確にいうと、そのうちの賃料入金分に見合う)残額のうち、妻の持ち分割合に相当する額は妻が取得するべき分ですので、妻は夫に対しその分の返還を請求することができることになります。
 なお、妻が自分のための支出として賃料の半額程度を引き出して使っていたというのであれば、夫の預貯金全額は夫の遺産であり、そもそも特別受益の問題は発生しません。

【消滅時効と特別受益との関係】
 特別受益は消滅時効にかかりません。
 しかし、返還請求権の場合には原則として10年で消滅時効期間が経過しますので、10年以上経過した分に相当する金額の請求権は消滅していると主張される可能性があります。

相続人の配偶者の借金返済は特別受益となるか【Q&A №403】


 子(法定相続人)の配偶者が過去に起こした借金が原因で、苦しい生計を案じた親(被相続人)が孫の教育費・車購入・住居購入(配偶者名義)の一部援助、借金の肩代わり(返済不要)、そして孫に数度の生活援助をした経緯があります。
 被相続人の遺産を当該相続人が相続する際、援助を受けた金員は特別受益としてみなされるのでしょうか。それとも借金が原因であるとの見解から、当該相続人の被相続人への借金として遺産に加算し、別相続人に分配されるものなのでしょうか。

記載内容  借金の支払い 返済 特別受益 相続人以外の人への贈与

(BOO)


【相続人以外の人への贈与は原則、特別受益にならない】
 質問は被相続人の生前の財産移転行為のうち、お孫さんへの教育費・数度の生活援助、住居購入(配偶者名義)の一部援助は《お孫さん》あるいは《配偶者》という、いずれも相続人以外の人に対するものです。
 特別受益は相続人に対する贈与を対象としており、相続人以外の者への贈与は原則として特別受益に該当しません。
 ただ、裁判例の中には、配偶者への贈与であっても、贈与の経緯、目的物の価額、その贈与により受ける相続人に利益等を考慮した後、特別受益としなければ相続人間の実質的平等に反するとして、配偶者への贈与を特別受益としたものがありますが、かなり古い判例です(福島家裁白河支部審判 昭和55年5月24日)。

 本件では、相続人ではなく、借金をした配偶者の名義で購入した住居購入代金の一部を支援したということですが、(今度借金したら、差押えでその住居を押さえられるのにという疑問もでますが、その点は別として、)名義は配偶者名義だが、実質は相続人のものであるという何らかの理由や事実があれば、特別受益の可能性はあります。しかし、配偶者がローン代金を支払っているということなら、特別受益とすることはむずかしいと思います。
 お孫さんへの贈与も特別受益にならないのが原則ですが、実質的には相続人への贈与と同視できるような場合には、このお孫さんへの支援が特別受益とされる可能性もあると思われます。

【借金等の肩代わり(返済不要)はケースバイケース】
 借金の肩代わり(返済不要)ということであれば贈与になります。
 しかし、全ての生前贈与が特別受益になるわけではなく、《生計の資本》としての贈与のみが特別受益となります。
 借金も、住宅ローンのような生活費を原因とする借金なら特別受益になるでしょう。

 しかし、ギャンブル等の遊興費が原因の借金なら《生計の資本》に関係ない贈与として特別受益にならないと考えられています。
 ギャンブルの借金の立替支払いが特別受益にならないという結論には納得しがたいと言われる方も多いでしょうが、条文上、《生計の資本》としての贈与だけを特別受益としている以上、この結論はやむを得ないという考え方になります。

【当事務所の弁護士協議では・・・】
 ただ、当事務所の弁護士間で検討した結果も、参考として以下に記載しておきます。
 前項の結論は借金の原因に基づいて、特別受益かどうかを判定しています。
 上記のような考え方を前提にすると、仮にギャンブルによる借金のため、相続人が生活できず、そのため被相続人が多額の贈与をした場合は次の結論となります。
 ①生活費を援助した場合・・・特別受益となる。
 ②被借金自体を立て替えて支払った場合・・・特別受益ではない。
 ただ、このような結論は説得力が乏しいように思います。
 そのため、上記の②も結果として相続人の生活苦を救うための方策としての支払いであり、特別受益として扱われてもいいのではないかと考える余地がありそうです。

【車のローンの支払い】
 なお、相続人の車のローンの支払い、あるいは車代金の支払いは特別受益になると考えていいでしょう。

★増築費用の贈与を受けた証明【Q&A №378】


 兄弟3人で遺産分割の調停中です。20年前に長男が自宅の増築費用として、父から700万円の贈与を受けているので、この金額を長男の特別受益として認めてほしいと調停員に要望しました。調停員が証拠はありますかと尋ねてきたので、長男が書記官に提出した回答書に「振込みで受領」と記載している事が証拠と言ったところ、それだけでは不充分と言われました。他にどのような証拠が必要なのですか。長男は増築費用700万円は借用したもので、生活費の不足分で返済したと言っている。遺産分割の対象は預金と特別受益のみです。次男は預金の1/3のみで了解しており、長男の特別受益については問題として取り上げることに反対しています。

記載内容  建築費用 調停 返済 贈与 貸金 消滅時効

(スカイツリー)


【贈与か貸金か】
 自宅を新築した際、お父さんから金700万円が送金されたことについては、長男も認めています。
 問題は、その送金分が、《贈与》か《貸金》なのかという点です。
 その送金分が長男に対する《贈与》であれば、特別受益として、遺産に繰戻される可能があります。
 しかし、貸金であるとすると、返済の問題と、返済していない場合には、消滅時効の問題が生じてきます。
 長男は《その後、生活費援助で返金した》という主張ですので、貸金だったという立場です。
 貸金であると主張するのなら、長男の側で返済を証明する必要があります。
 又、送金時期が20年前ですので、消滅時効期間《10年間》が経過しており、時効で貸金返還請求権は消滅しているということも将来、主張するかもしれません(参考までにいえば、特別受益では消滅時効という問題は発生しません)。

【贈与の証明はあなたがしなければならないが・・】
 長男は貸金だと主張し、あなたは特別受益であると主張しているので、貸金であること及びその弁済をしたことは長男が証明する必要があります。
 しかし、反面、あなたとしては、贈与を主張している以上、その点を証拠で証明する必要があります。
 普通のケースなら、贈与を主張する側としては、長男が一度も金銭を返還していないこと(贈与なら返還不要であるため)や、借用書等の契約関係書類がなかったこと(貸金なら借用書があることが多い)等を証拠で明らかにする必要があります。
 当時、贈与税の申告をしていたというのであれば、その申告書の控えなどを入手されると決定的な証拠になるでしょう。
 又、返済しているというのなら、長男にその証拠を提出してもらうように要請し、その裏付けがないというのであれば、弁済の証拠なしとして、《貸金》ではなく、《贈与》だったのだという主張をすることも可能でしょう。

【長男の弁済の主張についての反論】
 今回の質問の件では、長男は生活費の不足分で返済したという主張をしているようです。
 この点については、そのような事実が本当にあるのかの調査をするために、お父さんの預貯金口座の履歴を取り寄せすることも考えていいでしょう。
 履歴を確認して、お父さんが十分な年金等を得ている、あるいはかなり多額の預貯金等があるということなら生活費の援助はいらないでしょう。
 又、お父さんの預貯金額が毎月減額しているというような事実が判明したのなら、生活費はその預貯金から出ており、長男はなんらの援助もしてはいないという推測ができます。
 援助しているとしても、その長男の援助は借金の返済ではなく、《親族間の扶養義務の履行》として、長男が実行したものであり、借金の返済ではないと反論することも可能です。

【調停は裁判ではない】
 20年前の送金が贈与か貸金か、そのいずれについても証明は困難な場合が多いです。
 質問のケースはあなたのご主張のように贈与の可能性も高いように思います。
 しかし、調停は裁判ではありません。
 贈与か貸金かを最後まで争うのもいいでしょうが、勝訴するとは限りませんし、弁護士費用も必要です。
 不満が残っても、調停委員の意見も参考にし、中間的な解決として、送金分の一部を特別受益として算入する等の方向を検討してもいいでしょう。

質問する

当ブログでは、相続に関するご質問に弁護士がお答えします。ベテラン弁護士の長年にわたる経験に基づく回答です。無料・匿名でご質問いただけますのでお気軽にご利用下さい。

事務所での有料相談はこちら

直接、お聞きして、的確に回答します。今、何が問題で、どう解決すべきかをわかりやすく説明します。

最近の相続ブログ

アーカイブ

カテゴリー

大澤龍司法律事務所

〒530-0047
大阪市北区西天満4-3-25
梅田プラザビル別館7階A703号

お気軽にご相談ください!(電話要予約)
お気軽にご相談ください!(電話要予約)
FAX:06-6361-6043 メールでのお問い合わせはこちら 月〜金曜日(祝日を除く)
    • 大阪メトロ堺筋線・谷町線「南森町」駅
      ...徒歩約7分
    • 大阪メトロ堺筋線・京阪電車「北浜」駅
      ...徒歩約10分
    • 大阪メトロ御堂筋線・京阪電車「淀屋橋」駅
      ...徒歩約15分
事務所ブログ 大原訴訟ホームページ

ページの先頭へ