大澤龍司法律事務所 相続問題無料相談ブログ

息子の妻による年金の使込みと不当利得【Q&A №673】

 

 

【質問の要旨】

・祖母が息子夫婦と同居。
・息子の妻が、祖母の年金を全額出金し、使途の報告もない。
・遺言書作成を提案したが断られた。
・息子の妻が使い込んでいる祖母の年金を取り戻せるか?

 

 

【回答の要旨】

・祖母が返還請求できるが、現実には困難な情勢かもしれない
・相続開始後であれば、相続人のあなたの母が請求できる
・今後、祖母の財産を守る方法として成年後見人制度の利用が考えられる
・相続人である母として今すべきことは証拠集めです

 

【ご質問内容】

二世帯住宅で一階には祖母一人、二階には息子夫婦が住んでいます。
祖母は買い物、ご飯の支度を同居の嫁に依頼しているのですが買い物を頼んでも『売り切れていた』『買いに行けない』等と言われるため孫の私が月一回程度祖母の家を訪ね買い物をしています。
そして夜とお昼は『お金を払わないと作ってもらえない』と祖母は毎月数万円を払っているそうです。
ですが嫁が用意するのは惣菜やレトルト。
温めるだけのうどんに3切れのカステラの日も。栄養も愛情もないご飯を祖母は一人で食べています。
嫁は習い事やアルバイトや実家に帰るなどほとんど家にいません。
とても祖母の世話をしているとは言えないし、祖母が大事にしてもらっていない事はよくわかります。

年金も全額嫁が出金し、何に使っているのか報告もないと祖母は言っています。
以前祖母や実の娘(私の母)がお金の事を聞くと怒り出したそうで、旦那すら怖くて口を出さない状況になっています。

以前祖母は『死んだらお金は全部嫁がとるだろうね。あの人は怖い人。』と言っていました。
遺言書を提案したのですが高齢の母には面倒だと断られています。
祖母もボケはじめ、体調も悪く、この先の相続などを考えても嫁がいいようにするのが目に見えており許せません。

嫁が使いこんでいる祖母の年金を取り返す事は出来るのでしょうか?

(鳥越孫)



 ※敬称略とさせていただきます。

【祖母が返還請求できるが、現実には困難な情勢かもしれない】

祖母は、息子の妻に勝手に使い込まれた年金について、返還請求(根拠は不当利得返還請求又は不法行為の損害賠償請求)をすることができます。
ただ、祖母が生きておられますので、その請求ができるのは祖母だけです。
もっとも、本件では、祖母は遺言書の作成ですら面倒であると拒んでいる状態であり、祖母に返還請求する意思があるか疑問です。
むしろ、祖母の置かれている状況から見れば、返還請求は難しいかもしれません。

【相続開始後であれば、相続人のあなたの母が請求できる】

祖母が亡くなられた場合、あなたの母は法定相続人になります。
そのため、祖母の持っているその息子の妻に対する請求権も相続され、法定相続分の限度で請求することが可能です。
また、息子の妻の使い込みに、息子が協力しているのであれば、息子も共同不法行為をしたものとして賠償責任を負いますので、母としては息子に対する請求も考えられるといいでしょう。

【今後、祖母の財産を守る方法として成年後見人制度の利用が考えられる】

現在、祖母の判断能力が低下してきているということですが、まったく判断能力がなくなれば、成年後見制度(補助、補佐、成年後見)を利用して、家庭裁判所によって選任される弁護士や司法書士といった専門家等に祖母の財産管理を委ねることが考えられます。
母からの申立ても可能ですので、検討されるといいでしょう。
ただ、祖母が返還請求を行う場合や成年後見制度を利用する場合、祖母と息子の妻は同居しているので、息子やその妻との関係が悪化し、祖母が家に居づらくなること等が考えられます。
今、一番に考えるべきは、祖母の残されたこれからの生活を実りあるものとすることでしょう。
その観点からいかなる対応が望ましいのかを検討されるといいでしょう。

【相続人である母として今すべきことは証拠集めです】

最後に、母としては、将来の遺産分割を考え、現段階で祖母にどのような預貯金があるのか、また、無断で出金されているのはどれなのかという証拠集め(祖母からの聞き取り、預貯金通帳のコピーなど)をしておき、将来の発生するかもしれない争いに備えておかれるといいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)


立て替えた葬儀費用を返してほしい【Q&A №665】

 

 

【質問の要旨】

・6年前に亡くなった息子の葬儀費用の立替分(50万)を喪主から返してもらいたいが、時効にはならないか?
・喪主は、息子の妻(嫁)。

 

【回答の要旨】

・時効は10年。6年経っても請求できる
・喪主が立替金を支払う義務がある
・葬儀費用を葬儀に出席した相続人が負担するという考え方もある

 

 

 

【ご質問内容】

2013年9月に遠隔地に住んでいる43歳の息子が心不全で急逝しました。
喪主は息子の嫁が務めましたが、心労だろうとの思いから香典の開封集計は嫁が立ち合いの上で近親者4名で行いました。
私はもちろんですが、嫁には相続する財産もなく生命保険金が支給されるまで金銭的余裕が無いだろうとの思いやりから、葬儀社やお寺への支払いは香典だけでは50万円ほどたりず不足分を私が立替えて支払いました。
後日、収支報告書を作成し嫁に渡しましたが、立替えた件は報告書を見ればわかるだろうと敢えて口頭での報告はしませんでした。
遠隔地に住んでいるので、その後顔を合わせたのは数度で 先日、7回忌法要をしましたが金銭の話は切り出しにくく、嫁から話があるかと思っていましたが何もありませんでした。

もしかしたら支払う気持ちが無いのではないか?と不安になりご相談させて頂きます。
喪主に代わって立替えたお金を6年以上経った今でも支払ってもらうことはできますでしょうか?
ご回答よろしくお願いします。

(与太郎)



 ※敬称略とさせていただきます。

【時効は10年。6年経っても請求できる】

まず、今回のように6年も経つと今更葬儀費用の話を言い出しにくい、というのが人情だろういうお話はよく理解できます。
しかし、法律上はこのような個人間の立替金は時効期間が10年です。支出時から10年間は返還請求ができますので、現時点では問題ないでしょう。
これを前提に、以下返還請求できる金額について回答していきます。

【喪主が立替金を支払う義務がある】

今回のお話を整理しますと、葬儀費用は香典から支払い、不足額は追加であなた(被相続人の母)が50万円ほど立て替えて支払ったとのことです。
葬儀社は喪主に費用を請求しますので、あなたとしては喪主に立替えた葬儀費用を請求することになります。
喪主としては、葬儀社から請求されれば支払いをする立場ですので、あなたは立替金を喪主に請求することができます。

【葬儀費用を葬儀に出席した相続人が負担するという考え方もある】

ただ、喪主が立替金の支払い義務があることを前提としても、喪主が最終的に、葬儀費用の全部を負担する必要があるのでしょうか。
葬儀費用の負担者については法律に明確な定めがなく、裁判所の判断も扱いが分かれています。
最近の裁判例の傾向としては、基本的には葬儀内容を手配した喪主が全額負担し、香典も喪主が全額受け取るという判断が多い印象があります。
家裁の遺産分割の調停では、葬儀に出席した相続人に対して、葬儀費用が適正であるということを前提として、分担をしてもらう方向で話を進めることも多いです。
もし、その方向で話しが進むのなら、立替金のうち、あなたの負担分(もちろん葬儀費用から香典を引いた残額を、喪主を含む出席相続人の数で分割負担することになると思われる)という解決も考慮しておくといいでしょう。
(なお、相続ブログNo.560に同様の論点が掲載されていますので参考までに。)


不正出金とじん肺訴訟【Q&A №664】

 

【質問の要旨】

・相談者の祖父が死亡。相続人は、相談者の母とその弟。
・相談者の母の弟が、祖父のお金を不正に引き出していた。その分を返還させることは可能か?
・祖父の死因はじん肺であるが、母の弟の委任状だけで訴訟できるか?
・その場合、勝訴したら、慰謝料は弟がすべて受け取るのか?
・祖父の財産を母が受け取るような方策はあるか。

【ご質問内容】

先日祖父が亡くなり、母とその弟(祖母は亡くなっており受け取りは姉弟の2人)で遺産を分けようとしたところ祖父の生前に弟がお金を引き出していたことが判明。

その詳細はお願いしても見せてもらえず行方が不明。

世話していたのは自分たちだから使っても当然だとの言い分でした。

弟が着服していた分を支払わせることは可能でしょうか。

また、祖父はじん肺が原因で亡くなったため、弟が訴訟を起こすと言っているのですが弁護士への代理依頼の委任状は弟のものだけで訴訟は可能なのでしょうか。

勝訴して慰謝料が支払われる場合、弟が全て受け取ることになるのでしょうか。

どうにかして祖父の生前の財産を母に渡るようにできないでしょうか。

弟の後ろには税理士も弁護士もいるとのことでどう動いてよいのかわからず教えて頂きたいです。

 

(くっく)


 ※敬称略とさせていただきます。

【母は弟に対して、生前引出分についての請求ができる】

遺言書がない場合は、法定相続人は法定相続分に応じて遺産を相続します。
今回のように、子が2人のケースでは、あなたの母とその弟が2分の1ずつ相続するということになります。
生前に、弟が祖父の口座から無断で出金していたのであれば、祖父は弟に対して、損害賠償請求権を持っていたということになります。
祖父死亡後は、祖父の持っていた損害賠償請求権は、あなたの母にも相続されますので、生前の引き出し分についても、母の法定相続分(2分の1)の限度で、母は弟に対して請求することができます。

【生前引出分については、調査と分析が必要】

ただ、母が弟に対して、損害賠償請求をするためには、母の側で、弟が祖父の口座から多額の出金をしたということを証明する必要があります。
具体的には、
① 預貯金口座からの多額の出金の存在
② 出金した人はだれか
③ 出金した金員を誰が取得し、何に使ったのか
の三点を主張・立証しなければなりません。
このうち、①については、祖父の口座の取引履歴を取得すれば、明らかになります。
取引履歴は、相続人であれば、最長で過去10年分遡って取得することができますので、早急に取り寄せ手続きをされるとよいでしょう。
また、②及び③に関して、今回弟は、「世話していたのは自分たちだから使っても当然だ」などと言っているとのことですので、出金の事実をある程度認めているのかもしれませんが、いつ言い分を変えてくるかわかりません。
そのため、預貯金の払戻伝票などを取り寄せし、筆跡などから、弟が出金に関与したという証拠をできるだけ集める必要があります。
ATMで引き出されている場合には、筆跡などは残りませんが、取引履歴を見ることにより、どこに置かれた機械で出金したのかがわかり、出金者の特定に役立ちます。
弟が出金したことが判明すれば、③の取得者と使途については、出金した弟が、自分ではないというのならその主張立証をする責任があります。

【意思能力の主張のため、カルテの取り寄せも考える】

無断出金の証明には、カルテが役立つことがあります。
祖父はじん肺で亡くなられたとのことですので、入通院された病院や医院のカルテを取り寄せましょう。
カルテの記載内容や看護日誌の内容等により、祖父の意思能力が判明し、その程度によっては、本人には出金ができなかったと主張立証できる可能性があります。
また、祖父が入院していた時期に多額の出金があれば、それも弟が関与したと主張できる可能性があります。

【じん肺の訴訟は、弟だけでも可能】

次に、弟が弁護士に依頼して進めようとしているじん肺訴訟ですが、これも、祖父が国や企業に対して有していた損害賠償請求権を母や弟が相続して請求するものです。
そのため、母と弟は、祖父が有していた損害賠償請求権の2分の1ずつをそれぞれ有しており、それぞれが国や企業に対して、2分の1の損害賠償請求をすることができるということになります。
したがって、弟は、自分の相続分である2分の1については、一人で訴訟をすることが可能であり、その分だけ弁護士に依頼することももちろん可能です。
その場合、弟がした訴訟の結果には、弟だけが縛られますので、勝訴すれば、祖父の損害額の2分の1を弟だけが受け取る権利を持ちます。
反対に、弟が敗訴したとしても弟だけがその結果に縛られます。
そのため、母としては、弟のした訴訟の結果にかかわらず、別途自分の相続分2分の1について訴訟をすることができます(もちろん、弟が敗訴した場合には、母は訴訟をしないという選択もできます)。

【母が祖父の財産を受け取れるように、今母がすべきこと】

以上の通り、母としては、調査をした上で、
① 弟に対する損害賠償請求(無断引き出し分)
② 国や企業に対する損害賠償請求(じん肺)
をすべきです。
それ以外にも、不動産、預貯金、有価証券等をきちんと調査して、残された財産については、弟との間で遺産分割協議をすべきです。
また、調査する中で、弟が生前に祖父から贈与を受けていることがわかれば、それについては特別受益として遺産に持ち戻して計算することにより、母の受け取り額が増額できることもあります。
いずれにせよ、専門的な知識が必要ですし、調査すべき内容も請求すべき内容も多岐にわたりますので、お近くの弁護士に相談されることをお勧めします。


母に頼まれた?兄の出金【Q&A №661】

 

【質問の要旨】

・母の生前、銀行から兄が500万円を引き出した。兄は「母に頼まれて引きし、数日後に現金をもらった」と主張。
・「母が通帳を管理していたから、勝手に出金できない」という兄の主張は裁判で認められるか?
・500万円は贈与ではなかったことの証拠がないが、不利になるか?

【ご質問内容】

母の相続人は私(弟)と兄で、兄は母と同居してました。
母の生前に多額の預金引き出しがあり、その中のひとつに3年前に銀行の窓口で500万円を引き出した件があります。
これについて、払戻伝票の筆跡から兄が引き出したことは証明されていて、母の委任状や意思確認が行われなかったことも証明されています。
この銀行では口座名義人の同居の家族なら本人の代わりに500万円まで引き出すことができるという回答があったからです。
今は兄側に弁護士が就いていこの500万円について兄は、「母に頼まれて引き出し、500万円は母に渡した。数日後、兄と妻(兄の妻)に母が250万円ずつ現金でくれた。」と言っています。
そこで兄夫婦で500万円もの高額な現金を受け取ったら銀行に預けるのが一般的かと思い、受け取った現金の入金履歴などを求めましたが入金はしていないとのことです。
そして母と兄との贈与契約書、母のために使った領収書、母があげたというメモやもありません。
これから裁判を考えているのですが教えて下さい。
(1)兄は「母が通帳を持っていたのだから、500万も引き出されたら気付くはずだ。だから、勝手に引き出してない。」という反論をしています。
確かに母が当時自分の通帳を持っていたのは事実ですし。
この兄の反論は裁判で認められてしまいますか?
(2)私には、母が兄夫婦に500万円を贈与しなかったことを証明する証拠はないのですが、不利ですか?

 

(太郎)


 ※敬称略とさせていただきます。

【前提 兄の主張を整理】

今回、兄の主張を整理すると次のようになります。

①母は兄に500万円の出金を頼んだ(委任の有無)
②兄は500万円を引き出し、いったん母に渡した
③母は数日後、兄とその妻に分けて500万円を渡した(贈与の有無)

今回、法的には①委任の有無、③贈与の有無という2つの論点が問題となりますが、それぞれについて兄が主張をしていますので、今回は兄の主張を一つ一つ取り上げて回答していきます。

【「母が通帳を管理していた・・・」という兄の主張】

これは①委任の有無に関する兄の主張ですが、たとえ母が通帳を管理していても、母が金庫などに入れて厳重管理していたなどの事情が無い限り、同居者なら母に無断で通帳を持ち出すことは可能でしょう。
いずれにしても、兄が銀行に持ち込んだ事実は争いないわけですから、あとは「母に頼まれて引き出し」たか否か、という点が問題です。

【母に頼まれた、という主張について】

まず、一般論として高齢の母が息子に預貯金からの引き出しを任せる、ということは十分にありうる話です。
しかし、ご相談によれば多額の出金は多数存在するが、母に頼まれたのがこの500万円だけとすれば、なぜこの500万だけなのか、不自然さが残るところです。
さらに、500万円の引き出しについては、委任状も意思確認(銀行から母への電話等)も行われていないことから、兄の主張を裏付ける証拠はありません。
そのため、ほかに兄の主張を裏付ける証拠がなければ、そう簡単に裁判所は母に頼まれた、という主張を認めるわけではないものと思われます。

【あなたに証拠がなくともそう不利ではない】

では逆に、あなたの側に「贈与ではないこと」を裏付ける証拠がない、という事情ですが、もちろんあなたの側に証拠がある方がより安心です。
しかし、基本的には贈与を主張する兄が「贈与の合意があった」事を立証する責任を負うため、あなたの側に証拠がない、というだけで負けるわけではありません。

【最後は経過の合理性で判断する】

兄が引き出したお金を「母に渡した」証拠もおそらく見当たらず、現時点では兄が主張しているだけの状況と思われます。
このように、お互いに決め手となる証拠がない出金を裁判所では「預かり遺産」などと呼び(不正出金と同様に)預かり金を遺産に加えて遺産分割の判断を行う傾向があります。
このような預かり金が、母から贈与されたのか、それとも無断の出金なのか、兄の主張がいかに合理的か(不自然さがないか)という観点で裁判所は判断することが通常です。

前記しました兄の主張を再度示しますと、
①母は兄に500万円の出金を頼んだ(委任の有無)
②兄は500万円を引き出し、いったん母に渡した
③母は数日後、兄とその妻に分けて500万円を渡した(贈与の有無)

というものでした。この経過が合理的な経過か、という観点から検討していくことになります。
具体的には、母は兄に贈与するために出金を頼んだとすれば、引き出しの当日に兄とその妻に手渡すのが自然であり、いったん現金を母が受け取り、数日間手元で保管した理由が今ひとつはっきりしません。
ここに不自然さが残るといえるでしょう。
もちろん、兄には弁護士が就いているようですし、口で言うだけならいくらでもストーリーを述べることは可能でしょう。
しかし、結局のところ裁判所は当事者が述べる経過が合理的か否かを自らの感覚で判断します。
そのため、あなたの立場としては、兄の主張には裏付け証拠がないことや、兄が述べる経過がいかに不自然であるかを徹底的に裁判所にアピールしていくことが重要な作業となるでしょう。


兄弟名義の預金は父の遺産か【Q&A №653】

 

【質問の要旨】

父の遺産分割調停中。
父がお金を出した兄弟名義の預貯金は特別受益にあたるか?
預貯金は既に解約済み。
兄弟は父より前に亡くなっている母から受け取ったものであり、父の遺産ではないと主張。
父の遺産と認めてもらう方法はあるか?

 

【ご質問内容】

現在遺産分割調停2年目の者です。
名義預金による生前贈与を受けたにも関わらず特別受益と認めない兄弟がおります。
生前父が書き記した相続人名義の通帳番号のメモ書きが出てきたのでそれを元に兄弟に開示を求めました所固有財産だと主張、なかなか開示に応じず一年以上かかりやっと開示に漕ぎ着けましたが既に解約済…
全額を受領した時点で生前贈与だと主張した所今度は父から受け取ったものではないので特別受益には該当しないと否認。
父が亡くなる数年前に母が亡くなっておりその母から受け取ったものなので現在の遺産分割協議には該当しない、
よって父からの特別受益には当たらないというものでした。
しかし母は専業主婦であり原資は父の収入のみですので父の遺産分割協議で扱うものだと主張したところ調停員の方から『民事で争ってはいかがですか?』と言われてしまいました。
理由は兄弟が認めない限り調停で扱うことはできないとの事でした。
本当にこのような主張が通るのでしょうか?
調停員の方からは後2回で終了だともいわれました。
ちなみに父は3年前、母は10年前に亡くなっております。
母が亡くなった際、父から遺産放棄をしてほしいと言われましたので遺産分割はしませんでした。
特別受益、もしくはそれ以外の主張はできますか?
今後認めてもらうにはどのような方法がありますか?
本当に困っております。
どうぞ宜しくお願い致します。

 

(ラベンダー)



 ※敬称略とさせていただきます。

【生前父が書き記した《兄弟名義の通帳番号のメモ》の意味】

通常、このようなメモがある場合、お父さんが兄弟の名義を借用して預金(いわゆる借名預金)をしたのではないかという推測が成り立ちます。
もし、そうであればその口座は父の遺産になり、遺産分割の対象になります。
しかし、兄弟が借名口座であることを認めない場合、あなたの方が借名口座であることを証明する必要があります。
メモがあったというだけでは証明には不十分です。

【借名口座の証明のために必要な調査】

ただ、兄弟は、現時点では、母からもらった金でその口座を作ったのだと主張しています。
そのため、あなたとしては、次の事実を調査する必要があります。
① その口座の通帳及び取引印は誰が管理していたのか?
② その口座はいつ頃、解約されたのか?
③ その口座の原資はいつ、誰が出したのか(父の履歴から、その当時の原資に該当する出金はないのか)?
もし、上記①の通帳や取引印を父が管理していたというのなら、それは父の遺産であり、兄弟の口座を借名したにすぎないものだという可能性が高くなります。
②の解約時期も参考になります。父が死亡した後に解約されているのなら、父が管理していたが、父が死亡した後に兄弟が何らかの方法でその通帳を入手し、解約したのではないかという《推測》が成り立ちます。
兄弟は母からもらったと主張しているのなら、③の原資に関する調査が役に立ちます。
父の銀行預金口座の履歴を取り寄せし、原資と思われる出金を探すといいでしょう。
兄弟名義の口座が作られた時期に、ほぼ同額の出金が父の口座からあったというのであれば、父の借名口座の可能性が極めて強くなります。
逆に、原資に該当する出金がないというのであれば、借名口座の証明にとってはマイナスになります。
なお、父の口座から出金があったが、それが一旦、兄弟が管理する口座に送金されているというのなら、借名口座というよりは、父の兄弟に対する生前贈与となる可能性が高いです。

【調停委員の対応はやむをえない】

遺産分割調停の場合、遺産の範囲が決まらないと、調停のまとめようがありません。
もちろん、調停委員としては、《双方の言い分があるかもしれないが、遺産の範囲については適当なところで折り合いをつけて、分割案を考えませんか?》という対応をすることもあります。
しかし、今回の兄弟のように、父の遺産ではないという強硬な姿勢を示しており、妥協に応じないというのであれば、調停委員としては《その兄弟名義の預金が遺産になるかどうかを裁判ではっきりさせるしかないですね》としか言えないでしょう。
調停はあくまで、双方が互いに譲りあって解決する制度であるため、その妥協点がみつからないと不調にせざるをえません。
2年間も調停を続けているというのが調停としては異例の長さであり、後2回で解決しなければ、調停打ち切りという判断はやむをえないでしょう。

【裁判をする前に、弁護士に相談することも考える】

借名口座として遺産にはいるのかどうかについての判断方法は前記のとおりです。
ただ、どのような事実及びそれを裏付ける証拠があるのか、また、その事実で借名口座と証明できるかはかなり判断が難しいです。
もし、可能であれば、相続に詳しい弁護士に相談され、その結果、証明が難しいとなれば、不満であっても現在の調停で解決するしかないでしょう。
また、証明できる可能性があれば、裁判への道をお勧めします。


使途不明金問題の被告の反論について【Q&A №629】 0629

【質問の要旨】

使途不明金の主張立証責任

記載内容   使途不明金 引き出し  返還

【ご質問内容】

亡くなった母の相続の際に、母と長年同居していた兄が通帳の開示を拒んでいました。

怪しいと思い、取引履歴を取り寄せたら予想通り多額の使途不明金の存在がありました。

その総額は、母が亡くなる5年前からで4000万にもなります。

引き出しは一度に20万~50万で、引き出し額の合計が100万になる月もありました。

ATMを使えない母でしたので、引き出し行為を行ったのは兄があっさりと認めました。

一方で、「母から頼まれて引き出した。引き出したお金は全部母に渡している。

その後、母が何に使ったのかは知らない。」と言っています。

先日、役所で開催された法律相談で弁護士に相談したら「兄が母親に渡したと言うのであれば、母親が受け取っていない事をこちらが立証しないと無理です。従って裁判では返還を求めるのは無理に近い。ほとんどの裁判で、被相続人に渡したと言って逃げることができてしまっている。」と言われました。

今回、初めて相続に強い弁護士さんの質問コーナーを発見し、ご質問させて頂きました。

 

(フルホビ)

 

 ※敬称略とさせていただきます

【訴訟で争われる典型的なケースです】

今回の質問のケースは、同居の法定相続人が被相続人の財産をカード出金していたということで、世間でよくあるケースです。

実は、当事務所が扱うケースのほとんどが、このような案件です。

【証明する責任は誰にあるのか?】

死んだ母の口座から生前に出金されていた場合、その出金を兄が取り込んでいたという事案では、取り込んだという点の証明はあなたがする必要があります。

具体的には次の2点の証明が必要です。

① 母の口座から出金があること。

② その金を兄が取り込んだということ。

上記の①は取引履歴を取れば簡単に証明できます。 問題となるのは②の証明ですが、今回の質問では、兄がカード出金をしたことを認めています。

役所で相談された弁護士が、証明責任はあなたにある言ったことは正しいです。

しかし、兄が自分がカード出金をしたことを認め、しかも母の口座に、カード出金した金銭の入金がないというのであれば、兄が勝手にその金銭を使ったのではないかと考えるのが妥当な結論です。

そこまで行けば、兄が取り込んだという証明、100%ではないにしても、かなりの程度できていると思われます。

このようなときには、今度は兄が、出金額は母に渡した、あるいは母のために使用したということを証明する必要があります。

【証明責任は天秤のようなもの】

裁判における主張や証明責任は上皿天秤のようなもので、ある程度、あなたが証明し、それが事実らしいということになると、今度は兄の方が反証(あるいは反論)することが必要になります。

兄は母に渡したというのであれば、その点の証明は原則として兄がする必要があります。

あなたの方が、母が受け取っていない事実まで証明する必要はありません。

【カード出金をした理由はどうしてか?】

観点を変えて説明します。

兄は母に依頼されてカード出金をしたのなら、母から委任を受けて出金をしたのであり、母にその出金額を返還する義務があります。

その義務を履行したかどうかは、当然、義務者の兄がするべきものであり、証明責任はあなたではなく、兄が負うという結論になります。

【裁判の見通しについて】

役所で相談した弁護士は、裁判での返還は無理に近い、ほとんどの裁判で被相続人に渡したといって逃げることができるという判断ということですが、私とは見解が異なります。

冒頭に述べたように、当事務所が中心に扱う相続案件は、このような生前の取り込み分がある場合がほとんどです。

被害者の立場で、どんどん訴訟を起こしていますし、依頼者の人にそれなりに満足のいく成果を上げています。

もちろん、裁判になれば、兄の方からは、いろんな隠された事実を言い出し、また、新しい主張をしてくるでしょう。

裁判のことですので、絶対に勝訴するというような断言はできませんが、最悪の場合でも和解という解決方法で取り込んだ金銭の一部でも返還させることも可能の場合が多いです。

【弁護士に相談することをお勧めします】

この相談はあくまで質問者の方がお書きになった事実の限度で、回答をしています。

弁護士としてはより詳しい事実を知り、正確な判断をしたい案件です。

何が問題で、今後、どのような対応をしていいのか、その回答を得るために、是非、相続に詳しい弁護士に相談されるといいでしょう。


★愛人の子にも相続権はあるか【Q&A №70】 0070


父が車の自損事故で亡くなり、損保会社から死亡保険金がおりると連絡がありました。

 

母は健在で私は一人っ子ですが父に認知している子供がいると知らされました。

 

損保会社の方は保険金の受取は相続ではないので保険金の受取割合は3人で話し合うようにと言われました。

 

法定相続では母が1/2、私が2/6、認知した子が1/6になると思いますが、愛人から慰謝料を受け取っていないし、20年以上苦しめられているのでたとえ1/6でも持っていかれるのは納得できません。

 

相手は代理人として弁護士をたてました。

 

今後どの様に進めていったらいいのでしょう。。

(大阪のおばちゃん)
 

 

(この回答は平成25年9月4日に出た最高裁の判例に基づき、それまでの回答内容に変更を加えております)
 


夫が愛人を作った場合、妻はその愛人に対して、不法行為の損害賠償請求ができますが、この請求は不法行為の存在を知ってから3年以内に請求しないと消滅します。


 
しかし、この請求は、あくまで、妻から愛人に対して請求できる権利であり、愛人の子自身が不法行為(不貞行為)をしたわけではありませんので、愛人の子に対する損害賠償を請求はできる余地はありません。
 


したがって、慰謝料を理由に相続取り分を少なくするという主張はできないことになります。


 
なお、参考までに言えば、妻の立場から不法行為(不貞行為)による損害賠償請求が可能ですが、その不法行為(夫の不貞行為)があったことを知ってから3年以内に請求しないと時効で消滅します。

 

そのため、不貞行為が継続していたのであれば、現在(請求したとき)から遡って過去3年間の不貞行為については、損害賠償を請求する余地があるかもしれません。

 

【保険金は相続財産ではない?】

 

保険で死亡保険金の支払いがされる場合、その死亡保険金は遺産とはならず、相続の対象とはなりません(生命保険は誰が相続できるのか【Q&A №26】)。

 



そのため、保険契約で特定の保険金受取人が指定されている場合には、その指定された者が保険金全額を取得します(この取得は相続ではなく、保険契約の効果として受取人が取得します)。

 

保険金の受取人が「相続人」とされていた場合には、被保険者の相続人が持分割合に基づいて相続人が保険金を受け取ります(保険金請求権が相続財産に含まれるのではなく、あくまでも保険契約に基づいて取得します。

 

受取人の指定が、相続人が保険金を受け取るべき権利の割合を相続分の割合によるという趣旨を含むと解釈するのです。)。

 


保険契約で受取人が定められていない場合の死亡保険金については、生命保険会社との契約書(取引約款)か、あるいは簡易保険のように法律で、誰が権利を取得するのかが定められているものと思いますので、念のため保険会社にどういう契約になっているのか確かめられた方がいいでしょう。

 

もし、そのような定めがない場合には、法定相続分を参考にして支払を請求するしかなく、愛人の子から保険金の4分の1を請求されると、それを拒否することは難しいものと思われます。

 

 

【非嫡出子も他の子と同じ割合で相続します・・最高裁の判断が出ました】

 



最高裁判所は、非嫡出子の相続分を2分の1とする民法の規定は、遅くとも平成13年7月時点で、憲法14条1項に違反するようになったと判断しました(最大決平成25年9月4日:判例コラム【非嫡出子の相続】)。


 
そのため、現在では、非嫡出子(愛人の子)は、嫡出子と同じ相続分になるので、愛人の子からは保険金の4分の1を請求されることになるでしょう。

 


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