大澤龍司法律事務所 相続問題無料相談ブログ

遺産分割協議後のトラブル【Q&A №580】


【質問の要旨】
口頭での遺産分割協議は有効か

記載内容  遺産分割協議 無効 署名押印されていない 

【ご質問内容】
 はじめて質問させて頂きます。(私は父親の前妻の子供になります)

 父親が死亡し、相続人である後妻(子なし)と前妻の子供(3人)で遺産分割協議の話合い(2回)を持ちました。
 話合い時には、相続人以外に後妻の親族、父の親族や父の友人もその場におり、1回目の分割協議の内容を書面化したものを一同の前で読み合わせを行い、修正箇所が出てきたので修正した「遺産分割に関する覚書」に相続人全員で署名捺印することを同意した後、その日は解散しました。

 後日、後妻からの覚書の返信がないので催促の電話をしたところ、遺産分割協議の内容に納得できないし書面に押印していないので話合いは無効を主張し、弁護士を介在してきました。

 覚書に署名捺印されていない場合、後妻の主張は認められるのでしょうか。
 申込と承諾で契約は締結されると理解しているのですが本ケースの場合は話合いに参加していた人間の証言とその場で録音していた音声データ(後妻も覚書内容で捺印する旨発言している)証拠があれば後妻の主張を崩すことはできるのでしょうか。

(ひろゆき)


【遺産分割協議は口頭でも有効だが…】
 遺産分割協議をする場合には、書面でしなければならないというルールがあるわけではなく、一応は口頭でも有効です。
 しかし、遺産のような通常は多額の財産分割の合意をする場合、口頭だけで成立するという主張が認められるかといえば、難しいと言わざるを得ません(この点は次項の証明のところでも記載していますのでご参照ください)。

 又、口頭で遺産分割協議が成立していると言っても、銀行や法務局は、遺産分割協議書などがない限り、相続登記も預貯金の解約・払い戻しにも応じてくれません。
 そこで、通常は、それぞれの相続人が何を相続するかという分割内容を記載した書面を作成し、相続人全員が実印を押して印鑑証明書を添付するという厳密な方法をとっているのです。

【口頭で遺産分割協議が成立したことを立証するのはあなた】
 あなたが、すでに前に話し合った内容で遺産分割協議が成立したはずだと主張し、後妻さんがそれを認めてくれるのであれば、特に問題はありません。
 しかし、本件の場合には、後妻さんは協議の成立を認めていません。
 その場合に、口頭で遺産分割協議が成立したことを立証するのはあなたです。

 後妻さんも遺産分割内容に同意していたことの証拠としては、音声データが残っているようですが、後妻さんの代理人となった弁護士としては、「そのような方向での話はあったが、合意が成立したと言えるところまではいっていない」と述べ、覚書に署名・押印をしていない以上、まだ協議は成立していないと主張することはまず間違いのないところでしょう。
 あなたとしては、その主張を覆して遺産分割協議を実現するには、裁判所であなたの主張を認めてもらうしかないと思われますが、口頭の合意ということであれば、裁判所も簡単には認めない可能性が高いと思います。
 結局、あなたとしては再度後妻さんと協議をし直すしかないと思われます。

(弁護士 岡井理紗)

★書類を偽造した姉は相続できるのか?【Q&A №461】


【ご質問のまとめ】
子5人のうち長男が亡くなり、続いて、父、母の順で亡くなりました。
長女に有利な内容で遺産分割がされました。
残りの兄弟は、よくわからないままサインしました。
数年後、長男の財産について、長女が偽造で名義を書き換えていたことがわかりました。
長男の財産を分けるにあたって、長女を外すことはできませんか?
残りの兄弟たちが長女に主張できることはないですか?

記載内容  偽造 欠格 遺産分割協議

【ご質問内容】
両親と兄と四人姉妹です。
兄は独身で両親より早くに亡くなりました。子供はいませんでした。
亡くなる1年前に兄の不動産は姉名義に変えられており、両親が相続する財産はありませんでした。
その2年後に父が亡くなり、さらに4か月後に母が亡くなりました。
両親を続けて亡くして平常心では無い中、長女が知り合いの税理士と一緒になって遺産分割協議を主導しました。
父は公正証書で母と兄そして長女に不動産を遺贈していました。
母は遺言書を書いてはいません。
父の遺言書の執行と母の遺産分割を同時に行いました。
法律のことをよく理解していなかった妹3人は、遺産分割協議書にサインしてしまい、その協議書の控えを貰えることも知らず、とても不公平な分割を了承していることに後で気づきました。
どうすることもできずに7年が過ぎたころ、長女名義に変えられた兄の不動産は、長女が書類を偽造して勝手に名義変更していた事が分かり、裁判で兄の名義に戻しました。
しかし、その兄名義の不動産を姉妹で相続するにあたり長女は法定での分割を主張して譲りません。
長女に遺産を渡さない方法はないでしょうか。
私達が長女に対して法的に主張出来ることはありますか。
父から遺贈された不動産は特別受益として、今回の遺産に含めることは可能でしょうか。
7年前にもどって遺産分割協議を最初からやり直したい気持ちです。
宜しくおねがいします。

(イーサン)


【お兄さんの遺産分割について】
 お兄さんには配偶者(妻)も子もないのですから、お兄さんの遺産は直系尊属であるお父さんとお母さんが相続することになり、その法定相続分は2分の1ずつです。

※ 本来の相続の流れ
         お兄さん
             
お父さん(1/2) お母さん(1/2)
            
 子  お母さん    
      
      

【お兄さんの遺産でお父さんが相続した分について】
 お父さんはお兄さんとお母さん、妹さんに不動産を遺贈しているのですから、この遺贈分は特別受益として遺産に持ち戻して、遺産分割をするべきものです。
 ただ、既にお父さんの遺産について分割協議が行われているのであれば、その対象となったお父さんの遺産については特別受益分も含んで解決したと考えるのが通常でしょう。
 遺産分割協議後に(お兄さんの分をお父さんが相続した)新たな遺産が判明した場合には、残念ですが、長女の主張するように法定相続分は渡さざるをえないことになります。

【欠格事由にも該当しない】
 相続人から除外する制度としては欠格制度があります(民法891条:末記条文を参照ください)。
 この制度は被相続人を殺したり、遺言書を偽造したような場合には相続させないという制度です。
 しかし、今回の質問では遺言書ではなく、登記関係書類の偽造ですので、この欠格事由にもなりません。

【遺産分割協議に取消、無効事由はないかを考える】
 結局、既に遺産分割協議をしているというのが一番のネックです。
 事情がわからなかったのならその時点で弁護士等に相談されるべきでした。
 現在、取りうる手段としては、遺産分割協議を何らかの理由で無効にすることです。
 遺産分割協議について、騙されたようなことや思い違い(錯誤)をしているような場合には詐欺で協議を取り消しし、あるいは錯誤で無効とすることもできなくはありません。
 遅きに失した感がなくはありませんが、相続に詳しい弁護士に分割協議時点の具体的な話をしたうえで、協議を無効や取り消しになるような方策がないかどうかを相談されるといいでしょう。
 また、仮にお兄さんの不動産を長女名義にしていた際、長女がその不動産を他人に賃貸しておれば、その賃料を法定相続分に応じて返還請求することも可能でしょう。

(弁護士 大澤龍司)

【参考条文】
民法

(相続人の欠格事由)
第891条
 次に掲げる者は、相続人となることができない。
一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
二 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
三 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
四 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

遺産分割協議成立後の寄与分の請求【Q&A №433】


 長兄,次兄と遺産分割協議を行い、末弟の自分が土地建物を相続することで合意し、協議書を作成した。
 遺産分割協議成立後(土地建物の登記も完了済)2か月後、長兄から、生前両親へ仕送りをしていた金額が1000万円ほどあるから、長兄が遺産分割協議書成立前に有していた法定相続分相当の金銭を支払うよう請求された。
 遺産分割協議中長兄は両親への仕送り金額については口頭で、末弟へは請求しないと言っていた。
 法的に長兄の要求に応じる義務はあのでしょうか?
 要求に応じないと、私の会社に乗り込んで会社の上司に判断を仰ぐと言ってきます。
 会社の上司や私にとっても迷惑行為だし、なかば脅迫めいた言動で、半年ほど揉めています。

記載内容  遺産分割協議 成立後 寄与分 寄与分の放棄

 

(イトチュ)


【遺産分割協議がなされておれば、原則、寄与分は主張できない】
 遺産分割協議は法定相続人等の間でされる遺産の処分についての最終的な合意です。
 そのため、その協議に参加した者の中に、寄与分を主張する者があれば、その協議の中で寄与分の扱いが議論されているはすです。
 したがって、遺産分割協議後には、原則として寄与分は主張できないと考えていいでしょう。

【過去の裁判例を見ると・・】
 古い裁判例ですが、《遺産分割の協議に際しては、申立人の被相続人に対する送金その他による相続財産の維持増加についての一切の寄与貢献も、充分考慮検討されて結論が出されたものであるから、申立人の寄与分を定める協議も同時に成立しているものといつてよい》というもの(広島家庭裁判所:昭和61年5月15日決定)があります。
 この裁判例のケースでは、寄与分の話が遺産分割協議の中で出ていたことから遺産分割協議の効力を認め、別途寄与分を請求できないという結論になりました。

【本件でも寄与分の主張は認められない】
 本件でも「遺産分割協議中長兄は両親への仕送り金額については口頭で、末弟へは請求しないと言っていた」という前提ですので、遺産分割協議の際に寄与分の話があり、お兄さんとしては、積極的に寄与分を主張しないことを前提としていたことになります。
 このような事実経過であれば、お兄さんのいう寄与分の主張は認められないでしょう。

【お兄さんの行為を止めるには・・】
 お兄さんは「要求に応じないと、私の会社に乗り込んで会社の上司に判断を仰ぐと言ってきます。
 会社の上司や私にとっても迷惑行為だし、なかば脅迫めいた言動で、半年ほど揉めています」ということですが、そのような行為に対処するためには《面会強要禁止の仮処分》という手続きがあります。
 あなたに面会を強要するのではなく、第三者である上司の方に面会を強要するというケースですが、あまりにひどいという場合には、弁護士と相談され、仮処分ができるかどうかを相談されるといいでしょう。

姉が口頭で約束した相続放棄【Q&A №410】


 5年前、父が死んだとき、姉2人が「財産はなにもいらない」といって、法定相続分は放棄する、といいました。
 そこで、安心して、土地の登記をそのまま(父の名義)にしといといたんですが、 今度、父がしんでから、5年たったので、そろそろ、私名義に相続登記しようと思ったら、今度は姉が、「やっぱり法定相続分の3分の1もらう」といいだして、相続登記に協力しません。
 以前、姉2人が「財産はなにもいらない」といって、法定相続分は放棄する、といったのではないか、というと、「あれは、撤回する」とかいいだしました。
 一度、口頭とはいえ、法定相続分放棄したのに、後になって撤回できるのでしょうか?
 どう対応したらいいのでしょうか?

 姉2人が「財産はなにもいらない」といって、法定相続分は放棄する、といいました」ということが、遺産分割協議だとおもうのですが。つまり、この言葉は、遺産分割協議の時に、法定相続分の放棄に合意した、ということではないのでしょうか?  遺産分割自体は、口頭でも成立するのではないのでしょうか?
 遺産分割協議書は作成しなければならないというものではないと思いますが。
 そうすると、一度成立した遺産分割協議は原則として撤回できないのではないのですか?たとえ、遺産分割協議書がなくても。

記載内容  口頭 遺産分割協議

(hunter19581958)


【口頭でも遺産分割協議は成立します】
 法律上、口頭でも合意ができれば遺産分割協議は成立します。
 ただ、問題はその証明ができるかということです。
 たとえば、裁判になったとき、お姉さんが「相続財産を一切受け取らず、あなたにすべて相続させる約束をしました」という証言をしてくれるでしょうか。
 もし、してくれれば、あなたの主張は認められる可能性がないわけではありません。
 しかし、最近のお姉さんの発言からしますと、そのような証言をするとは考えにくいでしょう。
 仮にお姉さんがそのような証言をしたとしても、《本気で言ったのではなかった》という手もありそうですし、お姉さんに弁護士がつけば、それは《確定的な意思表示ではなかった、もし、遺産分割協議書という形できっちりと財産を分けるのなら、法定相続分を主張するつもりであった》というような主張をする可能性も高いです。

【あなたの立場で今、何をするべきか?】
 あなたとしては、まず、お姉さんがそのような発言をしたということを証明する必要があります。
 そのため、お姉さんに事実を確認し、その際、録音をして証拠を残す必要があるでしょう。
 次に、お姉さんがなぜそのような発言をしたのか、そのような発言をした理由や動機も押さえておく必要があるでしょう。
 例えば、お姉さんが生前に多額の贈与を得たからでしょうか、それともあなたがお父さんの面倒を献身的に見たからでしょうか。
 もし、そのような事情があれば、お姉さんの発言も真意に基づく確定的なものであるとされる可能性がなくもありません。
 ただ、そのような事情がなく、「財産はなにもいらない」と言ったということだけでは裁判所は相続分の放棄をする確定的な意思表示があったとは認定しない可能性が高いでしょう。
 あなたは納得いかないかもしれませんが、裁判は言った言わないということだけで判断するのではなく、そのような発言をするような事情(諸般の事情といいます)があったかどうかをも重視し、結論を出すものだと考えられるといいでしょう。

【現実的な対応も考える】
 あなたへの相続登記を行うためには、お姉さんが実印を押印し、印鑑証明書を添付する等の協力が必要不可欠です。
 「あのとき相続分は要らないと言ったではないか」とお姉さんを責め続けたとしても、お姉さんが登記に協力しなければ相続登記はできず、結局は訴訟をせざるをえず、しかもその訴訟であなたが勝訴するかどうかははっきりとはしません。
 現実的な対応としては、お姉さんに「放棄すると言ったではないか」ということで責め続けつつも、一定の対価を支払って相続登記に協力してもらうというのが最も解決しやすい方法だろうと思います。

特別受益証明書と遺産分割協議の違い【Q&A №408】


 遺産分割協議書が必要だと思うのですが、3人のうち1人に全部相続させる場合、これにかえて、特別受益証明書をだしてもいいのでしょうか?

記載内容  特別受益証明書 相続放棄 一人で相続 遺産分割協議

(jj)


【特別受益証明書とは・・】
 特別受益証明書とは、法定相続人が「被相続人から特別受益を受けたことを認めるとともに、遺産分割協議において相続分を主張しません」というような内容の文書です。
 この文書が作成される理由は、この証明書と印鑑証明書を添付して相続登記の申請をすると、法務局がこれを受理して、その特別受益証明書を提出した相続人を除外して相続登記が簡単にできるからです。

【特別受益証明書の便利な点】
 「特別受益証明書」は、相続放棄や遺産分割協議の手続きをしないで、司法書士が作った特別受益証明書に署名捺印をするだけで、他の共同相続人に遺産の全部又はほとんどを帰属させ、相続登記をし、遺産分割を済ませることができます。
 このように簡単に相続登記ができることから、昔は広く使われており、事実上の相続放棄をするという役割を果たしていました。
 しかし、最近はあまり使われていません。

【特別受益証明書の問題点】
 その理由は、「特別受益証明書」を作っていても、実際にはなんら贈与も存在しないようなケースもあり、後日、その点が問題になり、訴訟した結果、特別受益証明書の効力が否定され、相続登記が覆ることがあったからです。
 司法書士に確認したところ、遺産分割協議による相続登記をするように《指導》しているとのことでした。

【できれば相続放棄か遺産分割協議が望ましい】
 《特別受益証明書を出していいでしょうか?》という質問ですので、別に出しても構わないという回答にはなります。
 しかし、特別受益証明書が事実上の相続放棄の役割を果たすといっても、それは本来の相続放棄ではありません。
 そのため、被相続人に債務があった場合、特別受益証明書に署名押印した者も法定相続分に応じて債務を負うことになりますので、債権者から請求されれば支払う必要があります。
 その点を考えると、もし、遺産をいらないというのであれば、家庭裁判所に対して相続放棄の申立をするのが、債務の負担が一切なく、一番、安全です。
 又、遺産の全容を確認した上で、相続人全員で遺産をどのように分けるのかを協議し、各相続人が納得した形で遺産分割協議書を作成するのが、結局、後日の紛争を防止する意味で最も望ましいです。
 協議すると他の相続人に相続分を主張する場を与える、それは避けたいという特殊な意向がない限り、是非、遺産分割協議書を作成することをお勧めします。

嫁入り道具と持参金の扱い【Q&A №377】


 父の遺言書で不動産祖先祭祀は兄、預貯金は母、株は母と私と指定されていました。
 兄の引き継ぐ不動産の維持管理費を 請求してきましたので、不動産を相続してた者が支払うものでしょうと言って、拒否しました。兄の言い分は売ることもできない不動産の管理をおれにさせるのかというものです。
 母が半年前に他界して、遺産相続協議書を作りました。その中に「この協議書に記載されていない財産、および、知られざる遺産(積極財産、消極財産とも)は、すべて兄が取得または承継する。」という一項ががあるから、母が相続するように書かれているものはすべて兄が相続する権利があると言ってきました。
 また、嫁入り道具にかかった費用を計算に入れると言っています。兄も、多額の結納金を親から出してもらっているし、家を建てたときにもお金をたくさんもらっています。しかし、そのようなものは一切もらっていないと言い切ります。
 母の遺産分割協議書は今回の件に影響しますか。嫁入り道具はどのように考えるべきでしょうか。計算の仕方を教えてほしいです。母はメモを残している可能性があります。持参金と嫁入り道具では考え方が異なりますか。

記載内容  嫁入り道具 持参金 遺産分割協議 死亡した人に遺贈する遺言の効力

(みつこ)


【まず、母が死亡し、その後、父が死亡したと理解しての回答】
 質問ではお母さんとお父さんのどちらが先に死亡したのかが明らかではありません。
 ただ、質問中に「母の遺産分割協議書は今回の件に影響しますか」とあり、この「今回の件」とはお父さんの死亡ということだと理解すると、経過としては次のとおりになると思います。
  お父さんの遺言書作成⇒お母さんの死亡⇒お父さんの死亡
この前提で、以下のとおり回答します。

【遺産分割協議書はその被相続人の遺産について効力を有する】
 お母さんの遺産分割協議は、お父さんとあなた、お兄さんの3人(と思われる)で作成されているはずです。
 ただ、遺産分割協議は、被相続人であるお母さんの遺産について効力を有します。
 お母さんの分割協議の段階ではお父さんは死亡していないのですから、お父さんの遺言書に「預貯金は母」、「株は母と私」と記載されていても、遺産分割協議の時点ではお父さんの預貯金や株は、お母さんの遺産ではありません。
 従って、お父さんの保有している預貯金や株がお母さんの遺産分割の対象となることはありません。

【死亡した人に対する遺言は無効】
 お父さんの遺言書に記載されていた「預貯金は母」等の記載は、その遺言書が効果を発揮する(お父さんが死亡した)時点では、既にお母さんが死亡していましたので、上記遺言書の部分は効力を失っており、お母さんのものになることはありません。
 そのため、お母さんの遺産分割協議書に「この協議書に記載されていない財産・・は、すべて兄が取得または承継する」との条項があったとしても、お兄さんのもらう分が増加することはありません。

【嫁入り道具と結納金、建築代金の補助】
 嫁入り道具については特別受益になるとの考えもあります。
 しかし、一方ではお兄さんも結納金を出してもらっているのが普通です。
 調停などの実務の扱いでは《痛み分け》ということで双方の主張を相殺する、あるいは主張を双方が撤回するという扱いをすることも多いです。
 もちろん、嫁入道具額と結納金のどちらかがあまりにも多額であり、差額が大きすぎる場合には、相続人間の公平を考慮して特別受益とされる場合もありえますが、その場合には差額が多額であるという点を証明する必要があるでしょう。

【お母さんが残したメモの効力】
 お母さんが残しているとされる(おそらく持参品に関する)メモがある可能性があるようです。
 ただ、私(大澤)が経験したケースでは、持参品を毛筆で記載した巻物風の目録が提出されたケースがありましたが、この場合も、結婚式費用や結納金、嫁入り持参道具などを考えて、双方が互いに特別受益の主張を撤回するということで最終解決をしました。
 兄弟姉妹間で極端な差額がない限り、一方の分だけを特別受益にすることにはならないと考えていいでしょう。

【嫁入り道具等の計算のしかた】
 嫁入り道具については、そのもらった当時の時価を前提に金額に換算して計算します。
 持参金はその金額でカウントしますし、結納金を出してもらった時もその金額で計算します。
 ただ、繰り返しになりますが、嫁入り道具や持参金が莫大な金額というのではない限り、特別受益としては扱われない可能性も高いです。

遺産分割成立後に出てきた遺言は有効か?【Q&A №290】


 分割協議・遺産分割・相続税申告完了の半年後に、家裁から遺言書検認の通知が来ました。遺言書の有効性をチェックしたいので、その方法と留意点を教えてください。

①遺言書有効性チェックの手順
  ・筆跡等から無効確認の可能性の見当をつけるための費用
  ・無効確認の法的手続きとその費用・所要期間
  ・その他留意事項

②遺留分確保の協議は、遺言書有効チェックに先立って進めるべきですか?遺言執行人への対抗はできますか?
 遺産は土地・建物(固定資産税評価額約90百万円)と預金数百万円で、相続人は質問者の妻・被成年後見人Aとその妹B(被相続人・亡母と同居、医師)です。
 協議に際して被相続人末弟は、Bに土地建物を継がせる遺言書を書いた筈と述べましたが、Bは見つからなかったと否定。Bは被相続人との長年の同居と孝養を理由に土地建物に取得を主張しましたが、Aは法定相続分確保は後見人責務と反論し、最終的に代償金を払って土地建物をBが取得することで決着しました。

記載内容  遺産分割協議 遺言 筆跡鑑定 錯誤 遺言執行者

(testament)


【遺言と遺産分割協議の関係】
 遺言があっても、相続人全員の合意で遺言と異なる内容の遺産分割協議をすることができます。
 ただ、遺産分割協議の時点に遺言の存在を知らなかった場合には、
① 当然に遺産分割協議が無効になる
② 遺産分割協議は有効であるが、遺言が存在していることを知っていたのなら、そのような内容にしなかったということで、錯誤により無効になる可能性がある

という2つの回答が考えられます(当事務所の弁護士の協議では、②の扱いでいいのではないかという意見です)。

 遺産分割協議が有効という前提に立てば、積極的に遺言無効確認訴訟をする必要性はありません。相手方または遺言執行者が、遺産分割協議が錯誤により無効であったとして、遺産分割した財産の返還請求訴訟をしてきた段階で、それに対抗する手段として遺言無効確認訴訟を反訴として提起すればいいと思われます。

【遺言無効訴訟について】
《筆跡鑑定費用》
 遺言の無効を認定してもらう訴訟ですが、無効の原因によって訴訟の手間も期間も異なります。
 被相続人の筆跡ではないということを無効原因とするのなら、筆跡鑑定が必要となります。
 筆跡鑑定費用はケースや鑑定人などによって異なるのですが、これまでの経験では50万円~100万円の間である場合が多かったです。

《法的手続き》
 既に遺産分割協議に基づく遺産の分配が終了しているのであれば、まず、執行者から返還請求訴訟が提起され、それに対応する形で遺言無効確認を反訴で提起するということになるものと思われます。

《弁護士費用》
 裁判をする場合、裁判所等に支払う印紙や郵便切手などとは別に、弁護士費用が必要です。
 弁護士費用は各事務所により算定方法が異なるのですが、当事務所では遺言書を無効にした場合に各相続人が受ける利益(=具体的相続分-遺言が有効であった場合のあなたの相続分)を前提に弁護士費用を算定します。
 具体的には、依頼される弁護士とご相談願います。

《期間》
 期間としては、ケースにより異なりますが、筆跡が主たる争点だとすると1年半程度を見込めばいいでしょう。

《その他の留意点》
 筆跡鑑定ということになると、被相続人(遺言者)の手紙や日記等の比較対象物が必要不可欠ですので、できるだけ多く収集する必要があります。
 なお、今回の質問のケースでは、訴訟も考えられますので、法律の専門家である弁護士に早期に相談し、そのアドバイスで進めるのがいいでしょう。

【遺留分の確保】
 遺言が有効であった場合には遺留分の行使が考えられます。
 そのためには、遺留分減殺の意思表示が必要です。
 これは遺言書の内容を確認し、遺留分を侵害した相手方に対して送付する必要があります。
 遺言執行者に対抗するため、その執行者にも送付しておくといいでしょう。
 なお、「遺留分確保の協議は、遺言書有効チェックに先立って進めるべきですか」という質問がありますが、遺言書が有効であることが確認できない段階では遺留分は侵害されていませんので、遺留分についての協議はするべきではないでしょう。

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