大澤龍司法律事務所 相続問題無料相談ブログ

遺産の対象と遺留分について【Q&A №612】

【質問の要旨】

全遺産を遺贈する遺言があるが、遺留分はどうなるのか

記載内容  全遺産 遺贈 生命保険

【ご質問内容】

母が亡くなりました。父はすでに他界しているため、相続人は弟と私(姉)の二人です。

母は身体が不自由だったため、25年私が身の回りの世話をし、その後5年前に弟が母を引き取りました。(弟とは訳あって絶縁状態です)

母の死後、半年経っても相続についての連絡がないので、問い合わせると、公証役場で作成したすべての財産と権利を弟に相続させる、という内容の遺言書コピーが送られてきました。

また遺言執行者を弟に指名しているため、母の財産の一部を残し、すでに口座名義等を弟のものへ変更しておりました。

遺留分減殺請求を考えております。
下記は遺産の対象となるのでしょうか?

① 弟家族への生前贈与
  弟、妻、子、孫2(幼児)5人それぞれ×100万×5年間=2500万

② 一時払い生命保険の掛け金1000万
  契約者、被保険者、受取人すべて弟 
  弟から上記は遺産の範囲に含めないと主張されているのですが、納得できません。
  また、遺言書作成後の上記贈与の場合、遺留分侵害を分かっていた生前贈与と考えられないでしょうか。

 
(はな)

 

 ※敬称略とさせていただきます

【遺留分減殺請求ができます】

今回のように遺言で、遺産が他の相続人(弟)に全部いくような場合には、遺産をもらえない相続人(あなた)は遺留分減殺請求をすることができます。
法定相続人が子2人なら、減殺請求で遺産の4分の1をもらえます。

【すべての生前贈与が遺産になるわけではない】

問題は、遺留分計算の前提となる遺産の範囲です。
法律では、すべての生前贈与が遺産になるとはされていません。
遺留分の計算上、遺産に組み入れられるのは次の2つの場合です。
①相続開始前の1年間になされた贈与
②1年を超える前の贈与であっても遺留分権利者に損害を与えることを知ってなされたもの

【特別受益は1年以上前でも遺産に入る】

ただ、法律には記載されていませんが、裁判所は共同相続人の特別受益になるような生前贈与については、相続開始時から1年を超える生前贈与でも遺産に入るとしています(最高裁平成10年3月24日判決)。
その結果、母の遺産の共同相続人の立場にある弟への生前贈与は、1年を超える分でも遺産に組み入れられます。

【共同相続人以外の者に対する贈与は原則、遺産に入らないが・・

弟の妻、その子や孫は、共同相続人という立場ではありません。
そのため、このような立場の者に対する生前贈与は相続開始の前、1年間のみに限って、遺留分の基礎財産には組み入れることができます。
ただ、特別受益に関する判例には、《実質上、相続人(弟)にしたと同視できる生前贈与は特別受益になる》としたものがあります(【相続判例散策】相続人以外の者に対する特別受益)。

そのため、弟の妻らに対する生前贈与が実質上、弟に対してしたものと同視できるとすれば、生前贈与の時期を問わず、遺産に組み入れすることができるという結論になります。
実質上という判断は諸般の事情を考慮してなされるものであり、簡単には言えませんが、弟とその家族にのみ生前贈与をしており、各人への贈与額が贈与税の基礎控除以内の同額であるというのであれば、実質上、弟に対する500万円の生前贈与を、贈与税を免れるために分割したにすぎないと考えることも可能かもしれません。
ただ、遺留分の分野は相続でも最も難しいところであり、かつ、特別受益であるかどうかが大きな論点になるケースです。
相続に詳しい弁護士に詳しい事情を説明した上で、その見解をお聞きするのがいいと思います。

【一時払い生命保険の掛け金の扱い】


被相続人が契約した生命保険については、その受取人が共同相続人の一人であっても遺産にはなりません(Q&A №298)。
ただ、今回は、弟が契約者であり、被保険者でかつ受取人であるなら、弟は本来自分が支払うべき1000万円の掛け金を母に支払ってもらったのであり、その全額が生前贈与になり、かつ特別受益に該当すると考えられ、遺留分減殺の対象になります。

認知症の義母宛の父の遺言【Q&A №571】


【質問の要旨】
再婚した父が遺言を書いていた場合の先妻の子の相続分

記載内容  再婚 義母 任せる  遺留分 先妻の子

【ご質問内容】
父と母は 再婚で、私は父の実の娘です。
幼い頃の離婚時に、実母方が弟を連れ、父が私を引き取りました。
現在は、私は結婚していて義母とは養子縁組はしてません
父は難病をかかえていますが数年前に母が認知症で、遠方の実の妹夫婦宅へ行きっぱなしで帰らず、今では 介護施設へ入居してます。
数ヶ月前に父が自宅で転び、一人暮らしが不可能となり今では療養型病院に入居してます。
もう自宅には帰れないので、私が自宅の片付け、売却を頼まれましたが片付けてたら、義母宛の銀行で作成した遺言書がでてきました。
現在、父名義の700万ほどの銀行預金通帳を私が預かり任されてます
他の預金は認知症の母がわかってるだけでも1000万円を持っていってしまいました
母の遺言書は見当たりません。
父が口頭では娘の私に全て任せると言うのですが、もしこのまま父が他界したらどうなるのでしょうか?又、義母が他界したらどうなるのでしょうか?

(mamis)


【事案の整理】
義母宛の遺言内容が明らかではないのですが、おそらくお父さんが「義母に全財産を相続させる」内容で作成したものと推測して回答いたします。
この状況でお父さんが死亡した場合、遺言に従って全遺産は義母が相続することになります(なお、あなたは遺留分の限度で権利がありますが、この点は後述します)。

【お父さんが死亡した場合・・遺言内容により異なるが、遺留分請求が必要になるかもしれない】
まず、お父さんが死亡した場合、お父さんには遺言書がありますので、その遺言書の内容で遺産を分けることになります。
ただ、その遺言書の内容が、義母に全部を相続させるという内容であれば、あなたはお父さんの遺産を相続できなくなります。
このような、遺言等で遺産が十分にもらえない場合には、法律で、遺産を多くもらう人から最低限度は返してもらえるようにする制度があります
遺留分減殺(いりゅうぶんげんさい)請求といい、遺言書の内容を知った日から1年以内に、遺産をくれと申し出る制度です。
あなたは被相続人であるお父さんの子ですので、減殺請求をすると法定相続分の4分の1の半分の、8分の1の遺産をもらうことができます。
なお、遺産としては義母が生前に貰った1000万円も遺産に組み入れて計算をしますので、あなたが遺留分としてお母さんに請求することができるのは次の計算式で算定される金額です。
遺留分=(義母が生前に貰った:1000万円+父名義の銀行預金+お父さんのその他の遺産)×8分の1
(なお、遺留分減殺請求については【コラム】遺留分とは参照)

【父より前に義母が亡くなった場合】
父より前に義母が亡くなったときは、あなたは義母の子ではありませんので、義母からは遺産を相続することができません
この場合、父の遺産がどうなるかですが、父の遺言書に《義母に遺産全部を相続させる》という記載があっても、既に義母が死亡しているのですから、遺言書は効力がなくなります
そのため、父が亡くなった時には、あなたと弟さんが父の遺産を2分の1ずつの割合で取得することになります。

【遺産が欲しいのなら遺言を書いてもらう】
最後に、お父さんが「口頭では娘の私に全て任せる」という発言されていますが、このような言葉は、葬儀の手配や自宅の整理、遺産分割完了までの通帳などの管理を任せるという趣旨として理解されるにすぎず、あなたに全遺産を贈与させる、あるいは相続(遺贈)させる意思を表示したものという理解をするには無理があります。
もし、あなたが父から財産をもらいたいというのであれば、新たに「全財産を相続させる」旨の遺言を作成してもらうことが必要でしょう。

(弁護士 大澤龍司)

20年前の土地売買と特別受益【Q&A №513】


【質問の要旨】
祖父の土地を叔母たちが売買で手に入れたら、相続はないのか?

記載内容  売買 特別受益

【ご質問内容】
私の母はわたしが5歳の時なくなりました。
それから30年後母かたの祖父が亡くなりわたしが代襲相続することになりましたが。
2人の叔母はすでに祖父の土地を売買で手にいれていて、土地の登記も済んでいました
日付を見ると20年前に土地は祖父から叔母たちのものになっています。
この場合わたしには土地の相続はもうないということでしょうか
よくわからないので、教えていただければありがたいです。

(たんぽぽ)


【不動産の移転が贈与でない限り、特別受益にならない】
お祖父さんの遺産が叔母さん2人の名義になっているようですが、それが贈与で移転されたものなら特別受益の問題になります。
しかし、売買で移転したのであれば、特別受益の問題は発生しません
ただ、当時の相場から見て、特別に安い金額で売買されたというのであれば、その相場価額との差額分が特別受益となる可能性はなくはありません。
しかし、特別安い金額であったという点は、あなたの方で証明する必要があります。
その証明ができないとすると、お祖父さんの土地は既に生前に叔母さんらに売却されており、その登記も完了している以上、この土地は遺産にはならないでしょう

(弁護士 大澤龍司)

地裁の遺留分減殺事件で養育費を決定できるのか【Q&A №501の再質問】


扶養能力がないのに遺留分と養育費は相殺されるのか?【Q&A №501】に関する再質問

【質問の要旨】
地裁の遺留分減殺事件で養育費を決定できるのか

記載内容  婚姻費用 養育費 相殺

【ご質問内容】
子供に対して地裁で遺留分(1250万円)を求めて本人訴訟中なるも、子供(義母と同居し現在は社会人)は、大学卒業までの生活費や学費などの養育費(1600万円)との相殺を要求。
私はその当時から現在まで病気で収入がなく、また数千万円の借金があるので扶養能力はなく、子供は充分な遺産(5000万円)
があるので要扶養状態にはない。
和解交渉でこのことを主張するも、裁判官は、(法律的根拠は示さず)遺留分の権利だけを主張して扶養義務は果たさないのはおかしいとして、私が遺留分をもらえば、そこから子どもが立て替えた養育費を払うように強く要請。
私は、父子間の養育費は家裁の専権事項なので、本裁判では遺留分の決定をし、養育費については被告が調停申立をすべきと主張するも、裁判官は被告から相殺の要求が出ているので、地裁で養育費の決定ができると拒否。

そこで質問なのですが、
(1)本当に地裁で養育費を決定できるのか。
あるいは、和解を成立させんがために私へ譲歩を迫るだけであり、判決では養育費については盛り込まれない可能性が高いと思われるか。
(2)判決で養育費と相殺された場合、それを理由に控訴しても却下となる可能性が高いか。
(3)もし家裁で養育費が決定される場合は、養育費が決まった後に地裁で遺留分と相殺して支払われるのか。

または、地裁では遺留分が確定し、家裁で養育費が確定して,相殺ではなく個別解決になるのか。

(オーくん)


当相談では、原則、再度の質問には回答しないことになっています。
ただ、お困りかもしれませんので、簡単にコメントをします。
この程度でご了解ください。

【再質問】
地裁の遺留分減殺事件で(家裁の専権事項である)養育費を決定できるのか?

【回答】
養育費の決定は家裁で決定すべきことです。
そのため、地裁の判決主文中で養育費が決定されることはありません
ただ、判決理由中で、遺留分額を減少する際の事情として未払養育費額を考慮することはできないかという問題がありえます。
しかし、家裁の専権事項である以上、理由中であっても、養育費額の認定はできないというべきでしょう(この点に関する参考裁判例としては、婚姻費用についてですが、同趣旨の判例がありますので末尾に記載しておきます)。
但し、当事者が和解提案する際の事情として未払い養育費を持ち出す、あるいは裁判所が和解案を出す際に未払い養育費を考慮して解決金額を提示するという程度なら特に問題ないでしょう
その点を考慮すると、あなたに譲歩をせまる材料として裁判所は養育費問題に言及しているというところでしょうか。

【再質問】
判決で養育費が考慮された場合、それを理由に控訴することが可能か?

【回答】
本来考慮すべきではない事項を考慮しているのであれば、それは控訴理由になり、原判決の取消事由となると思われます

【再質問】
家裁の養育費と地裁の遺留分との関係

【回答】
地裁としてはいつまでも判決を延期するわけにはいきませんので、養育費は別途解決してくださいとして、遺留分のみについて判決する可能性が高いと思います。

【参考判例】
婚姻費用の分担については、専ら家裁が審判すべきものであって、地裁は抗弁に対する判断としても、婚姻費用の分担を定めることはできない(京都地判昭和32年10月17日)。

(弁護士 大澤龍司)

遺留分と養育費の相殺【Q&A №501】


【質問の要旨】
別居中の妻が死亡したが、婚姻費用と遺留分はどうなるか

記載内容  婚姻費用 養育費 相殺

【ご質問内容】
家内と中二の子供と別居3年後に家内死亡。
審判(算定表)による婚姻費用を死亡前月(高二)まで支払。

遺言により、遺産(5千万)は全額子供が相続。
私(家内死亡前から病気で失業し借金生活)は、遺留分(1/4=1250万円)を求めて本人訴訟を起こすも、子供(義母と同居し私立大学卒業)側は、高二から大学卒業までの生活費や学費である養育費の実費(1600万円)と遺留分の相殺を要求。

(1)遺言書の内容(子供の生活費や大学進学費用に使え)は、母子の約束で扶養料を先渡しする義務(相続債務)とみなされるのか。
(2)私は無収入で数千万円の借金があり扶養能力はないが、借金より少ない遺留分をもらえば、多額の遺産のある子どもに対して養育費支払い義務があるのか。(子供の生活水準の方が高い)
(3)もし養育費の支払いが必要な場合は、
(ⅰ)月10万円の未払婚姻費用を基に、19歳までの生活費(大学費用含む?)を遺留分から控除するのか。
(ⅱ)20歳以上も、上記金額を大学卒業歳まで適用?
又は子供の主張する実費を遺留分又は遺産?から控除するのか。
十分な資産がある20歳以上の子供に、養育費の支払いが必要か。
(ⅲ)養育費が相続債務とみなされる場合は、養育費の半分が家内の債務で遺産から控除され、私の半分は扶養能力があれば遺留分から控除されるという考えか。
(ⅳ)上記に限らず、どのように考えるが正しいですか。

(オーくん)


【婚姻費用は妻の死亡により消滅する】
あなたは別居中の奥さんに対して婚姻費用を支払う義務を負っておられるようですが、この義務は奥さんが死亡した時点で消滅します
なぜなら、婚姻費用は婚姻があることを前提とするものですが、奥さんの死亡により婚姻そのものがなくなるからです
ただ、奥さんが死亡するまでに未払いの婚姻費用があれば、それは既に生前の婚姻期間中に発生した請求債権(未払い婚姻費用請求債権)として相続の対象になります。

【養育費の支払いについて】
婚姻費用の中には、実質上、未成年の子供の養育費分も含まれています。
奥さんの死亡により、死亡後の婚姻費用の支払いは不要になりますが、今度はあなたと子供さんとの養育費問題が現実化します
子供さんから請求されれば、親であるあなたに養育費の支払義務が生じる場合があります

【本件の場合の養育費支払いの要否について】
では、子供さんの言うような養育費の支払いが必要なのでしょうか。
収入及び時期と言う2つの面で支払い義務の履行を拒む理由が考えられます。
まず、収入の点からは次のように考えるといいでしょう。
養育費の支払いは支払い義務者である親に収入があることを前提にしていますが、あなたに収入がないというのであれば支払い義務は発生しないということになります。
次に時期的に言えば、養育費の支払いなどについて調停が申立される場合、支払いの開始時期はその調停申立のあった時期だとされています。
養育費の発生時期については、請求のあった時点以降であるという考えも強く、この考えに従えば請求前の過去に遡っての請求はできないということになります。
又、月毎に支払われる定期給付債権であるとして、民法169条の短期消滅時効の適用を受けるとして過去5年間の分だけの請求を認める考えもありえます。
これらの点の詳しいことを知りたければ、別途、養育費についての文献やネット検索をされるといいでしょう。
なお、子供に財産があるということだけで、養育費の支払い義務が免除されるということはないと思われますが、この点も別途調査されることをお勧めします。
又、成年に達した後の大学終了時点までの養育費の支払いの要否や学費分まで支払いの要否についても別途調査されるといいでしょう。

【遺留分減殺請求により得た利益をどう考えるか】
あなたとしては、今回遺留分減殺請求により収入を得ることになります。
しかし、あなたとしては養育費の算定の基礎となる収入は給料等の継続的な収入であり、遺留分のような一時的な収入とは言えないと主張することも可能です。
養育費算定表には給料年額あるいは自営業者の年収入額を前提として算定グラフが作られているからです。
ただ、このような主張に対しては、給料や自営での収入ではなくとも、親であるあなたが収入を得ているのであれば、給料等の収入に準じるものとして、算定される可能性もありえます。
その場合には、その収入のあった年度については、遺留分減殺請求額を前提にして計算された養育費を支払い、その翌年以降は無収入として養育費の支払いを拒むということを主張されえるといいでしょう
なお、無収入であっても《潜在的稼働能力があり、就労が困難といえないような事情がある場合には、ある程度の収入があるものとして、養育費が算定される可能性がありえますので、この点も併せご留意ください。

【遺留分と養育費の相殺との関係】
結局、前項の後段の前提(遺留分の支払いのあった年度にのみ、それを前提として養育費を支払う)というのであれば、その年度の養育費額のみが相殺の対象なり、その分が遺留分から減額されるという結論になるでしょう。

(弁護士 大澤龍司)

遺産の土地を妹の義父が借りていた【Q&A №450】


父が私の妹の義父に土地を貸与していました。
そのような土地の賃貸借が生前贈与に当たりませんか

記載内容  義父 贈与 同一

【質問詳細】
 昨年、父が亡くなりました。
 父は生前に公正証書遺言を残していました。
 その遺言には、妹に全ての財産を相続させると記載されています。
 相続人は、私と妹の二人です。
 私は遺留分減殺請求を行う予定です。

ところが父の生前、父と妹の義父(妹の夫の父親)との間で相続対象の土地の借地権契約をしたそうです。
 妹の義父はその土地にアパートを建てて他人に賃貸をしていました。妹の義父はその後1年足らずで死去しその後、妹の夫がアパート及び借地権を相続しております。

 妹からは、私が遺留分減殺請求をしても、相続対象の土地の借地権割合が60%なので、私が請求できるのは、底地割合の40%の遺留分(4分の1)、つまり1/10しかないのだから諦めろと言われてしまいました。
 借地契約書や地代をどの程度収めていたか等は、これから相手側に問いただす予定でおり、借地権の有効性を確認する予定です。

 上の経緯は、相続発生後に私が遺留分減殺請求を行う事を前提に、私の遺留分をなるべく小さくするために、妹らが対策を考えて借地契約という形をとったのではないかと考えています。
 このような場合、借地契約を締結したのは妹ではなく、その義父ではありますが、借地契約そのものが妹への生前贈与に当たらないでしょうか?

(asw32mk)

【借地権であるかどうかの確認が必要】
 質問でも記載されていますが、お父さんとお義父さんとの間で土地使用がどのような契約をしているのかを確認する必要があります。

契約書が作成されているかどうか、作成されているのならその内容、更に署名がお父さんの筆跡であるのかどうかも確認されるといいでしょう。

なお、賃料が支払われているのか保証金等は差し入れられているのかも調査の対象とする必要があります。

【遺産内容の確認も必要不可欠】
 遺産は不動産だけということのようですが、やはり預貯金等の銀行関係の調査が必要でしょう(調査方法についてはブログQ&A №417をご参照ください)。
預貯金の取引履歴を確認すれば、預貯金の不正引き出し等がわかり、遺産額が増えますが、それだけではありません。

契約時に保証金等の支払いがあったのか毎月、賃料が入ってきているかどうかが確認できます。

【保証金や賃料の支払いが発見できない場合でも役に立つ】
 取引履歴に賃料が記載されていないとすると、土地は借地権でなく、無償使用(使用貸借)である可能性があります。
 その場合、借地権額は更地価額の60%程度、使用貸借額なら10%前後ですので、遺産の対象となる土地の価額がアップします。
 なお、念のために言えば、あなたが知らない隠された預貯金口座が存在し、そこに賃料が入金されている可能性もあります。
 この場合にはそこの多額の預貯金が存在する可能性があります。
 また、保証金等の契約時の支払い分がないかどうかも確認する必要がありますので、取引履歴の取り寄せは必要不可欠です。

【法定相続人以外の人に対する贈与】
 ほとんど保証金を取らずに、しかも定額で借地権を設定したとしても、その相手がお義父さんのような法定相続人以外の方であれば特別受益の問題は発生しません

遺留分減殺の場合、第三者に対しても請求することができます
 ただ、借地契約の内容があまりに不当で、地主であるお父さんにとって不利な内容であり、《まるでただ同然のような条件で貸している》というのなら、贈与とみなすことも不可能ではないでしょう。

ただ、遺留分減殺請求自体がなかなか難しい手続きですし、ましてや本件は第三者との間で賃貸借契約を装ってというような難しい案件ですので、相続に詳しい弁護士に事情を詳しく説明され、そのアドバイスを受けるといいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)

★相続放棄と遺留分【Q&A №447】


生前贈与を受けた人が相続放棄をした場合,特別受益はどうなりますか?
また,生前贈与を受けた人が相続放棄して,遺留分減殺請求をされた場合はどうですか?

記載内容  生前贈与 遺留分 相続放棄

【質問詳細】
被相続人(父)、相続人A(長女)B(次女)C(長男・末)がいます。
Aは生前に1,000万、B・Cは500万ずつ贈与を受けています。
父の遺産は現金500万、不動産1000万です。
Aは上記1,000万円の他に、父が生前の2年前にAの子二人(孫にあたる、共に成人)
に100万円ずつ生活支援のお礼としてお金を渡したこと、それ以前に色々な事象にてお金(総額で2~300万円か)を貰っていたことを考慮し、遺産を放棄することにしました。
相続人BとCは父生前のA及び子に対する過大な贈与を受けたことが不満で、遺産1,500万円に各々の生前贈与(特別受益)を加算し、分配すべきと主張しています。
Aとして相続を放棄するのに、差額をB・Cに払う義務あるのですか?
併せてB・Cの遺留分について減殺請求権があった場合どうなりますか?

(goo)


【相続放棄すると特別受益の問題は発生しない  Aさんが、お父さんの遺産について相続放棄をする前提で回答していきます。
 相続放棄をすると、Aさんは法定相続人ではなくなり、遺産分割の問題は発生しません。
 遺産分割はBさんとCさんとの間でするだけになります。
 特別受益は、遺産分割の際、法定相続人に生前贈与分などがある場合にその贈与分を遺産に持ち戻すという制度です。
 しかし、その生前贈与を受けた人が法定相続人でなくなれば、特別受益の問題は発生しません

【相続放棄しても遺留分の問題は発生する
 相続放棄をした場合でも、その人が多額の生前贈与を受けていたのであれば、他の法定相続人(正確に言えば遺留分権利者)から遺留分減殺請求を受ける場合もありえます

例えば、生前に1億円の贈与を受けた人がいたため、遺産が0円であったような場合で、その贈与を受けた人が相続放棄をするケースを考えてみましょう。
 贈与を受けた人は相続放棄をしているのですから、特別受益の問題は発生しません。
 しかし、遺留分は法定相続人にある程度の遺産(法定相続分の半分程度)だけは渡るようにしようという制度ですので、生前贈与を受けた人は請求に応じて、遺留分に該当する遺産を渡さなければならないということになります。

本件のケースでは遺留分減殺請求はできない
 遺産は法定相続人AさんとBさん、Cさんに生前贈与計2000万円遺産が計1500万円その他に200万円と2~300万円の生前贈与分があるとの前提ですので、遺留分計算の基礎となる遺産額は4000万円になります。
 Bさんとしては生前贈与分500万円と今回の遺産分の半額である750万円の1250万円がお父さんの遺産から入ることになります。
 Aさんの相続放棄によって、Bさん及びCさんの遺留分は本来の法定相続分2分の1の半分(4分の1)になっています。そうするとBさんCさんのそれぞれの遺留分は1000万円となります。

(Bさんの)得た額 遺留分が侵害されていませんので、Aさんが遺留分減殺請求をされることは法的にはないケースでしょう。

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