大澤龍司法律事務所 相続問題無料相談ブログ

相続人の配偶者への贈与が相続人の特別受益となるか【Q&A №668】

 

 

【質問の要旨】

・被相続人(父)は生前、姉に土地(2000万円)を贈与。
・その土地の登記は、姉とその夫の1/2ずつの共同名義。
・姉の夫の名義分は、特別受益には該当しないのか。

 

 

【回答の要旨】

・姉への贈与と同視できるか否かで姉の特別受益になるかが決まる
・原則は特別受益に当たらないが、例外的に認められる場合もある
・相続人の配偶者への贈与について、特別受益と認めた審判例がある

 

 

【ご質問内容】

被相続人の父が死亡し、その相続人は母と姉と私です。
父は、生前に姉に居住用の土地(2000万円相当)を贈与しました。
ところが、土地の登記名義が、姉とその夫の1/2ずつの共同名義になっていました。
姉は、土地の持ち分の1/2は姉の夫への贈与であり、姉の特別受益には該当せず、あくまで1000万円が特別受益だと主張しています。
このような主張は認められますか。

(くまもん)



 ※敬称略とさせていただきます。

【原則は特別受益に当たらないが、例外的に認められる場合もある】

被相続人が相続人に生前贈与していた場合、特別受益として遺産に持ち戻されます。
そのため、被相続人が贈与をした相手が、相続人ではなく、その配偶者であったとき、その贈与分をその相続人の特別受益として認めるべきか、という点が問題になります。
原則としては、被相続人が相続人の配偶者・子らに対して贈与をしたとしても、これは相続人に対する贈与ではないから、特別受益にはなりません。
ただ、例外的に、真実は相続人に対する贈与であるのに、名義のみ配偶者や子にしたような場合には、特別受益に該当すると考えることができる場合があります。

【相続人の配偶者への贈与について、特別受益と認めた審判例がある】

被相続人から相続人の配偶者への贈与について、実質的には相続人の特別受益であると認めた審判例があります。
この審判例では、贈与の遺産に対する割合、贈与の経過や相続人の受けている利益などを考慮して、実質的には相続人に直接贈与されたのと異ならないと認められる場合には、相続人の特別受益とみて遺産分割をすべきと判断し、実際に、相続人の配偶者への贈与について、相続人の特別受益と認めました。(詳しくは【相続判例散策】相続人以外の者に対する特別受益(福島家庭裁判所白河支部 昭和55年5月24日)参照。)

【姉への贈与と同視できるか否かで姉の特別受益になるかが決まる】

今回は、父から姉夫婦に対して贈与された、居住用土地(2000万円相当)のうち、姉名義の2分の1が姉の特別受益になることは当然として、姉の夫名義の2分の1相当額が特別受益にあたるかどうかが問題となっています。
今回のケースで、姉の夫名義にした2分の1について、実質的に姉への贈与といえるかどうかは、詳しい贈与の経過等を確認する必要があります。
たとえば、遺産に対する割合が大きく、また、姉に贈与する意思であるが、姉の婚姻生活の末永い幸せを願って夫婦の共有という形にしたというような経過があるかなどの事情を考慮し、実質上は姉への贈与であったか否かが判断されるでしょう。
 特に姉の夫が父の家業を手伝っていたなど父への貢献があったような場合でなければ、実質的には姉への贈与であると認められる余地があるのではないかと思われます。


調停申立による遺留分の時効中断【Q&A №667】

 

 

【質問の要旨】

・ 遺留分の調停をしている場合、消滅時効にかからないのか?

 

 

【回答の要旨】

・以前の回答《№54 調停と時効中断の関係の記事》の訂正
・今回の質問の場合、調停中は時効成立しない
・提訴する遺留分減殺請求の内容
・遺留分減殺の消滅時効や時効中断などの法律が改正されています!

 

【ご質問内容】

貴ブログを拝読致しております。
Q&A No.54のA【消滅時効について】です。
「調停を申し立ててから1ヶ月以内に金銭債権について訴えを提起しなければならないのでこの点はご注意ください」と書かれています。
小生の調停は調停開始から既に半年経っています。
まだ具体的な金銭債権についての訴えは提起していません。
父の相続発生は10年近く前です。
遺留分請求は父死後1年以内に行いました。
調停の時効中断がないと、問題終結までに時効に至る可能性がありそうな状況です。
既に調停開始後1ヶ月以上経っていますが、
「どういう形で金銭債権の訴えを提起すれば良いのでしょうか」
「どういう理由で1ヶ月以内でしょうか」
「1ヶ月以上経った現在、何か対応方法はあるのでしょうか」
をご教示頂けたらと存じます。

(柚子胡椒)



 ※敬称略とさせていただきます。


【以前の回答《№54 調停と時効中断の関係の記事》の訂正】

当ブログNO.54についてご指摘を頂いたことから、内容を確認しました。
下線部分が次のとおり間違っておりました。
すみませんでした。

誤「調停申し立てから1ヶ月以内に・・・訴えを提起」
正「調停が不成立に終わった時点から1ヶ月以内に訴えを提起」

以前のブログでは、
調停を申し立てた後、1ヶ月以内(通常はこのような時期は調停が係属中の時期です)に、別途訴訟提起しなければ時効中断しないという回答になっておりました。
しかし、正しくは
調停が不成立(不調)で終了した時点から1ヶ月以内に訴訟提起すれば、時効の効力は中断されるということになります。
要するに、(時効完成前に申し立てられた)調停が続いている間は訴えを起こさなくとも時効は完成せず、調停が不成立に終わった場合でも《1ヶ月以内に》に訴訟を提起すれば時効中断の効果は維持され、時効消滅はしないということです。

【今回の質問の場合、調停中は時効成立しない】

今回の質問では、調停申し立てから半年経っていますが、調停申し立てによる消滅時効中断の効力は維持されます。
また、調停がまとまらず、不成立となった場合でも、その日から《1ヶ月以内》であれば、時効中断の効力が継続しますので、この間に訴訟を提起すればよいということになります。
※誤解と混乱を招いたようで大変申し訳ありませんでした。
(すでにNO.54は訂正を致しましたので、ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。)

【提訴する遺留分減殺請求の内容】

どういう訴訟を提起したらよいかとの質問ですが、遺留分減殺請求の金銭債権が請求できるケースであれば、遺留分減殺請求に基づく金銭支払請求訴訟を起こすことになります。
ただ、遺留分減殺請求は、弁護士でもかなりややこしい分野と理解されています。
そのため、訴状にどういうことを書くのかを含めて、相続事件に詳しい弁護士に相談をし、できれば事件を依頼することをお勧めいたします。

【遺留分減殺の消滅時効や時効中断などの法律が改正されています!】

今回のご相談は相続開始が10年近く前であるため、その当時の法律が適用されるので、その前提で回答しました。
しかし、平成30年の相続法改正で、遺留分減殺請求権は、新たに「遺留分侵害額請求権」と名称も内容も改正されました。
遺留分侵害額請求権についての消滅時効についても相続開始から10年で消滅するということになり、なんら期間制限のなかったそれまでに比べ、大きく短縮されました。
また、平成29年債権法改正(但し、その効力発生は令和2年4月1日から)で、遺留分減殺の調停を申し立てた場合、調停終了後から6ヶ月以内に訴訟を提起すれば時効は完成しない(調停係属中に時効は完成しない)こととされ、旧法に比べ、訴訟提起するまでの猶予期間が増加することになります。
ご注意ください。


不当利得返還請求と遺留分【Q&A №652】

 

【質問の要旨】

父が死亡。
相続人は後妻と相談者(二名)。
遺言書があり、後妻に遺留分減殺請求をした。
寝たきりの父には年間700万円の収入があるのにも関わらず、5年間のうちに後妻が1500万円引き出している。
(後妻曰く、生活費1000万円と葬儀費用500万円)
この1500万円の不当利得返還請求をした場合、請求額はいくらになるか?

 

【ご質問内容】

公正証書遺言がある時の使途不明金は遺産分割の対象になるのでしょうか。
下記概略です。

父が他界して相続が発生しました。
相続人は後妻さんと私(先妻の子)の計2名。
公正証書遺言があり預金(500万円)は後妻さんと私(先妻の子)と折半、マンション1部屋(時価2,500万円)と「その他一切の財産・負債も含む」は後妻相続となっています。(後妻さんには遺留分減殺請求済み)

父(要介護5の寝たきり)の移動明細(銀行)から後妻さんによる5年間で1,500万円の預金引き出しが確認されたので後妻さんに説明を求めたところ1,000万円は生活費,残り500万円は葬儀費用等との回答でした。
父の年収は700万円ほどあり父の移動明細や後妻さんによる説明からは預金を引き出す必要はなかったと思われます。

仮に後妻さんにより引き出された預金(1,500万円)が、不当利得返還請求の対象になった場合、私が後妻さんに対しての請求額はどのように考えたらよいのでしょうか。

 

 

(フリーダム)



 ※敬称略とさせていただきます。

【不当利得返還請求権は誰のものか】
ご質問によると、後妻が5年間のうちに父の口座から、1500万円もの預金を引き出していたということです。
これが、父の意思によらずに引き出したものだということになると、おっしゃるとおり、父は後妻に対して、1500万円の不当利得返還請求権を有していたということになります。
そうすると、父の死亡により、上記返還請求権を誰が相続したのかが問題となりますが、遺言書によれば、その他一切の財産・負債は後妻が相続するとの内容になっているとのことです。
不当利得返還請求権は「債権」という財産ですので、「その他一切の財産」に含まれ、後妻がその請求権を全て相続すると判断されます。
そのため、あなたとしては、遺留分請求減殺をする必要があり、その遺留分の限度で不当利得返還請求ができるということになります。

【あなたは、1500万円も含めて遺留分減殺請求をすることになる】
前項の不当利得返還請求権という債権も被相続人の遺産だということになりますので、あなたの請求できる遺留分額もその分増えます。
《計算式》
遺留分計算の基礎となる遺産額:預金500万円+マンション2500万円+不当利得返還請求権1500万円=4500万円
あなたの遺留分額:4500万円×2分の1(法定相続分)×2分の1=1125万円
遺留分侵害額:1125万円-250万円(遺言でもらえる額)=875万円

以上の計算式で算定された875万円が、あなたが後妻に対して、遺留分減殺請求できる金額になります。

【父のための特別の使途であれば、1500万円から控除される】
ただし、後妻は、1500万円を引き出したことを認めているものの、1000万円は生活費に、500万円は葬儀費用に使ったと主張しているようです。
これに対しては、《あなたとしては父の年収が700万円もあれば、それ以外に1500万円もの引き出しをする必要はなかった》と主張されるといいでしょう。
ただ、例えば屋根の修繕費として、後妻が領収書等を示して父の特別の使途がために使ったことを立証できた場合には、その分は不当利得から控除される場合もありえます。
なお、葬儀費用は原則喪主負担ですが、分担すべき場合もありますので、念のため、領収書の提出を求めてみるといいでしょう。


父の遺産遺留分について【Q&A №637】 0637

 

【質問の要旨】

夫が借りたお金が遺留分に影響するか

記載内容  遺留分 自己破産 借りた 

【ご質問内容】

実父が生前に夫が父に自己破産時に借りたお金は私の遺留分から引かれるのでしょうか?
(ナナ)

 ※敬称略とさせていただきます。

【父が夫に貸した金銭の扱い】

  被相続人があなたの夫に貸した金銭は、父の夫に対する貸金であり、貸金債権として遺産に含まれます。

そのため、当然、遺留分減殺請求をする際の基礎財産に含まれます。

【遺留分減殺との関係について】

 今回の質問では、遺留分が問題となっていますので、遺言書等で特定の人に多額の財産がいくようなケースなのでしょう。

もし、あなたが遺留分減殺請求をする側であれば、父から夫への債権も含んだうえで、遺留分額を計算するといいでしょう。

【あなたが遺留分請求するとき、夫の借金で相殺されることはない】

他の相続人(例えば兄とします)が父からの遺産を全部相続するケースで言えば、あなたは遺留分額を兄からもらうことができます。

この際、権利関係を整理すると次のようになります。

・あなたは兄に対して遺留分を請求できます。

・兄は夫へ貸金請求ができます。

夫とあなたとは夫婦という関係であっても、借金などの債権関係では、まったく別人として扱われます。

夫が借金をしていても、法的にはあなたがその借金を支払う義務はありません。

そのため、兄が、夫への貸金があることを理由にあなたへの遺留分を減額しようとするなら、《その貸金は夫に請求するべきものであって、遺留分の減額事由にはならないし、相殺もできない》といって、遺留分全額をもらうといいでしょう。

 

 


このケースで遺留分の請求はできますか?【Q&A №631】 0631

2018/11/13

【質問の要旨】

遺留分減殺請求の可否

記載内容  遺留分 贈与 遺言書 

【ご質問内容】

父が亡くなり、これから父の遺産相続について話し合いを行うのですが、相続人は兄と私(弟)の2人です。
父は6年間、兄と同居していました。その後亡くなる迄の4年間は私が引き取りました。
父が認知症となり、兄が面倒を見ることを放棄したからです。
引き取って、父の残高が少な過ぎることに気づき兄に聞いたら「贈与された」と言って父の自筆で書かれた覚書のようなものを提示してきました。
それには「〇(父)は〇(兄)に500万円贈与します。」と書かれていました。
父の自筆で書かれていたので、モヤモヤした気持ちでしたが反論できませんでした。
実際に兄の口座に送金されていました。
それから、何とか頑張ってみたのですが、父の入院などもあり、亡くなった時の残高は50万円しかありませんでした。
先日、遺言書が見つかり、そこには「残った遺産は〇(私)に全部あげる。」と書いてありました。
すると兄が「遺留分」ということを言い出し「12万5千円は俺に権利がある」と言うのです。
調べたところ「法定相続分の2分の1」との事でしたので、兄の言う事もあながち間違いではないのかと思います。
その一方で「兄さんは7年前に500万も贈与してもらっているのに。」という気持ちもあります。

そこで教えて頂きたいのですが、やはり兄は遺留分を受け取る事が出来てしまうのでしょうか?
そして、遺留分という制度は、前述の500万の贈与を考慮してはくれないのでしょうか?

631
(コウキ)

 ※敬称略とさせていただきます。

【兄の遺留分の問題ではなく、逆にあなたが遺留分を請求するケース】
すべての遺産をあなたに相続させるという内容の遺言書があったのに対して、他の相続人である兄が遺留分を請求してきたということですが、今回の案件では兄は遺留分を請求することはできません。
むしろ、あなたが遺留分の請求をすることができます。

【遺留分計算のしかた】
他の相続人が兄だけですので、あなたの遺留分は4分の1です。
問題は、遺留分を計算するときの前提となる遺産の範囲です。
死亡時に残っていた遺産(本件では50万円)だけではなく、生前の贈与も遺産に加算して、遺留分計算します。
今回の質問の場合、
死亡時の遺産:50万円+生前の兄への贈与:500万円=550万円
が、遺留分計算の基礎財産になります。
額は550万円であり、兄の遺留分は、その4分の1の137万5000円となります。
ただ、兄はすでに生前に500万円をもらっていますので、遺留分額を超えた財産をもらっており、兄は遺留分を請求できません。

【むしろあなたが遺留分減殺請求をすべき】
あなたも遺留分は4分の1の137万5000円です。
しかし、あなたは50万円の遺贈を受けただけですので、遺留分に達する金額をもらっていないということになります。
そのため、あなたは。遺産の50万円を全部もらう意外に、兄からさらに87万5000円を請求することが可能です。
法律では生前贈与を遺留分計算に算入するためには、相続開始前の1年間の贈与か、あるいは遺留分侵害を知って贈与された場合に限定されています。

(参考:民法第1030条)
贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。

しかし、これまでの裁判所の判例(外部リンク:最三小判H10.3.24(民集52巻2号433P))で、法定相続人が生前贈与を受けるなど、特別受益がある場合には、当然に遺産に持ち戻して、遺留分計算をすることになっています。

【遺留分の請求は原則、相続開始から1年以内】
遺留分減殺請求は、原則として、相続の開始の日から1年以内にすることが必要です。
そのため、あなたが兄に遺留分請求をしたいのなら、この1年の期間が経過しないうちに、早急に請求をしたという証拠が残る内容証明郵便で、遺留分請求をされるといいでしょう。

【生前に不審な出金はないか、念のために調査する必要がある】
なお、今回の事案では、あなたがお父さんを引き取った際に、預金残高が少ないと感じられたとのことであり、500万円の贈与の他にも、兄が出金した金員がある可能性もあります。
お父さんの預貯金の取引履歴を取得し、使途不明な出金がないかどうかは、念のため調査された方がよいでしょう。


遺留分対象のマンション売却について【Q&A №625】 0625

【質問の要旨】

遺留分減殺請求後の不動産売却

記載内容   遺留分 不動産売却  同意書

【ご質問内容】

遺留分対象の中古マンション売却についてご質問がありメールしました。宜しくお 願い致します。

父が他界し、相続が発生。

相続人は先妻の子(4名)と後妻の計5名です。

公正証書遺言 があり預金は後妻と先妻の子らで折半、中古マンション(1部屋)は後妻相続(名義は後 妻変更済)となっています。

現在、相手方代理人とFAXを使い話し合っています。

マンション売却について相続終 了まで売却代金を相手方代理人口座で預かる事を条件にマンション売却に同意しまし た。

相手方代理人より不動産売却について署名捺印の同意書(売却予定金額2000万円 と瑕疵担保責任免責が記載)の提出を求められています。

売却には同意したのです が、同意書の提出は同意したつもりはありません。

相手方代理人は、同意書がないと相続人5名のうちの誰かが途中で売却を中止してくださいと言った場合、買い手から5名に対して損害賠償請求される可能性があるから 同意書がないと売却できないと主張しています。

現在、相手方にマンション売却の一 時中止をお願いしていますが、相手方はマンションを売却中です。

ご質問

①こちらは相手方作成の同意書を提出しないと損害賠償を請求されるのでしょうか。

②相手方代理人が辞任や解任された時は、売却代金が後妻に行ってしまう可能性が分 かったので、売却中止を求めると相手方より損害賠償等の請求をされる事はあるので しょうか。

(雪男)


 

 ※敬称略とさせていただきます

【後妻はマンションを単独で売れる】

父の死亡後、遺言書でマンションは後妻の単独名義になっています。

後妻以外の相続人(あなたを含む)は、売却代金を後妻の弁護士が預かることを条件に、後妻がマンションの売却をすることに同意しました。

以上の前提で考えると、後妻としては単独でマンションを売却するについては、何ら法的な障害はありません。

そのため、後妻としては、サッサと単独で契約し、その代金を弁護士が預かり、その後、これを他の相続人に分配するということで問題が解決するということになります。

【なぜ、同意書が必要なのか】

法的には同意書を出す必要はありません。

ただ、売買に関連する仲介業者としては、後妻以外の他の相続人が売買の邪魔をしない保証が欲しいのでしょう。

質問にははっきりとは記載されてはいませんが、おそらく、他の相続人としては遺留分減殺請求権を行使できる(あるいはした)立場にあります。

そのため、業者としては、売買契約締結の途中でそのような権利主張がでてきたら、契約が中途でストップする、そのようなことがないように同意書が欲しいと言ってきたのでしょう。

【法的には原則、同意書を出す必要はない】

あなたが同意書を出さなければならない法的な理由はありません。

ただ、気になるのは、弁護士が売却代金を預かることを条件にマンションの売却をすることに同意したようですが、その際、私なら、合意内容を文書化しておきますし、その中で《後妻以外の相続人は売買に協力する》という内容に加えて《売却に必要な書類の作成に協力する》との一文をいれておきます。

もし、これがあれば、あなたは同意書を作成する義務があります。

以上の前提で買主からあなたへの損害賠償を考えてみると次のような結論になります。

① あなたが、協力義務があるにもかかわらず、同意書を提出しないというのなら、後妻から債務不履行だということで損害賠償ということもありえます。

② もし、相手方弁護士が辞任あるいは解任された場合には、売買代金をその弁護士が預かれなくなった場合なら、代金の確保ができません。

そのため、売却に協力しないことが可能であり、その場合には損害賠償を受けることはないでしょう。

参考までに言えば、買主が損害賠償を請求するのは、売主である後妻に対してであり、あなたに損害賠償を請求することは考えにくいです。

【文書化されていなければ、この際、文書化をする】

今回のような売却代金を預かるという形で遺産を売却する場合に、一番、リスクが高いのは、後妻が代金全部を使うことでしょう。

そのリスクを避けるため、代金を弁護士が預かるということにした、弁護士の信用を担保にしたということでしょう。

ただ、弁護士が預かるということが売買契約を認める前提条件であるとの点は明確に証明できている必要があります。

もし、まだ、文書化されていないのなら、この際、同意書の提出と引き換えに弁護士預かりが条件だと明確に文書化するといいでしょう。

【リスクを回避するなら、処分禁止の仮処分】

次に、その弁護士が信頼できる人でないと将来の分配が心配になります。

仮にその弁護士が信頼できるとしても、後妻がその弁護士を解任した場合、弁護士は後妻に金を引き渡すのではないかという不安は消えません。

現在の業者は同意書を要求しているのでしょうが、そのような同意書なしで売却する業者も多いです。

もし、あなたが、後妻も弁護士も信頼できないというのであれば遺留分減殺を理由として、遺留分の限度で売買できないという内容の裁判(処分禁止の仮処分の申立)をされるといいでしょう。

この裁判が出ると、遺留分の限度であなたの登記が付き、あなたへの支払いが確保できます。

ただ、裁判が出るためにはいろいろな要件がありますので、是非、相続に強い弁護士と相談されるといいでしょう。


遺留分放棄の請求【Q&A №623】 0623

【質問の要旨】

遺留分放棄をするべきか

記載内容   遺留分放棄 家業  撤回

【ご質問内容】

実家が自営業をしています。 長男が家業や家を守っていかないといけないと言う理由で、遺言書には、一切の財産を長男に。

そして公正証書として残しておくと言われました。

それと、今のうちに遺留分放棄をしてくれと求められました。(長男は継ぐ事に前向きではありません)

ある程度の金額を提示されたものの、現時点で資産がいくらあるのかをしらされておりませんので、遺留分相当の額なのかも、不明です。

昔から、父はモラハラでハンコ押さないと今後の付き合いや財産は一切お前に与えないようにすると脅されました。

しかも、父と母の二人分の遺留分放棄と言われ、納得がいきません。

果たして、両親ともの遺留分の放棄は出来るのですか?

また、遺留分放棄を撤回するのは、難しいと書いてありましたが、家庭裁判所で条件がつけられたり、こちらから長男が必ず家業を継続しているという条件や資産が嘘であった場合など、公正証書に残すとか。

有効な手段はありますか?

このままでは、親子関係、兄弟関係が悪くなってしまいます。

 

(トオル)

 

 ※敬称略とさせていただきます

【相続開始前の遺留分の放棄は可能です】

生前の相続分の放棄とは相続が開始する前に、あらかじめ遺留分を請求しないということを認めてもらう手続きです。

生前の相続分の放棄はできませんが、遺留分放棄は可能です。    

自営業の資産が細分化されるのを防ぐなど、相続財産の多くを後継者に残す必要性があるため、このような制度が認められていますが、被相続人やその他の人の不当な圧力で加わるような事態も想定されるため、相続開始前の遺留分の放棄は家庭裁判所の許可が必要です。

裁判所の許可なく、生前に遺留分放棄をした場合、たとえそれが文書などで証明できるようなものであっても、放棄の効力は一切ありません。

【裁判所は、不当な強制を受けていないかを確認する】

生前の遺留分放棄をするには、遺留分を放棄する者が、家庭裁判所に対して、遺留分放棄の許可申立てをすることになります。

遺留分放棄の許可申立を受けた裁判所は、放棄の申立が、被相続人や他の相続人から不当な強制を受けてなされたものでないかという点を審査します。

具体的に言えば、裁判所は、遺留分放棄をする合理的な理由や必要性があるのか、また放棄の申し立てをした人がすでに十分な財産をもらっているのか等が判断材料になります。

許可が出た後は、遺留分を請求することはできません。 但し、法律上は撤回が可能です。

【参考条文:家事事件手続法】

第七十八条 家庭裁判所は、審判をした後、その審判を不当と認めるときは、次に掲げる審判を除き、職権で、これを取り消し、又は変更することができる。  

一 申立てによってのみ審判をすべき場合において申立てを却下した審判  

二 即時抗告をすることができる審判

2 審判が確定した日から五年を経過したときは、家庭裁判所は、前項の規定による取消し又は変更をすることができない。ただし、事情の変更によりその審判を不当と認めるに至ったときは、この限りでない。

3 家庭裁判所は、第一項の規定により審判の取消し又は変更をする場合には、その審判における当事者及びその他の審判を受ける者の陳述を聴かなければならない。

4 第一項の規定による取消し又は変更の審判に対しては、取消し後又は変更後の審判が原審判であるとした場合に即時抗告をすることができる者に限り、即時抗告をすることができる。

しかし、裁判所の立場から言えば、一旦、決定を出した以上、簡単には生前の遺留分放棄の許可を撤回しません。

撤回のためには、放棄した人が、生前の放棄の許可を撤回するだけの事情の変化があったことを説明し、かつ証明する必要があります。

遺留分放棄の判断の前提になっていた事情が変更になり、遺留分放棄の状態を維持することが客観的に見て不合理・不相当になれば、裁判所が職権で放棄許可審判を取り消すことができることになっています。

そのため、仮に放棄の申立をする倍、その前提としてどれほど財産の開示を受けていたのか、わかる資料を裁判所にも提出し、また、自分自身も保存しておく必要があります。

いずれにせよ、遺留分放棄も許可が出た後はそれを撤回するかどうかは裁判所の判断ということになり、前もって合意をしていたからといって認められるわけではありません。

家族関係のこともあるようですので、法律的なことだけで結論を出すことはできませんが、可能であれば、生前の遺留分の放棄はできるだけしない方がいいでしょう。

【納得してから遺留分放棄の許可申立をすべき】

現段階では、あなたは、資産もわからないままに対価を示され、放棄を一方的に求められているようです。

ただ、上記に述べたとおり、一度遺留分放棄の判断をしてしまうと、それを取り消すためには、事情が変更になったとして裁判所の判断が必要になり、簡単ではありません。

そのため、遺留分放棄をする前に、資産の内容の開示を受けた上で、長男が家業を継ぐために、対価をもらって遺留分放棄をすることが妥当かを検討し、納得できる内容であれば、遺留分放棄の許可申立てをするということにすべきです。

なお、申し立てに際して、父と母の分は別々に申し立てる必要がありますが、別々に申し立てれば、双方について遺留分放棄をすることは可能です。

(弁護士 岡井理紗)


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