大澤龍司法律事務所 相続問題無料相談ブログ

遺産が何もない場合の特別受益による持ち戻し【Q&A №406】


 兄弟三人のうちの一人に対し、親が住宅取得資金という名目で1,000万円を贈与しています。
 他の二人には何もありません。
 その後、やがて親が他界した場合、他界した時点、つまり相続開始時において親の財産が何もない場合には、遺産分割の対象物がないということになりますし、その場合、特別受益の持ち戻しも、遺留分の減殺請求も、何もできないということになりますか?
 どちらも相続開始時に遺産が存在して初めて成り立つ制度ですか?そうだとすれば、兄弟のうち一人だけが得をし、後の二人はもらえず仕舞いということになりますか?

記載内容  持ち戻し 生前贈与 遺産がない 遺留分減殺

(鎌ちゃん)


【特別受益制度としては、特別受益者が生前贈与分を返還する義務はない】
 特別受益では、その特別受益分を遺産に持ち戻し(組み入れ)て、次の式で算定されるみなし遺産を前提に各相続人の相続分を算定していきます。
   《現存する遺産》+《特別受益》=《みなし遺産》
 この《みなし遺産》につき、各法定相続人に対する配分を計算します。
 今回のケースでは、特別受益が1000万円であり、法定相続人が子3人ですので、そのままの状態で相続が開始した場合、各人の法的相続分は次のとおりです。
   《現存する遺産》0円+《特別受益》1000万円=《みなし相続財産》1000万円
 各人の具体的法定相続はみなし相続財産を3分した333万円強です。
 ただ、特別受益というのは現実に生前にもらった財産を返還させるというものではなく、現存する遺産分割の際、その特別受益を受けた分はその人が既にもらったとして、後の遺産分けをしなさいという制度です。
 特別受益は既に生前にもらったお金を出しなさいという制度ではありません。
 そのため、今回のケースでは、特別受益を受けた人については、本来は333万円強しかもらえないはずですが、それ以上に1000万円の生前受益があるので、遺産から配分はなしというにすぎず、その人が差額の666万円強の金銭を返還させるということはありません。

【特別受益という制度では、遺産がない場合の不公平はやむを得ない】
 「これでは生前に多く贈与を受けた人の一人勝ちになってしまう。不公平ではないか。」というお気持ちを持たれる方が少なくないでしょう。
 しかし、親が、(生存中に)三人いる子のうち、誰にどれだけの財産を贈与するかは親自身の自由なのです。その結果、今回のケースのように、全財産を誰か一人に贈与してしまい、他の人には遺産が残されないという不公平は、法律上やむを得ないものと考えられています。

【遺留分なら、返還をしてもらえる】
 生前に多額の財産が、特定の相続人に贈与されている場合、それを取り戻す制度としては、遺留分というものがあります。
 本来、遺産はその被相続人が自由に処分してよいものであり、全額を一人の子供に生前贈与しても、また、遺言書で一人の子供に与えてもなんら差支えのないはずのものです。
 ただ、他の相続人のためにある程度の財産を与えるようにするというのが遺留分という制度です。
 本件のように全財産1000万円が一人の相続人に贈与されていた場合であれば、他の相続人は本来の相続分の2分の1(本件では6分の1の限度)を遺留分として、返還請求ができます。
 ただ、遺留分は被相続人の死亡を知って1年以内に遺留分を行使する(遺留分減殺)という意思表示をする必要がありますので、期間を経過しないようにご注意されるといいでしょう。

遺言がある時の遺留分減殺請求【Q&A №135】


 父が他界し、生前姪が知り合いの司法書士に作らせた公正証書遺言が残されました。
 それによると、姪が遺言執行人。
 不動産を姪に遺贈。
 郵便貯金を父の弟に遺贈。
 銀行預金を息子である私に相続。喪主は私にと書いてありました。
 ただし父には先妻の子供が3人おり、彼らにも遺留分があると思うのです。また、葬儀費用は父の銀行預金から出すと、遺言執行人である姪は言っています。
 父には骨董の趣味があり、生前私によくその話をしてくれていたので形見として欲しいのですが、姪は遺贈された不動産マンションの中にあるものだからと権利を主張しています。
 上記のような場合、まず先妻の子供たちの遺留分は不動産や郵便・銀行全てにかかるのかどのようにすればよいのか教えていただけると幸いです。
 また、銀行預金額が不明なため、金額によっては私も姪に遺留分を請求できるのかどうか、骨董品は分けてもらえないのかも教えてください。
 よろしくお願いいたします。

記載内容  遺留分 遺留分減殺 遺言 

(瑠依)


【遺留分を請求できる人の範囲】
 遺留分は被相続人の兄弟姉妹には認められていません。
 今回の質問では、法定相続人は貴方(子)、先妻の子3人ですので遺留分が認められます。
 なお、遺留分を請求する場合には原則として被相続人の死亡から1年内に遺留分減殺の意思表示をする必要があります。

【先妻の子は遺留分減殺請求ができるかどうか・・】
 今回のケースでは、子供一人あたりの遺留分は、相続財産の8分の1(1/2×1/4)です。
 もし、先妻の子に全く相続財産が分配されない場合であれば、その人たちは各8分の1を貰えると主張することができます。
 しかし、遺言に記載されていない財産がある場合には、その財産は法定相続の割合で、法定相続人である貴方と先妻の子に相続されますので、これらの相続した財産が全遺産の8分の1以下であれば、遺留分を請求できます。

【貴方は遺留分減殺できるかどうか・・】
 貴方が相続で取得する遺産が、全遺産の8分の1以下であれば、貴方も遺留分を請求できます。

【減殺の対象は・・】
 複数の遺贈があるときは、遺留分減殺の対象はその全てについて、それぞれの遺贈の価格割合に応じて減殺しなければならないため、姪、父の弟に減殺請求する必要があります。

【骨董品の扱い】
 マンション内にある骨董品は、マンションとは全く別の財産―動産-ですので、姪の方が取得するということにはなりません。
 遺言に記載がないようですので、それらは法定相続分で各相続人が共同相続することになります。
 全相続人が話し合い、遺産分割協議で骨董品を誰に渡すのかを話し合われればよいでしょう。

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