大澤龍司法律事務所 相続問題無料相談ブログ

介護保険料・健康保険料の還付金と相続放棄【Q&A №390】


 亡くなった主人の相続放棄をしました。

 市役所からの通知が届き、「死亡した方の年金から天引きされていた介護・国民保険料が、未支給年金を受給する資格のある遺族に還付される」とのことです。
 それで、「還付請求書」に振込口座などを書いて出してください、との通知でした。

 未支給年金は、妻が相続放棄をしても受け取れるとのことですが、主人が収めすぎた介護・国民保険料の還付も、受け取ってもよろしいのでしょうか?
 年金生活者だったので、死亡後にさまざまな還付金があるのですが、相続放棄すると、受取ってもよいものといけないものがあるようで判断に悩みます。

記載内容  還付金 未支給年金 保険料

(ぽんこ)


【相続放棄した場合、遺産なら還付を受けることができない】
 問題となっているのは
① 未支給年金
② 介護保険の還付金
③ 国民健康保険の還付金

といういずれも請求権です。

 これらの権利が遺産になる場合には、相続放棄をすれば請求できません。
 以下、個別に検討していきます。

【未支給年金は遺産ではない】
 未支給年金については、末尾に記載した法律により、相続の規定である民法とは異なる支給順序が定められています。
 そのため、裁判所の判決で遺産ではないという判断をされています。
 そのため、相続放棄をしていても未支給年金を受け取ることができます。

【介護保険及び健康保険還付金は遺産である】
 ところが、介護保険や国民健康保険の保険料の還付金はこのような特別の規定がないため、他の請求権と同じ扱いで、債権として民法の原則に従うことになり、遺産になります。
 そのため、相続放棄をすると請求することができません。

【もらってしまうと不利益がある可能性があります】
 もし、遺産である介護保険や健康保険還付金の還付を受けうると相続放棄ができなくなりますし、既に相続放棄をしていても相続放棄の効果を主張できなくなります。
 相続放棄をするということは通常は被相続人の方の債務が多額である場合が多いということになります。
 還付を受けたという事実を債権者が知ることはないとは思いますが、万一、債権者が及び健康保険還付金を受けたことを知った場合には、それらの債権者から被相続人の方の債務の請求を受けることになりかねませんので、ご注意ください。

《参照条文》
国民年金法第19条 (未支給年金) 1. 年金給付の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき年金給付でまだその者に支給しなかったものがあるときは、その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹であって、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の年金の支給を請求することができる。
2. 前項の場合において、死亡した者が遺族基礎年金の受給権者であつたときは、その者の死亡の当時当該遺族基礎年金の支給の要件となり、又はその額の加算の対象となっていた被保険者又は被保険者であった者の子は、同項に規定する子とみなす。
3. 第1項の場合において、死亡した受給権者が死亡前にその年金を請求していなかったときは、同項に規定する者は、自己の名で、その年金を請求することができる。
4. 未支給の年金を受けるべき者の順位は、第一項に規定する順序による。
5. 未支給の年金を受けるべき同順位者が二人以上あるときは、その一人のした請求は、全員のためその全額につきしたものとみなし、その一人に対してした支給は、全員に対してしたものとみなす。

相続放棄した場合の高額療養費【Q&A №380】


 母のかかっていた訪問診療クリニック、訪問看護、訪問薬局は、まず医療機関と家族が契約したうえでサービスが提供されるシステムでした。それで、娘である私が契約書に記入し、医療費は一か月分まとめて、私の口座から、翌月に自動引き落としになっていました。

 私の場合、医療費は私の口座から払うという契約になっており私が支払ってきたことは通帳記録からも証明できるのですが、そのような場合でも払い戻し金は受け取れないのでしょうか。
 三ケ所それぞれに限度額認定証を提示していますが、それでも合わせると月に20万程度支払っています。合算された払戻金が受取れないのはキツイです。

記載内容  高額療養費 還付金 被保険者 世帯主 健康保険法

(ぽんた)


【還付金返還請求権は誰のものなのかが問題です】
 年金については、特別に法律で、死亡した時点までの未支給分については、順位は、「配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹」というように、民法の法定相続人の規定とは別個のもらえる順序が定められています。
 高額療養費は、健康保険法に基づく高額療養費制度に基づくものですが、この請求については、死亡までの未還付分がどのようになるかを直接定めた規定はありません。
 ただ、健康保険法では、この高額療養費を請求できるのは《世帯主又は組合員健康保険の被保険者》と記載されています。
 お母さんが世帯主か、組合員健康保険の被保険者である場合には、お母さんが請求権者であり、その権利はお母さんの遺産になります。
 このようにその療養費請求権がお母さんのものである場合には、高額療養費請求権はお母さんの遺産になり、《相続放棄をすれば高額療養費は受け取れない》という結論になります。

【あなたが世帯主または組合員かどうかを確かめる】
 あなたの場合、まず、あなたが世帯主か、健康保険の組合員かどうかを確認しましょう。
 もし、どちらかであれば、先ほどの健康保険法の規定上からみて《世帯主又は組合員健康保険の被保険者》であるあなたの独自の権利として請求できると理解してもよいでしょう。
 この場合、役所に出向き、あなたが《世帯主又は組合員健康保険の被保険者》であったことを説明するとともに、現実にもあなたがお金を支払ってきたという証拠として通帳等を持参されるといいでしょう。

【最後は、ダメ元の精神で役所と協議する】
 なお、あなたが《世帯主》でもなく、又《組合員健康保険の被保険者》でもない場合でもない場合には、あなたには請求権がないように思われます。
 しかし、
① お母さんのかかっていた訪問診療クリニック等との契約はあなたがしていた。
② 医療費は、あなたの口座から自動引き落としになっていた。

という事実がありますので、あなたが返還してもらってもおかしくはないともいえます。
 役所と交渉して、支払ってもらったという話も聞いたことがありますので、あなたとしても、実質上の支払い者であるということを訴えて、療養費の振込み口座をあなたの口座にしてもらえるよう、努力されるといいでしょう。

参考条文:健康保険法第57条の2(高額療養費)
 保険者は、療養の給付について支払われた一部負担金の額又は療養(食事療養及び生活療養を除く。次項において同じ。)に要した費用の額からその療養に要した費用につき保険外併用療養費、療養費、訪問看護療養費若しくは特別療養費として支給される額若しくは第56条第2項の規定により支給される差額に相当する額を控除した額(次条第1項において「一部負担金等の額」という。)が著しく高額であるときは、世帯主又は組合員に対し、高額療養費を支給する。ただし、当該療養について療養の給付、保険外併用療養費の支給、療養費の支給、訪問看護療養費の支給若しくは特別療養費の支給又は第56条第2項の規定による差額の支給を受けなかったときは、この限りでない。
2 高額療養費の支給要件、支給額その他高額療養費の支給に関して必要な事項は、療養に必要な費用の負担の家計に与える影響及び療養に要した費用の額を考慮して、政令で定める。

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