大澤龍司法律事務所 相続問題無料相談ブログ

★保険金受取人を無断変更できるか【Q&A №347】


 長年認知症を患っていた父が亡くなり、父から預かっていた保険証券を持って、死亡保険金受け取り手続きに行きました。その際、窓口の方より、受取人が私でないということを伝えられました。この保険証券は、生前父が自分から受ったもので、受取人は私の名前になっています。兄弟に確認したところ、兄が兄弟の断りもなく、受取人変更手続きをしたようです。この変更の、無効請求は可能ですか?

記載内容  保険金契約 受取人変更 意思能力 認知症 長谷川式認知スケール

(りく)


【受取人変更は契約者のみ可能】
 保険契約者であるお父さんに《無断》で、お兄さんが保険金の受取人を変更した場合、その受取人の変更は無効です。
 無断の変更で受取人が変更されたのであれば、変更前の受取人が保険を受け取る権利があります。
 ただ、本当に無断でしたのか、お父さんの同意がなかったのかという点を明らかにする必要があります。

【問題点は、無断であるのか、意思能力があったのかという点】
 あなたが変更前の受取人であるとした場合、あなたとしては次の点の少なくともいずれかを明らかにする必要があるでしょう。

① その受取人変更がお父さんに無断であったこと。
② 仮にお父さんの署名・捺印があったとしても、その時点ではお父さんは意思能力がなかったこと。

 このうち、①については、お兄さんが無断でしたということを認めればいいのですが、もし、否認されるのであれば、保険会社から受取人変更の手続き書類を取り寄せし、筆跡等を確認されるといいでしょう。
 ただ、保険会社としては、変更の際に本人の意思確認をするのが原則であり、お父さんの署名・捺印をした書面を保存している可能性があります。

【認知症にも程度がある・・お父さんに意思能力はあったのか】
 保険会社から取り寄せした書類を見ると、お父さんの筆跡で署名されていた場合には、前項の②の点が問題になります。
 お父さんは認知症であったようですが、認知症にも程度があります。
 程度が重い場合には、意思能力がない(受取人変更という意味もわからずにしたもの)として、その受取人変更の効力は認められません。

 認知症がどれ程度のものかは、長谷川式認知スケール等の意思能力を確認するテスト(参考:Q&A №292Q&A №315、「相続コラム:意思能力と長谷川式認知スケールに関する判例の紹介」)である程度判明します。
 お父さんが入院等されていたのであれば、是非、カルテを取り寄せし、その内容を確認されるといいでしょう。
 カルテにこのようなテストの記載がない場合には、カルテの中の医師や看護師の記載を見て判断することになるでしょう。

【問題を感じるようなら専門家に】
 このような資料を集めていただき、やはりお兄さんの受取人変更手続きに問題があると感じられるようであれば、一度、相続に詳しいお近くの弁護士にその資料を持ち込み、本格的な法律相談を受けられるべきでしょう。
 今のままに放置すると、保険会社がお兄さんに支払いをする可能性もありますので、早急に相談をされるといいでしょう。

遺言無効判決に必要な証拠【Q&A №292】


 現在私は、公正証書遺言を無効とする判決を得たく努力しています。その公正証書遺言は以下のような手順で作成されたようです。90歳を越えたひとり暮らしの母に長男夫婦が自分たちに極めて有利な遺言を書かせるために母を公証役場に連れて行きました。証人2名は母の甥夫婦で安心させ予め権利書で主たる財産である母の土地建物を自分たちに相続させる内容となっています。

 さて本件公正証書遺言の母は要介護3に認定されたばかりで前記夫婦の力をかりなければ立ち上がることも歩くことも出来ない状だったと思います。このような状況で本当に自分の自由意思を以って遺言書を書いたかどうか非常に疑問に思っています。介護3の認定記録の他にどのような物的証拠があれば遺言無効の判決が得られるか教えてください。よろしくお願い致します。

記載内容  長谷川式認知スケール カルテ 看護記録 認知症 介護施設

(キータン)


【要介護3でも遺言できる】
 要介護3の人でも、それが身体的な理由であれば、遺言をすることが可能です。
 遺言で問題となるのは物事を認知し理解して判断を下す能力(意思能力といいます)であり、足腰が弱っていたこととは全く別物だからです。
 例えて言えば、車いすのお年寄りの方でも意識の明確な方は多数いらっしゃるということです。

【カルテの取り寄せを検討する】
 遺言を無効にするには、次の2つのうちのどちらかである場合が多いです。

① 遺言の偽造など、遺言が本人の意思に基づいていない。
② 遺言者に意思能力がなかった。

 今回の質問では公正証書遺言ということですので、②の問題となります。
 この意思能力の判断では、カルテなどが参考になります。
 お母さんが入院していたのなら、そのカルテを取り寄せして、その記載内容を確認しましょう。
 また、通院していたのなら、念のためにそのカルテを取り寄せしましょう。
 カルテにはお医者さんの所見や看護師の病状記録などがあり、当時のやりとりや健康状態を詳しく記載しており、当時の意思能力を知る上で大変重要な資料として裁判所も重視します。

【認知症の検査結果が重要です】
 最大の決め手となるのが認知症の検査結果です。
 この検査にはいくつかの方式があるようですが、著名なところでは長谷川式認知スケールという検査方法(参照:「相続コラム:意思能力と長谷川式認知スケールに関する判例の紹介」)があり、この検査を当時行っていればその検査結果が重要な証拠として扱われるでしょう。
 この検査結果は、病院で行われ、カルテなどとともに保存されていることがあります。このほか、介護施設によっては、長谷川式認知スケールを定期的に行っているところもありますし、介護施設への入所の際の参考記録として実施しているところもあります。
 そのため、当時お母さんが入院・通院をしていた医療機関や介護施設などに問い合わせてそのような記録がないか調査してみることをお勧めいたします。

★認知症の判定基準【Q&A №116】


平成23年7月に母が亡くなりました。
母は、平成19年3月に長谷川式簡易知能テストで15点でした。
平成20年の9月に遺言書を書いていました。(同居していた姉の誘導があったと思います。)
平成20年3月には、CTでの映像では、脳萎縮が激しくなり一人では何も出来なくなるほど見当識障害がでていました。
平成21年4月には、介護認定でアルツハイマー型認知症で重度と医師の診断書が出ていました。
遺言書は有効でしょうか?(全て姉にとなっています。)
認知症の判定の基準を分かりやすく御教え下さい。
CT・カルテ等は、ありますが専門医や専門の弁護士さんは居られるのでしょうか?

記載内容  認知症 遺言能力 長谷川式認知スケール

(ケイコ)


【遺言ができる能力とは・・】
 遺言の内容も理解できないような人の遺言は、有効とはされません。
 認知症が重度になると、遺言をしてもその効力が認められません。
 問題はどの程度であれば、遺言能力があると判断されるかということでしょう。

【判断資料としての長谷川式認知スケール】
 認知症などの程度をはかるテストとして、質問にある長谷川式認知スケール(簡易知能テスト)があります。
 簡単なテストですが、知的能力がどの程度かがよくわかりますので、遺言能力の有無の重要な判断資料です。

【認知スケールからの判断では・・】
 前記認知スケールは満点が30点です。
 検査結果が20点以上なら、まず遺言能力があると言っていいでしょう。
 逆に10点以下であれば、遺言をする能力が認められない場合が多いでしょう。
 質問の場合はちょうど中間の15点ですが、遺言の内容が《すべてお姉さんに》というシンプルなものであることもあり、テスト当時には遺言能力はあったというのが妥当なところかもしれません。

【認知スケールから1年6ケ月後の遺言能力】
 遺言作成は、テストから1年6ケ月後でので、この時点での遺言能力の有無が問題となります。
 その間、CTでの映像では、脳萎縮が激しくなったようですが、CTだけで知的能力を判断するのは難しいでしょう。
 《一人では何も出来なくな》ったというのであれば、遺言能力がなかった可能性も高いように思われます。
 ただ、遺言能力を争えば、裁判になる可能性が高く、どのように証明するかという点が問題となります。
 もしお母さんが入院をされていたのであれば、カルテや看護記録を取寄せされるといいでしょう。
 医師や看護師という第三者の眼から見たお母さんの行動が記載されており、遺言能力の重要な判断資料となるでしょう。

【専門的に取り扱う弁護士を探すことも重要です】
 遺言能力だけを専門的に扱う弁護士はいないでしょう。
 ただ、相続事件に詳しい弁護士なら遺言能力が問題となったケースをかなり扱っているはずです。
 知人や弁護士会等から相続に詳しい弁護士の紹介を受けるといいでしょう。

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