大澤龍司法律事務所 相続問題無料相談ブログ

香典と葬儀費用の相殺、事務管理【Q&A №595】 0595


【質問の要旨】
喪主と葬儀費用支払者が違う場合、香典は誰がもらうのか

記載内容 葬儀費用 香典 喪主

【ご質問内容】
母が死んで、葬式が終わり、私が喪主だったのですが、当然、香典は喪主である私がもらうと思うのですが、姉が香典は私がもらう、と発言をしました。
そして、香典をあずかっていた受付の人から、家の部屋で「代表者に渡します」といったにもかかわらず、私が喪主なのに、同席した姉が横から手を伸ばして、香典180万円を奪い取ってしまいました。
そこで、姉に対し、不法行為で180万円の損害賠償を請求しようとおもうのですが、請求できますか?
1 仮に、姉が葬儀費用を支払ったので、相殺する、と主張した場合不法行為の場合、加害者のほうから相殺できないと思うのですが。
2 仮に、姉が事務管理を主張した場合、私は姉に葬儀費用を支払ってくれ、とかいってないし、本人の意思・利益に適合しなければ事務管理は成立しない(通説。700条但書)と思うので、事務管理を主張できないと思うのですが。
3 香典が喪主に対する贈与であれば、贈与された金を何に使おうと、喪主の勝手であり、必ずしも葬儀費用に使う必要はないのでしょうか?

(outon510)


【香典と葬儀費用の法的な扱い】
今回は香典と葬儀費用の負担に関するご質問ですので、まず前提となる法律上の扱いから回答させていただきます。
まず、香典や葬儀費用について定めた法律はありません。
そのため、これらの金銭の扱いについては裁判所の判断や法律学者の見解が分かれているため、明確に「損害賠償を請求できる」とまでは断定できません。

ただ、その中でも次のような考え方が一般的です。
① 葬儀は喪主が主宰するものであり、相当と思われる規模や費用も喪主が決定する。
② 葬儀費用は被相続人の死亡後に発生するので、相続債務ではない。
③ 葬儀は喪主が主催するので、その費用は喪主が負担し、香典も喪主に対する贈与と扱い、喪主が全部を取得するのが原則である。
④ ただ、家庭裁判所での扱いでは、他の相続人が葬儀に出席している場合であれば、葬儀費用はその出席した相続人全員で分担することを求めることができ、遺産から葬儀費用を差し引いて遺産分割を行うようにすることも多い。

このようにした費用分担する場合には、香典は葬儀費用の控除科目として組み込まれることになり、その分、葬儀費用が減少する。
(詳しくは、当ブログNo.538、424、401、308、140などをご参照下さい。)
以上の見解からすると、今回のご相談は次のように整理できると思われます。

【質問1 葬儀費用を支払った姉の行為は不法行為になるか】
喪主があなたであるにも関わらず、葬儀費用を負担したのはお姉さんのときにどのように考えるかというのが最初の質問です。
この点については、相続人のみなさんが出席した葬儀ではあったようですので、法的には③の考え方に基づいて相続全員で葬儀費用を負担し、香典も全員で分割するという処理が妥当と思われ、この見解ではあなたも香典を請求できます。但し、あなたの相続分(兄弟が2名なら180万円の2分の1で90万円程度)の限度にとどまります。
(ただ、この点については、事務所の弁護士間でも意見が分かれており、香典の性質とは親族や近隣住民が葬儀費用の一部に充てるという趣旨で支払うものである理解すると、今回のように喪主が葬儀費用を出さず、他の者(姉)者が費用を出した場合、香典は葬儀費用を出した者が取得することになる。したがって、今回の質問のようなケースでは喪主は香典をもらえない。その結果、お姉さんが香典を持ち去ったのはなんら不法行為にならないという結論になります。)
また、不法行為の加害者であるお姉さんから相殺ができないというのはご指摘の通りですが、裁判所は葬儀費用から香典を控除した額を相続人で分割する考え方を採用しているため、相殺されたに近い和解案で解決が図られる可能性が高いように思います。

【質問2 事務管理の主張について】
このケースで事務管理の主張というのはあまり考えにくいと思いますが、ご指摘の通り、事務管理は本人の意思と利益に適合する必要があります(民法700条ただし書き)。ただ、いくらあなたが「姉に葬儀費用を支払ってくれと頼んだ憶えはない」と主張しても、あなたも葬儀に出席している以上、あなたの意思や利益に反していたとは認められないでしょう。

【香典はまず葬儀費用に充当されるのが一般】
 最後に香典が喪主に対する贈与とされた場合の扱いについても回答しておきます。
 ご指摘の通り、贈与されたお金であればその使途は問われません。葬儀費用は別の資金から用立てしても構いません。


葬式費用の負担者と香典の取得者【Q&A №560】 0560


【質問の要旨】

・父の葬式代を叔父が立て替えた
・喪主は叔父が務めた
・遺産から葬式代を叔父に返したが、香典は誰が受け取るのか?

【ご質問内容】

母とは離婚、片親だった父がなくなり、葬式をあげる事になりました。
24歳の姉と21歳の私(2人姉妹)は知識も、まとまったお金も無いからと、何も費用などの相談も無いまま父の弟である叔父が喪主を務め、葬式費用も返してくれればいいからと立て替えてくれました。
後日かかった費用の領収書を受け取り、返すように言われ葬式費用は遺産から返したのですが、この場合香典は誰が受け取るべきですか?
実際に喪主を務めた叔父が香典を受け取るとしたら、父の葬式なので葬式費用は私と姉で叔父に返すべきなのですか?

(麗華)


【葬儀費用や香典は法律の規定がない】

葬儀費用は、(社会常識として)遺族すなわち相続人が負担するもの、という印象がありますが、そのようなルールを定めた法律の規定はありません。このことは香典でも同じで、法律にはっきりとした決まりはありません。
このように、葬儀費用や香典は法律上明確な規定がないため、葬儀を行った後の費用負担についてもめ事になったお話を法律相談などでよくお聞きします。

【裁判例も判断は分かれている】

葬儀費用について裁判所の判断は分かれており、
①相続人全員で分担するべきと判断した例
②喪主が負担するべきと判断した例
など様々です。
このように判断が分かれる理由としては、葬儀の内容や方法は地域や慣例により様々であり一律の判断を示しにくいことや、葬儀に相続人全員が参加していないため相続人全員に分担するのが相当ではないケースもある、というところにあるように思います。
このように裁判所の扱いも固まっていない状況ですが、最近の例では喪主負担の裁判例がやや多め、という印象がありますので、基本的には喪主負担だと考えてよいでしょう。
(なお、これはあくまで私見ですが、裁判所は葬儀費用を負担した人物が最終的に香典を受け取れるように物事を考えている印象は見受けられます。)
なお、この論点は【相続判例散策】兄弟の葬儀費用等を負担した場合に、その費用を甥姪に請求できるのか(名古屋高等裁判所 平成24年3月29日判決)も参考になると思いますので、合わせてご参照下さい。

【葬儀費用は喪主負担が基本】

裁判所の判断が分かれるとはいえ、最近は喪主負担すべきと判断される傾向があるため、これを前提に以下回答致します。
喪主負担説の考え方の背景には、喪主が葬儀の手配も行い内容も決定するのだから、内容を取り決めた人物が費用も負担すればよい、というものがあります(もっとくだけた言い方をすれば、葬儀をやりたい人が内容を取り決め、内容を決めた人が費用を負担する、というイメージです)。
この考え方からすると、今回叔父が喪主を務めてくれたのであれば、本来は叔父が費用を負担するべきという結論になりそうですが、今回は少し話が違っているようです。

【葬儀の主催者はあなた方と理解すべき】

今回は、叔父があなた方の年齢や金銭的事情に配慮して喪主を務めることを申し出て、あなた方もその提案に特に反対もされず葬儀を行われたようです。そうすると、客観的にはあなた方姉妹が叔父の提案を受けて
・叔父が(あなた方に代わって)葬儀の手配を行う
・叔父が(あなた方に代わって)喪主の役割を代打する
・叔父が(あなた方に代わって)葬儀代も立て替えて業者に支払っておく
ことに合意した、と見るのが自然なように思われます。
つまり、叔父はあくまで代打として役割を演じただけであり、実質的な葬儀の主催者(=真の喪主)はあなた方姉妹と理解するべきと思われます。
よって、葬儀費用は主催者であるあなた方姉妹(相続人)が負担すべきでしょう。
(なお、あなた方は費用の詳細まで相談を受けていなかったことにご不満があるようですが、葬儀の手配を基本的に一任したのであれば、よほど非常識で高額な葬儀内容でない限り叔父の判断が尊重される可能性が高いと思われます)

【香典は主催者に対する贈与ないし援助】

このとき、香典は誰が受け取るべきなのかが問題になりますが、上記の通り裁判所の判断が固まっていないので確実な回答をお伝えすることは難しい状況にあります。
ただ、香典には葬儀費用等の出費に対して金銭面で援助する意味もあります。そのため、あなた方が実質的な主催者として葬儀費用を負担したのであれば、香典も葬儀費用を負担したあなた方が取得するべきという判断を裁判所が下す可能性はあると思われます。
そのため、あなた方としては、葬儀費用の負担を認める代わりに香典は引渡すよう叔父に請求されるとよいでしょう。


葬儀費用・香典と地域の風習【Q&A No.474】 0474


 香典金を葬儀費用にしないと言う喪主がいるが、そんな風習がありますか。
 岡山県在住ですが如何なものか。

記載内容 葬儀費用 香典 風習

(ma)


【香典に関する慣習はわからない】

質問は「葬儀の香典を喪主が葬儀費用にしないで取り込む風習があるか」というものです。
 残念ながら、そのような風習があるかどうかは弁護士ではわかりません。
 私が理解する限度でいえば《香典とは死者への弔意、遺族への慰め、葬儀費用の経済的軽減などの目的でなされる喪主等に対する贈与》というものであり、裁判例ででてくる香典も同様の趣旨で理解されています。
 香典が上記の趣旨で理解される限り、香典は葬儀費用に充てられるべきだといえるでしょう。

【葬儀費用と香典について】
 遺産に含まれる債務とは被相続人の生前の行為により発生した債務です。
 その意味では、葬儀費用は被相続人が死亡した後に発生する費用ですから、相続債務ではありません。
 ただ、葬儀費用が多額になる場合があることから、喪主の単独負担とされた場合、喪主に気の毒なケースも考えられます。

 そのため、裁判や調停等では、葬儀費用が被相続人の生前の地位や立場から見てふさわしい程度のものであり、かつ、他の法定相続人も葬儀に出席しているような事情があれば、葬儀費用は相続直後に発生する費用であること、死亡に必然的に伴う費用であることから、公平の観点にてらして相続債務と同様に遺産から葬儀費用を支出することを認める扱いが多いといえます。

 香典ですが、葬儀費用が遺産から出されるような場合なら、香典は葬儀費用に充てられるべきでしょうし、葬儀費用を喪主が単独で負担するのであれば、喪主が香典を単独で取得することになるというのが公平の見地から妥当な解決方法でしょう。
  《葬儀費用という支出は遺産からするが、収入であるの香典は喪主が独り占め》というのは公平の観点からは認めがたいというのが弁護士の率直な感想です。

(弁護士 大澤龍司)


相続人不在の葬儀代や香典の扱い【Q&A No.470】 0470


相続人のいない従兄弟の葬儀を執り行いました。
従兄弟の財産は、国に没収されてしまいました。
葬儀代だけは戻りましたが、香典分を差し引かれてしまいました。
その後の法要などで、出費がかさみ納得できません。

記載内容  相続人不在 香典 葬儀費用

【ご質問内容詳細】
 身内が一人もいない従兄弟が急になくなり財産が国に没収されることになりましたが葬儀代だけは戻りました。
 しかしその時に頂いた100万円近い香典を申告したところその分を全部差し引かれてしまいました。
 この差し引かれた分の香典代はそのまま国に持って行かれることは理解できません。
 その後永代供養や墓の撤去費用や三回忌など費用がマイナス100万近くかかりました。
 裁判所の葬儀時の拠出金等清算完了してもう半年以上たちましたが取り戻せることはできますか。

(マロン)


【葬儀費用は相続債務ではないが・・】
 葬儀費用は相続債務ではありませんので遺産からの支払いはできないというのが原則です(なお、相続税の申告では葬儀費用は費用と控除対象として扱われますが、それは税務の扱いであり、民法上は遺産にかかわる債務とはされておりません)。
 この理由は、遺産から支払われるべき債務は生前に発生したものに限られるのに、葬儀費用は死後に発生するものだからです。
 そのため葬儀費用は原則として喪主が負担することになります。
 ただ、葬儀は①社会生活上で死亡に伴うものであること及び②その額がそこそこ高額であることから、喪主以外の他の相続人も葬儀に参加していたような場合には、公平の観点から法定相続人に負担させることも実務上、よく行われています
 そのため、財産管理人(国)としては、本来は遺産から支出するべきものではないけれども、葬儀費用程度は支出しても差支えないと判断し、あなたに支払いをしたのだと思います。

【香典の扱い】
 葬儀費用は本来、相続債務ではないのですが、公平の観点から遺産からの支出を認めたとすれば、同じく公平の観点から言えば、収入である香典は遺産に入れるべきだという見解になります。
 本来的には喪主が負担すべきとされる葬儀に関する支出である葬儀費用は相続財産から出してもらうが、喪主が受け取る葬儀に関する収入である香典は返さなくて良いというのはやはり公平に反するという結論になりますので、財産管理人があなたから香典分を回収したのはやむをえない処置だったというべきでしょう。
 次の図のような考え方です。

葬儀費用  本来喪主負担  しかし、財産管理人が支出

香 典   本来喪主の物  しかし、財産管理人の収入

元々、葬儀費用も当然遺産から出すべきものではなかったのだという前提にたてば、香典で回収を図るという財産管理人の判断もやむを得ないものと思われます。
 経済的あるいは金銭的には損をするような場合もありますが、葬儀に関連する事項は単に経済的に考えるのではなく、社会生活の上でやむを得ずする点もあります。

【法事費用の扱い】
 死亡直後の葬儀費用も原則は相続費用ではありませんので、その後の初七日や四十九日、一回忌等の法事費用についてはなおさら相続費用には当たらず、遺産から支出することは認められません。
 法事費用については、祭祀の承継者が負担するということになります。
 相続人ではないあなたが法事を行うのであれば、その点は予め承知されておくといいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)


★香典は誰のものか【Q&A №420】 0420


 香典は遺産ですか?贈与ですか?
 香典はだれのものですか?
 葬式の時、喪主は私だったのですが、兄弟が勝手にもっていった 香典が贈与なら、所有権は私にあるので、窃盗、横領になるのではないのでしょうか?

記載内容  香典 喪主 贈与 葬儀費用

(fdfff)


【葬儀費用に関する基本的な知識】
 相続税の申告をする場合、葬儀費用を経費として控除することは可能です。
 しかし、民法上は、葬儀費用は相続費用とは認められず、遺産から債務として控除することは認められません。
 なぜなら、葬儀費用は、被相続人の死後、相続開始後に発生するものであり、喪主が一人で負担されるものとされているからです。
 したがって、葬儀費用については税務の扱いと法律の扱いが異なるということになります。
 ただ、調停などで葬儀費用が問題になる場合には、葬儀費用が相当であり、かつ他の相続人も出席していたのであれば、法定相続分に応じて負担するという解決をすることが多いです。
 次に香典ですが、これは喪主が取得します。
 香典は、死者への弔意、遺族への慰めの意味も持ちますが、喪主が負担する経済的負担を軽減するとの役割も果たしており、喪主に対する贈与と理解されています。

【香典を勝手にもっていかれた場合は・・】
 香典は喪主への贈与ですので、喪主の了解なく、他の人が無断で持ち去ったとすれば、刑法の窃盗あるいは横領に該当します。
 ただ、持ち去ったのがあなたの兄弟という親族間での話ですので、刑法上は、《親族相当例》(刑法第244条:後記条文参照)の適用を受け、告訴がなければ警察は捜査を行わないでしょうし、仮に告訴を行ったとしても、警察としては《親族間で解決される方が・・》というような対応をする可能性が高いと思われます。
 そのため、警察には過度な期待はせず、ご自身で返還請求に向けた積極的に動きを取られるといいでしょ。

《参考条文》
刑法 第244条(親族間の犯罪に関する特例)
1. 配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第235条(窃盗)の罪、第235条の2(不動産侵奪)の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。
2. 前項に規定する親族以外の親族との間で犯した同項に規定する罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
3. 前2項の規定は、親族でない共犯については、適用しない。


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