大澤龍司法律事務所 相続問題無料相談ブログ

相続法改正2 配偶者(長期)居住権って?

【配偶者の居住権を長期保護する制度ができました】

前回のブログでは配偶者「短期」居住権について解説しました。
今度はもう一つの新制度である配偶者(長期)居住権についてお話しします。
(なお、当記事ではこの制度を短期居住権と区別して、「(長期)居住権」と呼ぶことにします。)
配偶者「短期」居住権は、建物の所有者である夫が亡くなった場合に、残された妻が今まで通り夫と居住していた自宅に住み続けられるよう、最低6ヶ月の居住権を保護する、という短期の居住権を保護する制度でした。
これに対し、配偶者(長期)居住権は、もっと長期的に、配偶者が死亡するまで居住することができる権利です。
この制度が作られた背景には、遺産が自宅の土地建物しかなく、お金が少ないケースでは、配偶者が自宅土地建物を相続するとお金の大半は他の相続人が相続することになり、配偶者がその後の生活資金に困るケースが相次いだという事情があります。
これをクリアして配偶者の生活を保護しようとしたのがこの制度です。

【家の所有権を相続せず、「居住権」だけを取得できます】

(長期)居住権は、配偶者が、家の所有者が亡くなられた時点(相続開始時点)で、亡くなられた方の建物に住んでいた場合に認められます。
これには次のメリットがあります。

・自宅土地建物など不動産は一般に価値が高いため、自宅の「所有権」を丸ごと相続すると、現金や預金など他の遺産は他の相続人に譲る必要が出てくる。
・しかし、自宅の「(長期)居住権」だけなら財産的価値が低いため、(長期)居住権の他、十分な現金や預金を相続することができる。

(参考 自宅の「所有権」を相続した場合と「(長期)居住権」を認めた場合の比較)
被相続人 夫   
相続人  妻と長男
遺産 自宅(所有権) 1500万円
   預金 1500万円

① 妻が自宅所有権を相続した場合

妻が相続する遺産 ・・・自宅(所有権)1500万円(預金はゼロ円)
長男が相続する遺産・・・    預金 1500万円

このような分割になり、妻は預金を1円も相続できず、生活資金に困る事態が考えられます。

② 配偶者(長期)居住権を認めた場合

妻が相続する遺産 ・・・自宅((長期)居住権) 500万円(※仮定)
            預金     1000万円
                     
長男が相続する遺産・・・自宅(所有権)1000万円
預金      500万円

 → 妻は自宅にそのまま居住でき、かつ現金も相続できるメリット
   これが配偶者(長期)居住権の大きな意味です。

※(長期)居住権の価格評価はあくまで暫定であり、個々のケースに応じて不動産の価値のほか、建物耐用年数や築年数、法定利率などを考慮して算定する必要があります。


【配偶者(長期)居住権が認められる2つの場合】

配偶者(長期)居住権は自動的に認められるわけではなく、次の①②③のいずれかの条件を満たす必要があります。

① 遺産分割で(長期)居住権を取得した場合
配偶者(長期)居住権を取得する最もストレートな方法です。
遺産分割を行う際に、配偶者が当該自宅への居住継続を希望し、他の相続人も配偶者(長期)居住権を認める内容で遺産分割協議が成立させることで、配偶者(長期)居住権が認められます。

② 遺言で配偶者(長期)居住権が指定された場合
亡くなった方(被相続人)の遺言で、配偶者に(長期)居住権を取得させることと記載されていた場合にも、配偶者(長期)居住権が認められます。

③ 家庭裁判所の審判で定められた場合
上記の①②以外にも、家庭裁判所の遺産分割審判で配偶者(長期)居住権が認められた場合も、配偶者(長期)居住権が認められます。

【上記期間中の賃料は不要です】

さらに、配偶者(長期)居住権により居住している期間中、賃料は不要です。
つまり、無償で住み続けられるということです。
他の相続人にとっては、所有権を取得しても自分で使用できず、第三者に貸して賃料収入を得ることもできませんが、(元々無償で居住していた)配偶者の保護のため無償とされたものです。

【配偶者【長期】居住権の制度の施行日は、2020年4月1日です】

配偶者(長期)居住権の制度は、2020年(平成32年)4月1日から施行されます(短期居住権と同じ)。
配偶者(長期)居住権の制度は、施行日後に開始した相続について適用され、施行日前に開始した相続については、適用されません。
ご注意ください。


生活費の援助は特別受益か?【Q&A №656】

 

【質問の要旨】

相談者は、母と暮らしていた5年間は母の年金で生活していた。
母の死後、「相談者のために支出した生活費などのすべてを持ち戻すこと」と母が書いた書面を姉から渡された。
生活費も相続財産に持ち戻さなければならないか?

 

【ご質問内容】

私は二人姉妹の妹です。
先月母が亡くなりました。
母が亡くなるまでの10年間のうち、前半の5年間は私と母の2人暮らしで、母の年金で生活していました。
しかし母との生活は、母の面倒を見なくてはならず、それが嫌で私だけ家を出ようと思いましたが、それを姉に伝えると、姉が母を引き取りました。なので後半の5年間は、と母は姉夫婦と同居しました。
今回、遺産分割にあたり、姉から母が書いた書面を渡されそこには「妹(私)との同居中に、妹(私)のために支出した生活費などの全てを持ち戻すこと」と書かれていました。
姉が言うには、母が私に支払った全ての支出を相続財産に戻して清算するという意味の様です。
このような書面があると、私はどうなってしまいますか?
生活費なんかも相続財産に戻さないといけないのですか?

(rogu)



 ※敬称略とさせていただきます。

【生活費程度は特別受益から除外】
ご質問の件ですが、生活費は持ち戻しの対象にはならないと思われます。
以下、その理由を説明していきます。
まず、親から贈与されたお金を遺産に持ち戻す法律として、民法903条の特別受益という制度があります。
この法律では「生計の資本として贈与」を受けた場合は特別受益であり、受益の額を相続財産に持ち戻すものとされますので、いわばあなたは遺産の前渡しを受けたようなものとして扱われます。
この特別受益が適用されると、あなたは5年間にわたって母から受けた生活費の総額「特別受益」として遺産に持ち戻されてしまうことになりそうです。

【生活費程度は扶養の範囲内】
このような生活費と特別受益の問題は遺産分割調停でよく問題になります。
しかし、生活費が特別受益とされることはあまりありません。
その理由は、母が子供の扶養義務を負っているからです。
母が子を扶養する義務は子供が成人した後でも続くため、月に数万円程度の生活費提供であれば、「母が扶養義務を果たしただけ」であり、プレゼント(贈与)ではないと扱われることが多いでしょう。
常識的にも、母が子を扶養することを「贈与(プレゼント)」と呼ぶには違和感があるのではないでしょうか。
もちろん、「生活費」と称して毎月50万円や100万円といった多額の資金が提供されていれば別ですが、月数万円程度なら扶養義務の範囲内といって差し支えないでしょう。

【母の書面は法的効力なし】
ただ、今回は母が「生活費を持ち戻しなさい」という書面を書いていたようです。
亡くなった母が死亡後に法的効力のある書面を残す方法は遺言だけですが、これは遺言の形式的な方式を満たしている必要がありますが、今回はいかがでしょうか。
また、特別受益でないものを「生活費として渡したけど、そのお金は特別受益として持ち戻す」という遺言を書いても法的効力はありません。
いずれにしても、母の書面は法的な効力がありませんので、上記のように生活費として一般的な範囲の金額かどうかを検討されるとよいでしょう。


相続法改正1 配偶者短期居住権って?

【配偶者の居住権を保護する法制度ができました】

建物の所有者である夫が亡くなった場合に、残された妻は、夫と一緒に暮らしていた建物に住み続けられるのか、という問題は、これまでもたびたび問題になってきました。
最高裁判例で、妻に建物の無償使用を認める使用貸借が成立していたとするなど、ある程度保護はされてきました。
しかし、夫が建物を第三者に相続させる遺言を残した場合など、夫が明確に反対の意思を示していた場合には、夫の死亡によって建物の所有権を取得した第三者からの退去請求を拒めないなど、不十分な点がありました。
そのため、今回の相続法改正で、「配偶者短期居住権」という権利が創設されました。
今回は、この「配偶者短期居住権」の内容について、お話ししたいと思います。

【家の所有者が決まるまで住み続けられます(最低でも6か月は保障)】

短期居住権は、配偶者が、家の所有者が亡くなられた時点(相続開始時点)で、亡くなられた方の建物に無償で住んでいた場合に認められますが、その期間は、以下の通り、場合によって異なります。

① 配偶者を含む相続人間で遺産分割をすべき場合
まず、亡くなられた方の遺言がなく、配偶者が相続放棄もしていない場合、つまり、配偶者が他の相続人と遺産分割協議をして家の所有者を決めるようなケースでは、
 ⅰ 遺産分割によって家の所有者が確定した日
 ⅱ 相続開始の時から6か月を経過する日
のうち、いずれか遅い日まで住み続けられます。
つまり、配偶者は、最低でも相続開始から6か月は住み続けられ、また、遺産分割協議が長引けば、協議がまとまって家の所有者が決まるまでの間は、何年でも住み続けられるということになります。

② 家が第三者に遺贈された場合や、配偶者が相続放棄をした場合
上記とは異なり、亡くなられた方に遺言があって、誰かに家が遺贈されていた場合や、配偶者自身が相続放棄をしたようなケースでは、
家の所有者となった者から「配偶者短期居住権の消滅の申入れ」をされた日から6か月を経過する日
まで、配偶者は家に住み続けられるということになります。
このケースでも、新しい所有者から「もう居住権は終わりにするので出て行ってくれ」と言われてから6か月の間は、居住が保障されています。

つまり、どんなケースでも、相続開始から最低6か月間は住み続けられるため、残された配偶者は、その間に新たな住居を見つけるなどといった準備をすることができるのです。

【上記期間中の賃料は不要です】

さらに、上記の期間中、配偶者が家の所有者なり他の相続人らなりに、賃料を支払わなければならないかというと、賃料は不要です。
法律で決められた上記期間については、無償で住み続けられるということです。

【配偶者居住権の制度の施行日は、2020年4月1日です】

配偶者短期居住権の制度は、2020年4月1日から施行されます。
配偶者短期居住権の制度は、施行日後に開始した相続について適用され、施行日前に開始した相続については、適用されませんので、ご注意ください。


家族間の私文書偽造【Q&A №655】

 

【質問の要旨】

法的手続きなく(父の同意は口頭ではとった)父の所有物件を姉名義に変えた。
父自身の署名はなかったため、今後の不動産売却の際に姉が刑罰を受ける可能性が
ないか心配。

 

【ご質問内容】

次女です。
父が脳梗塞になりリハビリ入院中から認知症になりつつあります。
父が所有していた土地などを母同意の元、姉名義に変えて(生前贈与)新たに姉名義の家を建てる計画が進んでいます。
母が一人で暮らせないため新居には母と姉が暮らす予定です。
名義を変えた手続きに関しては司法書士を挟まず母と姉自身で登記をしたそうです。
但し、書類に関しては父が署名をしておらずいわゆる私文書偽造になると思います。
意思に関しては 話がきちんとできる時に確認をしたそうです。
遠方に住んでいる私は権利の主張はないので姉名義になった事に文句はないのですが、私文書偽造がバレてしまった場合に母や姉が処罰をされないか心配をしています。
法律を犯してはいるのは承知していますが、名義を姉にした土地を売却し、新たに家を建てる事は問題になりますか?

(まどか)



 ※敬称略とさせていただきます。

 


実例Q&Aは、相続問題に限定、特化したブログであり、この趣旨を徹底するため、相続案件以外の質問をいただいた場合は、回答を控えさせていただいております。
ご質問は《認知症の父の署名押印を得ることなく生前贈与契約及びそれに伴う登記手続をした場合の問題点に関するご質問にとどまっており、相続分野の法律問題を含んでいない》ものと理解しました。
ただ、せっかくの質問ですので、弁護士の簡単なコメントを以下に記載させていただきます。

《弁護士コメント》
今回の事案は、
① 父から姉への生前贈与契約を締結し、
② 父名義の登記関係必要書類(但し、父は関与しないで作成された)を提出した
ものと思われ、有印私文書偽造罪(刑法第159条)、公正証書原本不実記載罪(同第157条)に該当します。
ただ、被害者の父や関係者(法定相続人など)が問題にしない限り、警察が特に調べに乗り出すようなことは、通常は考えられず、偽造に関与した者が処罰されることは考えにくいです。
また、父が姉への名義変更に同意していたというのであれば、署名捺印について、父が同意していたと推定される可能性も高く、この点からも刑事裁判で処罰される可能性は少ないでしょう。


使途不明金を追及する際の調査立証方法【Q&A №654】

 

【質問の要旨】

・亡くなった母の遺産が少なすぎる。
・母の生前中は、同居の兄が通帳、カード等を管理。
・母に要する費用とは関係なく出金されていた可能性がある。
・不正出金をどう立証できるか、又、兄は立証責任があるのか。

 

【ご質問内容】

亡くなった母の現金・預金が150万位しかありませんでした。

同居していた兄に確認したら「入院期間中は預金通帳、カードは管理していたが引き出したお金は病院で母に渡したが使途は一切わからない」とのこと。

5年間で約1,000万円がATMで引き出されていました。

1日に100万円の時もあります。

入院費用、自宅の光熱費など維持管理費はほとんど口座引き下ろしです。

母が病院で使うのはおやつを買う程度です。兄が直接取り込んだ証拠はありません。

母はほぼ寝たきりなので外出は出来ません。

母は軽い認知症はありましたが生活に支障が出るほどではありませんでした。

訴訟を考えています。

こちらが勝訴するため立証しなければならないことと、兄に立証責任があることを教えてください。銀行取引履歴は取り寄せてあります。

相続人は4名です。

なお入院前の10年間でも約1億円の使途不明金がありますが、こちらは母がまだ健康の時もあったので立証が難しく諦めています。

もちろん何かに投資した、高価な物を買った形跡はありません。

(さくら)



 ※敬称略とさせていただきます。

【証明は不正出金を主張する側にある】

遺産である預貯金口座から使途不明金(不正出金)があり、その返還を求める場合、その証明は返還請求を求める側にあります。
今回の質問では、不正出金があったと主張するあなたが証明する必要があります。
あなたが証明する必要があるのは、以下の3点です。
① 預貯金口座からの多額の出金が存在すること
② 出金した人が兄であること
③ 出金した金員を兄が使ったこと
以下、この点を順に述べていきます。

【多額の出金の存在を明らかにする】

まず、①の母の口座がわかっているのなら、多額の出金があることの証明は比較的簡単です。
母の口座の取引履歴を取り寄せ、いつどれだけの金員が出金されているかを確認すれば、使途不明金は簡単に把握することができます。
この取引履歴は既に取り寄せ済のようですので、多額の出金をチェックしていくことになります。
なお、本人の生活や入院治療費の支払いのため、ある程度の出金は当然必要になりますので、月額10~20万円程度の金額は不正出金とは評価できない場合がありますので、ご注意ください。

【兄が出金したことの証明も必要】

次に、各出金を誰がしたのかを明らかにする必要があります。
今回は、兄が通帳、カード等を管理していたということですが、訴訟にでもなれば、兄が《通帳やカードの管理はしていない》と言い出しかねません。
そのため、現段階で将来の訴訟に備え、兄が通帳、カード等を管理していたというような発言をするのをICレコーダー等で録音し、証拠として残しておかれるといいでしょう。

【出金した金員を誰が何に使ったのかを確認は・・】

今回、もっとも問題になりそうなのが、出金した金員を誰が何に使ったのかという点です。
兄が出金したことを証明できるのなら、《兄が自分で使ったのだろう》という推測も可能です。
そのため、裁判では兄の方が、母に渡したあるいは母のために使ったという証明をする必要が出てきます(法律的には《立証責任の転換》といいます)。
兄は裁判でどんな主張をするかは明らかではありませんが、あなたとしては、①入院中の母が金を使う必要はない、②病院で多額の金員を置いておくことはないという点を反論されるといいでしょう。

【入院前の10年間の約1億円の出金について】

なお、入院前の10年間の1億円の出金は母の健康なときの話ということであれば、兄の不正出金という可能性は少ないかもしれません。
しかし、母がそのような大金を使う可能性がないというのなら、出金伝票などを取り寄せ、その筆跡や代理人の有無など、兄が関与していたかどうかを確認する必要があるでしょう。
いずれにせよ、不正出金は話し合いで解決することは難しいです。
そのため、相続に詳しい弁護士に依頼し、必要な証拠を集めて裁判に臨まれるといいでしょう。


兄弟名義の預金は父の遺産か【Q&A №653】

 

【質問の要旨】

父の遺産分割調停中。
父がお金を出した兄弟名義の預貯金は特別受益にあたるか?
預貯金は既に解約済み。
兄弟は父より前に亡くなっている母から受け取ったものであり、父の遺産ではないと主張。
父の遺産と認めてもらう方法はあるか?

 

【ご質問内容】

現在遺産分割調停2年目の者です。
名義預金による生前贈与を受けたにも関わらず特別受益と認めない兄弟がおります。
生前父が書き記した相続人名義の通帳番号のメモ書きが出てきたのでそれを元に兄弟に開示を求めました所固有財産だと主張、なかなか開示に応じず一年以上かかりやっと開示に漕ぎ着けましたが既に解約済…
全額を受領した時点で生前贈与だと主張した所今度は父から受け取ったものではないので特別受益には該当しないと否認。
父が亡くなる数年前に母が亡くなっておりその母から受け取ったものなので現在の遺産分割協議には該当しない、
よって父からの特別受益には当たらないというものでした。
しかし母は専業主婦であり原資は父の収入のみですので父の遺産分割協議で扱うものだと主張したところ調停員の方から『民事で争ってはいかがですか?』と言われてしまいました。
理由は兄弟が認めない限り調停で扱うことはできないとの事でした。
本当にこのような主張が通るのでしょうか?
調停員の方からは後2回で終了だともいわれました。
ちなみに父は3年前、母は10年前に亡くなっております。
母が亡くなった際、父から遺産放棄をしてほしいと言われましたので遺産分割はしませんでした。
特別受益、もしくはそれ以外の主張はできますか?
今後認めてもらうにはどのような方法がありますか?
本当に困っております。
どうぞ宜しくお願い致します。

 

(ラベンダー)



 ※敬称略とさせていただきます。

【生前父が書き記した《兄弟名義の通帳番号のメモ》の意味】

通常、このようなメモがある場合、お父さんが兄弟の名義を借用して預金(いわゆる借名預金)をしたのではないかという推測が成り立ちます。
もし、そうであればその口座は父の遺産になり、遺産分割の対象になります。
しかし、兄弟が借名口座であることを認めない場合、あなたの方が借名口座であることを証明する必要があります。
メモがあったというだけでは証明には不十分です。

【借名口座の証明のために必要な調査】

ただ、兄弟は、現時点では、母からもらった金でその口座を作ったのだと主張しています。
そのため、あなたとしては、次の事実を調査する必要があります。
① その口座の通帳及び取引印は誰が管理していたのか?
② その口座はいつ頃、解約されたのか?
③ その口座の原資はいつ、誰が出したのか(父の履歴から、その当時の原資に該当する出金はないのか)?
もし、上記①の通帳や取引印を父が管理していたというのなら、それは父の遺産であり、兄弟の口座を借名したにすぎないものだという可能性が高くなります。
②の解約時期も参考になります。父が死亡した後に解約されているのなら、父が管理していたが、父が死亡した後に兄弟が何らかの方法でその通帳を入手し、解約したのではないかという《推測》が成り立ちます。
兄弟は母からもらったと主張しているのなら、③の原資に関する調査が役に立ちます。
父の銀行預金口座の履歴を取り寄せし、原資と思われる出金を探すといいでしょう。
兄弟名義の口座が作られた時期に、ほぼ同額の出金が父の口座からあったというのであれば、父の借名口座の可能性が極めて強くなります。
逆に、原資に該当する出金がないというのであれば、借名口座の証明にとってはマイナスになります。
なお、父の口座から出金があったが、それが一旦、兄弟が管理する口座に送金されているというのなら、借名口座というよりは、父の兄弟に対する生前贈与となる可能性が高いです。

【調停委員の対応はやむをえない】

遺産分割調停の場合、遺産の範囲が決まらないと、調停のまとめようがありません。
もちろん、調停委員としては、《双方の言い分があるかもしれないが、遺産の範囲については適当なところで折り合いをつけて、分割案を考えませんか?》という対応をすることもあります。
しかし、今回の兄弟のように、父の遺産ではないという強硬な姿勢を示しており、妥協に応じないというのであれば、調停委員としては《その兄弟名義の預金が遺産になるかどうかを裁判ではっきりさせるしかないですね》としか言えないでしょう。
調停はあくまで、双方が互いに譲りあって解決する制度であるため、その妥協点がみつからないと不調にせざるをえません。
2年間も調停を続けているというのが調停としては異例の長さであり、後2回で解決しなければ、調停打ち切りという判断はやむをえないでしょう。

【裁判をする前に、弁護士に相談することも考える】

借名口座として遺産にはいるのかどうかについての判断方法は前記のとおりです。
ただ、どのような事実及びそれを裏付ける証拠があるのか、また、その事実で借名口座と証明できるかはかなり判断が難しいです。
もし、可能であれば、相続に詳しい弁護士に相談され、その結果、証明が難しいとなれば、不満であっても現在の調停で解決するしかないでしょう。
また、証明できる可能性があれば、裁判への道をお勧めします。


不当利得返還請求と遺留分【Q&A №652】

 

【質問の要旨】

父が死亡。
相続人は後妻と相談者(二名)。
遺言書があり、後妻に遺留分減殺請求をした。
寝たきりの父には年間700万円の収入があるのにも関わらず、5年間のうちに後妻が1500万円引き出している。
(後妻曰く、生活費1000万円と葬儀費用500万円)
この1500万円の不当利得返還請求をした場合、請求額はいくらになるか?

 

【ご質問内容】

公正証書遺言がある時の使途不明金は遺産分割の対象になるのでしょうか。
下記概略です。

父が他界して相続が発生しました。
相続人は後妻さんと私(先妻の子)の計2名。
公正証書遺言があり預金(500万円)は後妻さんと私(先妻の子)と折半、マンション1部屋(時価2,500万円)と「その他一切の財産・負債も含む」は後妻相続となっています。(後妻さんには遺留分減殺請求済み)

父(要介護5の寝たきり)の移動明細(銀行)から後妻さんによる5年間で1,500万円の預金引き出しが確認されたので後妻さんに説明を求めたところ1,000万円は生活費,残り500万円は葬儀費用等との回答でした。
父の年収は700万円ほどあり父の移動明細や後妻さんによる説明からは預金を引き出す必要はなかったと思われます。

仮に後妻さんにより引き出された預金(1,500万円)が、不当利得返還請求の対象になった場合、私が後妻さんに対しての請求額はどのように考えたらよいのでしょうか。

 

 

(フリーダム)



 ※敬称略とさせていただきます。

【不当利得返還請求権は誰のものか】
ご質問によると、後妻が5年間のうちに父の口座から、1500万円もの預金を引き出していたということです。
これが、父の意思によらずに引き出したものだということになると、おっしゃるとおり、父は後妻に対して、1500万円の不当利得返還請求権を有していたということになります。
そうすると、父の死亡により、上記返還請求権を誰が相続したのかが問題となりますが、遺言書によれば、その他一切の財産・負債は後妻が相続するとの内容になっているとのことです。
不当利得返還請求権は「債権」という財産ですので、「その他一切の財産」に含まれ、後妻がその請求権を全て相続すると判断されます。
そのため、あなたとしては、遺留分請求減殺をする必要があり、その遺留分の限度で不当利得返還請求ができるということになります。

【あなたは、1500万円も含めて遺留分減殺請求をすることになる】
前項の不当利得返還請求権という債権も被相続人の遺産だということになりますので、あなたの請求できる遺留分額もその分増えます。
《計算式》
遺留分計算の基礎となる遺産額:預金500万円+マンション2500万円+不当利得返還請求権1500万円=4500万円
あなたの遺留分額:4500万円×2分の1(法定相続分)×2分の1=1125万円
遺留分侵害額:1125万円-250万円(遺言でもらえる額)=875万円

以上の計算式で算定された875万円が、あなたが後妻に対して、遺留分減殺請求できる金額になります。

【父のための特別の使途であれば、1500万円から控除される】
ただし、後妻は、1500万円を引き出したことを認めているものの、1000万円は生活費に、500万円は葬儀費用に使ったと主張しているようです。
これに対しては、《あなたとしては父の年収が700万円もあれば、それ以外に1500万円もの引き出しをする必要はなかった》と主張されるといいでしょう。
ただ、例えば屋根の修繕費として、後妻が領収書等を示して父の特別の使途がために使ったことを立証できた場合には、その分は不当利得から控除される場合もありえます。
なお、葬儀費用は原則喪主負担ですが、分担すべき場合もありますので、念のため、領収書の提出を求めてみるといいでしょう。


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