雨上がりのどんよりした天気だったから
一層、きれいに見えたのかもしれない。
室生寺の仁王門の奥にしゃくなげがあった。
この寺にはしゃくなげが3000本もあるというが、
4月20日過ぎはまだ花には早いようで
咲いていたのはこの1本だけであった。
柔らかなピンクの花で
女人高野といわれるこの寺にふさわしい。
と思っていたのだけれど、
五重塔への道脇に苗木2本についていた
花のラベルは洋種のしゃくなげのものだった。
《洋種の花を植えているんだ、観光寺院なんだ》
とがっかりした。
長い階段を登って、奥の院まで行った帰り道、
お勤めの時間であろうか、読経が聞こえてきた。
はりのある声だった。
なぜかうれしく、ホッとした。
洋種で機嫌が悪くなり、読経で心が温かくなる
というのは一体、どういう心境なんだろう。
てくてく旅行記