【婚姻費用ってなに?】
婚姻費用というのは《夫婦が、それぞれの収入や財産、社会的地位に応じて、通常の社会生活を維持するために必要な生活費》のことをいいます。
わかりやすく言いますと、
夫婦である以上、結婚している以上同居していなくても、生活していくのにかかる費用をそれぞれの収入に応じて負担する義務があるのです。
一緒に生活している分には費用の分担は問題になりませんが、夫婦が別居を始めたとき、たとえば妻が夫に対して《私の生活費を出してよ!》という、この生活費の支払い分のことです。
【婚姻費用額はどうやって決まるの?】
ではこの婚姻費用の分担は、どのようにして決まるのでしょうか。
まず、支払うのは、夫婦のうちの収入の多い方です。
具体的な金額は夫と妻の収入額をベースにして考えますが、現在では、家庭裁判所が定めた算定表で計算される場合がほとんどです。
【従来の算定表における婚姻費用額】
この「算定表」では、夫の年収と妻の年収の交わるところが支払うべき婚姻費用となります。
たとえば、
例1)夫:年収600万円、妻:年収200万円で妻に8歳の子がいる場合
⇒夫から妻に支払う婚姻費用・・月10万円程度
例2)夫:年収400万円、妻:年収のなし、妻に3歳と7歳の子がいる場合
⇒夫から妻に支払う婚姻費用・・月10万円程度
【算定表は低くすぎるとの批判あり!】
しかし、この「算定表」で算定した婚姻費用の金額が低すぎるという批判があります。
小さな子供のいる家庭で月に10万円程度では、家賃を支払うのに精いっぱいで、子供を養育するのには到底足りません。
そこで、日本弁護士連合会(日弁連)は、「算定表」を現在の実情に合わせようとする試みとして、平成28年11月に新算定表を発表しました。
この新算定表に基づき、上記と同じ例で婚姻費用額を算定すると、
上記の例1)では15万円(5万円アップ)
上記の例2)でも14万円(4万円アップ)
になります。
【実務にどう影響するかが注目される】
現段階では、すぐにこの「新算定表」が調停などで使われるということはないでしょう。
ただ、今後、現在の算定表は現状に合っていないのではという問題提起になることは間違いありません。
裁判所が、この弁護士会案に対して、どのような対応―例えば見直しをするのかどうかー注目されるところです。
参考までに言えば、養育費についても現在の家庭裁判所が定めたものは金額が低すぎるという批判があり、弁護士会から同様の提言がなされています。
(弁護士 岡井理紗)