(妙高高原滞在3日目の5月5日は燕温泉に行った。
その写真と簡単な文章をお届けする。)
硫黄のにおいがする。
狭い道を水が流れている。
雪解け水ですか?と聞くと
先生は、硫黄の匂いがするから、温泉の水だろうという。
細い道の右側に旅館やペンション風の建物がある。
左側には土産物屋が3軒ほどある。
燕温泉はそれだけの街並みであった。
燕温泉の街並み、道の左右の建物で全てである
坂道の上がり切ったところは雪景色だった。
赤倉温泉から更に登ってきたバスの終点、
燕温泉は標高1100メートル。
5月5日なのに、冬がまだたっぷりと残っていた。
坂道の行きついたところは雪原となっていた
土産物屋に《バスタオル レンタル料 400円》との看板があった。
《こんなところでバスタオル?》と不思議に思った。
雪の斜面を登って行く。
先生が先頭だ。
足取りもしっかりしている。
80歳を超しているが、達者なものだ。
春なのに、ほら、こんなに雪が
15分程、登ったところに露天風呂があった。
男風呂と女風呂とは分かれているが、
風呂は外からはほぼ丸見えであった。
バスタオルはここで必要になるということらしい。
男風呂は雪原から丸見えであった
斜面の途中で滝が見えた。
惣滝といい、はるか遠くの山の方にある。
日本の滝百選に選ばれたという。
はるか遠くに流れ落ちる惣滝がみえた
雪原を下りていく人あり・・
雪の斜面から降りてきた後、《花文》という宿の風呂に入った。
《燕温泉》のバス停のすぐ上にある建物だ。
丁度、昼過ぎだった。
《花文》というしゃれた名前だった
服を脱いで風呂の扉を開けたとき、驚いた。
風呂場の床に寝ている人がおり、立ち上がってきたのである。
昔、九州の指宿温泉に行ったとき、地域の共同浴場に入ったことがある。
そこの風呂場に横たわっている人がいた。
木の枕があり、床面近くに開けられた窓から風が吹き抜けていた。
いかにも気持ちよさそうであった。
そのとき、いつか、このような経験をしてみたいと思った。
この燕温泉で洗面器を枕代わりにしてしばらく、寝転んでみた。
残念なことに、心地よいという感じではなかった。
風が吹き抜けていなかったせいだろう。
薄い乳白色の湯で、ほこりのような湯の花が水中を漂っていた。
穏やかなぬくもりがある、とてもいい温泉であったが。
時間が戻るが、雪原で一服しているときのことだ。
撮影しようとしたところ、先生が空を見上げていた。
しばらくの間、そのような姿勢を続けていた。
何を見ていたのだろうか。
《おお、神よ!》
先日、お会いしたときにこの写真を見ていただいた。
この写真、《おお、神よ!》というタイトルにしようと思っているのですよ、と言ったら笑っておられた。
その時、何を見ておられたのかは聞かなかった。
先生も説明されなかった。
なにか《聖なるもの》を感じられたのか、あるいは空を飛ぶ鳥をみておられたのか。
説明することでもなく、質問することでもない。
答えがわからないままの方が、より印象深く、こころの中に留まるということもあるだろう。
(弁護士 大澤龍司)