ゼラニウムは寒さに強く、冬を軽々と越す。
毎年、春から秋にかけて、元気に花を咲かしてくれる。
それが今年の冬、よほど寒かったのか
茎や葉が変色し、全て枯れた。
昔はゼラニウムが嫌いであった。
特有の臭気がするのに加えて、
どこでもあるありふれた花という気がしたから。
しかし、品種にもよるが、中には黒い色が混ざった深みのある赤のものもある。
深紅というのがこのような色であろうか。
そういえば、赤ワインが同じような色だ。
上からのスポットライトの下にワイングラスを置く。
テーブルの上にワインの光の影が映る。
手に持って回せば、ゆらゆらと深紅の円とライトで作られた光の帯が回っていく。
これまでに、幾度、このような光景があったろうか。
ゼラニウムの花色は、ワイングラスを思い起こさせ、そこから過ぎ去った日々が美しく、あるいはほろ苦く浮かび上がってくる。
そうだ、今年もワインを、いや違った、ゼラニウムを植えよう。
深紅のゼラニウム
(弁護士 大澤龍司)