またこのパターンか、と思われた方も多いのではないだろうか。
川崎市川崎区にある認可外幼稚園「A.L.C.貝塚学院」が3月26日、倒産と閉園を保護者に突然通告した。
前日に卒園式を終えたばかりで、既に来年度の授業料も振り込まれた後だったという。
これまでにも、同じようなパターンの破産が度々ニュースになり、世間に動揺が走ったことがあった。
「てるみくらぶ」や「はれのひ」の破産は、記憶に新しいのではないだろうか。
どちらも、今回の「A.L.C.貝塚学院」と同様、顧客からお金が振り込まれた後に破産、という経過をたどっていた。
本件において、破産により影響を受ける子供たちやその保護者たちは、どのような救済を受けられるのだろうか。
まず、来年度の授業料を前払いした保護者たちは、破産債権者として、配当を受ける可能性がある。
ただ、「A.L.C.貝塚学院」の資産を換価・回収してできた金銭の中から、まずは管財人の報酬や諸費用を支払い、次に、支払いが優先される税金や労働債務の支払いがなされる。
その次が、やっと一般の破産債権者である、保護者らへの支払ということになる。
「A.L.C.貝塚学院」がどれほどの資産を持っているのか、また、税金の滞納や保育士らへの給料の滞納があるのかは定かではないが、保護者らに授業料が丸々戻ってくる可能性は、非常に低いだろう。
また、それよりも大きな問題となるのが、子供たちの受け入れ先である。
川崎市には、2018年10月現在で、252人の待機児童がおり、これは神奈川県内の市町村で3番目に多い数字なのだそうだ。
これを聞けば、行き場をなくした子供たちの行先が簡単に見つかりそうにないことは明らかである。
幼児教育を受けるべき子供たちが行き場をなくし、また、4月からの子供の預け先を失った親たちも途方に暮れているのではないだろうか。
会社としても、できる限りの努力をし、苦慮したものの、どうしようもなくなって、苦渋の決断で破産を選択した、というような破産者も多いだろう。
しかし、「はれのひ」にしても、「A.L.C.貝塚学院」にしても、突然の破産による影響は非常に大きい。
ただ、破産に至ってしまった現段階では、今できることを考えるしかない。
「はれのひ」の際に見られたような同業者の協力なども含めて、何とかして子供たちの行先を見つけてほしいと願うばかりである。
(弁護士 岡井理紗)