事務所に勤めていたスタッフから手紙が届いた。
お母さんが奈良で個展を開くという。
奈良町の格子の家でというので、
それなら行ってみようかと思った。
飛火野も近いし。
陶芸作品を見て、少し話をして、その後は一直線。
心はわくわくとしている。
どんな紅葉なのか。
紅葉する《苦悩の木》
たしか、うるしの一種だと聞いたが・・
たしかにその木は赤く色づいていた。
黄色の葉も緑色もあり、
様々のバリエーションの色の展覧会だ。
よく見ると、実さえついている。
あでやかと感じる人もいるだろう。
紅色、黄色に緑色と様々な色合いの葉がついており、
その中に種がついていた。
しかし、その葉もやがて全て散り、
身ぐるみはがれるような、そんな季節が眼の前だ。
この木は、今、その日にそなえて
身構えているようにも見える。
今の、こんな紅葉の盛りでも、
悲しみに打ちひしがれ苦悩している木、
そんな思いが付きまとう。
げに一旦、刷り込まれた思いはおそろしい。