下蒜山の山頂から降りるとき、粘土質の地面に何度も滑りかけ、難渋していたとき、
横をすーと通り抜けていったものがある。
なんと犬であり、その飼い主であろう登山者であった。
犬と言っても、街中でおばさんが2匹同時に散歩させているような、
あんなチョコマカと歩き回る、小さくて足の短い愛玩犬、室内犬ではない、スマートな中型の犬であった。
(昔、狩猟犬でポインターなどという精悍な感じの犬の種類があったが、そんな感じであった)。
私たちが林を抜けて、はるか向こうの中蒜山への道を見たとき、熊笹の中の一本道のはるか向こうを歩く人の姿が小さく見えたが、その足元にはあの一匹もいたのだろうか。
しかし、それにしても、ささっと歩き去った、その1匹と一人はいかにもカッコよかった。
だが、鎖場などはどうしたのだろう。
前足で鎖をつかむことなどはできない話である。
買主が、背中に背負ったのだろうか。
もし、その鎖場も自力で登ったとすれば、
それはまさに《登山犬》(そんな表現があるかどうかは知らないけれど)ということもできようか。