5分ほど坂を下っていくと清滝川にたどり着く。
大きな川ではなく、水量も多いとはいいがたいが、
水はそこそこにきれいだった。
橋の上からみれば、川はゆっくりと左に曲がり、ついで右にくねって流れ下っていく。
その右に曲がるところは小石の川原になっており、そこに《川床》があった。
(写真では小さくしか映っていないので、見えにくいかもしれない)
10人程度の人が食事をしているようだ。
昔(はるかに遠い昔)であるが、京都の四条の川床で食事をしたことがある。
夏の夕方で、川向かいにはバスや車が走り、目の前の川岸にはカップルが並んでいる。
いつもどおりの、日常の鴨川のありふれた景色の中に突き出た川床だった。
それでも初めてだし、壁も天井もないという開放感もあいまってか、なぜか高揚感があり、周囲の人たちも同様の気持ちをもっているか、川床の客全体が華やぎの雰囲気があった。
今は季節は秋、四条の雑踏とは程遠い、この秋の紅葉の谷間で食事をすればどんな感じがするものか。
対岸の黄緑、深綠、黄色や紅の入り混じった木々の景色を見ながら人は何を思うのだろうか。
しかし、先を急ぐ心に加えて、リュックにコンビニのおにぎりと、《午後の紅茶》が入っていたから、結局、川床には寄らなかった。
今にして思うと、行っておけばよかったと思う。
《悠然と南山を見る》というような俗世間を離れた気分になることはないにしても、少なくとも何かの記憶が残ったに違いないのに。