てくてく旅行記
光太郎の詩を唱える
光太郎の愛 智恵子の愛②
6年前、妻は亡くなった。
土曜日の朝だった。
2人でトランプをした後、
私は庭に出ていた。
家に戻ったとき、妻は倒れていた。
突然の死だった。
位牌は作らず、仏壇に写真を飾っている。
お経は一度も唱えたことがない。
替わりに高村光太郎の詩を
声を出して読んでいた。
《レモン哀歌
そんなにもあなたはレモンを待っていた。
かなしく白くあかるい死の床で
私の手からとった一つのレモンを
あなたのきれいな歯ががりりと噛んだ》
私の妻の名は知恵子、
歯のきれいのが自慢で
そしてレモンがとても好きだった。
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