《鯉が水中からジャンプ!》
生家の庭に面する廊下がある。
チエがいつも歩いていたに違いない。
廊下の端に座って、庭を見ていた。
ぼーっとした時間を過ごすのも悪くない。
5月の連休だというのに、この日の風は冷たかった。
東北地方なのでこの程度の風はよくあることなのかもしれない。
池に架けられた石橋の下を5匹ほどの錦鯉が泳いでいる。
突然、その中の一匹、紅白のまだらが水の中からジャンプした。
何かに驚いただけなのか、
あるいは廊下に長時間座っているのが何者かを知りたかったのか。
ジャボンと重量感のある音を残し、また水に戻っていった。