《智恵子はどういう人か、その愛の世界》
この写真は生家のチエの部屋に飾られていたものだ。
顔はその人の持って生まれた素材に、それまでの人生の積み重ねたものだという。
この写真から、あなたはどのような人生を読みとるだろうか。
光太郎の詩によれば、
智恵子は「不思議な仙丹を魂の壺にくゆらせて」
「愛の海そこに人を誘ふ」、
「女人の無限を見せる」(光太郎の詩:《樹下の二人》)
という魅力的な女である。
しかし、同時に彼女は
「をんなは多淫、われも多淫
飽かずわれらは愛欲にふける」(光太郎の詩:《淫心》)人であり、
「そこの知れない肉体の欲は
あげ潮どきのおそろしいちから
なほも燃え立つ汗ばんだ火に
火竜(カテマンドラ)はてんてんと躍る」(光太郎の詩:《愛の賛美》)
というような世界に遊ぶという、心と体の愛を共に生きる人であった。