《智恵子には画才があったのだろうか》
生家の裏に智恵子記念館がある。
もともとあった酒蔵の後に作られたものだ。
そこに智恵子の描いたデッサン画が2枚あった。
1枚は男性の裸体で、描線もしっかり、いききとしている。
絵が上手だったんだなと言うのがよくわかる。
しかし、それと並べられていた女性のは線が弱弱しい。
いかにも生気が乏しい。
この2枚がいつ、どこで描かれた者かはわからない。
本当に同じ人が描いたのだろうかと言うほどの違いがある。
智恵子の描いた油絵も飾られていた。
これでは展覧会にとても当選しないだろうという出来だ。
植物を描いているが、色の取り合わせが悪い。
何よりも生き生きとしていない。
智恵子は色覚異常があったと言われている。
しかし、それ以前に書くことの喜びが、この絵にはない。
智恵子には画才があったのだろうか。
挿絵やイラストに特化した方がよかったのではなかろうか。
光太郎は頑張れ、頑張れと励ましていたようだ。
しかし、それが智恵子にとってものすごく心の負担になっていたのではなかろうか。
あまりに期待されすぎ、それが重い負担になる。
智恵子の苦しみはそんなところにもあったように思える。