弁護人 被告人は帰国することを決意しております。
検察官 被告人は帰国の手配は済んでいるのですか?
裁判官 被告人は帰国する予定があるということですね。
被告人 私は、帰国します。
登庁すると、まず、外国人の裁判を全件チェックして、できるだけ傍聴する。
僕が刑事裁判の修習にやっていたことだ。
その中で、冒頭のやりとりがよく繰り返される。
その理由は、簡単である。
被告人が罪を認めている場合に、弁護人がなすべきことは、できるだけ罪を軽くすること。
そのためには、被告人が罪を犯したことには酌むべき事情があるとか、被告人には再犯の可能性がないとか、言わなきゃならない。
外国人の場合には、「帰国します。」というのは、少なくとも、日本において再犯の可能性がないことを主張する手段としては、極めて有効である。
しかし、冒頭のやりとりを何度も聞いているうちに、何ともやるせない気持ちになる。
将来への夢や希望を抱いて日本にやってきた人たち。
何とかしてあげたいという気持ちがある。
(弁護士 岡本英樹)