『やさしい日本語』という言葉が、自治体などで急速に広まっている。
『やさしい日本語』は、1955年阪神・淡路大震災の際に、外国人の死傷者が日本人の2倍以上であったという事態を受け、災害時における外国人住民に対する情報提供のあり方が問われ、その中で生まれてきたようである。
最近では、大阪弁護士会でも『わかりやすい日本語』※という用語で、積極的に啓発活動をしている。
その背景には、日本に居住する外国人の割合が増加していることに加え、日本に居住する外国人のうち、英語に通じない外国人の割合が高いことが、指摘できる。
日本に在留する外国人は、多い順に、中国人、韓国人、ベトナム人であり、その合計は、日本に在留する外国人の半分を超える。いずれも、英語を母国語としない。
「外国人イコール英語」という考えは、とっくの昔に、通用しなくなっているのである。
ところで、『やさしい日本語』には、いくつかのルールがある。
一文を短くして、分の構造を簡単にする。
難しい言葉を避け、簡単な言葉を使う。
不必要な情報は、思い切ってカットする。
いずれも、試してみたが、簡単なようで難しい。
例えば、「本人確認ができる証明書はありますか?」という日本語、あなたなら、どのように言い換えますか?
「本人確認」という抽象的な用語や、「証明書」という難しい言葉を、どう言い換えればいいだろか?
一つの答えは、「パスポートや在留カードはありますか?」というものだ。
「本人確認」について、「あなたであることを知るための・・・」と長々説明するよりも、外国人にとって大切で、よく知っているパスポートという単語で説明する方が、やさしい日本語であるといえる。
※『やさしい日本語』という用語が、押し付けがましいという受け手の感じ方を嫌い、『わかりやすい日本語』という用語を使う向きもあるようである。
しかし、『やさしい』という言葉には、「易しい(easy)」という意味に加え、「優しい(kind)」というニュアンスを込めることができるので、外国人にとって、易しく・優しい日本語という意味を込めて、私は、『やさしい日本語』という用語を使いたい。
(弁護士 岡本英樹)