あれから50年、再び大山へ⑰
昔から、登りは強くないが、
下りには自信があった。
しかし、今回はしんどかった。
階段の段差がきつかったのか、
それとも、寄る年波ということか。
途中、道脇に休憩している人がいた。
60台の後半ぐらいの男だった。
眼があったとき、彼が大阪弁で言った。
《膝が笑ろてますねん》
山ですれ違う時の挨拶は、普通は《こんにちは》である。
予想外の言葉で、戸惑って言葉を返すのが遅れた。
彼がもう一度《膝が笑ろてますねん》と言った。
人に訴えたいのか、自分に言い聞かせていたのか、
それとも、照れ臭くて言い訳をしたのか。
あるいは、それらが入り混じっていたのかもしれない。
《頑張ってください》というありふれた返答をして、
そこを通り過ぎて行った。